冒頭のとあるお仕事光景……元ネタがわかるかな?(インターネット老人会感)
この世に無限なものは2つあります。宇宙の広さと、
前者については断言できませんが
by アルバート・アインシュタイン
その日は六人揃って塩漬け依頼の解決に当たり続けていた…… ある依頼は狂った山神の討伐、または環境汚染で壊れた土地神の浄化、他にも近寄るだけでも危険な呪物の破壊や封印処置、それこそ初仕事の様な人間の悪事の報いと末路の後始末から様々な厄介事が目白押しで積み上げられているから大変だ
通常の黒札では手に負えない悪魔の討伐、面倒な儀式を要する浄化、どう転んでも後味最悪な事件の後始末など様々かつ厄介な依頼をその日のうちに多数片付けながら彼らは明日を待ち望んでいた
その中でもとある一つの事件について述べてみよう……それは山陰地方の山奥の集落の離れた廃屋に封じられていた一つの組み木細工の箱だった。何やら禍々しい様相の赤黒い塗料にも見える何かに染まっている不気味な木箱だった
その集落でもそろそろどうにか法的な折り合いを付けてあの廃屋を片付けて……と考えられてた矢先に遂に倒壊してしまったのである。そしてそれを撤去しようとした時にその事件は起きた
集落に僅かながらに居る女子供が突如苦しみもがき始め、弱った女や赤子から苦悶の表情を浮かべて惨たらしく死んでゆくという恐ろしい事態が発生したのである……未だ生きている女子供を病院に搬送し、身体を詳しく診て貰うと内臓に謎のダメージが加わっている事が分かった。そしてあの集落から離せば女子供の臓器への病?いや毒?だかは自然治癒が出来る範囲ならばゆっくり回復してゆく。しかし女の子宮へのダメージが一番酷い様で生き残った女の何人かは二度と子を産めない身体になっていたという事だ
山陰地方の部落、組み木細工の箱、女子供の臓器を責める謎の呪詛……オカルトについてある程度の知識があればその情報だけでこの事件が如何なるものか判別は容易だろう
コトリバコ
話次第ではリンフォン、禁后、シコンセン、朝鮮壺などなど様々な呼び名を持つ非常に悪名高い呪物だとも怪異だとも取れる代物である。その悍ましい経緯は省くが要は巫蠱……大陸の左道邪法とでも言うべき忌まわしい妖術の流れを以って牝の畜生と間引きされた子供を贄に使い作成される『貧者のオカルト兵器』とでも言うべき代物だ
呪物としての使い道は……存在するだけで周囲の子供や子供を産める身体の女の臓器、特に子宮に深刻なダメージを与えるという効果を持つ正に
恐らくはその封印であった家が崩落した結果、その封印が解けてしまい悪影響がその集落を襲った結果だろう
本来ならばその近隣の名家なり霊能組織なりが厳重に封印浄化する為に管理している筈だが……勿論、例によって例の如く
カオス転生世界のあるあるである。全く笑えない話ではあるがもう笑うしかない内容である
そんな訳で、女性型シキガミであるルカに意識は女性であるシアと楓を預けて彼らは一時間すら掛けずに倒壊した家屋を解体してしまう……最近では採掘業務がメインになったスパルトイ達が大活躍してくれたおかげである
『マスター コレ ジャナイカ?』
「よしでかしたぞチーバ、後で欲しい小説買ってやるからな」
『マダ、イマノガヨミカケダ、ダイジョウブダゾ、マスター』
最近覚えた念話で主である琉球ニキに語りかけるスパルトイ。沖縄方言で『牙』と名付けられたその骸骨が指し示すのは地下室の扉だった
その厚く重い木製の扉は錆びた鎖や南京錠で厳重に封印されてはいる……しかし、本当の封印に必要だろう護符が倒壊の余波で破れて駄目になっているのが分かる
その扉に絡み付く鎖程度ならスパルトイどころか今の八男ニキや琉球ニキでも簡単に引き千切ってしまえるからそれを退かし、扉を開ければ……想像より更に酷い呪詛と瘴気が吹き出してきた
中は六畳程度の土間であり、その中心には一辺20cmほどの正六面体の赤黒い木製の箱があった。その呪詛と瘴気の発生源がこれである
その箱ことコトリバコの模様を確認する……これはまずい、これは最悪の代物だ
ハッカイ
コトリバコには幾つかランクと言うか危険度が存在する……その中でも最低最悪なのがこのハッカイというランクである。やはり詳しい内容は省くがこの階位に至ったコトリバコは冗談抜きで拙い、普通なら封印から儀式でもして長期間鎮めておけば何時かはそのまま浄化されるのだがこのハッカイはそうは行かない
これは既に呪物から怪異に変じた代物だ……もう封印して時間を掛けての浄化は通用しない手遅れの段階だと分かる。放置すれば間違いなくその呪詛は近隣一帯を飲み尽くすだろう
普通に呪物の範囲で済む段階ならば山梨支部の秘匿されたセクターにこの手の呪物を安置し浄化する、若しくは研究素材にする為の設備が準備されているが……これは流石に危険過ぎて最早持っては行けない、だからかなり荒っぽい手段でこの呪物を処理する。この状況に対するならば前に技術部から聞いた非常に力任せな脳筋除霊方法だが今回ならこの手段が良いだろう。多分
「……これはもう駄目だ、どうしよう?」
「回収は駄目、放置は論外、下手な処置は呪いを撒き散らすから厳禁か」
「ならどう処理するよ?この程度でショタおじ召喚は論外オブ論外だが?」
「沖縄に持っていってあの異界で……うん、これも論外だわ。何故黒死ネキが出禁枠かを考えたらな!」
「……ねぇ、前に技術部が言っていた結構荒っぽいあの方式があるけど?」
「色々面倒だが背に腹はかえられぬか……今すぐやれるのはそれぐらいだな。この程度は自前でやれないと今後やってけないしな俺たち」
言うが早いか先ずは瓦礫の中から引っ張り出したそこら辺のアルミサッシをやはり其処らへんに落ちていた金属ヤスリで力任せに削ってアルミニウムの粉を、そして錆びた鉄板を引き摺り出してそれを紙ヤスリで削って錆鉄粉を準備する。その最中に辺りから農作業に使うガソリンと適当な石鹸を調達して混ぜ合わせて『スライム』を作る
そしてそのスライムにアルミニウム粉と錆鉄粉を練り混ぜ合わせて……いわゆるテルミット反応式ナパームジェルを作ってその中にセツニキから教わった呪符の応用で突発的に作った不動明王の梵字を描いた紙片を沢山練り込んでおく。悪と煩悩、悪縁を炎で灼き切るという意味を込める為だ
此処からが本番だが……先ずはハッカイを無理矢理開いて中身を確認。その中身は未だ生々しく鼓動する嬰児の内臓に臍の緒、そして赤子や幼子の指などだと分かった
ならばと、中身を暴かれて更に激しく荒れ狂う怨念と瘴気……通常の地方派遣黒札ぐらいなら即座に呪い殺せるぐらいの圧倒的な呪詛の濃霧を彼ら自身の身体で組んだ結界で容易く抑えながら平気な顔で直ちにテルミットスライムの中に放り込んで封じてそれを魔術の炎で灼く
轟々とメラメラと激しく燃える白炎、そして不動明王の功徳か悶え苦しむ怨念の塊。その過程において全員で業火を取り囲み地蔵菩薩真言を唱える
「「「「「「
偶に聖者ニキと八男ニキが破魔魔法を唱えて辺りを浄化しながらその白い成仏の炎が燃え尽きるまで地蔵菩薩の梵字を描いた紙片を撒いてこの間引きされた哀れな幼子や嬰児達の浄化に勤しんだ……辺り一面に呪詛と怨嗟が凄まじい物量で溢れているが彼ら自身が型造る結界でそれらは一切漏れない、その程度の呪殺攻撃なら【銃火鉄風怨嗟域】で日常的に受けているから本気でなんともない。ついでに赤子や女、家畜の悲鳴みたいなものが聴こえるが手や口を休めず儀式を続ける
だいたい十分もすれば炎も消えて後は消し炭だけが残った……それらは丁寧に雑巾や塵取りで集めて新しく用意した不動明王と地蔵菩薩の梵字を記した紙片に包んで八男ニキが近くの川の上で
灰を流すのと同時に精霊流しや流し雛の様に一緒に地蔵菩薩の梵字を描いた船の折り紙を沢山流して彼らの魂を冥界に送る儀式として一応は決着が着いた……後はアフターケアのお時間だ
先ずはあの集落だが、人がもう一度住むかどうかはわからないけど一応は集落一帯に簡易的な結界を貼ってその廃屋跡地の片隅にそこら辺の石や廃材、悪魔素材の端材を利用して結界の基点ともなる簡単な供養塔とも祠とも言えるものを作っておく、物作りの才能があるガンスミスニキと執事ニキがそれを作成してくれている間に未だ生きている被害者達に覚醒しない程度には薄めた霊薬を飲ませる為に病院に行く。まぁ運次第ではあるが子宮のダメージが癒えるだろう
後々の話だが風の便りで全員の身体がちゃんと治り若い娘もちゃんと妊娠出来る身体に戻れたと聞けたのはちょっと嬉しかった
この間だいたい一時間半ちょい、終わればまた次の依頼に向かって次の支部に転移する……何ともまぁ忙しない祓魔稼業である。普通ならこの一件だけでも良くて数ヶ月、それこそ普通なら数世代掛けての専念儀式が必要な案件なのだが。それも暴走前の状態で、である
今回の様に暴走状態ならば……辺り一帯を完全封鎖して『忌み地』や『禁足地』として百年単位で封印以外は無いだろう。要は手遅れである、通常の黒札なら即座に山梨支部に匙を投げるぐらいの案件だ、山梨支部も『仕方ない』と納得してくれるだろう
こんな調子ではあるがちゃんとアフターケアもしっかりやっているので殆ど依頼人とは顔を合わせないが評判は上々であり他の厄介事がどしどし送られて来る……一体塩漬け案件はこの半世紀弱でどれだけ蓄積されているのか?
そんな風に普通の黒札なら命が幾つ有っても足りない様な危険極まりない依頼をキリキリ片付け片付け……と、日が暮れるまで頑張って九件はカタを付けられた。しかしまだまだ依頼書は山積みでありまた段ボールにぎっしり詰まった分すらあるから頭が痛い
今はその山積みの依頼書から目を逸らしながらそれらを沖縄は那覇の小禄に有るジュネス那覇店の秘匿されたガイア連合沖縄支部の支部長室にあるやたらと豪華なデスクに放り出し、仲間達と今日も今日とてヒィヒィ言いながら会議室で書類仕事に専念する
沖縄全土にある派出所からの嘆願や決済、起きた事件にメシアン被害、今回の依頼報告や沖縄支部から山梨支部への報告、勿論パトロンである富豪俺たちへの報告などなど様々な書類仕事に忙殺されながらもまぁなんとか日付けが変わるより早く終わらせてから夜食を楽しんで寝る暇ぐらいは稼げた……今日はそれぞれの幹部専用オフィスに併設してある専用仮眠室で仮眠から既に今日となった仲間達の到着歓迎の準備と昨日とは別の意味で忙しい
聖者ニキが探求ネキから貰ったお土産である霊能食材をパーティーの食材に提供したり、足りない分を山梨支部の購買で購入したり、その仕込みや会場(沖縄支部拠点)のセッティングやらに北部居留地の空き家掃除やら電気、ガス、水道などの再契約に必要最低限の寝具や家具の調達など様々な準備がある、彼らの為の本土、沖縄地元銀行二箇所で一律業界用口座解説とかまぁ色々決済や承認など様々にやるべきことの詰めとか色々忙しく彼らが来る夕方まで沖縄支部は上へ下への大忙しであった
しかも更に間が悪い事に、琉球ニキ以外の五人は今から直ぐに山梨支部のスケベ部に出頭し……レベル差のあるカップル用精気制御装置を購入、生体マグネタイトデータに合わせたフィッティングをする必要が有ると判断されて夕方まで身動きが取れないらしい。30レベル超えした俺たちが人間の嫁を得る為には必須の義務故仕方ない。それを無視して彼らの恋人達が夜中に『パァン!』する様な惨劇に遭うよりは余程良いから問答無用で山梨に蹴り出したがこの程度なら琉球ニキ一人だって大丈夫だ
基本的に沖縄支部の前身である雑多な名家や霊能組織らは今現在では殆ど消滅手前の有り様であった……純粋に沖縄という環境で生き残る力量や素質のある次代が元より非常に少なくメシア教の魔の手から逃す為に本土の名家などに養子や婿嫁などに出して疎開させたからだ
異界攻略も【銃火暴風怨嗟域】の悪影響で余り儲からず、悪魔は非常に強力な代物ばかり、しかもメシアンや穢教鳥が我が物顔で闊歩する様な悲惨な環境だ……大概の若手は沖縄を身限り他所に移るのはむしろ当然の帰結である。いやむしろ沖縄の霊能者達はあえて若手達を逃す為に追い出したりさえしていたぐらいである。『最早沖縄は滅ぶしかないから』と
ちなみに琉球ニキの場合は実はもうすぐちゃんとした許嫁が用意されてそちらに疎開する予定だったらしい……再起不能になるまで、そしてそうなってすら色々凄い貢献をし続けていた『沖縄の英雄』だった両親の顔を立てて家柄は勿論容姿、人格あと琉球ニキとの相性などを真面目に考慮して厳選中だったらしい
しかし……今沖縄は極大の転換点を迎え、嘗ての悲惨な戦いの果てに再起不能だった筈の勇者や豪傑達が復活している状況になった。疎開地に送った縁から今度はその疎開地からの救援依頼が逆流しているらしい。この歓迎会の翌日にはそれらが支部長室や幹部オフィスにどしどし流れて来る事になるがまぁそれは余談である
今、本来ならば琉球ニキの補佐役である両親はその許嫁問題の解決を図る為候補者達の実家がある日本中各地を飛び回っているらしい……しかし既に黒札、しかも黒札の中でも上澄みも上澄みの枠という事すら先方は承知だからこれは近いうちに強制お見合いイベント沙汰は避けられないだろうがそれもまた余談に過ぎない
今はそんな突発的なアクシデントの嵐を知らず彼らは仲間達や恋人との楽しいパーティーを楽しむ……しかし次の日にはまた過酷な任務が待ってはいるが今はトリコ飯と美酒、そして最高の美少女との逢瀬で英気を養うのであった
大概の俺たち1「まさかギコ・ウプヌシー式テルミット除霊をガチでやる馬鹿がでるとは……あの状況なら最適解の一つだけどさぁ」
大概の俺たち2「いや、しかも浄化や成仏促進まできっちり追加してやっているんだよな?アフターケア含めて何気に完成度高いなオイ」
大概の俺たち3「しかもあいつらギコ・ウプヌシー知らないらしいぞ?一番前世享年遅かった琉球ニキすら2009の1、2月が享年らしいしな」