凡庸でありふれた転生者達の小話   作:血涙鬼・彼岸

15 / 62

テスター期間のシメと初の他所仕事、そして彼らのもう一人の指導者との邂逅です


第十二話 初仕事 導入編

 

「『メシア教の正義と大義』という本はありますか?」

「ありますよ。トンデモ本・ジョーク集の棚か淫祠邪教の譫言特集コーナーをご覧ください」

 

(ガイア連合式メシアンジョーク集の一節より)

 

 

皆が専用シキガミを得てから月日はそろそろテスター期間が終わる間近になっていた。シキガミ達も十二、三レベルには達し、スパルトイ達もレベル十七、八には至りそれぞれ一つだけスキルを獲得成功、特にショタおじの地獄修行短期濃縮一日コースを再履修していた六人全員が二十レベルに到達することに成功した。勿論、それに見合うスキルも獲得出来たし装備もそのレベルに見合う良品に買い替え出来た。ついでに言えば溜め込んだ魔貨をかなり消費したがシキガミ購入費用も全て一括完済済みだ……修行以外はもう殆ど異界で魔貨と魔素(マグネタイト)稼ぎに勤しんでいたからそうもなるだろう

 

そろそろテスター期間が終わるからその前に一度六人全員でなるべく近場の遠征依頼を請けて夏休みのアルバイトでもあるから日本円稼ぎやスパルトイの外部持ち込みテストも一緒にやっておこうか?と話し合って決めた……翔太以外は皆郷里に彼女を待たせているので後々のデート代稼ぎという目的もある。ヴェルは生活費稼ぎという辺りは世知辛いものだが

 

気合いと身体の若さと健康さに任せてイケイケガンガンに、でもちゃんとリスク回避はしっかりやって浅層から上層*1に至るぐらいには強くなれた。少なくとも階位が達人級にはなれたとは思う……ペルソナ使いである稟みたいに最初から覚醒者とはいかないがまぁ少なくともこのガイア連合でもこの位階に達すれば辛うじて一人前、いやちゃんとした半人前程度の扱いをされるだろうとは思う。でも流石に上層は未だ準備が整ってないから浅層最深部で修行しながら上層に挑む準備中ではある*2

 

実際の処。所属から一月未満で最初だからかなり割引きされているとはいえ専用シキガミの購入費用を一括払いしたり、やはり一月未満でレベル20に至ったり、ショタおじの地獄修行を複数回受けたりする気概や根性の持ち主は正式な『見習い修羅勢』であり、しかも非常にお行儀が良く向上心のある連中とか運営や幹部陣、制作班や真正の修羅達といった辺りからは彼らはとても高評価だったりする

 

まぁ、残念ながら彼らは期間限定パーティー*3なのでそう長くは一緒には居られないから成長もかなり緩やかになってゆくだろう

 

そんなこんなで受付の普通にアイドルが務まりそうな可愛くて綺麗なお姉さん……名は『千川 ちひろ』という我らがガイア連合の金庫番と言うべき運営系の大幹部*4と彼らの一時的スポンサーである『朝倉 大輝』の両名に相談して遠征依頼を請けてみる事を問うてみる

 

彼らの評価は……少なくとも実力は良し、人格評価は最優、しかし経験に欠けるのが玉に瑕ではあるが総合的には良い。ならば誰か指導役を一人か二人付けておけば大丈夫だろう、地方名家は形振り構わずこちらの取り込みに手段を選ばない者も結構な割り合いで存在するからその措置で『地方名家とはどんな代物か?』をその身で実地研修して貰った方が良いだろう

 

今回は……今彼女の隣に居る朝倉氏とその奥方に指導役を依頼しておく。彼らはガイア連合としても非常に稀少な優良人『財』であるからそこら辺の名家(笑)風情にくれてやる訳には行かないのだ。特にこの六人はガイア連合でも一等稀少な支部長候補の中でも特に稀少と言うかむしろこいつら以外には務まらない『沖縄支部長、幹部内定者』故に決して手放せないのである

 

そんな訳で一時間で旅支度を行って目的地に向かう事となった。それぞれ荷物は……着替え二日分と霊衣に消耗品、後はガイアカレーと財布だけ。武具の類いは大輝が編み出した特殊な魔法である『収納魔法*5』で目立つ武具は預かりとなる予定だ。持ち歩ける武具なぞ翔太のアセイミー・ナイフぐらいだろう、あれは基本的に凝った造りのレターナイフに擬装した護り刀という代物故に

 

そして、魔術師の類いである翔太とヴェンデリンが眼をめっちゃキラキラさせながら

 

 

「先生、その魔法どうすれば覚えられますか!!?」

「俺も知りたいです先生!!!」

 

 

その二人の姿勢に苦笑いを浮かべながら大輝は……

 

 

「わかった、わかった。後で上手く行けばお前たちに簡易指南書を見せてやる。ショタおじ監修だから覚え易い逸品だぞ?……それでも前提条件かなりキツいし面倒な術式だけど

 

 

そう言って鼻息荒い二人をどうどうと落ち着かせてから依頼内容の記載された文書に目を通させる

 

 

「……う゛ぁ、マジかこれ」

「クソすぎて笑うしかないなオイ」

「ガチの胸糞案件かよ」

「だが、一応は自浄能力はあった様だな」

「確かに……でも俺らの彼女はこの地に近付けたくはないな」

「……?、この依頼書何かおかしくない?気のせいか?」

 

 

その依頼書に依れば……その地域の廃校舎を起点に残虐な殺人事件が頻発、犯人であるその廃校舎の中に棲まう悪霊の駆除依頼だったが内容を聞く限りかなりの胸糞案件の様だ

 

何でも……だいたい二十年前にその校舎でかなり陰惨ないじめを苦に自殺した女学生が居たらしく、その怨念で怨霊化した様でその封印にだけは辛うじてその女生徒が自殺した原因であるいじめの主犯を見つけ出し、それにちゃんと社会的、経済的厳罰を与えることその名家の力ある者達の大半を贄にしてどうにか封印には成功した

 

まぁ……封印は所詮封印であり、今現在にその封印が破れて暴れ回っているとの事。そしてその被害者達というのもそのいじめに加担した従犯にして実行犯達とその家族だという事だ

 

そして……その主犯というのがこの依頼を出してきた名家の娘だった存在であり、その愚行を犯した娘にきちんと社会的制裁を与え、実家からも勘当後にその慰謝料もその娘に全額支払わせながら村八分状態、その実家は当時は比較的優秀な霊能者達が存在していたが、その大半が贄となって封印措置という手順での儀式でその怨霊鎮めを果たしたのが顛末らしい。要はその馬鹿娘に長く生き地獄を味合わせる事を封印の起点にしての封印儀式という事だ

 

嘗てはこの日本の基準でなら優秀な栄えある名家だったが……今ではその名誉も実力も正に『一族最悪の汚点』と化した馬鹿娘の余りにも悍ましい悪事とそのツケで地に堕ちた状態なのに今度はそのツケが本格的に取り立てに来た状態だ。最早その名家の生き残り達は今ある最後の財貨を全て掻き集めてその最後の恥を濯いで家を畳む決意を決めたとの事だ

 

少なくとも依頼書にはそう書いてある……が、先ずは現地で幾つか気になる事をチェックしてからだ

 

そんな事を大輝監修の元六人で話し合っていると、そろそろ最後の同行者が到着した様だ

 

基本的にガイア連合のそれなり以上の規模がある施設には必ず『転移魔法用のゲート』が存在し、連合に所属する転移魔法の使い手達を誘導出来るビーコン代わりの魔法陣がロビーの一角か施設の一室内に必ず存在している。これは様々な転移事故を防ぐ為の処置かつ俺たちの一員である転移能力者支援かつ防犯セキュリティーの一種としても機能する措置だ。この転移魔法陣は俺たちとして登録された者とそのシキガミ、ショタおじが公認した仲魔以外は逆に強く反発する仕組みになっている*6

 

此処ではロビーの一角に存在する魔法陣の一つと管制担当……電話という文明の利器があるならそれでアポイントメント出来るならやっておくべきだろう、を経由して使って良い魔法陣に転移して来るのがガイア連合の転移魔法使い達がだいたい所属する『武器密輸課』のルールである

 

『彼女』は正にその密輸課の一員であり、つい先程まで様々な土地に積荷や人員を輸送する任務に就いていた処である

 

 

「……おっと、少し遅れましたか?」

 

 

鈴が転がる様に綺麗なアニメ声、それが聞こえた魔法陣から現れたのは……先の千川さんと全く同じデザインの綺麗に着こなした緑色のスーツに黒いタイトスカート姿*7で、身長はだいたい160㎝前後、非常に艶やかな背中まであるまるで金糸細工の様な綺麗な金髪と最高のカラット数と研磨を施した翠玉*8の様な大きな瞳を持つ非常に豊かなプロポーション、そして肌は極上の白磁の如く艶やか。そしてその顔は正に専用シキガミにも匹敵する可愛らしさと美しさ、少女の様な愛らしさと大人の女性としての魅力を同時に魅せる様な、そういう相反するものを同時に違和感無く持つ、だいたい翔太達と似た年代の少女かと思わせる様な女性だった

 

よく見るとその豊かな胸元には『朝倉』のネームプレート、そして左手の薬指には白金の結婚指輪が嵌められているのが見てわかる……少なくとも彼女は既婚者だという事がそれで分かる

 

彼女の名は『朝倉 姫子』、大輝の前世今生含めて共に産まれた時から七、八十年に跨ぐ付き合いで今生でも未だ新婚夫婦状態という筋金が入りすぎているガイア連合でも色々な意味で珍しい『前世からの夫婦』である。その仲睦まじさと希少性から付いたコテハンが『比翼ネキ』と『連理ニキ』である

 

基本的に男の転生者達はシキガミ嫁を貰う中で現地民を嫁にする者すら珍しい状況であり、故に転生者の夫婦というものは非常に珍しく。ガイア連合でもそれこそ十数組あるかどうかであり、それに加えて『前世からの縁者』に逢う確率に至ってはガイア連合でも十数件あるかどうかという奇縁の極致である

 

ちなみに大輝自身も転移魔法使いであり、姫子共々密輸課の大規模貨物輸送担当として重要な依頼をこなしたりもする日々を送っている……基本的に二人とも本業が忙しいので密輸課には非常勤状態であるが、彼らの一族の秘技だった収納魔法を伝授してくれたりその技能を遺憾なく発揮してくれる事から密輸課では無位無冠の立場ではあるが結構な発言力を持つ顧問的な立ち位置に有る存在だ

 

まぁ……二人とも本来はとある小さな隠れ郷の次期郷長夫婦であり、その郷と一族郎党でガイア連合に加入した小規模支部『初音郷支部』の支部長とその補佐官を務める存在である

 

 

「……あの人が朝倉さんの嫁さんか」

「確か、前世からの付き合いだとかマジ?唯でさえ俺たち同士の夫婦って珍しいらしいって聞いたぞ?」

「マジで俺らの彼女にタメ張れる様な美人さんだな、ルカさん以外は写真で見せて貰っただけだけどさ」

「てか、朝倉さんと同じぐらいのレベルの強者だと思うよあの人」

「やっぱりそう思うか?、まぁ敵対中か試合でもない限りいきなりアナライズはマナーに反するから駄目だけど」

「まぁ、それ以前に下手に強者にアナライズかけるとエグい呪詛返しが炸裂するらしいけどな」

「「「「「それな」」」」」

 

 

大輝が姫子と今回の案件についてさっと話し合う隙に小声で何やら宣い合う六人……この六人より遥かに高位の霊能者である二人には丸聞こえではあるが決して悪口や侮りではなくちゃんと彼女の実力を予測している辺り短期間とはいえ良く練り上げられたものだ

 

二人は既にショタおじ直々に『沖縄支部プラン』について話を聞いており、この件で下手を打てば西日本の一つである四国にも大打撃になる事を理解しているので昨日一日掛けて郷里である初音郷に根回しをしてその依頼を受諾している……しかし、郷の忙しさを考えると間違いなく一年しか彼らの指導者にはなれないだろう。郷の仲間達の必死に無理を押さえ込んだ眼差しを思い出しながらこの一年をどう使いどう彼らを育てるかを思案しながら大輝は六人の弟子候補達を姫子に逢わせる

 

 

「さて……彼女が俺の嫁の『朝倉 姫子』だ、そして今回お前たちの引率役を俺と一緒に行うからちゃんと指示には従えよ?」

 

「ふふ、貴方達が期待のルーキーズね。主人がお世話になっていますわ」

 

 

まぁ、そんな感じでこの八人が出会った。そんなこんなで彼らの初仕事はこうして始まる事となったがその顛末はまた次回の話となる

 

 

 

 

 

*1
此処から『不思議なダンジョン』と化し、罠も増えてくる

*2
基本的に彼らは東京、四国、沖縄在住の家族仲の良い未成年者故にこの恵まれた異界以外での立ち回りを念頭に動かなくてはならない身である

*3
少なくとも彼らの認識では

*4
但し未覚醒者

*5
勿論、この作品のオリジナル

*6
ショタおじ特製なのでこのセキュリティーを破るぐらいなら正面から挑む方が未だ楽なぐらいである

*7
ガイア連合女性事務員用共通制服。要はモバマスの事務員用制服そのまんま

*8
エメラルド





この依頼と夏休み後の彼らの進路を上げたら第一部は完ですね
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。