剣と魔法を極めるのに必要な命の数は?   作:水色の山葵

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71「自己中心」

 

 黄金の光が空を埋め尽くす。

 降り注ぐ巨剣の雨に向けて、俺は今の俺が出せる『最強』を振り抜く。

 相手は空一面、一刀で全てが消せるわけもない。

 

 だったら――

 

「何回でもブッタ斬ってやるよ」

 

 降り注ぐ黄金の剣へ向けて、龍魔断概を何度でも振り抜く。

 ネオンを守るため、ヤミを死なせないため……

 何よりも、俺自身の成長のために、俺は何度でも剣を振るう。

 

 俺を倒して死ぬなんて勝手なこと、させてたまるか。

 俺が強くなるために必要なんだ。

 だからお前がどんな感情でそこに立っていようが関係なく、俺はお前を生かす選択をする。

 

 あぁ、分かってきた気がする。

 きっとこれが、死んで欲しくないという感覚なんだ。

 愛してるとか好きだからとか、そういう綺麗事じゃなく、自分にとって必要だからそいつを守りたいと願う。

 結局それが自分を中心にしか考えられない『人間』って生き物だろ。

 

 だから俺はリアやリンカを助けたし、だから俺は何をしてでもヤミを倒す。

 

 空を埋め尽くした黄金の剣の連射に、何度も剣を振り抜く。

 『龍魔断概』は龍太刀に聖属性を混ぜて創る究極の一刀。

 一振りでも消費魔力は甚大だ。

 それを何十回も振るえばどうなるか。

 

 『魔転吸刃(エーテルスティール)』で魔力を回復してようが関係ない。

 俺の魔力は一瞬で枯れていく。

 

 そして、俺の魔力はヤミの輝きと同じ『黄金』へと変貌していく。

 

 ――魔力逆流。

 

 ヤミの魔術を全て断ち切るまで、俺は命を賭してもこの剣を振るうことを止めない。

 その誓いが黄金の魔力となって身体から溢れ出す。

 

 魔力逆流。

 それは生命力を魔力へと変換し、魔力不足の術式を強制的に継続させる魔力操作。

 

 ハハ、久々だなこの感覚……この万能感!

 

「貴方は、何を……しているのですか……?」

 

 震える声で、恐る恐るといった様子で、ヤミはそう聞いてくる。

 

「撃ち落とすんだよ、お前の魔術全部」

「そんなことを聞いているわけではありません! それは、魔力の逆流なんて自殺行為です! バカなんですか!? 死にたいんですか!?」

 

 流石に最多の魔術師と呼ばれていただけのことはある。

 魔力逆流のこともデメリット含めてそりゃ知ってるか。

 この魔力操作には様々な後遺症のリスクがある。死ぬ危険性もある。

 

 だが、バカはお前だ。

 

「俺が、お前のために自分の命も懸けられないと思ってんのか?」

「――は?」

 

 振り抜けよ俺!

 それが俺の生き方だろうが!

 

 百の剣の最後の一本。

 それに向かって俺は龍魔断概を振り下ろした――

 

 その瞬間、身体が一気に重くなった。

 魔力逆流によって消費した生命力も限界を迎えようとしている。

 寿命が尽きていくような、身体が老いていくような感覚がある。

 

 だが、まだだ。

 

 まだ、倒れるわけにはいかない。

 

「どうしてですか? 貴方にとって私は必要のない存在でしょう?」

 

 言葉にならない顔をしたヤミの声は震えたまま。

 

 意識を飛ばさないように一歩ずつ、俺はヤミへ近付く。

 まだヤミの魔術をぶっ壊しただけだ。

 まだ俺は勝ってない。

 

 足がおぼつかない。

 意識が希薄だ。

 それでも……

 

「必要ないわけないだろ」

「嘘だ。だったらなんで『帰ってもいい』なんて言ったんですか?」

「必要だから、死んだら困るだろ……」

「……だけど、だけど私は! ネルのためなら死ねたんです……連れて行って欲しかった……」

 

 ボロボロと涙を流し始めたヤミの頭に手を回して、胸の中へ持ってくる。

 俺が言おうとする言葉はあんまり口にしたことのない言葉で、恥ずかしくて、顔を見られたくなかった。

 

「ごめん」

 

 俺はあの時、ヤミを信用できなかった。

 いや、ヤミだけじゃない。

 根本的に俺は他人を信用していない。

 何故なら俺の目的は、俺を最強にすることで、他人に何かを求めることはないからだ。

 

 だけど、龍魔断概なんて技を覚えて、他人を守る瞬間が一番強いなんて状況になっちまって……分からされた。

 俺はずっと他人に支えられて強くなってきた。

 

 龍太刀も、聖剣も、恐解の約定(ゾルドルート)も、人化の法も、魔剣召喚も……俺一人じゃ完成しなかった。

 いや、きっとそれだけじゃない……

 俺が持つ全ての魔術は、他者が居なければ形になどなっていなかった。

 

 多分、剣聖という高潔に悟りを求めたのもそれが理由なんだろう。

 

 それでもまだ他人全てに感謝して愛すなんてそんなことは言えねぇけど……それでも俺の成長を助けてくれた数人にくらいは報いたいと思う。

 

「俺が悪かった。許さなくていい。怨んでていい。だから生きててくれ、頼む」

 

 本当なら、普通の人間なら、とっくに死んでる奴等もいる。

 リアやリンカやヨスナ、ネオンとかビステリアも、普通の人間ならとっくに死んでる。

 だけど種族の性質や魔術を使って長生きしてくれてる。

 

 俺はそれが嬉しいんだ。

 あいつらが強くなるほど俺が強くなるヒントが得られるから。

 それに……俺と同じ時間を生きられる存在は多くはない。

 

 ヤミも同じだ。

 

「だったらちゃんと言って」

 

 俺にだけ聞こえる小さな鼻声。

 大した抵抗もなく頭を俺に預けたまま、俺の顔を覗くようにヤミは視線を上げる。

 

「私のことをどう思っているの?」

 

 どう……か。

 魔術の師匠? 術式の模倣対象? 実験対象?

 それは全部正解なのに、全部間違ってる気がする。

 

「愛してる。うん、これが一番しっくりくるわ」

「……!? 私を? 本当に?」

「マジ。あとビステリアとかティルアートもまぁまぁ好きだ」

「え?」

「ミラエルとかカエデとかガルシアの爺さんとかアマツもかなりいい。後はさっき戦った剣聖たちもだな、多少は好感を持てる」

「は?」

「でも、リア、リンカ、ヨスナ、ネオン、そしてお前は別格だ。だから『愛してる』が正しい気がする」

「別格……というかそういうことは一人に絞って言うものじゃないんですか?」

「だから怨んでていいって言ってんじゃん。俺が最低なことなんて今に始まったことじゃねぇだろ。まぁそれでもお前らを手放す気はねぇけどな」

「……はぁ、ホント最低」

 

 つーかそろそろヤバイな。

 魔力逆流の反動が来てる。

 魔力も完全に底を突いたし、召喚してた剣も消えた。

 

 目が霞む。音が鈍い。両腕と足首から下の感覚がない。

 意識もそろそろ途切れる。

 完全に魔力逆流の後遺症が出てる……

 

 グラリと、身体が揺れた。

 

「ネル、大丈夫ですか?」

 

 今度はヤミの方が俺を支えてくれている。

 身体に力が入らねぇ……

 

「心配すんな。そこら辺に捨てといていいぞ。お前俺のこと嫌いなんだろ?」

「……そうですね」

 

 ヤミは俺の腕を掴み、そのまま地面へ投げ捨てる。

 抵抗の余地など残っていない俺はされるがまま……

 

「貴方の勝ちです。この距離まで近づかれた時点で魔術師である私には対抗策は残されていなかった。剣が消える前に私に貴方が剣を突き刺していれば、私は死んでいた」

「そうだな。勝ちは譲らない」

「でしょうね。でもどうして魔力逆流まで使ったのですか? 剣を私に向けていればもっと簡単に勝てていたのに……」

「お前の魔術を受けたくなったんだよ。悪いか?」

「そうですか……相変わらず変態ですね……ですがまだ、貴方に脱落して貰っては困ります。逆流の後遺症は私がなんとかしましょう」

「なんとかって?」

「私は一応貴方に勝てないことも想定していました。この術式はその時のためのセカンドプラン。無限の命を持つ貴方を負かす、二つ目の方法」

 

 俺を負かす方法……?

 

 仰向けに倒れた俺の腹の上にヤミが座る。

 そのままゆっくりと、

 

「これは貴方相手にしか使うことができない魔術。なぜならこの術式の発動条件は――」

 

 チュッ

 

 ヤミは俺にキスをした。

 

「精神干渉系封印術式【夢幻漂牢(むげんひょうろう)】」

 

 

 ◆

 

 

 ――その命が奪えぬならば、その魂を喰らいましょう。

 

 

 ◆

 

 

「おやすみなさい。次の身体は見つけておきます」

 

 ネルの胸の中から蒼い炎の塊が抜け出てくる。

 それにヤミが手を触れると、炎はヤミの中に吸い込まれていった。

 

 倒れたネルの瞳がゆっくりと閉じた。

 同時に体温の低下が始まる。

 ネルの心肺は完全に停止していた。

 

「ヤミちゃん、いったい何をしたの?」

「悪魔は思念体としての側面を持ちます。その悪魔を使役したことで私は生物を肉体と精神に分けて捉える鑑識眼を得ました。精神干渉系は魔術の中でもトップクラスの難易度の術式ですが、今の私にとっては扱いの難しい魔術とは言えません」

「……もう一度言うね、ネルに何をしたの?」

 

 聖剣の切っ先を向けて、ネオンはヤミへ問いかける。

 しかし、霊園解放を使ったことでその身体には生命活動に必要な分の僅かな魔力しか残っていない。

 聖剣も同様にその機能を一時的に喪失している。

 

 現在、ネオンはこの森に居る人間の中で最も無力だ。

 

七光縛鎖(しちこうばくさ)

 

 ネオンの身体はヤミの魔術の鎖によって簡単に縛り上げられる。

 両の手首と足首に首、腹、腰にそれぞれ一本ずつ。

 

「くっ……」

「ネルの魂を抜き取ったんですよ」

 

 そう言ったヤミの手元に、いつの間にか蒼い炎をゆらめかせるランタンが握られていた。

 

「これを貴女の中へ捻じ込めば、貴女の記憶にネルの記憶が上書きされる。自我の強さは基本的に蓄積年数に依存するので、貴女の自我は消失するわけです」

「ッ……!」

 

 ヤミを睨むネオンの目に皺が寄る。

 誰が見てもその感情は怒りだった。

 

「とはいえ貴女は一応リンカちゃんの知り合いだし、ネルに貴女の意識が宿るのも嫌なのでしませんけど。適合率も低そうですし……あと顔も嫌いですから」

「それはありがたい話だね。じゃあこの鎖解いてくれないかな?」

 

 不快感を隠そうともしないネオンに、ヤミは嗤って答えた。

 

「いやです。出会った時から貴女の善人面大嫌いでした」

「私も貴女のこと苦手だよ、自分が世界で一番不幸みたいな顔してたから。でも嫌いにはならないよ、私は人と人が分かりあえないことなんてないと思ってるから」

「私はそーゆーところの話をしているのですよ。まぁいいです。鎖に繋がれたまま数多の魔獣が巣くうこの森に放置されて、同じ言葉が宣えるのか実験してみましょう」

「脅しのつもり?」

「いいえ、これから起こる現実の話です。私はこのままネルの魂に適合する身体を探しに行きますから、貴女もどうぞご自由に」

 

 じゃらじゃらと鎖の音を立てながら、ネオンはヤミへ抗議的な視線を向ける。

 ヤミはその視線を無視して踵を返した。

 鎖に縛られた状態でも聖剣を強く握りしめたままのネオンは、遠ざかっているヤミが見えなくなるまでその背中を睨みつけていた。

 

 

「グルルルル……」

 

 

 大規模な戦闘音から獲物がいるとでも思ったのか、それとも単に血の匂いに誘われたのか。

 その魔獣は鎖に繋がれたネオンの前に現れた。

 

 恐竜、ティラノサウルスを思わせるフォルム。

 黒曜石のような黒肌に鋭い爪と牙、口元からは涎を滴らせ、見た目の若いの女の柔肌へ今すぐに噛みつきたいとという感情が見て取れる。

 鎖に繋がれた女と十メートル以上の体躯を持つ肉食魔獣だ。

 その差は歴然。この場に置いてどちらが絶対的な強者であるかなど、誰が見ても明らかだった。

 

 されど――

 

「あ?」

 

 その女には力は残っていない。

 身動きもとれない。

 動かせるのは表情と口くらい。

 

「グル……」

 

 にもかかわらず、そのたった一文字で魔獣を数歩下がらせた。

 今まで屠ってきた数多の魔獣との戦闘経験が殺気と化して放たれる。

 

 死の間際であってもその眼光に揺らぎなく、それでも勇者は勇者なのだ。

 

 しかし、目の前のどう見ても無抵抗の獲物を前に、空かせた腹を満たすことを考えない肉食動物は存在しない。

 後ずさった足を一歩ずつ前へ、ネオンへと近づけていく。

 

 鎖に繋がれた女の前で、魔獣は口を大きく開く。

 数秒後、身体強化すらもできぬネオンの身体は二つに分かれるだろう。

 本人もそれを予感していたはずだ。

 

 だがしかし、その表情に一切の怯えはなかった。

 むしろ「やってみろ」と言わんばかりに不敵な笑みを浮かべたネオンを見て、魔獣は怒りを覚えた。

 

 今すぐその肉を引き裂いて、己が絶対的強者であることを証明してやる。

 そんな本能に身を任せ、女へ食らい付こうとした――その瞬間(とき)だった。

 

 

 ――バッッッッコォォォォォォォンンンンンンンン!!!!

 

 

 ネルと二人の女が戦ったことで更地に近い状態になっていたその場所へ、木々の奥から巨体が二つ、そしてそれを追うように男が二人、突き破って侵入してきた。

 

「なっ……」

 

 さしもの勇者もその突然の乱入に小さく声を上げた。

 巨体の一体は、巨大な三つ首を持った狼のような姿をしており、神話の出てくるケルベロスを彷彿とさせる。

 もう一方、水によって形成された龍のような姿をしたそれはスライムのようにも見えるが、放たれる魔力は圧倒的だ。

 

「ありゃ、お姉さん大丈夫?」

 

 気さくな雰囲気で声をかけてきた金髪の男は、一見して分かるほど身体を鍛えていた。

 握っているのは東洋(こちら)ではあまりなじみのないロングソード。

 そして男は身体強化の一種であろう雷を纏っていた。

 

「ミラエル殿、戦闘中によそ見をしないで欲しいんだが?」

 

 もう一人の男は冷静に周囲を見渡していた。

 今の状況の理解に努めているのだろう。

 ネオンとネオンを縛っている鎖に一瞥をくれただけで、すぐに巨獣の方へ視線を向け直した。

 

「ごめんってばアルさん、でもこんなところで女の子が縛られてたら助けてあげなきゃダメだろ?」

「まぁお互い戦闘中にたまたま出会っただけだから、好きにして貰って問題はないが……」

「話が分かるね」

 

 金髪と赤毛の二人の男は、真っ直ぐネオンに視線を向けた。

 

「その状況が君の趣味って可能性もあるから一応質問するね。助けて欲しいかい?」

 

 ヤミの剣呑な雰囲気とは真逆。

 二人の男からは全く敵意は感じなかった。

 それを見て、ネオンの顔は少し綻んだ。

 

「お願いしてもいいかな? お礼はデートでいいかな?」

「わおマジで? こんな美人に誘われるなんて今日は良い日だ。でもごめんよ、僕一応婚約しててさ。だからこっちの彼とでもいいかい?」

「勝手に決めないでくれ。私も既婚者だ」

「うっそマジで? あ、あの龍になった女の子だ」

「違う」

 

 そう言いながらミラエルとアルは互いを一瞥し、消えたと見紛う速度で動いた。

 ミラエルがネオンに巻き付いていた七本の鎖を一瞬で全て切断。

 同時にアルがネオンを食おうとしていた魔獣の首を斬り落とした。

 出会ったばかりとは思えない卓越した連携だった。

 

「お姉さん、デートは無理だけど一つお願いがあるんだ」

 

 鎖から解放されたネオンは手首をさすりながら立ち上がる。

 

「一分もせずに二人に誘いを断られたのは人生初だよ。お願いって?」

「あの魔獣ども、多分石を持ってるお題の奴だと思うんだけどさ、僕らと共闘しない?」

「命の恩人の言葉を聞いてあげたいのはやまやまなんだけど、今ちょっと魔力が残ってないんだよね……」

 

 そう言うと赤毛の男の方が、腰のバックから青い液体の入った小瓶を一つ取り出し、差し出してくる。

 

「魔力回復薬だ。あまり高価なものでもないから三割程度しか回復しないかもしれないが、それでも良ければ貰ってくれ」

「いいの?」

「私たちに君という荷物を抱えて戦えと?」

「ありがとう」

 

 迷いなく、ネオンはそれを受け取って呷った。

 

「お礼をしなきゃいけないことが増えたね」

「なに、こいつらを倒すのに協力してくれるのなら文句はない」

「オーケー、それじゃあすんごいお礼をしてあげるよ」

「わお、楽しみだね」

 

 三者は剣を構え直し、二体の魔獣へ視線を送る。

 

「ネオンだよ、よろしくね」

「アルだ、よろしく頼む」

「僕はミラエル。さて、頑張ろうか」

 

 

 ◆

 

 

 ……夜か?

 

 空が暗い。雲は出てないのに月が見えない。

 足下には白く光る花が点々と咲いていて、視界は機能している。

 しかし目に映るのは砂漠のようで、無限とも思える広大な大地。

 

 どこだここは?

 

「よぉ坊ちゃん、目ぇ覚めたかいな?」

 

 声の方向へ目を向ければ、小さな羽でパタパタと飛んでいる三頭身の人型がいた。

 全体的に丸っこくて人間と豚を混ぜたようなフォルムをしてる。

 ゆるキャラかよ。

 

「なんだお前」

「よう聞いた、オレ様はラプラス。上級悪魔や」

「悪魔? もしかしてヤミが使役してるって奴か?」

「使役……? 違うわアホ、善意で協力しとるだけや。受肉はできんかったけどあの女に憑いてれば色々と現世を見物できるからな」

「現世の見学? そんなことして何が楽しいんだ」

「逆にこの世界を見て、お前は楽しいと思うんか? オレ様の目的はいつが現世を征服し、こんな世界じゃ得られん快楽を貪ることなんや……」

 

 そう言って悪魔ラプラスは空虚な瞳で世界を見渡した。

 灰色の砂と暗闇だけの空、建造物もなんもねぇし、確かに退屈な世界なのかもな。

 

「で? そんなお前がなんで俺の前に現れた? 外に出る道案内でもしてくれるのか?」

「何を言うとる? 逆や逆、お前が勝手に出られんように閉じ込めとけって、それがあのクソ女の命令や」

 

 悪魔が嗤ったその瞬間、後ろに数百の悪魔が現れる。

 三頭身ゆるキャラとは違う。人型に蝙蝠の羽を生やし、爪と牙を鋭利にした……黒肌の悪魔の軍勢。

 

「いったいどういう状況だよ……」

「今のお前は人間でも悪魔でもない、微妙な存在。まぁ『魔人』ってところやな。肉体から完全に解き放たれとるわけでも、肉体を持っとるわけでもない」

 

 なんでそんな状況になってんのかね。

 ヤミが最後に使った術式の影響って考えるのが妥当だな。

 まさか魂と魔力だけで別世界に送り込まれるとは思ってなかった。

 

「じゃあここは三途の川ってところか?」

「ここは魔界、この世界の全ては魔力で創られとる。それはオレ様たちやお前の肉体も同様や。つまりこの世界では魔力切れも栄養摂取も必要あらへん」

 

 確かに……魔力は完全に余ってる。

 身体強化や魔力感知を使っても減っている感覚がない。

 というよりは減った傍から即回復する。

 

「ほないきましょか、終わらぬ無限の戦いや」

 

 魔力も体力も、そして敵も……【無限】か。

 最高の環境じゃねぇか。

 

「いいぜ悪魔くん、楽しませてくれよ」

 

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