この程度の悪魔に手こずっている場合じゃない……現地メンバーもこの程度の敵なら何時かは自力で撃破出来ないと生き残れないのが沖縄である
……今の日本で作中の琉球ニキの父みたいな芸当が出来れば大英雄も大英雄だろうけど
「メシアンなんてゴキブリと同じじゃないか!」と叫んだある黒札が別の黒札からドチャクソ怒られた。その怒られた黒札も心底反省してくれた
怒ってくれた黒札の発言がこれだ
「謝れッ!、今すぐてらほ君達に謝れッ!!メシアンみたいな万害あって一利すらない害獣と一緒にするとか酷いと思わないのかッ!!!」
(沖縄支部で本当にあった話)
その日……【銃火暴風怨嗟域】に激震が走った。唐突な魔人の襲来である。その魔人は眼球だらけの白馬に乗り、王冠を被り弓を構えた髑髏の騎士。世界各地の危険地帯にごく稀に現れる強烈な怪異である
『魔人:ホワイトライダー』
見たところ弱い方の分霊*1と見受けられるが、それでも『ヨハネの黙示録』と呼ばれる新約聖書の一節に記載された人類に災いを齎らす厄介極まりない大悪魔である……その中に有っても新しい学生陣らは内心はその瘴気に怯えて戸惑いながらも予め決められたマニュアル通りに緊急時に指定されていたポイントに向かう様が見える
「なにあれ?」
「なんつー瘴気だよ、あんなん俺らにゃ手に負えんぞ!」
「皆、早く指定されたポイントに避難して!」
「これはもうボス達に任せるしかないぜ!急げ!!」
『管制官』の構築するネットワークもそんな慌てふためく声が交差しているがそれは仕方あるまい。『沖縄支部の目にして喉にして耳』である思念ネットワークを構築するナビ・ペルソナ使いの乃木坂春香もその荒ぶる思念波を必死に制御している
これは余談だが……琉球ニキの父である『比嘉勲』も琉球ニキが幼児だった頃にこの地でこいつに遭遇し、その中で即座に仲間達の殿を勤め仲間達の生命と未来を護り切り、更にはその中ですら命冥加に逃げ帰れたが、そのダメージで再起不能になったという話だ。故に琉球ニキの父は沖縄名家の大英雄であり、
偶々今朝から、色々あった行脚から帰って来て即座にまた【銃火暴風怨嗟域】で護衛班として活動を再開し、嘗ての大英雄としての貫禄をもう一度魅せてくれる……普段は嫁に頭の上がらない裸族の変態だけどやはりキメる時はキメる良い父親だった*2
そして、その脅威にまたしても対峙した比嘉勲は……今度は息子達を逃す為の殿として死中に挑む覚悟を極めていた。一度は死んだと覚悟していたがそれでもまた復活出来た。ならばこの命は沖縄の希望の為に使う、息子と妻にはあの世で詫びを入れさせて貰おう。一つ息子に言わなくてはならない厄介な案件もあるが……どうにか生きてその件は詫びを入れようとは思う、特に
そんな事を考えながら沖縄名家衆に若者を逃す為の殿になれと回線に檄を飛ばそうとしたら……その当の息子が前に出て恐るべき魔人に『管制官』に眼前の空飛ぶ骸骨騎兵に強制的に回線を繋げて貰い、其処で口上を上げていた
『おい、其処の骸骨野朗!こっち向けや!!』
声に霊力を込めて魔人を挑発しだしたのである。そして勲に向かってハンドサインで『
一方の彼の
『クカカカカッ!!死ノ化身タル我ニ向カッテ啖呵ヲ切ルカ?オ臨ミ通リ貴様ラカラ殺シテヤロウ!!!』
……丁度良く挑発にノッてくれた白騎士が哄笑を上げながら六人に
六人とその従者達は横一列に並んで上空の白騎士に対峙する……彼我の距離はだいたい500米辺り、彼らの境地ならばそう離れた距離ではない。魔術なり銃撃なり、何なら剣戟や鉄拳すら数歩で放てる程度の距離だ
全員無言で……この異界では人間は喋れないのが普通故に仕方ないが、それぞれ意図した管を『三本』ほど収納したスペースから引っ張り出して念を入れる。一つは召喚、そしてもう二つは?
それぞれが召喚した悪魔は……まるで毒茸の様な帽子を被った様な髑髏の姿をした荒神、だいたい30㎝の背丈をしたパンキッシュな様相の翅脈を生やした女性、可愛らしい雪だるまがそれぞれ二体、それらの召喚には今持っている『管』を介して絶えず『生体マグネタイト』と呼ばれるエネルギーを供給し続けなくてはならない。単純な作業をさせたりする程度ならそう激しい消費にはならないが、これが実戦ともなるとマグネタイトの消耗は飛躍的に嵩むから厳しい修練が必須だと分かる
大概の悪魔召喚士は故に自分の力量より幾らか劣る悪魔と契約し、もしもその悪魔が制御を外れたらなるべく早く楽に始末出来る様にともいった理由もあるとか言われている……弱い悪魔は贄にして新しい悪魔を召喚するのが現状では主流だとも言われている。ゲームの様な『悪魔合体』なぞ世界各地でも非常に限られた場所でしか出来ないからそれも仕方ない話である
しかし、彼らの様な力量の高い悪魔召喚士ならあの荒神や下手な小神にも迫る力量を持つ妖精、雪だるまを巧みに使役して戦力として有効に活用出来ている……そして彼らが支援出来る魔物はそれだけではない
全員共通の物言わぬ骸骨戦士スパルトイ、そして様々なサポートスキルに長けた管狐をほぼ制御不要で使役し、更にはガイア連合の秘儀である『シキガミ』だってある……故に実質計30対1という数の暴力が成立してしまっているのである
六体のスパルトイと二体の荒神こと破壊神チェルノボーグが肉壁となって白騎士の猛攻や移動をガッチリガード、バフ・デバフ効果のある魔法が使える使い魔達がガンガンその魔法を使っての盛大なハメ殺し、肉壁陣を攻撃しても管式悪魔召喚術の秘技である『召し寄せ*3』や『陰身*4』といった技法で幻惑され、更にその隙から魔人の行動は銃士と執事が魔人の死角から銃撃や爆弾、魔法石等々でえげつなく厭らしく妨害に次ぐ妨害で何も出来ない
しかし、それだけでは遅延戦術にしかならない……ではどう攻撃するかと言うと
『がぢっ!?ごっあッ!?クベッ!!?き、貴゛様ら〝ぁぁッ!!!?』
肉壁の隙間、召し寄せや陰身の間隙を縫って突き刺さる荒法師の鉄拳、剣士の一閃、魔術師の地変魔法や衝撃魔法、おまけで雪だるまの氷結魔法……『強敵は囲んで棒で殴り殺せ』という人類が古代から受け継ぐメゾット通りにこれらで叩きのめされるのは未だ良い、しかし問題は『最後の一人』である
その狩衣姿の男は……まるで幽鬼の様に無感情に両腕に高密度の電撃を蓄積してそれを放ってくる、本来ならこの白騎士は『電撃は通用しない』のにそれが普通に通ってしまうのである
恐らくは『電撃貫通』と呼ばれる電撃への耐性を無効化する強烈かつ稀少極まりないスキルの効果だろう……これでこの魔人は自らの電撃無効を剥ぎ取られてしまっている。それによりちくちくじわじわ魔人は体力を削られ弱ってゆく、魔法も弓矢も妨害、阻害されて身動きが封じられて何一つまともな身動きすら取れない
そして……この魔人の最期は、いつの間にか近くに到達していた狩衣姿に持っていた紫電を纏う銀のナイフで額を突き刺されてマグネタイトの塊に戻されていたと言う顛末だった
そしてこれはその時のことについての彼ら六人による反省会の会話である
「おい琉球、幾ら切り札使うまでもない程度の相手とはいえあの最後のトドメは何なんだ?お前は仮にも後衛アタッカーだろ?」
「いや落ち着けよ聖者、あれは俺も考案していた緊急時に使えそうな白兵戦技法の試案だ……比較的安全な現状だから試せたけど、まぁ今まで使っていたあのアセイミイ・ナイフ程度じゃ危なくて出来ないのがわかったけどな」
「あー、まるで『ダイの大冒険のパプニカのナイフ』みたいにホワイトライダーごと粉微塵になったしなあのナイフ。お前の強烈なジオダイン捩じ込めばそうもなろうよ……てかお前アレコンセントレイトまで入れただろ?良く持ち堪えたなあのナイフ?」
「連理ニキもあれは量産前提の廉価版だと言っていたよね?。更に頑丈なモノホンはウィッカ*5への覚醒が入手条件だしね。更に良い素材を使った強化版でも特注するしかないでしょアレは」
「俺たちもそろそろサブアームのアセイミイ・ナイフの強化はしたいから……皆で予備含めて新規注文入れないか?」
「ガンスミスにもそんなもん作る暇は無い……なら信頼出来る山梨製のアップグレードモデルを依頼しておこうぜ?」
「「「「「異議なし」」」」」
そんな会話がちょっとした野郎六人の何時もの酒宴の場で行われていた。一応未成年飲酒なので秘めた酒宴でありその中でちょっとした装備の購入相談やそれぞれの進展、明日の予定の打ち合わせや今後の修行や必要な技術の再確認、予算の編成に部下達の予定チェック、今ガンスミスニキが担当する穢れたスクラップの再利用方法探索の進展報告など……時に必要だと思うなら今回の様に聖者ニキが琉球ニキのスタンドプレーを軽く咎める様なちゃんとした反省会になっていたりする
彼らは酒は好きだが基本的にそこまで深くは呑まないし酔い潰れる事を嫌う……基本的に『常在戦場』をモットーに今すぐにでも実戦に赴ける様にしているだけだ
後、八男ニキの嫁さん*6が……まぁ致命的レベルの下戸でしかも絡み酒型の大トラであり周囲一帯に甚大な被害(笑い話の範疇)を齎したりもしたとか、後琉球ニキの母によるおつまみの差し入れの件もありなるべく大っぴらに呑むのは控える風潮ができたという
琉球ニキの母『比嘉妙子』は沖縄でも有数の女傑であり、その外見から『乳の親の血筋』は無いと断言出来る*7為か沖縄名家からは非常にモテていた……間違いなく良妻賢母ではあるのだがまぁ幾つか欠点はある、そしてその代表的な欠点が
ショタおじにすら理解不可能級のメシマズ
である。その余りにも酷いメシマズさは周囲をして『良く琉球ニキ父子が今まで生きていた』と言われるぐらいのレベルであり……作ったソレは物体X*8とも
その影響で琉球ニキもその父も……身の危機からそこら辺のシェフより遥かに巧く美味しく料理を作れたりもする。むしろ彼のシキガミであるルカは琉球ニキ当人の料理スキルをコピーしているぐらいだったりするぐらいだ*10
一度。ショタおじやセツニキ、星祭の
その結果は、ショタおじ(分身体)含めた全員がトイレを奪い合う地獄絵図……まぁ、参加者達の腹を木っ端微塵に破壊する悲惨な結末が発生し、大概の参加者達が上下から汚い噴水を噴き出す惨状だったらしい。勿論参加者達が全員でその不始末の清掃を行なったとか何とか?
ちなみにその光景を決して見はしなかったが、その味とトラウマを身体に叩き込まれている琉球ニキは……仲間達やその身内を安全地帯に避難させた後で丸一日嫁であるルカの躯に溺れる事でその恐怖とトラウマから逃避を謀ったらしい
偶に琉球ニキの父が参加する飲み会などに『飲み過ぎは駄目よ?』と釘を刺す為にあの暗黒物質を送り込んだりすることもあるので……彼らもまた節度を以て変な酔い方はしない様にはしている。未成年である事だけはまぁ大目に見て欲しいが
後この暗黒物質……後々に技術部やショタおじをして何らかの訳の分からない奇怪なオカルト的作用がある事が判明し、偶に脳缶ニキと二人の盟友*11が玩具にして大惨事を巻き起こしたりしているとか何とか?故にこの暗黒物質は終末に至っても尚『ショタおじにすら理解不可能な正体不明のミステリー』扱いである
食べれば誰でも決して死なずに地獄の苦しみを……未覚醒者からショタおじに至るまで一律全身の穴という穴から体液汚液を噴出する様な摩訶不思議な毒物である……勿論味も最悪で丸一日はその『不味いという魔味クラスの概念塊』に舌を侵されて悶え苦しむ羽目に陥るのだから恐ろしい
そんな恐ろしい代物ではあるが……沖縄支部の以外な輸出品の一つとして以外な需要が出てきたらしい。未覚醒者からショタおじまで様々な相手に決して死なせずに地獄の苦しみを与えられる効果から覚醒修行用の毒物の一種から何らかの呪物や罰ゲームまで様々な使い道が見込まれたとか何とか?沖縄名家でも彼女の
「……私の料理って一体?」
「……マジかよ?母さんのあの百害あって一利なしの毒物に需要が出来た?今までの生涯で一番驚いたよ俺」
「……翔太、世界って本当に広いんだな。俺たち親子でアレの後始末に苦しんでいたのは何だったんだ?」
比嘉一家もこの顛末には流石に宇宙猫状態だったらしい。琉球ニキもその父も二人仲良く口から魂を抜き出しながらそう宣った……その台詞を聴いていた妙子に親子二人してぶちのめされたそうだが。それでも比嘉家の口座には偶にその収益が入ってくる辺りでそれは現実だと心底理解は出来た
沖縄県津々浦々の色々な場所に点在するセーフハウスの一つである『株式会社琉球ガイア建築』の臨時飯場であるプレハブ家屋の一室で彼らは幹部会議兼宴会をやっている彼らも……少しほろ酔い気分で酒は止めて沖縄を代表するさんぴん茶*12を飲みながら明日以降の作業や工程、次に封印解放する勾玉の予定や周囲の変調などを互いに再確認し合う
そしてその中で……
「なぁ琉球?お前の親父さん何か様子がおかしくなかったか?何とはわからんが……」
「……確かに、何か厄介事でもあったのかな?何処かおかしい感じだったしあの人」
「てか琉球のお母さんも何処か様子が変だったぞ?いやむしろ現地メンバー達も何処か変な気がするんだよな」
「何かルカさんに申し訳なさそうにしていなかったか?何となくだけどさ?」
「何か隠し事でもあるのかね?また他地方の名家からの厄介事とかさ?」
「……確かに、俺も父さん母さん達が何処か余所余所しいって言うか何か失敗してそれを告白しようとしている気配を感じるんだよな。明日それとなく聞いてみるか?」
そんな話題もあり、またこの間から議題に上がる『簡易悪魔召喚士計画』についても議題に上がる……これは『ガイア連合沖縄支部』として契約した悪魔達を沖縄支部に所属する多少なりとも悪魔召喚士としての素養がある現地民メンバーに貸し出すという代物だ
現地民の中には稀に悪魔召喚士が存在する。例えば『式神』を作成して使役する今代の『葛葉キョウジ*13』や餓鬼や悪霊などを使役出来る在野のダークサマナー*14などが偶に存在する……まぁそちらの最大手も
沖縄支部の場合は……この六人の
ただ……琉球ニキ達六人はその莫大な才能によるごり押しで数日で管使いの基礎を習得出来たが、普通の才能では先ずそうはいかない。彼らなら数日みっちり痛みに耐える気概があれば出来る鍛錬でも普通ならこれだけで数ヶ月で『才能がある』と言える難易度の代物だ。その苦痛も治療も本来ならさらに激しいハードルになるだろう*15
「一応、今の地点でも何人か適性がありそうな奴は出てきたんだっけか?」
「あぁ、うちの父さんと母さんは幾らか素質があるっぽいんだよな」
「うちは樹の奴にあったな」
「エルにも多少適性あるけど、あの適正値だと多分きつい修行になるだろうな」
「幸利と恵里にも素質あるみたい、でも他にも幾らか成長すれば素質が目覚める可能性あるから早合点はしない方が良いと思うよ?」
「うちのコボルトが咲に懐いた、真名を教えてでも支えたいみたいでな。これ多分召喚士適性とは違うみたい*16だけどあのコボルトは咲にあげようかと思うよ……皆新しいコボルトかビルヴィス*17辺りを召喚したいから手伝ってくれ」
「コボルトは偵察向き、ビルヴィスはあれできちんと使役出来れば収穫手伝いには向いてるんだよな?本来畑の邪魔する悪魔だけどアレ」
「今回は比翼ネキ連理ニキに監修して貰ってから俺たちの自力で召喚しようぜ」
「農業系悪魔の使役もやって損は無い、てか咲さんは豊穣神の転生体で銀剣もそうかも知れないんだ。そっちのビルドも真面目に考慮したいな」
「終末来たら絶対砂糖やスパイスは貴重な贅沢品になるだろう?なら銀剣は農業適性で普通の砂糖やスパイス、後コーヒー豆やカカオ豆の栽培とかどうよ?」
「利鞘確保考えたら間違いなく大事だよね?うちは家族全員家業の都合で徹夜多いし」
「うちもスパイスは大事だな、義父さん料理人だし……俺もコーヒー派だしな」
「うちは女の子多いしな……砂糖やチョコレートは間違いなく大事だわ。でも皆も偶には手伝ってくれよ?」
「「「「「任せろ兄弟!」」」」」
そんな感じで彼らは今日の会議を終わらせる……明日は師である比翼連理夫妻が沖縄に齎らしてくれる新しい武装のお披露目、そして午後は山梨第一支部に赴いてひちろネキやスポンサーである富豪俺たちとの会談である。既に資料や提出する書類は準備できているから後は明日に備えて寝るだけだ
そして次の日……久しぶりに実家のうるま市のとある住宅で目を醒ました琉球ニキは父からとんでもない事を告げられる
「お前の許嫁が数日後に来る」と
次回に続く
こないだ琉球ニキの脳天に突き刺さった旗が回収されるお話……ミナミィネキが野獣の眼光でこっちを見ている?