凡庸でありふれた転生者達の小話   作:血涙鬼・彼岸

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まだまだホラーや胸糞の境地は難しいものです。私はこれ書いててやはり自分はハピエン主義なんだと感じてしまいますね

メガテンだからある程度はその辺書く更なる筆力が欲しい……


第十五話 初仕事 激斗編

 

脅迫 その1

メシアンの大教皇がテロリストに拉致された。「500万ドル用意しろ!さもなくば大教皇を生かして返すぞ」

 

脅迫 その2

通勤中に渋滞に巻き込まれてしまった。すると前方から警察が歩いてきて窓をノックした

「この先でメシア教の大教皇がテロリストに拉致されてしまったんです。犯人は身代金を出さなければ大教皇にガソリンを撒いて火をつけるぞと言っています。いくらか寄付をお願いします」

「なるほど。いくら寄付すればいい?」

「1リットルもあれば十分です」

 

(ガイア連合式メシアンジョーク集の一節より)

 

 

突入した廃校舎異界の中は……非常に広大な迷宮と化していた。異界という代物は例え元は一軒家や小さなアパートだろうが時と場合に依っては非常に広大な迷宮に変じるものであり、また時には更に厄介なギミックも発生したりする

 

この異界についての情報は……封印担当名家も調査は何度かやったが生還者が一人も居ないのでその中のデータすら無い有り様であり、故に完全に未調査の異界攻略という非常に厄介かつ危険な任務となる事が確定していた

 

そして……その異界内部はと言うと

 

 

『グギィィィィ!!餌、餌!餌ァ!!!』

 

『ゲヒヒィ!!メス!雌!!牝ウゥゥッ!!!』

 

 

餓鬼や攫猿(カクエン)の様な穢らわしい化け物達がわんさか辺りを彷徨い出ていた。他にもチュレルと呼ばれる出産時の産褥熱などで死んだ娘の悪霊や都市伝説の怪異の一種である穢らわしい唾液を吐き出す無数の歯茎の集合体である噛み男や片足の無い女の怪異カシマレイコ、佐渡ヶ島の水子霊の一種である妖虫ウブや他にもその廃校舎の制服を来た夥しい数のゾンビの群れ。あと稀にだが花魄(カハク)と呼ばれる自殺者を多数出した場所に現れる樹霊の姿も見られるが……

 

どれ一つ見ても現地人ではあっという間に殺されるだろう力量の悪魔ばかりである。餓鬼ならまだ一番マシな範囲であり、割と大半の悪魔がさっき見た悪霊とだいたい似たようなレベルの一体でも外に出せば都市崩壊も普通にあり得る危険な悪魔ばかりが発生する非常にデンジャラスな異界だとこの地点で分かってしまう

 

少なくとも餓鬼一匹ですら普通の名家では生け贄を使って鎮めるのが精一杯というのが普通であり、大概の名家は最早スライム一匹すら退治出来れば英雄扱いという環境である……此処の嘗ての名家ならばこの辺りに出る悪魔の一体ぐらいならばどうにか倒せる力量は有ったのだが。今はまぁご覧の有り様である

 

日本がこうなった全ての元凶であるメシア教でも日本支部のレベルでは間違いなく手に余る非常に危険な異界だと『この地点』でも断言出来るだろう

 

……そして、これがガイア連合が挑む場合は?

 

 

ガサガサガサガサガサガサガサガサっ!!!

 

『『『『『『『『オギャア、オギャア!』』』』』』』』

 

 

爆音になるほど大量の蟲の群れが這い回る音と共にか細く不気味な赤子の鳴き声が大合唱となって聞こえる。佐渡ヶ島に伝わる蜘蛛と赤子の生首が融合したかの様な水子霊の群れが廊下から襲来して来る!捕まれば最後男は喰われて女は……母の胎内に帰りたい水子の悪霊達が身体の穴という穴から無理矢理入り込まれて魂ごとズタズタに引き裂かれる末路を遂げるだろう

 

今の日本の霊能組織ではこの悪霊の群れの一体ですら殆ど全滅してしまうぐらいには強力な存在だが……ガイア連合からすれば

 

 

「やかましい!」

 

 

そんな軽い一言であっさり叩きのめされる雑魚に過ぎない。いや一応は彼ら六人基準ならば『そこそこ油断出来ないレベルの悪魔』ではあるが、それでも手札を万全にして挑めば……容易く打ち倒せる残酷過ぎる才能の差に繋がってしまう

 

そもそも、今出る悪魔なぞあの六人からすれば割と日常的に相対する最近の獲物ばかりである。普段ならリソースを節約して己を鍛え磨く為に挑む存在だが、今回は早くぶちのめして先に進む必要がある単なる障害物だ

 

今回は豊富な霊力回復用霊薬をたっぷり持ち込み、度重なる激闘修練の果てに早々にボロボロになったスパルトイの装備新調にルカに与えられた女性専用試作高品質装備*1やら自身もガチャや購入、友人から売って貰った武装などで装備もしっかり強化済みだ

 

先陣を切るのは相棒たる銀の魔剣を振るう魔剣士と成った陽介と、重く硬く分厚い鉄塊を振り回す荒法師となった稟の二人。全体をぶちのめす剣戟と鋼の旋回で当たるを幸い悪魔をまるでピンボールか何かの様に易々と薙ぎ払って突き進む様は正に砕氷船の如く

 

その隙間から翔太とヴェンデリンの二人が一気に広範囲攻撃魔法を撃ちながら一気呵成に援護や残敵掃討に力を入れる。翔太は得意の電撃魔法を広範囲に、ヴェンデリンは最近習得した広範囲破魔魔法で辺り一面の悪魔をみるみる焦がし溶かしてゆく。相方の魔法杖にも魔法攻撃させれば威力は実質二倍にだってなる

 

前線支援は稟のシキガミである魔導書の楓と創のシキガミである仔兎のシア、そして翔太の嫁シキガミであるルカによる支援で賄う。未だ生まれたてではあるが支援型シキガミの本領発揮は今こそだろう

 

必要な場所に施餓鬼米を投擲したり、敵の攻撃妨害やヘイト管理を新しく手に入れた『コルトM1911』という名の割と手に馴染む実銃を片手に見事に熟すのはこのチームの銃使いである創。今回は彼が最近所属することとなった『実銃愛好部*2』から沢山の自作退魔弾をカンパして貰ったおかげで撃ちたい放題が出来る……借りは多少出来るがそれは後からちゃんと返すだけである*3

 

進路のマップ取りや罠探知に出来そうなら解除、敵の哨戒など様々な異界攻略に必須な雑事は裕人とその纏う外套型シキガミの担当だ。皆のガイアフォンにマップデータをアップデートしたり、敵のデータを登録したりして万が一に逸れた時の対処などだって行うし援護だって熟す……わりと近い未来にはマッピングソフトの『ネオ・クリア』や偵察用超小型ドローン操作ソフトの『ハニー・ビー』などが発売されるが高難易度異界では結構役に立たない。だから常に優秀な斥候役はちゃんと理解出来る者達からは引く手数多だったりする

 

スパルトイは攻撃仕様の二体が稟や陽介と共に戦い、後は後衛の防御や後部の見張に回す。大人数ならバックアップ対策だって有益に出来る

 

ちなみに、大輝と姫子は先に別行動にて異界探索を行っている。しかしちゃんとそれぞれの攻略チームで密に連絡を取り合ってこの異界の地図を完成させてゆくので道順は暴かれてゆく

 

道中は荒れ果てた廃校舎内なので割と足場は悪く、偶に積み上がった机や椅子などで道を塞がれたりもしたが……その辺りは稟の金棒やスパルトイ達の怪力で一気に蹴散す力技で容易く通れたからその辺りは問題ない

 

問題は照明の光すらかき消す暗闇の空間*4であり、その問題は光玉なるそういうしつこい暗闇を数時間は消し飛ばせる魔力を秘めた宝珠で容易く消し飛ばせるが資材がかかってしまうのが難点だろう。資材だって只ではないのだから

 

一階……少なくとも階段が見えるから二階以降もあるだろう。もしかしたら未だ隠された地下室などもあるかも知れないがその辺りは捜査に行き詰まりを感じた時で良いだろう。少なくとも目に見える新たな探索地点は発見出来た

 

 

二階に上がると廊下や教室などがかなり広く感じる……異界という代物に物理法則はあまり当てにはならないものだが、まぁ落とし穴が突然発生したり天地が逆転したり距離や空間が歪んだりする様なレベルでさえなければ大丈夫だろう

 

……二階からは地獄の鬼そのものやオーク、オーガの様な邪鬼の類い、それと花子さんにブキミちゃんといった強力な悪霊の類いまで増えて更に過密に悪魔の群れが襲撃して来る様になって来た。力が強い邪鬼どもは未だマシな類いで色々な嫌がらせが得意な花子さんの妨害や偶に自爆するブキミちゃんの襲来には神経をすり減らされる様な気分になってしまう

 

しかも、二階からは落とし穴やダメージゾーントラップ。その最中でほぼ探索済みかと思われた一階の未探索エリア発見やら何やらといった発見まであるから更に探索は厄介な事になってゆく

 

 

「おい稟、お前のシキガミのエストマで一時休止を取れないか。少し銃身を冷ましたいんだ」

「……わかった、俺もさっき潰された左腕を再生させる時間が欲しいしな」

「翔太もヴェルもチャクラドロップで早く回復しとけ。ルカさんもほら早く」

「無茶すんな陽介、お前も肋骨何本かやられただろ?ほら稟も陽介も魔石で誤魔化さずに宝玉で治しとけ」

「いやいやお前らみんなブキミちゃんの自爆ラッシュでボロボロなんだから皆ちゃんと宝玉使えよ。皆瀕死状態なんだから」

「ついさっき反魂香で蘇生したてだしなお前。わかってるからお前もチャクラドロップ舐めとけ、魔法使い組はちゃんと三つ四つは一度に舐めろよ?」

「皆様、ならばあの教室で一時休憩と致しましょう。スパルトイ達を歩哨にすれば暫くは一息付ける筈です」

 

 

皆、五体満足とは行かない者や一度は死んで蘇生した者まで様々な大ダメージを受けたりもしたがそれでも元気に超難易度異界攻略に勤しむ彼ら……その休憩地点と決めた教師には先客が存在していた

 

 

「……おやいらっしゃい。今カレー用意しているけど食べるか?なに、また新しいパウチとパック米を温めるだけだしな」

 

「「「「「「喜んで!」」」」」」

 

 

他の攻略チームとの合流に成功した。今回の面子は彼らの雇用主である朝倉夫妻とその配下の仲魔チームが鍋にパウチやパック米を入れて温めている処だった

 

割と直ぐにパック飯を二つに割ってその中にガイアレトルトカレーを入れて……という自衛隊式のレトルト炊爨方式でカレーライスが翔太達にお出しされる。シアには創があらかじめ持って来ていた兎用ペットフードを出して情報交換を交えながらの小休止だ

 

基本的な情報は通信で余り変わり映えのするものではないが、一応朝倉夫妻や同じ召喚士資格持ちのアーッニキから共通で挙がった『悪魔からの聞き込み情報』についての話題には盛り上がった

 

翔太達が習得している『簡易悪魔召喚術』という代物は……単に契約している悪魔を封魔管に封じたり封印を解いたりする事が出来るだけの超簡易的な召喚術ごっこに過ぎない。何しろ封印対象が少しでも嫌がれば管に封じることが出来ない様な代物でしかないのだから

 

少なくとも技術『だけ』ならばあの封印術をもっと正確なものにする事や『悪魔との会話能力』を習得する必要がある……まぁショタおじの検定はその辺りではなく『別の問題』で鬼畜難易度であるのだが

 

『悪魔との会話能力』……基本的に悪魔の言語は人間のそれとは違って強烈な精神波(テレパシー)みたいなものであり、未覚醒者や弱い霊能者ではその精神波で深刻な精神汚染を引き起こしてしまうのでそうならない様に交渉する為には【ジャイヴトーク】と呼ばれる悪魔の精神汚染を跳ね除けながら交渉事が出来る様な精神防御技術が必要になって来る*5

 

この技術そのものは俺たち転生者ならば割と容易く習得は出来るが、この技術はショタおじの出す非常にえげつない難易度と不快さを伴う試験の合格者だけにしか教えてくれないし、ショタおじ公認悪魔召喚士達も同じ黒札にショタおじの出す試験の合格者以外には決して教えてはならないと魔術契約でガチガチに縛られているぐらいである

 

人にも依るが、修羅勢達の中でも『この試験が一番嫌だった』という派閥さえ存在するらしく……人に依っては召喚士資格は得ても悪魔とは分かり合う気はさらさら無いし話す気さえ失せたから目にした悪魔は皆殺し派に転じた合格者も実は一定数存在する

 

(※:試験内容は『【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録』を参照。かなりクッソエグい試験だよ)

 

 

「稟や陽介が見た感じ一番酷い状態だけど……ヴェルはちょい前に一回ガチで死んだろ?てかスパルトイシキガミ達も割とボロボロじゃないか。皆直してやるから姫子から治癒受けて三十分は寝てろお前ら」

 

「はいみんな今すぐわたしの前に集まってね。特に稟くんと陽介くんは今すぐに……てか皆その有り様なのに良くカレー食べられるね?稟くんは右腕だけで大丈夫?陽介くんは肋骨不味くない?」

 

 

そんな姫子の言葉への返答は

 

 

「「「「「「ショタおじの修行で慣れた。未だ喰えるうちだから大丈夫!」」」」」」

 

「……あー、うん。そうだね、ごめんね」

 

 

満身創痍だろうが元気にサムズアップする六人の笑顔と何か諦めた様な……『あっ、こいつら間違いなく修羅だわ』とでもいった表情で無心になって六人の治癒や再生に勤しむ事にした姫子の乾いた笑顔で束の間の休息に入る事が出来た

 

治癒魔法やシキガミ修理スキル、しかも朝倉夫妻の使える霊力供給魔法『マカトラ』のおかげでシキガミもスパルトイも全員完全回復に成功し、しかも沢山あった嵩張る戦利品も預かって貰えた上に更にアイテムの追加補給もうけられた

 

ちなみに……おまけでレベルを測ってもらった結果は皆レベル27というものすごい段階に到達していた。ガイア連合でもレベル30に至れば間違いなく超一流扱いなのであるが普通なら覚醒から一月未満でこの境地に至るのは間違いなく普通ではない。普通の修羅勢でもあと一、二か月は必要なのだがこれも彼らが『沖縄担当』として因果に目をつけられたせいかも知れない

 

まぁ少なくともショタおじの地獄修行で覚醒した上におかわりまでキメたり初っ端から自身の身体を捌いて再生蘇生とやらかしたり何時死のうが仲間達に復活させて貰いながら非常にハードな異界に挑むストロングスタイルにも程がある大馬鹿野郎の集団故に仕方ない話ではあるだろう

 

しかし……それでも彼らにだって本気で嫌なものだって世の中には存在する。それは偶にこの学園内部のトイレや教室などで見られる。いや無理矢理見せられる過去の映像だ

 

 

少女の悲鳴や絶望、穢らわしい(ケダモノ)どもの邪悪な快楽の呻き声、嫉妬と悪意に満ちた哄笑……この学園に封じられている怨霊の記憶の欠片が其処にあった。その内容はとても言えたものでは無いし描写すれば間違いなく人間性を疑われる様な悍ましい内容だったとしか言えない

 

 

「……くそっ」

「……ちっ、穢らわしい」

「……あの名家は滅んで当然だったか」

「落ち着け、気持ちは分かるけどさ」

「……あの怨霊達を救う手段、ないかな?」

「その前に俺たちがちゃんと生き残ることが優先だけど……その考えはナイスだね」

 

 

他の面子からもその幻視の内容……は伏せたが見たという情報が入ってくる。女性陣は皆ブチギレ状態らしく男性陣達も割と嫌悪感剥き出しみたいである

 

他ならぬ翔太達だってそうだからそれも仕方あるまい。そして翔太達が漸く三階に至る階段を見つけた……そして

 

 

ようやく、ようやくメシアンどもを捕捉出来た

 

*1
但しハイレグアーマーの亜種

*2
【カオ転三次】世界が終わるまでのバイク旅より

*3
勿論、これも彼が沖縄行きになる小さな布石の一つとなる

*4
通称ダークゾーン

*5
真1、2、if世代の準公式設定と独自設定のちゃんぽんです





次回辺りで完結出来れば良いですね(願望)
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