凡庸でありふれた転生者達の小話   作:血涙鬼・彼岸

25 / 62

ある程度プロローグに至る道程を描く為少しだけ時を巻き戻しますー


第一話 俺たち、沖縄に立つ

 

Q.「メシア教にもガイア連合のような言論の自由があるって本当ですか?」

A.「ええ、原則としてその通りです。ガイア連合の山梨本部の前で『ショタおじいつかぶっ殺す!』って叫んでも罰せられないのと全く同じように、メシア教カテドラルの前で『くたばれガイア連合』って叫んでも罰せられません」

 

 

Q.「メシア教にもガイア連合のような言論の自由があるって本当ですか?」

A.「ええ、原則としてその通りです。ガイア連合の山梨本部の前で『メシアンも天使も四文字も皆死ね!』って叫んでも罰せられないのと全く同じように、メシア教カテドラルの前で『くたばれガイア連合』って叫んでも罰せられません」

 

(ガイア連合式メシアンジョーク集の一節より)

 

 

ガイア連合沖縄支部……ある意味非常に希少な経緯で設立されたガイア連合支部として有名な支部である

 

 

沖縄とは()()()()()()()()()()()()西()()()()()()という危険性を孕んだ危険地帯という極めて厄介な特徴を持ち、対処しようにも『とある人員』と同時に現れるその人員と相性の良い仲間達が現れるまでどう足掻いても殆ど対応不可能という予言が付いたガイア連合首脳部を悩ます塩漬けられた時限爆弾だった

 

ガイア連合も沖縄に存在する日本最大最悪の大異界【銃火暴風怨嗟域】はあのメシア教が総力を集結させてすら何度も壊滅し……いやむしろ『大火事にガソリンを撒き散らす』様なマイナスの結果をこれでもかというぐらいやらかした果ての悪夢難易度異界である

 

その内部はだいたい沖縄本島そのものであり。瘴気による圧倒的曇天のなかで常に地獄の業火が吹き出し、銃弾の霰や呪詛の雨、爆弾による爆風が吹き荒れるのが普通という最悪の天変地異がアトランダムに発生し、時にはそれら全てが同時に発生することだって珍しくない

 

様々な兵器の瓦礫が大地を埋め尽くし、その中から亡者の群れが這い出てくるし『戦争』という概念に関わる悪魔が無数に現れて永劫に互いに殺し合う戦場の狂気を如実に体現した様な光景が広がっている、勿論足場は最悪で瓦礫雪崩はしょっちゅう発生するしその様々な状況から来る悪臭は最早形容し難い酷さだ。生半可な霊装では一回この場に来ただけで最早その霊装がオシャカになる程だと言えばその酷さが理解出来るだろうか?

 

出入り口は沖縄県の何処にでも『入り口』が発生する……しかし『出口』もランダムであり大概は入れば死んで魂をこの異界(地獄)に囚われ亡者の仲間入りという末路を迎える。故に力量高い霊能者が入っても大概は亡者や悪魔の物量、そして地獄同然の酷環境にひねり潰されてその悪魔達の空腹を紛らわすおやつになっておしまいだ

 

その物量に挑める霊能者を用意しても様々な厄災を与える『飢餓の呪い』や魔術を封じる『方言札の呪い』がその霊能者を蝕んで様々な悪魔やこの異界のギミックにすり潰されておしまい

 

数を頼りに挑んでもやはり『方言札の呪い』で意思疎通を封じられ、戦争に特化した悪魔達の奇襲や罠であっさり魂を刈り取られて連中の仲間入りというオチが付く……メシアンどもが正にそれだ

 

その無尽蔵に湧き出して来るかの様な残骸を退かしてこの呪いを断ち切る為に必要な様々な呪物を……襲い来たる悪魔の群勢や厄災的な天変地異を抑えながら回収、破壊しながら沖縄本島同然の地形を宛ても無く彷徨う。これが【銃火暴風怨嗟域】という異界だ

 

しかし……こんな地獄が現世に顕現したかの様な悲惨な異界に挑む六人の強者達が現れた

 

 

『ガイア連合沖縄支部』である

 

 

前世も今生も生粋の沖縄県民にして電撃使いの沖縄支部支部長『比嘉 翔太』こと『琉球ニキ』

長身で身も心もイケメンのステゴロ聖人系ペルソナ使いな幹部一号『土見 稟』こと『聖者ニキ』

ガンスリンガー兼ガンスミスという外見可憐な男の娘な幹部二号『南雲 創』こと『ガンスミスニキ』

一流執事にして忍者戦士、このチームの目にして感覚器官たる幹部三号『綾瀬 裕人』こと『執事ニキ』

凄腕魔法使いにして土建と料理の達人、俺たちなら珍しい外国出身の幹部四号『ヴェンデリン=バウマイスター』こと『八男ニキ』

俺たちでも非常に珍しい『メガテン原作持ち』な俺たちである魔剣士にして幹部五号『三浦 陽介』こと『銀剣ニキ』

 

 

以上、この色々な意味で縁も纏まりもない筈の六人に沖縄……ひいては西日本の運命は託された。まぁ全員魂は間違いなくイケメン揃いなのでなんだかんだで頑張ってくれてはいる、そんな六人が大人の階段登ったり、親と修羅場って和解したり、一日の楽しいデートから地獄巡り真打ち体験したり、運営から今度は書類地獄講習に強制ご招待されたりと少しだけど大きな幸せと様々な逆境を踏破して夏休み終了から直ちに沖縄の最初の拠点の地を踏んでいた

 

 

「……空気が綺麗だな」

「綺麗な青空だな」

「美しい自然だ」

「……だけどさ?」

「山奥じゃね?此処」

「北部の割と奥地だしな、しゃあない」

 

 

一見すれば七人と一羽の彼らが先ず通されたのは……自然豊かな沖縄本島北部の農村国頭村の中にある割と広い宿舎代わりの民家、先ずはこの辺りに発生する通常異界の掃除と現地妖怪との交渉からである。嘗ては再起不能になっていた琉球ニキの両親が行っていた沖縄妖怪との交渉事を継承するという事だ

 

その代表的な妖怪は乳の親(ちーのうや)という姑獲鳥や飴買い幽霊の様な性質を持った妖怪であるが、幼児の死を感知する死神めいた側面を持つ妖怪である……あと、何気に爆乳美女の姿で現れたりするのが特徴だろう

 

その異界はだいたい評価レベルは15前後の彼らからすれば眠たいだけの場所である……お散歩気分ですぐに平定に成功して後は乳の親と対話。翔太を見て比嘉夫婦(前任者)の息子だと分かり、いやそれ以前に嘗ての前任者よりも更に強い霊気を放つ六名もの益荒男達を見て力量差を正確に理解する。そして嘗ての様なちゃんとした契約を、いやむしろガイア連合に配慮した契約に直して再契約となった

 

全員あのショタおじによる非常に厳しい悪魔召喚士資格試験の合格者なので乳の親ともちゃんと……いや、そもそも乳の親自身も普通に人語を話せるタイプの妖怪なので特に問題なく和やかに対話は終わった

 

その功績で沖縄名家は翔太達を認める算段を見せ始めて来たので次の日は……件の【銃火暴風怨嗟域】に向かって少なくとも生還して来る事で実力を示す事となる

 

 

……やや甘かったか?この異界は非常に厳しいとは聞いていたがまさかこれほど悲惨な代物だとは思いもしなかった。特殊な承認を受けた修羅勢だけが入場可能な『星祭神社』に所属する修羅達が愛用する作業着型霊装と修羅Tシャツを替えや予備の分貰って本当に助かった。嘗ての一張羅霊装は修行で直せないぐらいダメージを受けて新しい霊装予約をしている最中の話だった

 

確か、霊視ニキが調査に来ていて相方のモードレッド共々装備が汚れて難儀したとの報告をしてくれたおかげだとは聞いている。沖縄名家はそれこそ簑にクバ笠と呼ばれる江戸時代辺りの使い捨て雨具型霊装を用いてどうにか本来の霊装を補強したりと色々涙ぐましい努力と決死の覚悟でこの地獄の調査や探索、迷い込んだ犠牲者救助などを勤めていた

 

今の霊装である『株式会社琉球ガイア建築』と胸ポケットに刺繍された作業用ブルゾンにやはり作業用カーゴパンツ、服の下は『修羅』に『山梨』とプリントされたTシャツにトランクス型下着霊装、後は作業用ヘルメットとしてあの海豚が横で跳ねている様な悪趣味かつダサ過ぎる変な兜をわざわざライト付きヘルメット仕様に手直しした作業用ドルフィンヘルム、後は臭気や粉塵対策になる極地用使い捨てマスクやゴーグルといった揃いの霊装姿となっている

 

ちなみに刺繍は一応ちゃんと存在しているつい最近沖縄に立てられた新規建築会社のものであり、彼らはそれに擬装して沖縄中を駆け巡る予定となっている

 

ドルフィンヘルム……いやドルフィン安全帽以外の全ての装備には清潔化や快適などの追加効果があるので万年着たきりでも非常に快適かつ清潔に過ごせる逸品だが基本的にこれらはコスト以前に着用者のレベル制限で生半可な霊能者には扱えない強力過ぎる霊装である。それこそ現状で装備出来そうなのが、近くても鍛え直した土見夫妻、間宮夫妻、あとは翔太の父ぐらいだろう

 

通常の、この霊装に耐えられるレベルには至っていない者達はその廉価版である洗濯機洗い可能な霊装作業着セットなどが支給予定である……着用者を護る為に耐久性を高めたり火炎や銃耐性を付与した低レベルだが間違いなく現地民基準ならば神装備だと言って良い代物だ

 

これはあの日に沖縄支部に加入してくれた者達全てに提供された装備一式であり、その性能の素晴らしさから傘下に入った沖縄名家や霊能組織から常に注文が殺到する事となる。後にあの異界を解放した後も異界内部を利用した起業の際にも重宝するガイア連合沖縄支部のユニフォームとまでなる装備一式となった

 

この異界では現状はっきり言って儲けは碌に期待出来ない。一日丸ごと沢山の悪魔や亡者をぶちのめしても出たのは錆びた軍刀に数枚の魔貨、あとはいわゆるクズ魔石が少々と非常に渋すぎる成果しか挙げられなかった。普通の異界ならばもっと沢山の魔貨や今の彼らでも使えるそこそこ上質の魔石にフォルマだって出てくる筈である。普通ならこんな異界攻略しろと言われてもこれでは飯の食い上げだろう

 

後は空腹になる呪いや治癒の力が低下する呪い、そして発話や魔法行使を封じてくる呪いと様々なデバフが恒常化しているこの酷い環境内で彼らは戦ってゆく事になる。一応今は沖縄名家や霊能組織がメシア教の目から彼らを秘匿してくれているので今はまだメシア教に関わらずに済むがそれも時間の問題だ

 

彼らは先ず、現状でこの異界にどう挑むかを夕飯の席で話し合う事にした。沖縄の豆腐入り炒め物こと豆腐チャンプルー、アオサの味噌汁、取れたての沖縄鮮魚の刺身に……こっそり差し出された沖縄メーカーのビール(麦ジュース)般若湯(泡盛)に舌鼓を打ちながらの会話だ、この六人何気に酒癖が悪いが節度ある呑みかたが好きな辺りは救いだろう

 

まぁ、先ずはあの辺りを調査して発掘したり拾い上げた『方言札』と書かれた木の板や頭蓋骨といったあの中でも異様に綺麗なものを幾つか拾って帰ってきた件についてである

 

これらに関しては明日沖縄入りする比翼連理夫妻と協力して解析予定ではある……そして問題は様々に挙げることが出来るから箇条書きで互いに挙げてみる

 

 

「あの異界じゃ声が出せない、てか魔法の発音が禁じられている辺り厄介過ぎる。無詠唱出来なかったらマジで魔法使い系は詰むぞあそこ、無詠唱出来ても威力目減りするけどな」

「後、沖縄の霊能組織の人たちが言っていた通りやたら異様な空腹と喉の渇きに悩まされたな。ショタおじの地獄修行受けてなかったら先ず一時間と耐えられないレベルで」

「あのレベルの悪魔にしては異様に頑丈じゃない?銃弾を余計に使う羽目に陥ったよ……新人達にはガイア銃で援護とか考えたけど最低限レベル20は無いと只死にに行くだけだよこの環境は?」

「持って来た食糧が沖縄霊能組織の人たちが用意してくれた握り飯と水筒、あとガイア連合製以外は全て来た瞬間に腐ったり、持ち込んだ魔石が役に立たないわ宝玉でようやく魔石程度の回復になる辺り厄介過ぎないか?」

「あそこは熱い臭い汚いおまけに空気に鉄粉やら何やらが混じる上に足場最悪でしかも様々なろくでもない天変地異が吹き荒れる正に地獄なんだよな。良く沖縄名家はこんな悲惨な異界から沖縄を護り続けて来たもんだ」

「沖縄名家の方もお義父様やお義母様を筆頭に沢山の方々が再起不能状態でしたし、亡くなった方も多数居るとの事です」

「いや、一番問題なのは……この異界に実入りは全く期待出来ない超絶赤字案件って辺りだと俺は思うんだ」

 

 

最後の八男ニキの言葉に残り六人とテーブルの上でフルーツを齧る仔兎が頭を振ってその意見に肯定する

 

先ずは何は無くとも何かやるなら軍資金が必要だ。彼らもオカルト社会でもまあまあの小金持ちではあるし、ガイア連合の支援はその辺りを見越して手厚いものになってはいるがそれでもガイア連合頼りだけは駄目だ

 

先ずはこの沖縄でどう最低限自活する手段を得るか?という議題で語り合う事となった。既に酒気なぞ完全に抜けきりルカが淹れてくれた酔い醒ましのガイア茶を飲みながら彼らは真剣に語り合う

 

ハブ狩りでもしてハブ酒量産だのといった小市民丸出しの内職案から、終末に備えた砂糖量産、似た気候の胡椒やカカオ、コーヒーの生産体制確立だのと遠い未来に備える沖縄の地位確立案まで様々な意見が出た

 

まぁ、今出来るのは琉球ニキの魔法石内職や八男ニキが最近使える様になった移動魔法と収納魔法の組み合わせで密輸課バイト兼任しての出稼ぎぐらいしか現状外貨獲得手段が得られないだろう

 

出稼ぎなら聖者ニキなら常時ほぼ単騎で過酷なペルソナ使い専用異界タルタロスに挑むハム子ネキ*1の仲間募集依頼を受けてこの沖縄異界とは別の意味で地獄の最前線に挑んだりするのもありだろう。むしろハム子ネキの凄まじい軌道に耐えられるどころか割と真面目に付いて行ける聖者ニキを沖縄支部から引き抜けないか?とペルソナ使い俺たちの間ではそんな意見が上がっているらしい

 

ちなみに……その意見を出した者達を後日『多少はマシになった沖縄異界』に挑ませたら全員が沖縄支部に泣いて詫びを入れて来たりもしたものだ

 

一応、礼儀も良識もある優秀な傭兵は日本各地の地方防衛俺たちにとって非常にありがたい存在ではあるが彼らの雇用は割とお高い基準になってしまうので呼ばれるのは割と沢山ではないがそれなりにリピーターが付く優良傭兵という評価が付いたのはありがたい話である

 

それらをしながら山梨本部内部の異界で出稼ぎもしたりしながら最初は自転車操業でどうにか資金や予算を稼いでその結果で【銃火暴風怨嗟域】の攻略に宛てたり雇う配下の給与などを準備する

 

そんな風に資料や電卓と睨めっこしながら未だ暑い沖縄の夜を過ごした……そしてその会議を終えて今度は普通に酒盛りから心地よい眠りに落ちたその夜

 

 

『……希望、よ』

 

 

何かの声が聴こえる、誰の声かはわからない

 

 

『……私達の、最後の……』

 

 

暗闇の中から徐々に大きく聞こえるこの声は?

 

 

『わぁ、の、声を、最後の力を……』

 

 

闇の中から一つの光が現れる。その中に一つの虹色に輝く勾玉の様な物体が見える

 

その『勾玉』は『俺』の身体にするりと入ってゆく。とても暖かくて心地よい『それ』が何なのかはわからないがこの安心感が非常に心地良……

 

 

「いやこれ悪魔に何か干渉されてないかッ!!!?」

 

 

大声を上げて飛び起きる。隣には愛しき(ルカ)の艶姿……程よく呑んで自室にてルカを抱いて眠っていたが、あの夢は一体何だったのか?

 

琉球ニキの突如上げた大事に眼を醒ましたらしいルカも慌てて飛び起きて来たが、今ふと気付いた右手の違和感に戦慄する

 

 

右手に何かを持っている。それをよく見て見れば……先程の夢と同じ勾玉の様な物体が琉球ニキの手に有った

 

それは勾玉に非常に似ている。白い陶器で出来た様な、しかし勾玉にある紐を通す為の穴は無くて、でも虹の様な彩りの線が通し穴の代わりに円を描いている。そして触るとそれは非常に暖かく感じる

 

その物体を確認した琉球ニキは直ちに自身のシキガミ(ルカ)に大至急の身支度を命じ、自身も着替えて最低限の身嗜みが済んだら隣の民家で寝泊まりしている仲間達を召集し(叩き起こし)てから大至急ショタおじの元へ向かう準備に入る。要は八男ニキの転移魔法で即座に山梨に向かうという事だ

 

『新婚夫婦のお宅で暮らすとか出来るか?』と冷静に言って野朗五人で雑魚寝していた残りの男達はお隣の新婚な旦那さんである同胞に突如叩き起こされた。普通なら不機嫌にもなるものだが、少なくとも琉球ニキはくだらない悪戯なぞやる様な奴ではない……まさかメシアンどもの襲来か!?とも思ったが事態はある意味で似た様なものだと即座に理解出来た

 

全員ちゃんとフル武装に身を包み、その間に山梨の夜間もやっている受付にアポを取ってから山梨へと向かう……琉球ニキの見た夢とその勾玉らしき物体の正体は如何に?

 

*1
本家様より

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。