我の名はヴライ、豪腕のヴライである。
オシュトル絶対殺すマンにして執念深くいっそ純愛(?)の様な一途さを持った巨漢、それがヴライなのである。
物凄い偏見があるのは御愛嬌ということで。
ま、あながち間違いではないでしょ。
そしてそんな男に俺はいつの間にかなっていたと……。
「なんでぇ?」
頭を抱えながら現在の状況を整理する。
まず、ヴライは既に八柱将としてこのヤマトを守護する存在になっている。勿論帝は存命だし調べた限りでは原作通り八柱将の面々も同じだ。
つまり今のところ問題はなさそうだと言うこと。
それによくよく考えてみるとヴライになった事はそこまでマイナスなことではないということ。
だってオシュトルに喧嘩を売らなければいいだけだしな。死因も
死なない条件としてはオシュトル&ハクに喧嘩を売らない。
なんだ、簡単なことじゃないか。
これは勝ったなガハハハッ!!
「御前試合を行う。双方用意はいいか?」
「某は問題ありませぬ」
「我もだ」
嘘です全然用意出来てないよぉ。
ふぇぇ……。
安心して眠った後起きたらなんか闘技場みたいなところに連れてかれて、いきなり帝主催の御前試合に出ろとか言われたら目の前にオシュトルがいるんですけど。
表面はキリッとしながら心の中では号泣する俺に、オシュトルは油断なく剣を構える。
対する俺は武器らしいものはなく、素手だ。
いや武器プリーズ!! これ不公平でしょ!!
と思ったけどヴライってそう言えば武器なんて持たずステゴロで戦っていたなと遠い目になる。
「では、始め!!」
審判の言葉と同時にオシュトルは目にも留まらぬ速さで懐に入った瞬間、刀を振り下ろす。
「ぬぅ」
「流石はヴライ殿だ」
ほとんど条件反射で腕で受け止めるとオシュトルはさして驚いた表情を見せず、続けて剣戟を繰り出していく。
ぬぉぉぉぉおお死ぬ死ぬ死ぬ死ぬぅぅぅ!!
もう必死も必死、繰り返される攻撃にひたすら腕で防いだり避けたりと、なんとかオシュトルの猛攻を受け止める。
てか何気に俺戦えているんだが? もしやこれ意外といける?
数秒、或いは数分程攻防を繰り返している内に目が慣れ、体の動かし方もこの短期間で馴染み始めてきた。
オシュトルの恐ろしい攻撃にここで初めて反撃に出る。
振り下ろされた剣を左手で弾き、残った右腕でカウンターを決める!
「ふんぬっ」
「ぐっ」
吸い込まれるようにオシュトルの胸に腕が突き刺さった、ように見えて後ろに飛ばれて衝撃を緩和されていた。
やはりそう簡単にはいかないか。
「流石は豪腕のヴライ、一筋縄ではいかぬか」
「汝も流石は右近衛大将。強き武士よ」
油断なく構えながら俺はなんかそれらしい事を言う。
正直この時間はよ終われと思っているが、ここで降参するのは不自然だしあのヴライが弱気な姿なんて見せられないからね!
両者仕切り直すようにお互いに構え直し、相手の一挙手一投足を観察する。
勝とうとは思っていない。
こう、良い感じに負けるか引き分けにしようと思う。
だから今度は俺が攻める番!
「今度はこちらから行くぞ」
その言葉と同時に俺は大砲の様に突撃する。
自慢の片腕を弓のように引き絞り、ゴウッと風圧を飛ばしてオシュトル目掛けて放つ。
「甘い!」
咄嗟に剣で攻撃の軌道をズラされ、体の軸を崩された。
するとオシュトルは返す剣で俺の首に剣を振り下ろそうとする。
まだまだぁ!!
崩された軸を瞬時に直し俺は迎え撃つ様に空いた拳で剣を叩く。
ガキィン! と硬質な物が当たった音が闘技場に鳴る。
互いに崩れた体勢のまま次の一手を決めようとした時、
「それまで! これ以上は御前試合では収まりそうでない故な」
声の主はこのヤマトで最も尊き御方、帝だった。
あんな年老いた爺さんなのに凄い声量だな。なんて場違いな事を考えているとオシュトルがこちらに手を指し伸べてくる。
俺はそれに応えるように掴むとオシュトルは少し驚いた表情をする。
え? 自分から握手求めてきたのに? と思ったがあのヴライなら無視するか払い除けそうだよな。
自分で勝手に納得しているとオシュトルが戸惑いながらも話しかけてくる。
「ヴライ殿はあいも変わらず強いのだな」
「我は鍛錬ばかりをしているからな」
「どこか遊びに行ったりはしないのだろうか?」
なんだろ、ずかずか聞いてくるな。
「いや、我はそういった事はしていない」
「なら今度某と行ってみないか?」
「汝と?」
思いがけない誘いに驚いて聞き返すと、オシュトルは笑みを作りながら頷く。
「これでも色々と楽しい事を知ってはいるのだ。して、どうか?」
「……汝がそこまで言うのなら、その言葉に乗ろう」
ひゃっほい! なんか知らんがオシュトルが遊びの誘いをしてくれた。
このビックウェーブに乗らないなんて選択肢はないぜ。
「では今日の夜そちらに伺う故、支度だけしておいてくれるか?」
オシュトルの言葉に頷きを持って答えた後、俺達は帝のありがたいお言葉を聞いて去ったのだった。