割と背景胸糞度高まります……初期の孔雀王とか昔読んだ胸糞系エロ漫画のイメージに女神転生ちゃんぽんにしたら何かこれが出来た
とある教会での会話
「神父さま、告白します。今日わたしはメシアンを二人殺しました」
「神様は怠慢の罪を何よりもお嫌いです。明日はその倍は殺すようにつとめなさい」
ガイア連合編
「今日メシアンを二匹殺したよ」
「出来るなら楽には殺さず生かしてKSJ研か脳缶ニキに引き渡す様に努力しような?」
(ガイア連合式メシアンジョーク集の一節より)
さて、依頼の場所はだいたい山梨から何らかの交通手段で三時間掛かった場所にある片田舎。嘗て起きた忌まわしい犯罪か、いやそのツケが今牙を剥いたか非常に陰鬱な空気を纏う萎びてしみったれた。何とも辛気臭い町だった
「自業自得とはいえ……これはまた悲惨な」
「……まぁ、私達が見たこの地の名家からの資料だけでご覧の有り様でしたからね」
辺りの店舗の大半は錆びたシャッターと売地、借地の張り紙、偶にサラ金の催促みたいな張り紙だらけのあばら屋やボロアパートの一室が見える。此処まで悲惨な様相の町なぞそれこそドラマの産物か悪名高い大阪のあいりん地区だか嘗てのドヤ街か何かみたいな貧乏神と疫病神が仲良く遊んでいる様な姿を幻視してしまうそんな侘しく悲惨な街並みだった
この町は確か……ガイア連合の富豪俺たちが作ってくれた更に正確な資料によると例の犯罪以降辺り一帯からの信用も悉く失い周囲の名家からもエンガチョ*1されて没落に次ぐ没落沙汰になった状態だという話だ。商売は殆ど上手く行かず、この地区出身だと下にみられ、良い企業はこの地区出身を忌避する悪循環のスパイラルという事だ
まぁ……その『虐め』というものがその被害者の娘に主犯の馬鹿娘が手下の、所属霊能者の一部や名家の権力でかき集めたならず者達をけしかけての性犯罪という所業であり、しかもその理由が横恋慕で更にそれでも全く上手く行く筈もなくその娘も横恋慕対象も殺してしまったという何の救いも無い結末で終わった事件だという事だ
少なくとも依頼してきた名家は『被害者は自殺ではなく殺害』、『もう一人の被害者を隠蔽していた』と嘘をついた事になる……この地点で前金何処ろか違約金をふんだくることだって出来るだろう
こういう依頼で意図的に虚偽情報を流すのはかなり拙い禁忌だと言って良いのだが、それは馬鹿娘への最後の情かそれとも杜撰な隠蔽工作のツケか?
しかし違約金をふんだくってやればこの土地一帯という明らかな『負』動産を押し付けられるだろう。それに今の依頼してきた名家は最早『失うものは既に無い』とヤケクソ状態ということもあるのだろう、そしてこの町を覆う瘴気と怨念は最早今日明日にでも爆発して深刻なオカルト・ハザード状態を近隣一帯にまで引き起こすだろう
恐らく事件の有った家の一つ……ビニールシートや『keep out』と書かれた黄色いテープに覆われた家屋を見かける。外から見ても分かる悍ましい瘴気の残滓でこの件を起こした怪異は中々強烈な代物だという事が分かる
「まるで爆発直前のダイナマイトだな」
「確かに、一週間前ならすっ飛んで逃げたくなるぐらい酷い瘴気だね」
「今の名家にこれの処置はまず不可能って事は確かだな」
「街一つで済めば万々歳ってレベルだなこりゃ」
「この始末は違約金抜きでも潰れかけ名家に出せる額か?近くのウシジマニキ*2にでも連中突き出すべき案件か?」
「いや、顛末次第だろそれは?経過をきちんとちひろネキに相談して悪質ならウシジマニキ案件で良いだろ?」
何気に酷い台詞もあるが、この瘴気の残滓から見るに少なくともこの怪異はレベル十の大台、大戦前なら普通の敵だったが今では街一つぐらいなら簡単に滅ぼせる大悪魔判定だ。少なくとも富裕な範囲の名家でもこの領域の怪異対策で屋台骨が傾く恐れが出るぐらいには討伐……どころか封印、調伏*3しか出来ないのが普通だ
勿論、その費用は常軌を逸した高額さで今回の件ならば一人五千万円ぐらいが相場だろう……違約金を抜いても、である
この家屋も見たところ今日の夜ぐらいにはスライム辺りの低級悪魔が発生する手前と見て取れるぐらいに瘴気が溜まっている状態だと見て取れる。現地民の異能者ではもう手の施し様が無い状態だ
そして……これからやるべき行いは
「ヴェル頼む、俺のは本番まで温存したいし」
「お前の破魔は威力凄いけど燃費もその分激しいしな、わかったよ稟」
この面子内で破魔魔法の使い手である稟とヴェンデリンの会話……終わるや否や稟が勝手に件の家の庭の四隅に上がり込んで方位磁針を見ながら塩を蒔き、何かを彫んだ屑水晶の欠片を一見適当に放り投げてゆく
そしてヴェンデリンは稟が行う奇行……今回やる事に必要な儀式の前準備が完成した事を確認してから軽く柏手を打つ。するとその家にこびり付いていた瘴気は消えて元のあまり状態の宜しくない家に戻っていた
普通の瘴気ならばこの面子の誰かが適当に塩を撒き散らすだけであっさり祓えるが、死者が直近で数人も出している強い悪魔の残滓を清掃するならこの方法が早いしそもそも家には入れない。彼らがやったのはごく微細な破魔魔法をちょっとした儀式の手順を踏んで行使しただけである
稟が行った処置は非常に簡易的な『結界』である。稟の様に魔法を覚えるのが苦手な者でもちゃんと手順を踏めば実践出来る『ちょっとしたおまじない』である……霊格さえ高ければ些細なおまじないとてちょっとした術にもなるものだ。要はちょっとした風水擬きである
彼らも只異界攻略に勤しむだけでなく、それぞれ攻略以外の僅かな余暇で勉強だってやるし鍛錬だって欠かさない。なるべく霊力は温存するべきである故に
少なくともこれで当分は瘴気の収集状態は大丈夫だろう……後でちゃんと中から『禊』を済ませておけば完璧な筈だと指導役夫婦も太鼓判を押してくれた
そして……次は抜き打ちで調査すべき場所に急ぐ事にした。『件の馬鹿娘の家』である
だいたい築半世紀ぐらいはありそうな風呂無しトイレ共同四畳半一間の廃墟一歩手前のボロアパートにその名家の監視下の元でその女は暮らしていると事前情報ではある。確かにその情報通りであり、玄関扉に封印か何かの様に無数に貼り付けられた闇金融の脅し文句のビラ紙や迷惑行為や家賃滞納による立ち退き勧告の書類など様々なろくでもない内容の紙が張り巡らされた面扉を抜けた先、その殆ど散らかったコンビニやスーパーの生ゴミと沢山の督促状、そして這い回る蜚蠊の気配以外殆ど最低限の家具しかない生ゴミと化粧臭いあばら屋にその女は一人暮らしていた様だ
事件を起こす前のそこそこ美人ではあるが隠しきれない性根の悪さが目立つ顔と、つい最近の荒れに荒れ果てた生活の果てに実年齢の倍近い加齢が見える皺と面皰に塗れぶよぶよに膨れ上がった悲惨で惨めな顔の二つの写真を眺めながら嘆息する六人
ぷらん……ぷらん……
その部屋でその女は首を括って既に現世から地獄に逃げた後だったからだ
白眼を剥きながら鼻水と涎に塗れ苦悶に歪み果てた醜悪な顔、下半身から垂れ流された様々な汚物……典型的な首吊り死体が其処にぶら下がっていた。その『穢れ』から発生した?いや本人の穢れに穢れ果てた有り様から蓄積されたであろう分やこの建物の地質など様々な理由で酷い量の瘴気がこの部屋に充満している。今この場でこの死体が屍鬼の類に変じても驚くには値しないぐらいだ
だからと言って『此処でその死体を降ろしてやるのが人として最低限の情け』という訳には行かない。こういう殺人若しくは自殺現場で遺体に触れるのは法に於いて禁じられた行いであり、今の割と脛に傷のある身で無駄に目立つ訳には行かない
だから簡単に家探しをして今回の件がどうなっているかを確認する。女の死体は死後だいたい今日中だと大輝と姫子が見立ててくれた、派手だが非常に悪趣味なデザインの服から見るにこの女は水商売……だった様だ。嘗てなら兎も角今の容姿かつ年齢で水商売はもう無理だ、誰がこんな容姿すら醜悪な女を買うというのか?督促状の中に解雇通知もあったし
確か……実家から手切れ金代わりに罪をある程度誤魔化して貰った上に出所後はそこそこ良い仕事や比較的条件の良いアパートなどを手配されていた筈だが?いや単に腐った性根で早いうちにクビになったり追い出されたりしただけの話で其処から絵に描いたような転落に次ぐ転落人生というだけの話だろう
そして……日記帳みたいなノートととある書物、そしてアクセサリーが見つかった
ノートには未だに嘗て殺した二人と実家、それと世間や客に店への逆恨みばかりが書き殴られていて全く反省した気配なぞ無いのが分かる……後になればなるほど更に支離滅裂内容になって判読すら不可能になり、そして割と最後の辺りで『救い』だの『天使様』だの何やら不吉な文言が比較的穏やかな文体で書かれていた
その文言の意味は先程暈したとある書物とアクセサリーを見れば一目瞭然だろう……何たって『聖書とロザリオ』だったし
「ああ……なるほどメシア教か。そんなにしてまで信仰のマグネタイトが欲しいのかあのクソハゲ?天使の世界は正にブラック企業だなオイ」
発見した翔太はそんな事を呟きながら皆にその物品を見せる
それを見た五人は……もしかしてこれメシア教とかも絡んで来る?と翔太と同じく腐った蜜柑に齧り付いてしまったかの様な表情になる。横を見れば大輝も姫子も同じ表情である
「……あの、マスターに皆様。何やらメシア教の話をしてますが、彼らがこの依頼に関わっているのですか?掲示板や皆様の会話などから『メシア教はとても悪いもの』という事は理解出来るのですが?」
翔太の側に必ず居る彼のシキガミ『ルカ』が聞いてきた。創のカバンに隠れていた白くてもふもふした可愛らしい仔兎型シキガミの『シア』もひょっこり出てきて前脚をふりふりさせながら『私も知りたい』と言わんばかりだ
そんな一人と一羽*4の為に簡単に説明……してやりたいが、この汚臭と瘴気に満ちた環境下では長話なぞ出来ないからさっさと最低限でも稟による浄化でさっさと祓う必要があるだろう
「よし、起きろ『楓』」
『イエス、マスター』
柔らかい女性の声……制作スタッフのオススメだという音声案内機能を搭載した自立思考式書物型シキガミの『楓』を起動してとある命を下す
「よし楓、エストマを使ってこの空間を浄化してくれ」
「イエス、マスター、エストマ行使で残りエネルギー85%になります」
本来ならば弱い悪魔を寄せ付けない結界を造る魔法であるエストマ。それを応用してこういう深刻な『瘴気穢れ』を祓うという方法は以外と知らない者が多い。基本的にガイア連合以外では使い手は少なくあの最大手のメシア教でも割と珍しい分類の魔法扱いかつその技法などはメシア教が世界各国で行う焚書でかなり失伝してしまっている有り様になっている
ガイア連合ではショタおじという生き字引が存在するし、豊富な素養持ちが多数存在するのもあって様々な実験が繰り返されているのでその知識や様々な失伝知識が存在する訳だ
稟も創に勧められて読んだ本から得た破魔や結界の新たな使い道をこの場で遺憾無く発揮出来ている。稟とて脳筋突撃兵のままでは居たくないから真面目に勉強はしているし簡単な魔法の勉強だって始めてはいるのだ……少なくともちゃんと長い修練とその魔法との相性次第ではある程度の魔法なら習得は出来るとショタおじからは言われている
「……なあヴェル?俺たちもちゃんと体術だけでもきちんと学ばないといけないな」
「奇遇だな翔太。俺も今稟を見て真面目にそう思えたよ……魔法適性皆無*5な稟でもちゃんと勉強して能力使いこなしているのを見たらそりゃね?」
「俺も……稟に戦士系の修業場を案内して貰おうかな?」
「僕も頑張らないとね……銃だけでやっていける訳無いし手札はまだまだ足りないのが分かるよ」
「やっぱり魔法の勉強も必要なんだな……斥候技術なら一応始めたけど」
「その辺りは俺もやりたいけど今は魔法を余技にやるのが精一杯だ。手を広げ過ぎると失敗しそうだから余技修練は斥候に絞った方が良くないか陽介?」
「マスター、私も何か魔法以外にも覚えた方が良い事はありますか?未だ色々考えることが出来ないのでマスターの指針が欲しいのですが?」
そんな会話を一見気楽な感じで行う一行……しかし、その眼は首吊り死体や周囲を用心深く監視している。そして
『ギイィィィィッっ!!お前らヨグっおッ!!?』
「やかましい」
ズゴすッ!!!
やはり予想通りにエストマの効果がキツくなったから動き出した女の首吊り死体……いや悪魔を稟が力の限り闘気を込めた鉄拳制裁で顔面を力の限りぶん殴っただけの話である
「ほい、ハマな」
『ぎぃいぁァぁぁ悪つッ!!!?』
それから間髪入れずに放たれたヴェンデリンの破魔一発で消滅する女……あれでも日本の在野霊能者では腕利き十数人を用意して挑まねば先ず封印さえ出来ない危険な悪魔であった。
「やっぱりな」
「だろうと思ったよ」
「誰かティッシュかタオル持ってない?気持ち悪い化け物ぶん殴ったから手拭きたい」
「ほら稟、ウェットティッシュね」
「てか朝倉さんアレ何に使うの?悪魔合体の素材?」
「とりあえず証拠にもなるし後で使い道が出る筈だ。まぁお前たちの頑張りへのボーナスにはなるだろうよ」
そんな締まりの無い会話をしながらこのボロアパートの他の部屋を探索しておく一向……どうやらこのアパートの住人は全てあの悪霊に殺されてマグネタイトを喰われていた様だ。死骸が他の一室に詰め込まれていた
その様を見た彼らは皆だいたい同じ感想を抱いた
『これは最早通常の依頼とは呼べない。緊急事態だよこれ!』
非常に厄介な事がちょっと調べただけでぽろぽろ出てくる異常事態だと断定出来る。間違いなく今の悪霊討伐でこの町の名家の出す依頼料がトぶぐらいの大規模な事態になっている
しかも……これは今すぐ抑えないとこの町だけでは済まずに辺り一帯が大規模なオカルト・ハザード沙汰になるだろう
そして……今やるべき事は一つである。直ちに我々ガイア連合の運営に連絡して周囲の町の名家などに避難勧告をやって貰う事とこの町の名家への糾弾である
その間、彼らは辺り一帯に点在する殺人現場の瘴気を祓いながらその場所の地図確認などを行う……その結果はやはり想定を遥かに下回る最悪なものだった
皆のデータは一章終了時のリザルトで