剣と魔法を極めるのに必要な命の数は?   作:水色の山葵

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26「開戦」

 地下から階段を上り玉座の間に行くと、兵士たちとクラウスが待っていた。

 

「坊ちゃま、大丈夫でございますか?」

「あぁ、問題ない。街の譲渡も決まった」

 

 俺がそう言うと、反応したのは龍人(ネル)だった。

 

「は? あの方が本当に?」

「あぁそうだ。この街は俺に譲るそうだ」

「ふざけるな! クソ……オマエ、あの方に確認してこい!」

 

 龍人(ネル)の声に従って、兵士の一人が地下室へ入っていった。

 すぐに戻って来た兵士は龍人(ネル)に向けて頷く。

 

「なんだと……キサマ、あの方に何をした……!?」

 

 明確な殺意の籠る魔力が龍人(ネル)から放出される。

 その魔力から感じ取られる『覚悟』は、さっきの戦いの時の比じゃない。

 

「嫌か? 俺にこの街を乗っ取られるのは」

「俺の家族は俺の目の前で山賊に殺された」

「……だから何だ?」

「生きたまま魔獣に食われた者も居る。街ごと敵国に滅ぼされた者も居る。奴隷になり孤独と飢えの中で死んだ者も居る」

「俺とは全く関係のねぇ他人の身の上なんざ興味ねぇな」

「ここに居るレイスは皆、そんな怨念の中で生まれた。だがこの街にはそんな絶望はない。だから維持しなければならない。この楽園を、この楽園のまま、可能な限り長く存続させる。それが我等の未練の晴らし方だ」

 

 怨霊(レイス)は生前の未練が原因で発生する魔獣。

 通常、それは『復讐』に帰結することが多い。

 そもそも怨霊(レイス)の知能はそんなに高くないしな。

 

 しかし、どうやらこいつ等は違うらしい。

 

「故に――」

 

 そう、怨霊の長は物言えぬ他の兵士の心を代弁するかのように続ける。

 

「キサマに譲るわけにはいかない。規模が増せば楽園は維持できぬのだから」

「じゃあ戦争だな。というかそもそもそういう話に纏まってんだ」

「どういう意味だ?」

「譲って貰った、より奪い取ったって方が評価されるんだよ」

 

 確かに、街の領主と交渉して街を譲り受けた、でもある程度の褒美は貰えるだろう。

 

 だが交渉術より武力の方が評価されるのは世の常だ。

 見栄えがいいし、分かりやすい。

 

 だから奪う。

 それが戦う理由の三割だ。

 

 後の七割は……これで、俺より強くなったと豪語するヨスナと戦うことができる。

 

 ヨスナもそれで納得してくれた。

 多分、こいつらを納得させるために。

 

「評価……だと……?」

「あぁ。俺は別にこんな街が欲しいわけじゃないし、国に貢献しようなんて気も全くねぇ。ただ認められるためにやってるだけだ」

「そんな奴に……」

「嫌なら抗えばいい。開戦は三日後、お前らの全軍を出して来い。俺も俺の持てる全部でお前らの相手をしてやる」

 

 当てられ続ける攻撃性の強い魔力に、俺の魔力感知が鋭敏に反応する。

 龍人(ネル)だけじゃねぇ。

 他の兵士共からも、俺に向ける強い怨みの魔力を感じた。

 

 あぁ、楽しみだなぁ……

 

「二言はないな? オレたちは確実にキサマを殺すぞ」

「一度負けた口で良く吠えるもんだな。最低限、その身体の全開くらいは引き出せるようにしとけ」

 

 憎しみだろうが怨念だろうが……

 楽園や平和を願う心だろうが……

 どうでもいい。なんでもいい。

 

 それが交戦意欲であるのならば、問題は何もない。

 

「帰るぞ、クラウス」

「はっ」

 

 龍人(ネル)が、地下から戻って来た兵士に確認するようにそちらを見ると兵士は頷く。

 

「ッチ」

 

 クラウスの拘束は簡単に解かれ、俺の後ろを付いて来る。

 

「どういうことでございますか坊ちゃま」

「あの女は俺の昔の知り合いだ。だから宣戦布告してきた」

「なぜに!? 失礼……どうしてそのような……」

「あいつも俺も遊び相手が欲しかったから、かな?」

 

 クラウスは俺をいぶかし気に見て、諦めたように笑った。

 

「ハハ……」

 

 そのまま俺たちは入って来た場所から街を抜け砦に戻った。

 

 

 ◆

 

 

「つうわけで三日後に全面戦争すっからよろしく」

 

 砦に戻った俺が将軍含め、何人かの兵士の前でそう言うと彼等は頭を抱えて叫び散らした。

 

「ふざけんなよクソ王子ぃぃぃぃぃぃ!!!」

「何やってくれてんだよぉぉぉぉぉぉ!!!」

「終わりだ……俺たち全員焼き殺されるんだ……」

「いや、竜巻でふっとばされるのかな? それとも岩の中に閉じ込められて餓死とか窒息とか?」

「遺書書いとかないと……」

 

 他にも絶対に王族に言っちゃいけない類の暴言が一斉に飛ばされた。

 まぁ、こいつらにしてみれば不敬罪で死ぬのと龍に殺されるのに差なんかねぇだろうからな。

 

「まぁ心配すんな。お前らの出番はねぇから。ただ俺が戦ってるところを見てればいい」

 

 必要なのは観客だ。

 俺が敵軍を壊滅させても、それを証明する人間が居なければ報告できないからな。

 

「坊ちゃま、本当に大丈夫なのですか? 今更坊ちゃまの実力を疑うわけではありませんが、流石に敵の数が多すぎるのでは?」

 

 敵戦力は龍人ネルを含めた龍が六頭。

 そしてアンデッドが数百体。

 更に大将としてヨスナ。

 

 逆に俺には私兵なんかない。

 俺にできるのはこれまでに覚えた魔術と剣術。

 そして前世で得た――だけだ。

 

「心配するなクラウス。負けると思って勝負なんか挑まない」

「そうですか。わたくしも微力ながら助力はしますよ」

「まぁ見物人は多いに越したことはない。それより一度城に帰るぞ」

「何故ですか?」

「こいつ等と同じ場所に居たら暗殺されかねねぇから」

「確かに……そうですな……」

 

 発狂間近の兵士たちを見ながらクラウスは苦笑いしてそう言った。

 

 

 ◆

 

 

 夜通し馬車を走らせ、俺は王都へ戻って来た。

 

 一日しか経ってないにも関わらず久々に自分のベッドに倒れた気がする。

 

 少し疲れたな。

 身体的にじゃなくて精神的に。

 驚くことが多い一日だった。

 

「今夜は書庫へは行かれないのですか?」

「あぁ、もうヤミには用はねぇからな」

「そうですな。もしも本当にナスベ龍街を落とせたなら、きっとお父上も坊ちゃまをお認めになるでしょう」

「禁書庫へ入る権利さえくれればどうでもいいけどな。まぁ今日はもう寝る」

「かしこまりました。それでは本日の予定は全てキャンセルしておきます」

「助かる」

 

 まだ午後五時だが、クラウスは俺の疲れた様子を察したのか部屋から出て行った。

 

「明後日か、作戦立てとかねぇとな」

 

 魔力を高め、集中する。

 俺の中に存在する繋がりを逆算し、その先に接続。

 すると部屋の床に魔法陣が浮かび上がった。

 

「隷属召喚術式【恐使の喚騒(ゾルドアーミ)】」

 

 呟くように唱えると、魔法陣の中から人骨が姿を現す。

 ベルナが作った【恐解の約定(ゾルドルート)】を発展させたこの術式は、【恐解の約定(ゾルドルート)】の対象下にある存在を自分の位置に呼び出すことができる。

 

 この術式はベルナの隷属術式と同じように、発動に必要な魔力消費の大半を召喚する相手から徴収することができるため魔力量による召喚制限をほぼ無視できる。

 

「久々だなエルド」

「あぁ、十年振りだ……」

 

 俺の記憶が覚醒したのは数カ月前だからそんなに経った感覚はないが、俺の魂がこの身体に宿ったのはこの身体が生まれた瞬間だ。

 それから脳が俺の記憶を受け入れられるようになる十歳まで、俺の意識は眠っているような状態になる。

 

 他の奴等からすれば、俺との時間間隔に差が出るのは当然だ。

 

「ここは?」

「レイサム王国王都王城、第十一王子の私室だ」

「その姿を見るに、其方の次の転生先が王子だったというわけか」

「お前は理解が早い骸骨だな」

「其方の力と状況を見れば自然と浮かぶ解だ。それで我を呼び出したということは、それに足る問題が起こったということだろう?」

「まぁ座れよ」

 

 俺が座るベッドの横の椅子に腰を下ろしたエルドに事情を話す。

 

 俺が龍の生涯を経験したことがあること。

 ヨスナという人間の存在。

 ナスベ龍街との戦争予定。

 敵の戦力。

 

 それを俺単独の力で打倒しなければならないという状況。

 

「単独の力ってのは国や軍の力を借りれないって意味な」

「だから我等の力を必要としていると?」

「あぁ、とてもじゃないが俺一人で数百のアンデッドや数頭の龍を同時に相手にするのは無理だ」

 

 ヨスナは俺より強くなったと言った。

 しかしそれは、当然あの死霊術式込みの話だろう。

 あいつとタイマンで戦って勝ったって勝利とは呼べない。

 

 あいつの土俵で俺は戦いたい。

 

「了解した。他の者にも事情を伝達し、できる限り多くの魔獣を集めて置く」

「あぁ、それと『あいつ』にもよろしく言っといてくれ。軍略で勝つならあいつの力も必要になるだろうから」

「あいつ……? なるほど、承った」

 

 そう残して、エルドは俺の部屋から影も形も消失した。

 

 さて、これで明後日の戦いの準備は終わりだ。

 後はいつも通りのトレーニングと……

 少し散歩でもするか。

 

 高揚が収まらない。

 全然眠くならねぇ。

 

 エルドと話し込んでいる間に時間は経って、空に月が昇るような、そんな時間になっていた。

 

 目的地もなく、兵士に見つからないように魔力を隠して王城を歩いていると書庫の扉が開いているのが目に入った。

 

 扉の中、後一歩前に進めば外に出てしまうという距離でその女はただ立っている。

 

「ヤミか?」

「ネル様……こんばんは」

「何やってんだ?」

 

 ヤミは目も合わせずに下を向いたまま、小さく呟く。

 

「一昨晩も、昨晩も、姿が見えませんでしたね」

「野暮用だ」

「今日は寄って行かれるのですか?」

「いや、これはただの散歩だ。もう書庫には用はない」

「いいのですか? あれほど禁書庫を閲覧したがっていたのに……」

「方法を変えることにしたんだ。お前は意志が固く、強い女だ。だからルールを曲げて俺を禁書庫に入れることは絶対ないだろ」

「強い? 逆ですよ……」

「……?」

 

 どういう意味だ?

 

「ではどうやって禁書庫に入るつもりなのですか?」

「手柄を上げる。ナスベ龍街って知ってるか? そこと戦争してくる」

「戦争……? 王子自らですか!?」

「俺が行かなきゃ俺の手柄にならないだろ」

 

 そもそも勝手に喧嘩吹っ掛けてきたのは俺だ。

 

 三日後という短い準備期間の戦争を提案したのも、国の上層部にバレて面倒なことにならないようにだ。

 

 戦争することになったという報告だけなら、俺は手柄どころか叱咤の対象になる。

 手柄にするには『勝って都市を手に入れた』という報告をするしかない。

 

「そんな……私のせいで……」

「お前のせいなわけあるか。お前はただ自分の仕事を全うしただけだろ?」

 

 俺がそう言っても、ヤミの面持ちはどこか思い詰めたままだった。

 

「ネル様、ネル様が毎晩書庫に来ていたのは結界術式を解析していたからですよね?」

「まぁそれもあるな」

「どれくらい進みましたか?」

「再現できる程度には解析したが、分かったのはその結界が完璧ってことだけだ。お前に解かせる以外に解除の方法はない」

「再現……やはり貴方は天才ですね……」

「世辞はいい。実際意味のない研究だったしな」

 

 なにが言いたいんだこいつ?

 そう思っていると、ヤミは意を決したように顔を上げ、俺の目を見た。

 

「ネル様、今日は満月だとお昼に来ていた貴族様が話しておられました」

「そうだな。俺もさっき中庭を通った時に見た」

「書庫の窓からではお城の壁や屋根に隠れ月は見えないんです」

「そうか」

「久しぶりに見たいのです」

「けどお前は……」

「少しだけ、結界術式の制御を交代していただけませんか?」

「お前、何言ってんのか分かってんのか?」

 

 俺に結界術式の制御権限を渡すということは、解除も維持も俺の自由自在になるってことだ。

 

 そうなれば、禁書庫へ入るために残るのは物理的な錠前が一つだけ。

 俺なら身体強化だけで引き千切れる。

 

「ネル様、お願いいたします」

 

 ヤミは俺に頭を下げて懇願する。

 あれほどまでに拒んでいた女がどうして……

 全く理解できなかった。

 

 俺は何も考えずに頷く。

 断る理由は何も無かった。

 

「分かった」

「こちらへ」

 

 書庫の中へ入ると、ヤミが俺の手を握る。

 そのまま術式の指揮系統が完全に譲渡された。

 これで俺が書庫から出ない限り、ヤミがどこへ行こうが結界は維持される。

 

「少し城内を散歩してきますね」

 

 そう言ってヤミは魔力を隠し、書庫の外の廊下を歩いて行った。

 

 目の前には碌な鍵も掛かっていない禁書庫への扉がある。

 入ろうと思えば入れる。

 

 ――どうする?

 

 目的が根底から覆る。

 ヨスナに勝つ必要がなくなってしまう。

 戦う理由がなくなってしまう。

 

 それじゃダメだ。

 あいつと本気でやり合うための理由は一つでも多い方がいい。

 

 その方が絶対に楽しい。

 

 

 

 しばらくしてヤミが書庫へ戻って来た。

 

「どうしてですか?」

 

 禁書庫の扉に付けられた錠前が全く動いていないことを確認したヤミは静かに呟く。

 

「そっちこそ、久しぶりの外はどうだった?」

「月が綺麗でした……」

 

 その顔を見れば、なんとなくヤミの意図が分かってしまった。

 俺を助けようとしてくれているのか。

 

 そうか。お前は俺が思ってたよりずっと、情に厚くて優しい奴だったんだな。

 だが問題はない。心配する必要もない。

 

「俺は死なない」

 

 戦争なんて、言葉が過ぎたな。

 まぁやること自体はその単語が指すものとして全く間違ってはいない。

 

 だが、それでも俺がそこへ向かおうとする感情(こうきしん)とヤミが俺に抱く感情(しんぱい)には大きな違いがある。

 

「だから心配すんな。こいつは返すよ」

「そうですか……分かりました……」

 

 俺が手を差し出すと、ヤミは俺の手を握った。

 そのまま結界の権限をヤミへ戻す。

 

「ネル様、私も行きます」

「……あ? どこに?」

 

 真っ直ぐと俺を見るその瞳は、魔術師というよりは戦士のようで……

 揺らがぬ意志を言葉に直すように、ヤミは芯の強い声で言った。

 

「戦争に」

 

 

 ◆

 

 

 ヤミが継承した結界術式。

 術式名は【五神盾(アランテス)】。

 

 確かにあの魔術は強固だが、ヤミが病気になったりした時点で維持できなくなる。

 そんな状態を鉄壁と認める訳はなく、王国には【五神盾(アランテス)】を使える魔術師の控えが三人居る。

 

 その一人がヤミの祖父らしく、そいつに代理を頼んで今日一日だけ外出を許可して貰ったらしい。

 

「マジで来るなよ」

「これは私の責任でもありますから」

 

 なわけあるかよ。

 けど、そう言ってもこいつはもう止まらなそうだ。

 

 戦争当日。

 ナスベ龍街とそれを監視するための砦の中心、軍団の激突が予想されるその場所を見下ろせる丘上に俺たちはやって来ていた。

 

 ここには今七台の馬車が止まっている。

 六台は俺が連れて来た物で、残り一つはヤミの私用車らしい。

 

 外出ねぇのに馬車は持ってんのかよ。

 

「しかし兵は?」

「居ねぇよ。俺に使える私兵なんかない」

「馬鹿なのですか?」

「マジな顔でディスってんじゃねぇよ。ちゃんと勝つから心配するな」

「しかし、それではあの馬車の中は……?」

 

 俺とクラウスだけでいいのに、何故こうも大所帯かと言うと使用人を何人か連れて来たからだ。

 それに、机や椅子を含めた茶会のセットを持ってきた。

 

「坊ちゃま、用意ができました」

 

 クラウスの方を見ると、机と椅子、それにお茶と菓子のセッティングが完了していた。

 

「おぉ、助かる。まぁヤミも、それにお前らも座っとけよ」

 

 馬車ではなく徒歩と馬で丁度今到着したのは砦の軍人たちだ。

 俺たちが来る途中で声を掛けておいた。

 百人以上居たはずだが半分も見えない。

 多分逃げたな。まぁいい。

 

 そのために使用人たちも連れて来たわけだし。

 

「王子……これは一体……?」

 

 砦の将軍、ウハクが戸惑いながらに聞いて来る。

 

「言っただろ? お前らの出番はねぇって」

「しかし……」

「まぁ紅茶でも飲んでろ。俺は開戦の合図をしてくる」

 

 飛行術式を起動。

 足が地面から離れる。

 

 クラウスに、

 

「行ってくる」

 

 と声を掛ければ、

 

「お戻りをお待ちしております」

 

 と返事をくれた。

 

 すでに、ナスベ龍街の騎士たちは陣形を取って配置に付いているのが見える。

 

 一番後方には龍が五頭並んでる。

 迫力は申し分ないな。

 

 俺はそこへ向けて一気に加速する。

 崖から落ちる様に速度を上げていく。

 低空飛行で前々前世の俺の身体の元まで駆けた。

 

「ネル様、飛行術式も使えるのですね」

「っておい、付いてくんなよヤミ」

 

 こいつ、本気じゃないとはいえ俺の速度に付いて来れている。

 飛行術式は結構難易度の高い術式なんだがな……

 

 流石、『最多の魔術師』と呼ばれるだけのことはある。

 

「心配なので」

「はぁ……まぁいいか」

 

 そのまま、俺とヤミは敵軍の先頭に立つ龍人(ネル)の前に降り立った。

 

「やっと来たか。それで軍はいつ到着する?」

 

 空気を呼んだのか俺の後ろに控えたヤミを尻目に、俺は龍人(ネル)の質問に魔術をもって返答する。

 

「出て来い、【恐使の喚騒(ゾルドアーミ)】」

 

 俺の後ろに魔法陣が幾つも……数十、数百と現れる。

 

「これは……なんだ……?」

「召喚魔術……でもこの数は……」

 

 龍人(ネル)とヤミの驚愕と共に、魔法陣の中から魔獣たちが姿を現す。

 

 最後に、俺の後ろに四体。

 エルド、ソウガ、ラムス、リクウが現れ控える。

 

「スケルトン二百」

「ゴブリン百二十」

「スライム百八十」

「鳥類系魔獣百六十」

「計六百六十四体、其方の命により召喚は完了した」

 

 六百体か。

 まぁ数は同じくらいだな。

 

 俺は【恐解の約定(ゾルドルート)】を四体の上位種にしか使用していない。

 だがこの四体は、迷宮内に置いて同種を指揮する権利を持っている。

 

 その繋がりを併用することで上位種以外の魔獣も【恐使の喚騒(ゾルドアーミ)】の対象にすることが可能だ。

 

 ただこいつ等は『ストレ大迷宮』の魔獣たちだから、ビステリアに許可を貰わないと召喚できない。

 今回は迷宮防衛が可能な最大限を寄越して貰っている。

 

「ネル様、貴方は一体……」

 

 言い淀むヤミを無視し、龍人(ネル)の方へ向き直る。

 

「こいつら全部倒せたら、俺が相手してやるよ」

「キサマ……いいだろう。三日前のオレと同じだと思うなよ!?」

「威勢が良くて結構、けど結果で見せてくれ」

 

 再度、俺は飛行術式を起動する。

 

「ネル、其方にこれを」

「あぁ、サンキュー。ヤミ、戻るぞ?」

「え? あ、はい」

 

 エルドからある物を受け取り、そのまま俺はさっきの丘の上まで戻った。

 

 

 さて、これでやっと……【開戦】だな。

 

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