『メシアン辞めますか?それとも……人間、止めますか?』
(あるメシア教徒に突き付けられた最終警告より)
「では、お気をつけて」
緑色の制服を身に纏った三つ編みの妙齢の美女……事務班筆頭であるの『俺たち』の一員である女性の綺麗な声を背に彼は意気揚々と受付カウンターから立ち去る
「ようやく俺も……これでどうにかなるだろうかな?」
彼は何者で今が一体どういう状況かはやや冗長かも知れないが一つ遡って話をする事にしよう
彼はこの『ガイア連合山梨支部』に所属するこの地に集う資格を持つ者達の間でもごく一般的かつ平凡な……それでも少し運に恵まれた方ではある『ごく普通のありふれた俺たち』の一人である
前世も今生も比較的ありふれた普通の人生を歩んでいたが、近くの教会を見て『メシア教』の存在を知ってしまった事で朧気だった前世の記憶を完全に取り戻し……我が家の付近に存在する、いや『女神転生というゲームの負の名物であり現実には存在してはいけない、余りにも悍まし過ぎる淫祠邪教』の存在に恐怖する事となった
メシア教……詳しい説明は何れ行うだろうが今はこれだけ覚えておけば良いだろう
『とある世界的宗教の皮を被ったショッ◯ー』
とでも言えばだいたいの説明は付くはずである。要するに世界的宗教を乗っ取った(吐き気を催す邪)悪の秘密結社といった具合だろう。少なくとも女神転生というゲームの世界でメシア教を簡略に説明するならこう言った方がわかりやすいと私は思う
……少なくともこの世界のメシア教は昭和版◯ョッカーからすらも『一緒にすんな!』とか『馬鹿にしてんのか!』とガチで怒られるぐらいには邪悪な、いや醜悪下劣な宗教団体?いやむしろ宗教団体を気取るテロリスト集団なので先ず今回の主人公である『彼』の危惧は正解も正解だった事は念中に入れておいて欲しい
そんな悍ましい宗教団体が我が家の近所に存在するという事実に恐怖した彼はなんやかんやでこのガイア連合の存在を知り……まぁネタバレすれば件のメシア教会の調査に来ていた傷だらけの巨漢*1とスレンダーな金髪美少女から色々教わる事が出来た
……刃牙、読んでて正解だったな
転生者らしくその姿を見て反応したら『ご同輩』だとわかってあれよあれよと必要な情報を楽に入手出来たのは行幸ではある……家の近所にメシア教という不幸に見合うかは今は未だわからないが
そんな経緯で山梨方面の富士山ルートから向かえる星霊神社の門戸を叩いて修行僧*2になる事に成功したが、曲がりなりにも普通の学生では何年何ヶ月と修行は出来ないだろう
普通の転生者ならばこの神社でまぁ数年ぐらい住み込み修行すればだいたい『霊能の覚醒』に至れるだろう……尤もこれは『霊的に非常に高い素質を内包する
普通ならそれこそ一度は臨死体験するぐらいの怪我を負うか酒なり薬物なりで正気を失うぐらい激しくバッドトリップするか最愛の存在を理不尽かつ惨たらしく喪うなりして漸く可能性があるといったぐらいだろう……はっきり言えば今挙げた方法でも非常に低確率であるが*4
一番手っ取り早いのは悪魔に遭遇するなり『悪魔が存在する異界に放り込んで脱出させる』といった頭おかしい自殺紛いの荒業に手を出すなりだろう……充分な準備対策無しでそれをやってちゃんと生きて脱出出来るのは千人に一人でも非常に良い方の確率であるぐらいには危険な行いなので今の日本では先ず行えない手段である、と言うかガイア連合だって普通は先ずやらない方法だ
基本的に『霊能の覚醒』というものは出鱈目かつ狂気の沙汰みたいな事を何度も繰り返し行って漸く可能性が芽生えるぐらいに難しく苛烈な試練……少なくとも現地民の基準ではそうなっている。それこそこの星霊神社で行われている(現地民基準では)緩すぎる通常修行では先ず生涯掛けても覚醒の『か』の字すら見えはしない
現地民……特に『名家』と俗称される日本の霊能に纏わる一族は後に述べる事になるだろう『とある事情』で才能ある者はほぼ全員喪われており、むしろ霊能に無縁な一般人の方が霊的な素養を持っているという悲惨な有り様だと『彼』はあの疵貌の益荒男から幾らかの情報交換で聞いている
疵貌の益荒男……仲間内では『霊視ニキ』と呼ばれるこのガイア連合の幹部であり反メシア教主義のタカ派として名高い豪傑から得た情報やこのガイア連合の専用ネット掲示板を簡単にROMって調べた結果分かった事柄である
これまたそんなこんなでこのガイア連合の総本家であり日本最大最高の霊地である『星霊神社』でのオフ会……という名の連合加入手続きや修行、外部では先ず入手不可能な強力なアイテムや装備、そしてローンはかかるがこのガイア連合固有にして最大の特徴である『シキガミ』が入手出来る
このシキガミなる珍妙不可思議かつガイア連合の能力を強く深く印象付ける存在には心が踊る……霊視ニキの連れていたあのスレンダーな美少女が実はそのシキガミそのものだとは言われるまで気付かなかったが、どう見てもあれは人間にしか見え?いや人間にしては整い過ぎてまるで動くミロのヴィーナスに遭遇した様な気分にもなった気さえする
色々な前世のフィクションにある美男美女の再現……だけでなく可愛い動物やロボットの人間に近いサイズではあれど再現、中には何らかのアイテムデバイスの再現だのと様々な用途やその作品再現などの為に活用されていたりすると聞く
聞く話だとシキガミはこのガイア連合の盟主である『神主』の作品らしいのだが最近では製造工程を分業化したり作成に必須の秘法を習得出来た有志達のおかげで非常に人間に近い造りのシキガミ達が覚醒に成功出来た俺たちに『最初の一体だけなら』という条件は付くが非常に安価かつ優しいローン有りで購入可能となっているそうだ
言い忘れていたが残念ながら?いやむしろある意味ありがたい話かも知れないがこの世界には女神転生を女神転生たらしめる最重要アイテムにして最悪の危険物である『悪魔召喚プログラム』は存在していないという話だ
世界観次第かつその仕様次第ではあるが……もしもデビサバ仕様みたいな誰にでも使える上にばら撒けば無差別テロだって簡単に出来るタイプの仕様だった日には即時この地球があぼんだろう
デビルサマナー仕様の素質のある者にしか使えない仕様でもやはり危険ではあるがまぁ未だその辺りで済むならマシな分類である。少なくとも危険なサマナーのマークは未だ比較的やりやすいだろうから
ちなみにガイア連合有志一同がこのプログラムの開発や再現に着手してはいるらしいが今のところそれが成功したという音沙汰は無くむしろその悪魔召喚プログラムを走らせる機体*5や補助プログラム*6などはこの時世になるべくパソコンを普及させる為に尽力した富豪や起業家な俺たちの尽力の副産物もあってこの世界では昭和の時代でもパソコンは普及し始めていたし今ではガイアフォンという名ではあるがスマートフォンが販売されているぐらいだ
その悪魔召喚プログラムの代わりにはなるのかならないのかは別として我らが盟主……本来の悪魔召喚術を操る本当の意味での悪魔召喚士が授けてくれた奥義こそがガイア連合最大の特色の一つ*7だと言って過言ではないだろう
一応、高レベル限定の管狐や他にも最新技術ではあるがアガシオンと呼ばれる欧州魔術の魔女や魔法使いが操る使い魔を扱う事は出来る。シキガミと比べれば力量も拡張性も才能限界も足りない急造品ではあるが手数を増やしたりシキガミ購入前に鍛えながらシキガミローンの頭金稼ぎのお供にしたりと以外と使えるとの噂だ
……シキガミよりよっぽど安いというのも新米転生者には魅力だとも言えるが『
そう言えば掲示板を見た時に偶に書き込む『運営』からのコメントによれば『シキガミや装備の代金はマッカ払いにしてくれ、通常貨幣払い多すぎ!』といった愚痴が多かった気がする
マッカとは、『魔貨』とも『魔っ貨』とも書き土星のマーク『♄』が象嵌された一見変な金貨に見える、いや金貨でもありエネルギーの結晶体でもある不可思議物質である。魔界から発行された悪魔の貨幣でありこのガイア連合でもシキガミ製造や装備の作成、シキガミの維持など様々な使い道があるので運営側も魔貨確保に血道を上げているとか?
一応、日本円でも購入は出来るらしいが運営やシキガミ製造班が良い顔しない上に順番が遅くなりやすくなるからちゃんと魔貨払いで支払う方が無難だろう。彼らはシキガミの製造には決して手を抜かない、抜かないからこそ素材が足りない場合は素材持ち込みをちゃんと行ってくれる方が優先されるのは当然の事である
今までの話を聞いて様々な感想が頭のなかで出てくるが、一番強く思うのは一つだ
『シキガミって……まるで現代のピュグマリオン*9とガラテアの逸話みたいな話だな。フィクションのヒロインや妄想の中の理想そのものが妻になってくれるとかどんな奇跡だよオイ』
勿論、権利はあるからと言って『現代に起こせるピュグマリオンの奇跡』を起こさなくても良い。家庭がある場合はペット型やデバイス型、中には最初期デザインである一反木綿型にしているパターンも居るらしい
学生という身分ではあるが両親が単身赴任で今一人暮らし彼は……勿論、理想の美少女型シキガミにする予定である
……それに手を伸ばす為に、そして少ない時間でなるべく早く覚醒する為に神主が直接行う『ハードコース』を受講することにした、家の近くにメシア教が居るとか怖くて仕方ないという理由もあるし
……そして彼はその判断をこれから直ぐに心底後悔する事となる。それはそれで俺たちが良く通る道の一つではあるだろう