凡庸でありふれた転生者達の小話   作:血涙鬼・彼岸

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アビャゲイル氏の新しい天使の蔑称である『穢教鳥』という呼び方が真面目にツボにハマりました。現状でうちのガイア連合の天使嫌い達が使う蔑称としてガチで採用させて頂きます……穢教と書いてメシア教でも有りかも?



第十六話 初仕事 穢教編

 

賢者は歴史に学び、凡人は経験に学ぶ。愚物でも痛みで学ぶ……されどメシアンは何をやっても学ばない

 

穢教鳥(天使)の奴隷人形に何が学べるのか?奴らは脳味噌の代わりに穢れた羽根が頭に詰まった人間モドキかゾンビの出来損ないだから連中に悪事と言い訳以外の真っ当な学習能力が無いのはむしろ当然でしかない

 

(ガイア連合の対メシア教講義での一幕より抜粋)

 

 

見つけたメシアンどもは……どうやら見張り番か何かの様だ。連中にいち早く気付いた裕人に偵察して貰った結果だとだいたい二十から二十五レベルの恐らくは『テンプルナイト』と呼ばれるメシアンの正規部隊が三人、後はだいたい十五レベルそこらの戦闘員メシアンが二人、後は連中が契約している天使どもだろう。エンジェル二体とアークエンジェル三体だし

 

連中はどうやら悪魔には警戒しているようだが人間には全く無警戒に見受けられる。基本的にこの町は殆ど近隣の名家や霊能組織に見放された場所だからかこの場に来れる人間なぞそうそう居ないとたかを括って侮っているからだろう。実際この異界の一階にはこの地の名家からの偵察要員などの遺品や骨などの残骸とかもあった

 

故に裕人の【イルク*1】にすら気付かずメシアンどもは馬鹿面を晒してお喋りに興じていた。裕人の専用シキガミである『影法師』の力で悪魔相手でも見事に気配を遮断し全く気付かれないからありがたい話だ

 

……起動したテープレコーダーやスマホの録音機能片手にメシアンどもの証言を記録したが、これがまぁ下劣な悪事の証拠が出るわ出るわといった有り様だった

 

このメシアンどもの戦闘員二匹がどうやら嘗てこの地が致命的に没落したあの事件の主犯である現悪霊を焚き付けた取り巻き達だったらしい。しかもそこそこ素質は有ったから生け贄にされる責務から逃れる為にメシアンに取り入って『天使人間』と呼ばれるミュータントに改造された存在である事が分かった

 

真・女神転生1、2に敵として出るメシアンは基本的に天使と悪魔合体した元人間の現ミュータントであり、故に作中ではCOMP*2に収納出来る訳である

 

こうやって所属していた名家を裏切りメシアンに尻尾を振る畜生どもは日本各地様々に存在する。純粋な鞍替えからこういう下劣極まりない裏切りまで様々ではあるがまぁどれもこれも碌でもない輩である事は共通点だろう

 

さて、そろそろ連中の下劣極まりないお喋りにはうんざりして来た。先ずはアナライズから奇襲、そして一匹以外は始末してから『インタビュー*3』してから始末する……後で蘇生させてからまた更なる厳しい尋問が待つだろう

 

さて……偵察の結果わかった連中のデータだが、天使どもは全員呪殺耐性なぞ無い通常の天使*4であり、ガイア連合以外ではやはり稀少なのか呪殺への耐性装備は誰も持ち合わせてはいない様だ。木っ端テンプルナイトや通常戦闘員に支給される様なものではないという事だろうか?

 

ならば……裕人が代表して『マハ・ムドストーン』を撒いて一気に根流し*5する事でなるべく負担を軽減する策を起用する事となった。そして次善の策も用意はする、翔太とヴェルが攻撃魔法でドカン!から稟と陽介が生き残りをイテコマース!して制圧するだけだがこういう事はシンプルで良いだろう

 

 

結論から言えばその策は見事に成功し。そもそも呪殺に致命的に弱い天使どもは全て消滅、『天使人間』などという『呪殺弱点』をわざわざ自分の身体にうつした間抜けなメシアンどもは皆踠き苦しんだ表情でこと切れている……先ずは服すら含めた身包み全てを剥いでから尋問する為のメシアンの手足を砕き折った上で荒縄で簀巻きにしてから最低限息を吹き返す程度に蘇生出来る『地返しの玉』を使ってメシアンの一匹を蘇生させる

 

息を吹き返した瞬間から身体に奔る激痛に悶え苦しみながら叫ぶメシアンに先ずは猿轡を噛ませて稟が一回顔面をぶん殴って黙らせる。良く見ればついさっき視た幻視の加害者の一員だったからかなり本気でぶん殴っていたのはご愛嬌だ

 

黙るまで稟がぶん殴ったら続いて陽介がシルバーソードでそのメシアンの頬をぺちぺちと叩きながら冷たい声色で尋問の開始だ。陽介は外見からか一応『不良少年に見られていた』というレッテルがあったのだが……まぁその見てくれを利用してやるまでだ*6

 

メシアンの視界の背後でオーガから鹵獲した大鉈を準備する執事(裕人)、魔法で火を熾す魔術師(ヴェル)、その火で金串を炙るガンスリンガー()、メシアンの頭に水をぶちまけながらもう片手で電撃をバチバチさせる陰陽師(翔太)……既に拷問の準備は整っているとこれならメシアンでも分かるだろう

 

 

「先ずはどうする?ガンスミス?」

「先ずはこいつの指の隙間にこいつをねじ込むのが先だろ八男の?」

「この鉈の切れ味は何時試す?琉球の?」

「股座の悪い疣削ぎに使うから待てや執事」

「聖者の。執事を待たす前に何処から削ぐ?耳か?鼻か?指からか?」

「落ち着け銀剣の。先ずは俺が丁寧に鼻と肋骨砕いてからだ」

 

 

眼のハイライトを消しつつ非常に物騒な台詞を吐きながらメシアン畜生に迫る六人。ルカとシアは情操教育……修羅スケジュールで鍛えているけどやれる情操教育はやっておきたいと翔太と創の意見に賛同した一同によりスパルトイ達を従えての見張り役を務めて貰っておいた

 

……実際には単なる演技だが、非常に迫真に迫る恐ろしさと悍ましさ、そして『必要ならヤる』という覚悟が見えてくるし実際にヤる覚悟や腹積りは出来ている

 

彼らは死なら何時経験したかもう既にわからないし、ショタおじの古今東西のありとあらゆる拷問より酷い修行に加えて多少の格上や同格を実戦的模擬戦で殺し殺され更に『絶対に思い上がらない様に』と格上の修羅に更に何度も何度も殺され偶に目にもの見せてまた激しく殺される実戦より過酷な模擬戦浸りとやはり命懸けの異界探索、そして次は座学実技座学実技あと技術系バイトと短期間しかないからと特濃修羅ライフを送ってきた見習い修羅である彼らに最早拷問への忌避感なぞ既に麻痺している。突貫工事で修羅と化した者達にはよくある副作用と言うか最早精神汚染だ

 

それでも未だ幼い生体系シキガミ達にはなるべく真っ当な情操教育をと考える辺りの倫理観はちゃんと残ってはいる辺りやこの反応を起こすのが『本当の外道』に対してのみである辺り、そしてそれでも残る『今は演技で済ませる』という倫理観ストッパーがしっかり機能している辺りも見て彼らは本当に善良な者達であると分かる

 

それに加えて『悪魔も人間も皆等しく殺せる気概や度胸』もきっちり備わっている辺りも彼らが高評価な理由の一つである。彼らが常に真なる修羅達に相手にされているのもそう言った人間性の良さと礼節から来る見どころがあるからだ

 

そして今名前をコテハンという適当な渾名や自分の簡単な特徴で適当にそう名付けたり様々あるがまぁガイア連合固有の名前隠しである……この業界では基本的に本名や個人情報は必ず隠すべきである為こういう偽名でこの稼業を行うものだ。本名を隠さずに行動する者なぞこの界隈では一部の調子に乗った馬鹿なメシアンぐらいだろう*7

 

その脅し……この業界で拷問すらされずにこの程度の可愛い脅し程度で口を割るなぞ恥以外の何物でもないが、それでも簡単にベラベラ喋り散らす辺りメシア教という組織も決して一枚岩などではなくこういう役立たずや白蟻だって一定数は存在する事が分かる

 

その情報を録音付きで聞いてみると……何とも不快な『真相』が浮かび上がってくる

 

 

1:件の事件(この学校で嘗て起きた忌まわしいあの事件)の実質的主犯がやらかした事から逃げてメシア教に入信する。むしろその事件で沢山の木っ端メシアンどもも『御相伴』に預かっていたらしい

2:事の顛末による結果と内部の腐敗や驕りによりこの地の名家が致命的な没落を迎え、この一帯がほぼおしまいな状態に成り果てる。現状ではメシア教にもほぼ旨味なぞない塩漬けなので殆ど放置される

3:この辺り一帯を管理するメシア教高司祭がやらかした汚職他多数の悪事がバレそうになって来た為証拠隠滅にこの地の封印を解いてその混乱に乗じて……というマッチポンプ計画が立案される

4:その高司祭の子飼いである汚職テンプルナイト達を使ってこの辺り一帯を荒らし倒しながらこの地区の名家を乗っ取りその最後の財貨を強奪して小遣い稼ぎに興じる予定

5:『主犯の馬鹿女』を子飼いのイケメン詐欺師に籠絡させてから始末、そして悪霊に堕としてイケメンの手練手管で操って辺り一帯を荒らしまくる。あの女は悪霊になってすら愚かだったから楽だったらしい

7:副目標である財貨乗っ取りを留守番役に任せて主目標である『この辺り一帯の大規模オカルトハザード発生』を実行する為に昨日からこの異界に潜入して今に至る……

 

 

何とも胸糞悪いあらましも有ったものだ、この件はセツニキもびっくりの超ド級大ハズレの糞オブ糞案件だと判明した

 

あの名家は確かに救いようの無いクズだったが一応の自浄能力を見せてはいる……引き起こした事態はその自浄能力を遙かに超えた大惨事ではあるがその自浄が無ければ辺り一帯が大規模オカルトハザード沙汰だったからまぁあの家の生き残り達には多分幾らかの温情が与えられるだろう

 

そして問題はメシアンどもだ……こいつらは基本的に何をやらかしても一切合切反省などせずに穢教鳥*8の譫言を繰り返すだけの痴愚どもであり、『理解』なぞ到底不可能な人間モドキだと今この場で彼らは理解した

 

前世で真・女神転生1、2をプレイしたり、二次創作でメシア教の悪事を見たりはしてきた者もこの中には居る。前世知識には無いがこの世界でメシア教のきな臭さを嗅ぎ取った者もいる。全員ちゃんと『メシア教の危険性と邪悪さ』の講義講習はしっかり履修済みだ

 

翔太の場合はそれこそ山梨に来た理由が『我が家の近所にあるメシア教』を知覚した結果完全に前世の記憶を取り戻したからだったりするから本当にこの場所とその余りにも悍ましい顛末やその吐き気を催す結末を見て心胆が凍える様な恐怖を感じる。『百聞は一見に如かず』とはよく言ったものだ

 

今更ながら『我が家の近辺にそんな悍ましい白蟻の群れが居た』という事実に目眩すら感じるが……今やるべき事は一つである

 

 

「すまない、連理ニキに報告したい事が出来たから今そのガイアフォンに送ったデータを見て欲しい」

 

『……これマジか?幾らエンガチョ名家枠とはいえ此処まで酷いケースはそうそう見たことも聞いたこともないな。他チームには連絡したか?お前たちはキノネキに連絡してくれ、俺はアーッニキチームに繋ぐから頼むぞ』

 

 

そんな会話をこなしながら翔太はキノネキチームにデータを送る……するとデータ録画時間から丁度のタイミングで破魔ネキからの着信が入ってきた

 

 

『琉球ニキ、このデータは本当ですか?この情報を吐いたメシアンどもは確保していますか!?』

 

「大丈夫だ破魔ネキ、これからまた死体か達磨にでもしてから持って行く予定だ。ちゃんと後で唄える様にだけはやっておくさ」

 

ごきゃっ!

 

 

 

何か硬いものをへし砕く様な物音が聴こえた。まさかあの新人達がメシアンの頸骨でも砕いて黙らせたのか?最初はそう思ったがそれから直ぐに激痛に悶え苦しむ男のみっともないくぐもった呻き声が聞こえる……あの面子の誰かがそのメシアン畜生の股関節を股間ごと蹴り砕いた音だと後に教えて貰った

 

……あの六人は割とバイオレンスな一面もあったんだな?でもメシアン畜生を潰すのは真っ当な我々(俺たち)ならむしろ善行じゃないかな?と真面目に思う破魔ネキだった。いや何と言うか今非常にメシアンや天使に対する嫌悪感と憎悪が煮え沸る気分なのだ。まるで平行世界か何かで身内友人の人生尊厳を踏み躙られ、自身もメシアン畜生や穢教鳥の腐ったポークビッツ*9で凌辱されたり糞穢教鳥*10と無理矢理悪魔合体させられたりといった悍ましい記憶が断片的に流れ込んで来たかの様に

 

後日、実際に彼女の嘗ての友人の悲惨な末路から真のアンチメシアンとなった事は一つの余談ではあるが……少なくともこの世界軸の彼女は『本来の世界』よりも更にメシアンや天使に対して塩対応になった事は言うまでもないだろう

 

閑話休題(それはさておき)

 

悶え苦しみながら暴れ……られずにジタバタ踠くメシアン畜生が煩いので今度はヴェルがムド一発で黙らせてから小休止、そして恐らくはこの事件の黒幕であるだろう『高司祭』なるメシアン畜生の親玉が居る筈の推定屋上への階段を見張りながら仲間達の合流を待っている翔太に向かってルカが話しかけてきた

 

 

「……今の話ではっきりと、何故マスターや他の皆様がメシア教や天使を嫌悪しているのかがはっきり分かりました」

 

 

……あの悪霊の巣でルカが問うた言葉へのある意味非常にわかりやすい回答が他ならぬメシアン畜生が答えた現状。肉体や精神の設計年齢は二十歳手間のハイティーンではあるが未だ産まれて一月足らずの彼女に見せるには余りにも情操教育に悪すぎる事件ではあるが、まぁこの現世と地獄が地続きな女神転生世界で清らかなまま生きるのはとても幸せなことである事は間違いないだろう

 

少なくともルカや今は創の肩に乗っかるシア、他にもそれぞれが装備する器物型の彼らはその地獄の片隅に生きる黒札(俺たち)に付き添う為に産まれたシキガミという生き物だ。決して清らかなまま生きる事は不可能な生まれではある

 

それでも未だもう少しだけ幼い彼女にはなるべく優しい世界に居て欲しかった……まぁそれも翔太の抱えるエゴであるが、それでもエゴはエゴなりに自分自身の為だけに産まれてくれたこの生命(彼女)の為にやれる事はやってやりたかった。それが自身の求めた理想の恋人への想いなのか?それとも自身の身勝手なエゴで生み出してしまった哀しい生命()への想いなのかは今の翔太には未だわからないが

 

それでも今の翔太でも分かる事はある……

 

 

「……そうだな、今お前が見て聞いたものがメシア教や穢き…いや天使の真実で本性だ。余りにも穢らわし過ぎて口にするのも憚る様なものだ、未だ生まれたばかりのお前には見せたくはなかったんだけどな」

 

 

そんな翔太の不器用な気遣いを理解出来たルカは静かに翔太の手を取りこう返す

 

 

「……ふふっ、これでも私は専用シキガミの端くれですよ?私は貴方の為の花嫁であり相方でありいざという時の盾たる存在です。貴方の視る穢れも幸いも全て一緒にですよ?私は貴方の往く地獄の果ての果てまで永久に共に赴き魂が砕け尽きる時まで共に歩む生き物なんですから」

 

 

何処か戯けた様な口調で……いや、眼は真剣にそう告げて来るルカを見て翔太は少し己に恥じてしまう。ルカはもう産まれたての幼い被保護者ではなく共に永久を歩む相方である事を理解出来た。最早翔太が庇護するだけの存在ではないという事か

 

なら言うべき事は一つだろう

 

 

「なら……ルカよ、我が永久の花嫁よ。俺の往く道を共に歩む我が相棒として末永く宜しく頼むぞ!」

 

「幾久しく。貴方の御元に」

 

 

これで翔太とルカの本当の契約……真の相方としての契約は成就した。周囲でによによ眺める同胞達や喜色満面でぷいぷい鳴く可愛い仔兎は無視しながら、だが

 

こっそりスマホで撮影されていたり後々偶にこの件で揶揄われたりもするがまぁそれは良いだろう。何時かはこちらも揶揄い返すだけだ

 

それに……そろそろ他の仲間達の気配と足音が聴こえて来る。皆が揃えば今度こそこの呪われた町の厄災に引導を渡し哀れな二人の犠牲者の魂を救ってやる時である

 

*1
幻術系魔法の一種。使い手の姿を消す透明化魔法

*2
悪魔召喚プログラムをインストールしたコンピューターの総称

*3
ガイア連合では尋問の事を良くこう表現する。元ネタを知らない彼らも釣られて何となく使ったりする。出典は勿論ニンジャスレイヤー

*4
ソウルハッカーズ基準

*5
川を堰き止めて毒を流して魚を獲る禁止漁法。天使メシアン狩りなら問題なし

*6
ちなみに、その容姿と母子家庭である事からか彼女さんの両親とは折り合いが悪かった

*7
基本的に数の暴力、その宗教キチ◯イぶり、疫病神っぷりからどの界隈でもエンガチョだから誰も関わりたがらないし関わるだけ損な存在である……当然だが方々から莫大な怨みを買っているから復讐の機会を虎視眈々と狙う者は星の数ほど居るが

*8
ガイア連合アンチメシアン過激派が天使を呼ぶ際の蔑称。アビャゲイル氏の作中提言から採用

*9
非常に小さいソーセージ。要は『ご立派様の対義語』

*10
ガイア連合アンチメシアン過激派が大天使を呼ぶ際の蔑称。やはりアビャゲイル氏の作中提言から採用

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