剣と魔法を極めるのに必要な命の数は?   作:水色の山葵

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64「集合」

 

 ヨスナとリョウマ、それと俺の死体を使って蘇った怨霊(レイス)と一緒に俺は屋敷へ戻ってきた。

 怨霊(レイス)は今は『アル』と名乗っているらしい。

 リアが言っていた御前試合の参加者の中にも『アル』って名前があったが、こいつのことなら納得だ。

 

 ヨスナを間にして俺とアルと三人で並んでカウンターに座り、奥ではリョウマがうどんを作り始めた。

 麺を茹でる音とかき揚げを上げる音が心地よく響き、食欲をそそる匂いが部屋に充満していく。

 

「リョウマを送ってくれてありがとな」

「いえ、この森を調査する仕事のついでですから」

「仕事?」

「一応冒険者の資格を持っているんです」

「ヨスナさんは最上位の金剛級冒険者ですよ」

 

 最上位……

 俺が冒険者やってたのはヨスナに会う前だったけど、その時の俺は白銀級だった。

 白銀級ってのは金剛級の四つ下のランクだ。

 

「あっそう」

 

 なんとなく、ヨスナの額を人差し指で弾いた。

 

「あいたっ、いきなり何をするのですか?」

「別に? 凄いじゃんお前」

「もしかして、金剛級になったことないんですか?」

 

 したり顔のヨスナは前に会った時より大分生意気だ。

 けど、そんなヨスナも悪くない。

 

「……言ってろっつの。そういやお前も剣聖を決める試合に出るんだよな?」

「お前も? やはりネルもでるのですか? ですが参加者の名簿に貴方の名前はありませんでしたよ?」

「俺は剣聖側で出ることになってる」

「もうなっているわけですか……」

「なんだお前、なったことねぇの? 剣聖」

 

 俺がそう言うと、ヨスナは俺の額を人差し指で弾いた。

 

「痛って」

「生意気ですね、相変わらず」

「ネル殿、あまり調子に乗らないでください」

「お前、そんな喋り方だったか? 死体泥棒(ハイエナ)

「こっちが素です。この身体のことは感謝してますが、それとこれとは話が違う」

 

 そう言うと、アルはヨスナの腕を引き寄せた。

 

「ヨスナ様もこの男の何がそんなにいいのやら……」

 

 別にヨスナが誰と仲良くしようがどうでもいい。

 けど、ちょっと面白そうだからノッてみよう。

 

「なぁヨスナ、前会った時とちょっとメイク変えた? よく見せてくれよ」

 

 そう言ってヨスナの顎を持って、こっちに視線を向けさせる。

 

「……コホン。ヨスナ、オレはお前を絶対に裏切らない。ずっと一緒に居る。お前にこの命の全てを捧げたって構わない」

「え?」

「なぁヨスナ、お前の全力を受け止められるのは俺だけだ。俺ならお前を満足させてやれる」

「えぇ?」

「お前がこの男のことを好ましく思っているのは分かっている。だが、オレはお前を護りたい。お前のためならなんだってできる」

「天使……」

「俺はお前を護ったりしない。その代わり恐怖も不安もなくなるくらい頭ン中ぐちゃぐちゃに壊してやるよ」

「悪魔……」

「オレの方がいいよな?」

「俺だよな?」

 

 肩を抱き寄せるアルと、顎を持ってこっちに向ける俺の間で、ヨスナの顔は徐々に赤みを増して行く。

 

「……ホストじゃん」

 

 リョウマがボソリと呟いた。

 

「なにそれ?」

「最近では歌舞伎の役者見習いとかの時間を裕福な女性に買って貰ってお酒を飲みながらお喋りするという商売があるそうです。そういうのを巷ではホストと呼ぶそうですよ」

 

 そう言いながらリョウマは俺たちの前にかき揚げとうどんを置いた。

 ホストか、あんまり興味ないな。

 

「あ、あの私……向こうで食べます……!」

 

 お盆ごと料理を持ってヨスナはテーブル席の方へ行ってしまった。

 そのままうどんを啜り始めたヨスナを見て、箸使えるんだ、なんて感想を抱きながら俺とアルも料理に手を付け始める。

 

「ズルズル」

「ズルズル」

「ズルズル……」

「ズルズル……」

「ズル……お前、ヨスナのこと好きなの?」

「ズル……いえ、オレには生前妻が居ましたから。一筋ですよ」

「ズルズル、じゃあ今の何?」

「ズルル、オレは貴方が嫌いなんです。だけどヨスナ様には恩がある。言ったことも嘘ではない。あの方のためなら、オレは全てを捧げられる。それにこの身体でする不貞がどういう扱いになるのかなど分からないからな」

「アルさん、『生前』ってどういう意味ですか?」

「こいつ怨霊(レイス)って魔獣なんだよ。今は死体の身体に入ってるだけ」

「……へぇ、保存食に使えそう」

 

 注目すんのそこなのかよ……

 いや、流石料理人ってことにしておこう。

 こいつも結構常識ズレてきたな……

 

「貴方の方こそヨスナ様のことをどう思っているんですか?」

 

 勘違いされることを怖れず言うなら、ヨスナは俺にとって『経験値』だ。

 新たな魔術の可能性を示してくれる大切な存在だ。

 だけどこいつの言ってることはそういう意味じゃねぇんだろう。

 

「別に、俺はあいつの何かを変えようとは思わない。ただ俺は強くなるためにあいつを利用してるだけだ」

「じゃあやっぱりオレは貴方が嫌いです。けれどヨスナ様はそんな貴方でも好きなのでしょう。オレでは貴方には並べない。あの方にとって貴方はかけがえのない存在だと分かっているんです」

 

 そう言ってアルはまた、ズルズルとうどんの麺を啜り始めた。

 

「そうか? けど、少なくともあいつは前会った時より楽しそうだ」

「……」

 

 このうどん美味いな。

 

「リョウマ、このうどんマジ美味いわ。お前が帰ってきてくれて良かった」

「ありがとうございます」

 

 完食だ。

 横を見ればアルも汁まで平らげていた。

 ヨスナも空になった器を持ってくる。

 

「リョウマくん、ご馳走様でした」

「お粗末さまでした」

「アル、明日はこの森の調査の続きをします。付いてきてくれますか?」

「勿論です」

「ありがとうございます。一人じゃ冒険者の仕事なんて退屈なだけですが、貴方と一緒にする仕事はいつも楽しいです」

 

 そう言って可憐に笑うヨスナを見て、アルは目を閉じ眉間に皺を寄せてその言葉を噛み締めていた。

 

 そこで、ガラガラと玄関の扉が開く。

 

「ネル、見つかったぞ」

 

 深淵のような真っ暗な瞳。

 真っ白な肌に人間らしい赤みは一切なく、柔らかさなど微塵も感じない。

 魔術で作り出された黒いローブと宝玉のあしらわれた魔術杖を持ったそれは……

 

「エルドか」

「エルドさん、お久しぶりです」

「あの時戦ったスケルトンか。エルドという名前だったんですね」

「ネルの使役獣ですか、少し強くなりましたか?」

「ふむ、我はエルド。想像通りネルに使役される存在だ。久しぶりだな、龍の娘と我が同胞よ」

 

 アンデッドって意味じゃエルドとアルは同じか。

 

「それで、どうしたエルド」

「あぁ、其方が倒した蝙蝠の魔獣の解体が終わった。其方の読み通りコレが中からコレが見つかった」

 

 そう言ってエルドが差し出したのは指先より少し大きい程度の白い玉だった。

 真珠のようにも見えるが、それが内包する魔力を感じればそれが尋常の物ではないことは明白だった。

 

「なんですかこれ」

「……見たこともない宝石、いや金属ですか?」

 

 俺はその金属を見たことがある。

 前に見た物よりかなり小ぶりではあるが、間違いなくそれはアガナドの体内にあった金属と同じ。

 ビステリアが【赫蒼合銀(ミスリル)】と呼んでいた金属だ。

 

「女神サマのパーツらしいぜ?」

「神様なんて居ませんよ」

 

 かつて龍に捧げられた巫女だったヨスナは真顔で俺を見た。

 

「まぁ自称なんじゃね?」

 

 実際相当制限あるみたいだし全知全能には程遠い。

 それに、この石の原理も教えてくれないしな。

 

「だが少なくともこの金属には魔獣の進化を促す力がある。それはつまり遺伝子の操作だ」

 

 遺伝子操作。

 それは魔術的にも全貌が明らかになっていない悪魔の領域。

 俺がやってる魔獣覚醒の仕組みだって、遺伝子を直接操ってるわけじゃなく、自然を変化させることで遺伝子の変化を促してるに過ぎないしな。

 

 だが俺は、人間に生まれながら龍へ至った女を知っている。

 それは龍が人へ成る以上にずっと難解な術式を使わなければ不可能なことだ。

 遺伝子を操り、より上位の生命体へ肉体を改変する。

 

「ヨスナ、お前の意見が聞きたい」

 

 それは、おそらく人類史上――この女だけが成し遂げた【奇跡】。

 

「分かりました」

 

 エルドから石を受け取ったヨスナは、そこに操作術式を込めていく。

 操作術式は形状や性質、運動量などを操作する術式の総称。

 石自体に遺伝子を『操作』する因子が含まれているのなら、高レベルの操作術式の影響下に置くことで何か反応があるかもしれない。

 

 目を閉じて数分。

 石へ多くの魔力を込めていたヨスナの目が薄っすらと開く。

 

「終わりました」

「どうだった?」

「内部構造はミクロン単位、もしくはそれ以下のサイズで複雑に構成されています。私の持つ知識と技術では『オーバーテクノロジー』であるということ以上は分かりません。申し訳ありません」

「いや、それが分かっただけで上出来だ」

 

 女神の言葉に信憑性が増す。

 ビステリアと違い力を封印されていない女神も存在する。

 それは恐らく銀庫を作った文明『マリアノ王朝』を滅ぼした存在だ。そして俺が最初に生まれた国を滅ぼした存在である可能性も高い。

 

 ならば、それこそが俺が目指すべき頂点。

 

 その女神はきっと俺の常識を覆すような強さを持つんだろう。

 それは最強を目指す俺にとっては最高の情報だ。

 

 だが、どうしてアゲハがこんな物を持っていた?

 この森にたまたまあった?

 そんな偶然あり得るか?

 

 いや違う。アガナドの時と同じだ。

 

 

 ――誰かが【赫蒼合銀(ミスリル)】をアゲハに食わせた。

 

 

 この森にやってきた人間は何人か居る。

 リア、アマツ、ゼンマ、ヨスナ、アル……そして、リョウマ。

 

 十中八九、犯人はこの中の誰かだ。

 

 

 ◆

 

 

 ヨスナもまたリアやアマツと同じように数日間屋敷に滞在し、一度緋の国の王都へ戻っていった。

 

 それから一月。ようやく、待ちわびたその時がやってくる。

 

 

 

 当日、屋敷へ最初にやって来たのは――

 

「久しぶりじゃな。ネル」

「よぉ爺さん、待ち遠しかったぜ」

「集合場所と休憩所としてこの場所を使ってもよいか?」

「別に構わねぇよ。好きなだけ飲み食いしていってくれ」

「感謝しよう。加減はせぬがな」

「そりゃおありがてぇ」

 

 アマツ、始まりの剣聖はいち早く俺の屋敷へ姿を現した。

 その隣には目深にフードを被った女が居て、その女はリョウマを見ると笑みを作ってフードごとローブを脱いだ。

 中身は水色のショートヘアに黒いスーツを着た女だった。

 

「お久しぶりです、リョウマ様」

「貴方は……ヒオリさん?」

「はい。今回はアマツ様に頼まれまして第三者機関である冒険者ギルドの人間に審判をして欲しいとお願いされたんです」

「なるほど。あ、ネルさんこの方は冒険者ギルドで受付をしているヒオリさんです」

「へぇ」

「貴方があのゼンマ様を破った新たな剣聖ネル様ですか。初めまして、よろしくお願いします」

「よく分かったな。俺が剣聖だって」

「私、噂が好きなんです」

「そうか、けど俺はこの森から十年以上出てねぇ。俺の人相は誰に聞いたんだ?」

 

 俺がそう聞くと、ヒオリは一瞬言葉を詰まらせた。

 俺の顔を知ってるのは、リョウマ、ゼンマ、アマツ、リア、ヨスナ、アル。

 このたった六人だけだ。

 どいつも口が軽い奴だとは思えねぇ。

 

「噂ですよ、ただの」

「へぇ。そうか、噂ってのは便利なモンだな」

「……そうですね」

「今日はよろしく」

「よろしくお願いいたします」

 

 少しだけ魔力を強めて、握手の手を差し出す。

 けれどヒオリは全く臆した様子を見せず、簡単に俺の手を取った。

 

 そして御前試合の参加者が続々と屋敷へ集まってきた。

 おそらくはアマツがこの場所を伝えていたのだろう。

 

 対応はリョウマに任せている。

 客たちは料理長リョウマとその部下である俺の使役魔獣が造った料理を飲み食いしながら、全員の到着を待った。

 

 次に来たのはリアだった。

 横にはリアより少し幼く見えるエルフの女を連れている。

 

「久しぶりね、ネル。今日は楽しみよ」

「あぁ、そっちは?」

「この子はエルフの族長、私は警護のためにこの子から長時間離れることはできないの。だから付いてきて貰った」

「前の時は居なかったみたいだけど?」

「前は別の騎士に護衛して貰ったの。でも今回は、どうしても私が戦ってるところが見てみたいんだって」

「初めましてネル様、わたくしはメイラナル・ステラクセルロディア・ハービティア・クレイラドレンスと申します。お噂はかねがね」

 

 お噂ね。

 どこまで知ってるのやら……

 

「あぁ、よろしくメイラ」

「わたくしのことをそんな風に呼ぶのはリアだけですわ」

「あぁ、俺長い名前憶える気になんないから」

「そうですか。いいでしょう、わたくしをそう呼ぶことを許します」

「そらどーも」

 

 短い挨拶を終えてリアと はテーブル席に座った。

 

 次はヨスナとアルが現れて、俺に一礼して適当な席へ座った。

 リンカがネオンとヤミを連れてやってきた。

 三人とも俺に気が付いた素振りはない。まぁ、名前も言ってないし当たり前だ。

 周囲を見渡した後、三人で同じテーブル席に座った。

 

「おぉ、強そうな人がいっぱいだ」

「そうですね」

 

 ネオンの気楽な声にリンカは頷き、リアとヨスナへ視線を向けた。

 あの二人を知ってるらしい。

 いや、ネオンはリアと俺の闘技場での戦いを見ていただろうし、ヨスナとの戦いはビステリアに見られてた。

 リンカが二人を知ってても不思議はないか。

 

「こんにちは、わお美人な女の子がいっぱいだ」

「あまりそういうことを言わない方がいいですよ。もうおじさんなんですから」

 

 エルフ故に全く変化のないカエデが、二十四年分の歳をとったミラエルを連れて姿を見せる。とはいえ、ミラエルの童顔は健在でまだ二十代後半くらいに見える。

 

「分かってるって、僕はカエデちゃん一筋だよ?」

 

 そう言ったミラエルの横腹をカエデは肘で突いた。

 

「ぐへっ」

 

 それにミラエルの後には、他にも見たことのある奴らが入ってくる。

 ダジル、ケネン、シャルロット、シルヴィア。最後に会ったのは二十四年も前でその分歳は食ってるが一目で分かった。

 にしても、どいつもこいつも王族らしい面になったな。自信に満ち溢れた風格を持っている。

 出場者じゃねぇだろうけど見物だろうか?

 

 そしてその先は全く知らない奴らばっかりだ。

 

 アマツとカエデ以外の剣聖サイド。

 

 一人目は藍色の髪をした三十歳くらいの女。腰には刀を一本携える。静かに戸を開いた彼女はアマツに挨拶をして、カウンター席の一つへ腰掛けた。

 

「アイツキ・ナギサ様、剣聖の一人です。父の紹介で何度かお会いしたことがありますが、間違いなく一流の剣士ですよ」

 

 リョウマが小声でそう補足してくれた。

 確かに佇まいからして尋常な剣士じゃない。

 身体操作もさることながら、自身の魔力を完全に統制できている。

 

 

 次に入ってきたのは黒髪を後ろで結った若い男だった。リョウマと同い年くらいだろうか?

 黒を基調に白のストライプ柄があしらわれた着物を羽織っているが、体格に対して少し大きな気もする。黒い刀を背負っている。

 

「タガレ・ミヤツグ様。年齢は十八です。二年前に父親が死して、その後を継ぐ形で剣聖の称号を手に入れました。勿論、アマツ様の選定を受けてです」

 

 タガレ……

 俺の師匠、タガレ・ゲンサイと同じ苗字だ。

 にしても、この若さで剣聖か……()ってみてぇ。

 

 

 次に入ってきたのは白髪の女だった。ずっと目を閉じている。それでも周囲の物体をなんらかの技能によって認識しているらしく、躓いたりぶつかったりはない。

 アマツの前で一礼し、空いている畳席に座った。無口な奴だ。

 

「マシロ・リョウカ様。二十歳です。先天的に目が見えない病気を患っているらしく、魔術によってそれを補完しながら生活していると聞いています。剣技の腕は超一流『視覚に頼らない彼女に死角はない』と詠んだ詩人もいるほどです」

 

 目が見えないか……

 スケルトンの時の俺と似た境遇だ。

 しかし先天的ということは俺と違って一度も景色を見たことがない状態からのスタート。

 才能はない、というよりマイナスからスタートだ。それが剣聖にまで上り詰めた技巧は体感してみたいものだ。

 

「ったく、なんで俺がこんなところまで来てやんなきゃいけねぇんだよ」

 

 七人目、最後の現剣聖はそんな悪態を吐きながら現れた。

 

「こんななんもねェ森の奥でやんなくても、例年通りに候補者と決闘でもすりゃいいだろ。なぁ爺さん?」

 

 そう言ってアマツの眼前にまで顔を近づけた男は左右非対称な笑みを浮かべていた。

 

「ゲジョウ、アマツ様がお決めになったことだ。お前が文句を言えることではない」

 

 そう言ってゲジョウと呼ばれた男を止めたのは、その後ろから入ってきたリョウマの父親、元剣聖クロガネ・ゼンマだ。

 

「ゼンマのおっさん、あんたはもう剣聖じゃねぇんだろ? そんなただの一般人に文句言われる筋合いねぇのはこっちの方だぜ」

 

 なんでゼンマが居るんだ?

 と思ったがなんとなく分かった。

 

「ゲジョウ、既にここまで来ているのだからそのような文句を言っても仕方ないだろう? 口を慎め」

「ッチ」

 

 ゼンマの説教にゲジョウは諦めたように舌打ちして、空いている席へ乱暴に腰を下ろした。

 

「ゲジョウ・トーヤ様。幼い頃から剣を取り、誰に師事することもなく多くの辻斬りを返り討ちにしてきた辻斬り殺しであり、歴代最年少十四歳で剣聖になった天才です。その十年後にあった御前試合でも剣聖の称号を防衛しています」

 

 へぇ、天才ね。

 倒す相手として悪くない響きだ。

 

「粗暴な性格で、基本的に誰の言うことも聞きません」

「でもお前の親父の言葉は別なのか?」

「ゲジョウ様が十二の頃、初めて負けた相手が父だと聞いています。その後四半期ほど父に師事した期間もあるらしいですよ」

「なるほど……」

 

 そんな過去がなくてもゼンマはこの反りの合わなさそうな連中の纏め役だったんだろう。

 アマツにしか挨拶しなかった他の連中もゼンマには声を掛けている。

 アマツもそんなゼンマが居た方が進行が円滑だと思って呼んだんだろう。

 

 一通り会話を終えたのかゼンマはこっちにやってきた。

 

「リョウマ、やはりここに戻っていたのだな」

「はい」

「貴様も久しぶりだな、ネル」

「あぁ、あんたのお陰でこの試合に出れる。感謝してるよ」

「相変わらず嫌味の絶えない口だ。剣聖の中では私が一番弱かった。歳のせいもあるだろうが才能の差が歴然であることは私にも分かっていた。他の皆も一筋縄でいくとは思わぬことだ」

「じゃねぇと参加した意味ねぇっての」

 

 にしても、これで剣聖が揃ったことになる。

 アマツ、カエデ、アイツキ・ナギサ、タガレ・ミヤツグ、マシロ・リョウカ、ゲジョウ・トーヤ、そして俺。

 これで剣聖サイドの出場者、全員だ。

 

 そして挑戦者。

 次代の剣聖へ至ろうと望む七人は、この国の各地で行われた予選を勝ち抜いた猛者であるとリョウマに聞いた。

 

 リア、ヨスナ、アル、リンカ、ネオン、ヤミ、ミラエル。

 

 以上の十四名による次期剣聖を決める御前試合の開始を宣言するのは、始まりの剣聖――ではなかった。

 

「それでは皆様集まりましたので、今回のルールをご説明させていただきます」

 

 その隣に居たヒオリが一歩前に出て話し始めた。

 

「これより、皆さまには『石集め』をしていただきます」

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