凡庸でありふれた転生者達の小話   作:血涙鬼・彼岸

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ディストピア様、ふなぐち又兵衛様、塵塚怪翁様、ブルータス様、作品のキャラクター達をお借り致します

前話書いてからその日のうちに割と酷い風邪引くとは……辛うじて三が日には間に合ったけどな


第十四話 初仕事 急転編

 

カーナビの調子が悪いのでつい「地獄に行け」と叫んだ

10分後、メシア教会に着いていた

 

(ガイア連合式メシアンジョーク集の一節より)

 

 

複数ヶ所あった殺人現場の浄化をこなしながらこの町を包む薄い瘴気を祓って祓ってで頑張って殺人現場巡りを終わらせた丁度その時に運営からの通達が来た*1

 

この町の外にある最寄りの喫茶店*2で一息つきながらその内容を確認する……どうやらこの町の名家は既にメシア教に乗っ取られていた事が分かった

 

件の……今は大輝の封魔管に幽閉された悪霊の手引きで中の名家達に『天使の讃美歌』で洗脳して乗っ取るという非常に杜撰な方法であった。周囲の信頼は失墜し、辺りの他名家からはエンガチョ扱いなので細かい変化なぞだれも気にも留めなかったから出来たことだろう

 

本来ならば『宣教の羽根』と呼ばれる呪物を使って洗脳するらしいが、そのコストが非常に馬鹿にならない代物*3らしいのでこういう雑な成り替わりをやらかすパターンもある。直ぐに何かやらかす場合だと特に

 

この事態にはガイア連合でもちょっとした騒ぎになっていた。割と近い時期でこういう事態が発生していた事と運営サイドの落ち度故に大変な事になってしまった?いや大輝が支配したあの悪霊の口を割らせた結果だとこうだ

 

この地域のメシア教のお偉いさんが何らかの目的の為にこの地域で大規模なオカルトハザードを引き起こそうとしている。その口車と身勝手な復讐心に乗せられて実家の裏切りと乗っ取りに協力、そして自身が裏切られて自分が嘗て行った事*4をされて悪霊に堕ちるまでの結末を吐かせる事に成功した

 

しかし……メシア教の唯一にして最大の誤算は、その名家の財産は殆ど全て依頼料としてガイア連合に納められた上に既にその家は畳まれる手筈だった事と、その家も既にガイア連合の所有物件でありその一族は必要最低限な私財だけを持って遠くに引っ越す手筈だった事だろう。だから直ぐに調査が上手くゆきメシアンの陰謀は暴かれた

 

辺りの殺人事件はあの事件の加害者の家に適当な呪物を放り込んで殺害するだけといった見立て殺人擬きにしてその辺りの怨念を利用して更に被害を増やすつもりだったらしい。この女もその実行犯の一員だと自白した

 

その不快な悪霊は管にまた封じ込めてから彼らは喫茶店の奥でガイアレトルトカレー*5と注文した飲み物、ついでに未だ幼いが甘いものに興味を持ち始めたルカの為の甘味、それとシアの為の新鮮な野菜を追加して小休止をしながら今後について語り合う

 

そのオカルトハザードの起点となる廃校舎は夜にならないと立ち入り出来ないので暫くは休養だ。名家の被害者の保護と其処に潜むメシアンどもの捕獲は既に運営の依頼で動いた修羅勢達が成功したそうだ……が、主犯達は既に廃校舎の中に昨日から潜んでいるがあちらも夜迄は殆ど何も出来ないらしい。沢山の霊能者を贄に作ったそれなりに強力なその封印はどう頑張っても組んだ術式の影響で今日の夜から夜明け前までは解除不可能らしいし

 

いわゆる『メシアンの根切り』で不完全になった術式をどうにか再現……誰でも時間を掛ければ解除可能なものだが必ず一定以上の時間が掛かる仕様なのはある意味では『メシア教への悪因悪果』かも知れない

 

今回の目的は……先ず真っ先にオカルトハザードの阻止、それと件のメシアンの残党確保(死体さえあれば生死を問わず。蘇生するだけだから)。次に封印の維持か中の怨霊の救済若しくは消滅といった次第だ

 

作戦会議が終われば皆喫茶店の奥にある割と広い休憩室……畳と緊急で用意したタオルケットと枕だけの清潔ではあるが殺風景な場所で仮眠を取る。今夜は間違いなく徹夜になるだろうから

 

その間に運営側が今回の大事に備えて動かせる密輸課の面子に補給物資や今動かせる修羅勢や見込みのある若手達を召集してくれるらしい。他にも周囲一帯の名家が協力してその廃校舎一帯の封鎖や緊急避難を請け負ってくれた……ちゃんとした名家は警察にも強いコネが効くものである。その署などがちゃんとオカルトを理解している場合に限るのが難点だがまぁ地方だろうが何だろうが高い地位に居る警察幹部は必ずオカルト被害を把握しているのが普通である*6

 

運営側も翔太達への報酬の再計算やら備蓄資材などから様々な消耗品や彼らに適合する装備などの供給・貸与などの申請や異界に籠る修羅達への連絡など様々な追加業務をこなして頑張っていた。しかし残念ながら修羅達は皆異界の奥地に居て連絡が付かずだった

 

仕方ないので彼らに近いレベルの見所のある若手や修羅候補達を集めて追加戦力を捻り出す第二プランに以降する事が決まった

 

集めた戦力は……翔太達と同世代ながらも長年実戦の場に立ち続けた歴戦の退魔師『破魔ネキ*7』、コボルトのアウトサイダー(豆柴タイプ)である通称『豆柴ニキ*8』とその友人である『保護眼鏡ニキ』とその彼女である『牡丹ネキ』の非常に珍しい黒札カップル、後は翔太と創の縁で『人魚ネキ*9』と『キノネキ*10』、そしてまぁそこそこのベテラン非修羅枠から『ドッペルニキ*11』、そして新人ではあるが(自称)ダークサマナーやっていた『アーッニキ*12』と呼ばれる退魔業界のベテラン中のベテランと後数人の戦力、それと低レベルながらも真面目な性格の観測要員十数名をどうにか用意することに成功した

 

普通なら翔太達六人に含めて朝倉夫婦が居るなら先ず太鼓判レベルの依頼ではあるが、それでも万が一今回の件が失敗したら非常に大規模なオカルトハザードの勃発が発生し……下手すれば終末前倒し案件になりかねないぐらいの緊急事態である。割とその周囲はガイア連合の力で息を吹き返し初めてきた名家が多いのでそういう意味でも重要な案件になってしまうのだ

 

彼らが眼を醒ます逢魔時*13を結構過ぎた真夏の夕暮れ時。その時には密輸課からの支援物資も到着済みだ

 

未来ならば俺たちが関わるとある組織が大量かつ廉価で作ってくれる『蠱毒皿』は未だ通常の面倒な旧い手法で作成が必要な為、この時代の対天使戦の主流である呪殺属性の魔法石、それと当時から既に大量生産体制に入った対悪霊戦の主力装備である施餓鬼米の備蓄を沢山。それと宝玉やチャクラドロップと非常に貴重なチャクラポットなる飲めばたちまち霊力を全回復させる高位の霊薬も供給された

 

『イナバニキ*14』のコテハンを持つ密輸課所属のペルソナ使いが持ってきてくれた支給品を受け取り、既に彼らが担当する廃校舎の潜入スポットに転移して貰う手筈になっている。非常勤ながらも同僚である朝倉夫妻も密輸課のエースであるイナバニキが動いているのを見ていよいよこれがガイア連合も重要インシデントだと理解している事を再認識する

 

少なくともこれは今この夫婦が引率する六人になるべく大事になるだろう案件を最初からやらせて反応を試す資金石だとも理解出来る。内容の胸糞さも沖縄で真っ先に警戒すべき悪意の源泉メシア教の邪悪さも大事への対象も様々あるだろう。少なくとも沖縄という危険地帯を背負える逸材の育成には必要な過程という魂胆だろう

 

しかし、その素養がある逸材を決して潰す訳にも行かないという目論見や『傘下にちゃんと入った名家に与える飴』として目に見えるちゃんとした保護や……それに何より『転生者仲間には滅茶苦茶甘い』というショタおじの性質などがないまぜになった結果が今の事態だろう。少なくとも朝倉夫妻はそう思っている

 

 

場所は変わって潜入スポットやそれ以外を見張る観測員の一人である『ナイスボートニキ』と色々な意味で酷いコテハンを付けられた青年が一人。空き家を利用した観測スポットで黙々と廃校舎に異常は無いかと双眼鏡で観察を続けていた。最低限覚醒者ではあるが戦闘適性の低い彼は戦闘用のシキガミと試作型高品質スパルトイ、それと緊急離脱用の魔法石を貸与されているから身の安全は保証済みなので安心して任務に勤めていられる

 

『ナイスボート』……自身の名前と容姿、そして本当に当人が何もしていないのに起きた様々な呪いの様な惨事*15の果てにこのガイア連合に流れ着いたその経歴から付いたほぼ間違いなく蔑称でしかない無辜のコテハンを背負いながらも真面目に生きている事務方陣の一員であり、前述した『アーッニキ』の所属する予定の派出所に出向予定の彼だったが、今回事務方の中でも比較的レベルの高い覚醒者である彼が観測員として事務方のボスであるちひろネキの要請と割りかし高い報酬。それと『とある目的』もあって今回の依頼を受けて此処に来ていた

 

目的とはいってもそんな大した事ではない……割と貴重な『同じエロゲー出身俺たち』と少し話がしたいだけである

 

彼の姿の起源……史上最低の男だの名前の後に『死ね』とつけられる様な悲惨なものではなく、逆にそのエピソードを知っていれば『漢』や『聖人』、逆に悪く言うなら『狂人』だのと言った評価が付く*16様な、少なくとも『凡人』とは決して言えない様な人物だが、ある意味では誹謗毀損などに苦しむ境遇のナイスボートニキにとっては一度は話をしてみたい同胞だと思っていた

 

人間の……いや女の悍ましさを嫌というほど見せ付けられて心折れた彼には体感なら冗談抜きで自身の体験したあの苦しみより遥かに過酷かつ苛烈な苦しみを受け止めて傷付き吹き飛ばされても尚真なる修羅に挑む気骨と気概を持った益荒男達の雛の羽撃きを初めて見た時から自分との違いなどで強い嫉みの感情を抱いたが。だがだからと言って与えられているチャンスは間違いなく同じかつ自身だって痛み苦しみに耐える気概を以て頑張れば今の彼みたいにはなれる才能はあるのだ

 

最近知り合った『トイレのいい男』にそっくりな同僚*17の過酷な経歴を僅かなりとも知ればそんなみっともない嫉妬は引っ込むが……代わりに僅かな憧れが心に生まれて来る。だから少しだけ彼こと『土見 稟』と会話して見たくなった

 

開幕から『ショタおじの厳しい修行』に挑んだり、手足が吹き飛ぶ管式召喚術訓練に挑んだり、また『最初の洗礼』を仲間達と力技突破したり。更には一日とはいえ『ショタおじの厳しい修行・濃縮バージョン』にまたチャレンジしたりと様々なハードモード修練に挑んで二十日其処らでレベル20に急成長している様な連中の一員だ。普通に修羅勢などが注目するし彼らの『新作アガシオンのレポート』も素人が書いたにしてはかなり良い出来栄えかつちゃんと礼儀も出来ているので最悪潰れても事務員として育てるのもまた有りだと言えるし、翔太と創なら製造班に所属オファーが来るだろうし、裕人なら食堂所属だって出来るだろう

 

基本的に掲示板にあまり書き込みしない彼らの現状だが、間違いなく現在進行形で優良物件のこの面子に縁を結ぶなら未だ辛うじて無名状態である今ぐらいしかない。出来れば稟と少し話をしたいだけなのだが……

 

そんな事を考えながらしっかり観測を行っているとガイアフォンから連絡が入って来た。相手は密輸課のイナバニキからであり、内容は今から突入班を送り込むという話だ

 

それを聞いたナイスボートニキは直ぐに窓のカーテンを閉めておく。なるべく廃校舎に居るメシアンに情報を与えない為の配慮だ……異界に引き篭もっているメシアンどもにはまぁ見えないだろうが、それでも最低限の配慮はやっておく

 

それからきっかり十秒後に出て来た一団は……完全に現代日本では逸脱した格好の集団だった

 

普通の衣服を着た青年……ナイスボートニキも良く知るイナバニキを最初に、ライダースーツにプロテクターを纏う長剣を腰に履いた男、中華な武闘衣にカンフーシューズで片手に本を抱えながらもう片手に金砕棒*18を担いだ男、隣に甲冑とドレス、それとレオタードを組み合わせた様な装束*19を纏う美女を従えた狩衣姿の男、ローブにマントを羽織り何やら機械的な長杖を抱えた男、西部劇のガンスリンガーとギャンブラーがない混ざった様な衣装を纏いながら頭に仔兎の乗っけた男、何故か執事服の上に一見すれば襤褸の外套を纏う男、そしてその六人を従える所謂『ガンダルフスタイル*20』な長身筋骨隆々の益荒男と先の美女とはまた一つ違うデザインのドレスアーマーを纏う小柄な美女の一団が現れたのである

 

その面子のまとめ役であるガンダルフスタイルの筋肉……通称『連理ニキ』が代表としてナイスボートニキと対話する。まぁ非常に簡単な話で「廃校舎異常無し」「了解、日が暮れたら突入するまで観測を続けられたし」で済む程度だった

 

他の持ち場でも特に問題なく他の突入班らが待機状態に入り、そろそろ日が暮れて夜の帷が落ちようとしているのが分かる

 

 

「よし、野朗どもは鍛えたスパルトイを出せ。最終試験の始まりだぞ」

 

「「「「「「了解だ、ボス!」」」」」」

 

 

六人全員がそれぞれ懐から銀の管……封魔管を出してその封を解く。そして召喚されるは骸骨の戦士六体。それぞれ西洋の重甲冑なり日本の大鎧なり様々な甲冑を纏い、長巻*21使いや大剣持ちに大盾持ちや二丁板斧持ちに金砕棒持ち、短槍盾持ちと様々な武装をしている

 

 

「……よし、やはりお前たちをテスターに選んだのは正解だったな。なら俺達も」

 

「了解したわ、あなた」

 

 

事も無げに袖やら胸の谷間から引っ張り出した数本の封魔管、その中から出たのは翔太達のスパルトイとは隔絶した更に強烈な個体だった。皆完全に同じ造りの重装歩兵用甲冑に短槍と大丸盾で武装した……少なくとも今の翔太達より更に強い事が分かる強さのスパルトイ小隊だった

 

大輝が五体、姫子が三体、計八体の強い骸骨戦士達を召喚し、更には……

 

 

「よし来い、マカミ!」

 

「おいでハイピクシー!」

 

 

優れた召喚術の使い手としてショタおじから認められているだけあって非常に強力な……少なくとも先程召喚したスパルトイよりも更に強力な仲魔を管から召喚するのを見て彼らは思った

 

 

『『『『『『『『もうこの二人だけで大丈夫じゃね?』』』』』』』』

 

 

六人だけでなくナイスボートニキもイナバニキも含めての感想だが……いや、そう思うのは分かるが今回はガイア連合の更なる信用獲得の為に絶対に表社会に被害を出す訳にはいかないから人員は多数必要なので彼らや様々な人員は必要である事は間違いない。後はちゃんとあの目の前の悲劇惨劇の舞台をきっちり浄化するにもやはり人員は必要である

 

そして、今日こそこの地で起きた様々な厄災を終わらせる為に彼らは異界に挑むのであった

*1
この間凡そ二時間程度

*2
別の街の名家の紐付き、どんなオカルト話をしようが武器を出そうが大丈夫な安全地帯。但し霊力などの回復能力は全く無い

*3
レベル30以上の人間の霊能者のレベルを対価に一つ作れるらしい

*4
自殺に見せかけた殺害

*5
喫茶店のマスターもその効能を良く知っているし、何より今が緊急事態だと理解しているのでむしろ率先してガイアカレー補給を進めたぐらいである。今回はその名家が入手した秘蔵品を振る舞われた

*6
知らずに黒札にやらかして『トラブルバスターズ案件』になった馬鹿な(元)幹部も稀に存在するらしいが

*7
【カオ転三次】終末が約束された世界で生き抜きたい。より

*8
しがない一転生者の徒然。より

*9
【カオ転三次】 終末に向けての準備するとある転生者の話

*10
【カオ転三次】世界が終わるまでのバイク旅

*11
【カオ転三次】『俺たち』閑話集。より

*12
【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法。より

*13
夕暮れ時、黄昏どき、昼と夜が移り変わる時刻

*14
ガイア連合武器密輸課職員の日常。より

*15
覚醒条件に至る程酷い。下手すればショタおじの地獄修行経験者すら同情するレベル。詳しくは『【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法』を参照

*16
黒歴史であるアニメ版では凄まじい改悪状態だけど

*17
アーッニキ

*18
地獄の鬼が持つ様な大きな金属製棍棒の事

*19
ハイレグアーマーに似てはいるがむしろ健康的なお色気に比重の傾いた、要は明貴美加的なデザインセンスで連想すると良い。通称は『ドレスアーマー』

*20
杖と剣で武装した武闘派魔術師スタイル

*21
束を非常に長くした太刀、薙刀に近い使い道が出来る

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