まぁ……これが沖縄支部幹部達の日常風景(最初期)ですね
メシアンのガイドライン(前半)
・霊能組織のエース8人なら大丈夫だろうと思っていたら同じようなレベルのメシアン20人に異界で襲われた
・メシア教会から徒歩1分の路上で異教徒が頭から血を流して倒れていた
・足元がぐにゃりとしたのでござをめくってみると死体が転がっていた、メシアン被害者だった
・妊婦が襲撃され、後々胎児ごと母子合体魔人に改造された姿で見つかった
・一般黒札が車運転していたらメシアンが突っ込んで来た、というか当たり屋かつ悪質な勧誘という名の脅迫だった
・家が天使に襲撃され、女も『男も』全員レイ◯されて人間牧場に出荷された
・黒札が家からコンビニまでの10mの間にメシアンに布教された
・黒札がバスに乗れば安全だろうと思ったら、バスの乗客も運転手も全員メシアンだった
(実際に有ったメシアン被害様々)
衝撃のニライ=カナイ降臨事件からの夜明け……騒ぎはむしろ沖縄でこそ本格化していた。様々な宗派や入り組んで焼け付いたスパゲッティコードの様に焦げ付いて癒着したラザニアの様にぐちゃぐちゃになった【銃火暴風怨嗟域】の煩雑なギミックに『琉球ニキ』という名前のマスターキーが到来してくれたのである
ただでさえ沖縄名家が誇る優秀な戦士達以上に優秀な……しかも未だその才能の源泉は懇々と湧き続ける神代にも至れそうな凄まじい戦士が六名も沖縄の地に来たりてこの大災禍を防ぐ救援となってくれる様な事態が発生し、しかも有り得ざる大資本かつ『反メシア教思想』という非常に人道的*1な霊能組織がホワイトナイト*2を行ってくれるという千載一遇の大好機に沖縄の名家や霊能組織は沸き立っていた
今では数少ないちゃんとした実力を持ったユタ*3やノロ*4達が一斉にあの呪われた異界を封印してくれているニライ=カナイの神託を請けて……冷静さを常に求められ続ける沖縄の名家や霊能組織上層部達は相次ぐ大吉報の中で狐に化かされたかの様な、そういう感覚から解放されてようやく今までのあり得ない大吉報らが現実だと受け入れる事が出来た
後は『鉄は熱い内に打て』という言葉通りにメシア教の
さて……此処にガイア連合沖縄支部が立ち上がった。戦力は支部長&幹部五人のレベル35前後の黒札六人(才能限界知らず)、そのシキガミ(人間型一体、動物型一体、装備型四体)がレベル30前後(やはり才能限界知らず)、従魔スパルトイがレベル30前後(未だ才能限界には達していない)、後はショタおじから『資格あり』と判断されて貰った『珍獣:クダ(レベル25、未だ才能限界不明)』という編成だ。彼らは皆『悪魔召喚士資格』があるので新しい戦力を今度見繕う予定を立ててはいるらしい
沖縄名家、霊能組織の精鋭*5部隊らはだいたいレベル30前後の【銃火暴風怨嗟域】から生きて脱出した経験持ちの猛者が44名(但し全員ほぼ才能限界ギリギリ)、ちなみにこの中には琉球ニキの両親も入っている。レベル10から20までの戦闘員が(再生人員込みで)100名、後は低素質バックアップ要員が多数存在する
偶にこの異界から漏れ出す悪魔を討伐したり、発生する小異界を撃破するのが基本的な沖縄名家の仕事である……本土名家よりも間違いなく圧倒的に強いが、さらに圧倒的な大異界の脅威に阻まれているという有り様なので困窮具合も逼迫具合もその辺りは対して変わらないという現状を抱えている
あの異界の性質上、沖縄土着チームは殆ど全員が戦士系ばかりであり、力はあるが魔術には滅法弱いという弱点もあるが……そうでなくてはあの異界から生還する体力や気力は出なかっただろう。それとこの面子は大半が引退してかなり経過しているからある程度錆落としが必要という点も忘れてはならない
現在は『初音郷』の異界で修練中の覚醒してしまった黒札衆の身内達だが……黒札級が一人、準黒札級(才能限界40から80まで)が十数人、小英雄級(才能限界30以上40未満)が二十人弱、後は才能限界が最低5から25まで様々な者達が百人弱と様々だった
琉球ニキの両親以外のデビルバスター組は……それぞれ沖縄に転勤する為の根回しを始めたり、店を移転する準備に入ったりと様々な準備期間に入っていた。才能限界が低いと判断された者達の中には『戦闘以外で役に立つ手段を探す』と何らかの道を模索する者達も存在している。例えば銀剣ニキの母は沖縄支部の事務方の一員として働く為に沖縄で自動車免許講習に入ったり、事務方に必要な資格講習を再勉強したりと頑張っている
装備事情は……【銃火暴風怨嗟域】に突入する一般連合員には装着者に物理、火炎の高い耐性を与える作業着(ブルゾン&カーゴパンツか作業用ツナギ、自衛隊仕様のブーツ)を共通で替えを含めて三着と呪殺、精神無効の作業用ドルフィンヘルム、後は技術部の作った武具の余り在庫や悪魔のドロップ品でもそこそこ使い勝手の良いものがガイア連合から供給された
どれもこれも沖縄名家の使っていた、最早浮浪者の襤褸着の方がマシな領域にまで壊れたボロボロの霊装が全盛期だった頃より遥かに良質な装備ばかりだったから沖縄名家達も本気で喜んでくれた
ちなみに……黒札現地民問わずレベル30超え出来ている者達限定だが『山梨修羅Tシャツ』は非常に好評で彼らの需要から幾らか生産ラインの命脈が伸びたことはセツニキも少しニッコリだったそうだ
一応、沖縄名家からも出せる装備は幾つか存在する……あの戦争時に回収して隠蔽していた軍刀や銃器、迫撃砲などの武具や軽兵器などや比較的多く残せた口伝の書き写しなどを含めた書物などがガイア連合に供与される運びとなった。実際に人を殺めた武具はそこそこ強い霊具として使えるので裏では警察が押収した証拠品などは名家に横流しされているとかいないとか?*6
沖縄支部の人員、装備事情はまぁこんな感じではあるが、実際に黒札衆らは最初から指定された場所の残骸をひっくり返して採掘作業に勤しんでいた
彼ら六人とそのシキガミ達は護衛役、体力や腕力の高い沖縄現地民組とスパルトイらに採掘役という編成でこの瓦礫の山をどうにかする……見張り役である執事ニキの眼から敵襲の気配が無ければ黒札衆らも瓦礫撤去を手伝うというサイクルでこの悲惨な環境を掘り返す
下手な作業重機よりも力強いそこそこ高レベル作業員らやスパルトイによる作業は非常に効率よく瓦礫や屑鉄の塊を片付けられる
ほぼ全員、銃弾や業火、爆風に呪詛の雨を浴びても平然と作業が出来るぐらいには鍛え上げられた逸材ばかりである。採掘した方言札や頭蓋骨を一箇所に纏め、瓦礫を指定ポイントから放り出し、激しい空腹や喉の渇きに耐えて……どうしても駄目だと思ったらガイア連合からの仕送り米で炊いたヒノエ米と神饌米をブレンドさせた握り飯を一口食べて飢えを凌ぐ。握り飯を入れたタッパーとその上に置く沖縄のススキや月桃、イトバショウなどの葉を輪結びした「サン結び」とも呼ばれる簡易護符サングァーが置かれている
これは魔除けの一種であり、この異界では食糧の劣化を抑えてくれる効果だけでなく……時には大きな危険を察知することが出来る沖縄現地民の智慧でもある
後はガイア茶を淹れた水筒で喉の渇きを堪えながら全員で『富の勾玉』の採掘作業に勤しむ……しかし、現状でこの異界に全員で挑むのはどう頑張っても三時間がせいぜいであり、余裕を以って作業員達を二時間で返してからは効率はガタ落ちしてしまう
この黒札衆らはショタおじの地獄修行で餓死体験ならそれこそ何度も行っているから『耐性』はかなり高く、それこそこの環境でも作業員達と同じ程度の食糧でも余裕で一日は持ち堪えられる
未だ残っている最早赤錆だらけで如何なる用途にも使えない屑鉄塊を協力して引き抜き、数多迫る敵が偶に落とす本土名家すら見向きもしない屑魔石は無視し、琉球ニキの持つ勾玉の輝き具合からそのポイントを割り出しての発掘作業は本当に心折れそうになるぐらい厳しいものだった
そして今日もだいたい二時間ほど作業していると……タッパーの中に置いておいたサングァーが黒ずみ初めて来た。そろそろサングァーの加護が切れ始めて来たサインだ
そろそろ作業員達は帰還させるべきだと黒札衆がハンドサインや筆談などで相談し合う……その時
全てのサングァーが燃え出した
これは拙い、この兆候は『この辺り一帯に更に強力な悪魔が出没する前兆』である……下手をすれば『魔人』が出没する可能性すらある危険なサインだ
黒札衆は直ちに作業員達に『即時撤退』の合図を出して今日の脱出ポイントに急がせる、そしてエネミーソナーのグラフィックを確認したら黄色……いや赤に変化が始まっている。エネミーソナーの黄色は『要注意、出来るだけ撤退推奨』で赤なら『危険、直ちに撤退せよ』を示すので黒札衆ですら作業員達を護衛しつつも即座に撤退準備に入る
これはいよいよ緊急事態なので琉球ニキと八男ニキの周囲に全員を集めて緊急脱出手段を執る……異界から力尽くで脱出する魔法の為只でさえ霊力の消費が激しい上にこの異界の特性上詠唱による補助は難しいから普段使いは出来ないが、それでも危険が迫る状況なら値千金の『異界脱出魔法:トラエスト』で瞬く間に異界から脱出に成功する
ちなみに収穫品*7は夏休み最後の修行で条件を満たした琉球ニキと八男ニキの収納魔法で確保は出来ているから安心だ
脱出ポイントの近くに出たおかげでバックアップスタッフらの用意してくれていた温かい食事や冷たい麦茶やビール……未成年者ばかりの黒札衆でもこの場で飲む事を黙認するぐらいは沖縄スタッフらにもやってくれる。中にはその黒札の実の両親も居るがあの環境下から帰還した同胞に間違っても「未成年だから駄目」とは口が裂けても言えない。あの環境で戦い、あのひたすら重く不快な屑鉄や瓦礫の撤去をこなす英傑達を讃えるのにそんなケチな真似は許されない
『乾杯!!!』
参加者全員の乾杯唱和から一気に呑み干す沖縄の暑い夏に対応した沖縄地酒である『アルテミスの恋人』の名を冠したビールの喉越しとカラカラに乾いた喉を程よく灼いてくれる炭酸の感覚……あの地獄から帰って来た者達を癒す甘露水を禁じるなど、それも最大の功労者相手にそんないけずは実の両親をして赦されない
缶ビールの爽やかな酒気で喉や肺に溜まったあの地獄の瘴気を吐き捨てる様に強く息を吐く。酒が苦手だという者ですら195㎖缶で乾杯に参加するぐらいである
……後に、とんでもない下戸で酒乱の気を持ったとある娘さんが加入するまでこの飲兵衛どもの打ち上げ式は続く。割と真面目にその事件以降は酒宴が抑えられたのはどうでも良い与太話だろう
甘露水を堪能し、出された炊き出しで飢餓を癒した後は身を清めて仮拠点である公民館に移って成果発表兼反省会に入る……今回は異界内部の魔素*8の突発的増大により即時撤退というちゃんとした判断が出来た事と、方言札や頭蓋骨の発見や供養が更に効率的に出来たこと、後はやはり出来れば黒札衆の持つアガシオン・スパルトイを沖縄名家でも資金を出し合ったりローン組み購入を希望する意向が増している事、地方共通の問題ではあるがこと沖縄では特に深刻な霊力回復問題や新しい握り飯の感想、後は本当に此処に『富の勾玉』が存在するのか?という不安だろうか?議題はその内容で行われた
緊急時と判断したら即時撤退は彼ら黒札衆の上位黒札にして師匠枠に収まった比翼連理夫妻の言いつけであり、彼らもその言いつけの正しさは理解出来ている……護るべき存在が居るなら特に良く理解出来る
発掘作業は八男ニキの使う広範囲地変魔法マハ・マグダインの応用で地盤を緩めて採掘し易くしたのが功を奏した様だ。山梨での自主練が実を結んだ結果である
スパルトイの件はローン含めて承認済みであり、沖縄名家達の組んだ予算でちゃんと現地民仕様のタイプが用意される。現地民仕様とは基本的には幾らか性能をオミットして『変異』と呼ばれる別の悪魔になってしまう現象を食い止める為の仕様である……スパルトイの『人間が操る存在』という概念が外れて下手をすれば制御を失う可能性があるから施される処置だ。黒札的にはむしろ強化イベントとでも言うべき状況なので大歓迎なのだが
ちなみに沖縄支部には黒札衆達が少なくとも手足一本分ぐらいの彼らの霊的資源が含有された現地民仕様だが高品質スパルトイが六体レンタルとして納品予定されている。しかも彼ら黒札衆の奢りである……ちゃんと支部長や幹部としてやるべきことは始めているのだ。これらは作業員を務める優秀な若手に貸し与えられる事になっている
沖縄の霊地霊脈はあの戦争と米軍基地の悪影響でかなりガタガタであり、回復スポットは御嶽と呼ばれる霊地が有ったが今では殆ど立ち入り禁止になっている……【銃火暴風怨嗟域】の悪影響が逆流して居るだけで逆にダメージになるからである。おかげでメシア教すら関われないのは救いかもしれないが
故に……嘗ての沖縄では『霊力を使う=寿命を削る』と同義語扱いであったが、ガイア連合から提供された『霊力回復用式神*9』が沖縄支部の数カ所に配備されている上に今ならレトルトガイアカレーやガイア茶が存在するので沖縄の術者問題は飛躍的に解決している。数万円程度の金額で食べて一晩寝れば霊力が全回復*10する食物何て正に夢や希望の産物だっただろう
この霊地がまともに機能していない状態はある意味逆に有益な事にもなっている……
奇しくも嘗ての『旧日本軍vs米軍』の様相ではあるが戦力差は嘗ての百倍以上の差があるから現状では先ず勝率0だと断言出来る。『頭アンドリュー=フォーク』と言っても良いレベルの嘗ての大日本帝国大本営ですら流石に理解出来るぐらい絶望的な戦力差であるが
この問題はスパルトイにも言える事であり、スパルトイの修繕は本来のアガシオンより手間暇が掛かる。故に最近ではスパルトイ修繕技術を持ったガイア連合の製造班の一員が沖縄名家の装備を辛うじて整備していた者達にその技術を伝授することとなった。ちなみにその人物は琉球ニキがガイア連合に合流した時に世話になったブランカニキとなる
流石にシキガミは月一の整備を山梨で行った方が良いだろう。シキガミの技術は容易く現地民に教える訳には行かないという理由もあるが、一番の理由は『シキガミ技術ははっきり言って複雑かつ高度過ぎてガイア連合以外では決して再現不可能だから』であるが
新しい握り飯……ガイア連合が誇るヒノエ米という非常に美味かつ施餓鬼供養に最適な米と、ニライ=カナイの加護が籠った神饌米を組み合わせた握り飯を沖縄の海水から作った塩で握った握り飯であり、この二つの効果を組み合わせる事であの異界のギミックの一つである飢餓の呪いを軽減する。という訳だ
嘗てはニライ=カナイの神饌米で炊いた握り飯を使ってあの異界に挑んでいた。あれさえあれば霊能者ならば二時間は辛うじて命を繋げられた……凡俗だとまぁ悪魔に襲われたり異常気象に遭遇したりしなくても良くて三分ぐらいで餓死の前に渇死する環境である。対策無くあの異界に潜入すれば大概の霊能者は三十分ぐらいで餓死なり渇死なりするだろう。それこそ餓死や渇死を何度も体験して飢餓耐性などがあるならまる一日はこの環境でも飲まず食わずで戦えるが普通ならガイア連合にもそんなガンギマリが極まり過ぎた猛者はそうそう居ない*11
最後の懸念は……『ニライ=カナイを信じろ』としか言えない。この採掘から未だ三日だ、あとせめて数日は頑張ってからその懸念は抱くべきだろう
そんな感じで今日の反省会は終わり、沖縄現地民チームはそれぞれの本業に戻る。黒札衆もこれから転移魔法を習得した二人の力で山梨に行っての出稼ぎや交渉事の時間である
「んじゃ頼むぞ八男?」
「任せろ聖者、お前は巌戸台支部で執事と銀剣は東京だな?」
「乃木坂家からの依頼が来たから俺たち三人でやって来る……聖者は春香に宜しく言っておいてくれ」
「ヤバそうなら偵察だけでもやって逃げるさ」
「なら行くかガンスミス、山梨で俺たちは実銃愛好部と三八式実包の作成実験に行くんだったか?」
「そうだよ琉球、沖縄支部が出してくれた銃弾は作成の手間暇の割に……だからちゃんと実銃愛好部製のガイア弾仕様が欲しいんだよ。M16は僕には合わないし」
そんな会話を行う六人、シキガミ達は封魔管に収めてなるべく身軽になって転移の手間を省く。先ずは全員で山梨に行ってスパルトイやシキガミ達のメンテナンスからそれぞれの仕事に向かう
聖者ニキはペルソナ使い専用異界でスライムニキと合流後に遭難者救助。夜中は先ず間違いなくハム子ネキに捕まってタルタロス送りで朝帰り
八男ニキ、執事ニキ、銀剣ニキは三人で企業系俺たちからの案件依頼でとある異界攻略
琉球ニキとガンスミスニキは実銃愛好部に三八式歩兵銃の実物を提供して三八式実包というこの銃用のガイア弾仕様を作成して貰う交渉と様々な用途で本土に蜻蛉返りである
今はこんな調子で沖縄支部は動いている。持ち出しばかりで彼らが稼いだ魔貨も焼石に水という具合ではあるが設立からまだ半月未満の支部だから仕方あるまい。あと何気に聖者ニキが一番キツいかも知れないが頑張れ沖縄支部、負けるな沖縄支部!君たちが倒れたら沖縄の未来は真面目に潰えるから本当に……