剣と魔法を極めるのに必要な命の数は?   作:水色の山葵

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72「雷龍」

 

 最初から真っ向勝負で勝てるなんて甘いことは考えていなかった。

 やっぱり私の力はこの二人より数段劣る。

 

 だけど、結果的に、最終的に、私が私の望む場所に居られるのなら――それ以上は必要ない。

 

 そのためなら、正義も、嫉妬も、使えるものは全て使う。

 

「風龍召喚――シルフィード」

「黒龍砲」

 

 巨大な風の龍と黒い龍人によって放たれた二つのブレスが衝突する。

 風と闇の魔力が混ざり合い、ビリビリと大気を震わす。

 

 幻想的で敗北的で、それでいて私とは違う単独の能力。

 いったい何をすれば、どういう思いでいれば、どれだけの時間があれば、私は貴女たちと同じくらい強くなれるのか……想像もできない。

 

 けれど私の心に失望はない。

 後悔も、後ろめたさも、自分を貶める思考はない。

 だって、才能なんてなくても、真っ向勝負で勝てなくても、問題なんて何もないのだから。

 

 私の鎧は私が開発したものではなく、他者から賜ったものだ。

 私は独りには拘らない。

 

 この力はリアファエスさんとは相性がいい。

 基本的な戦闘技能の全てが『魔術』によって形成されている彼女は、比較的遠距離での攻撃手段が多く、私はそれら全てを無効化できる。

 

 だけど私の力はヨスナさんにとっては貧弱だ。

 力押しで来られると魔術の無効化が追い付かないし、あの身体変化は聖属性でも解除できない。

 そしてリアファエスさんの魔術はヨスナさんに特攻を持っている。

 

 なんて都合の良い三すくみだろうか。

 本当にビステリアさんの算出通りだ。

 

 ネル様の視覚情報を共有していたビステリアさんにはリアファエスさんとヨスナさんの戦闘記録があった。そこから行われた戦力分析によって私たち三人が戦えばこうなることは分かっていた。

 

 最初からネオンさんやヤミちゃんに姿を現して手伝ってもらえば、この二人ともっと良い勝負ができたかもしれない。

 だけどそうしなかったのは、この状況が欲しかったから。

 

 今、リアファエスさんは私を最大限警戒している。

 そして、ヨスナさんは私のことを嘗めている。

 

 だからこそ、私の『奥の手』はブッ刺さる。

 

「霊園解放」

 

 それは殺した魔獣の魔力を貯蔵し、任意のタイミングで解放する機能。

 

『解放を承認――完全勝利機構(コンプリートシークエンス)実行開始――』

 

 聖剣は『継承』の機能を持たせるために実体が必要だったらしい。

 だけど私の『聖鎧』はネオンさんの聖剣と違って実体がなく、その機能は私の遺伝子とほとんど一体化している。

 故に聖属性の魔力を他の術式に転用することは、比較的簡単だった。

 

「獣神纏伏――【神狼(フェンリル)】」

 

 聖属性の魔力を獣魔纏伏に混ぜることで性能を超強化する。

 その速度と膂力は、獣魔纏伏状態の約五倍だ。

 

 白銀の魔力の輝きを纏った体毛が、私の身体を覆う。

 

「なんですか、いきなり……」

 

 私はヨスナさんを目掛けて突進した。

 それは意表を突く一撃だっただろう。そういう風に思考を誘導した。

 ギリギリの戦いを演出して、これ以上の身体強化がないと思い込ませた。

 

 私はリアファエスさんに強く、ヨスナさんに弱い……

 何度もそう確認させるために戦った。

 

 だから狙うのはリアファエスさんの方だろう、と二人は思っていたはずだ。

 いや、たったそれだけのことではヨスナさんの身体能力は私を反射で迎撃したことだろう。

 

 しかしこれは私の奥の手。

 突如として今までの五倍に加速した私の一撃目だ。

 流石の彼女でも目も思考も追い付かない。

 

 

 ――ずっと昔、私は獣神に助けを願った。

 ――だけど、助けてくれたのはネル様だった。

 

 ――私は強くなりたかった。

 ――私はみんなを守りたかった。

 

 ――ネル様と一緒に居て、自分は強くなったと錯覚した。

 ――だからオーガロードにも勝てなかった。

 ――だから白龍に食われた。

 

 だからネル様を失った――

 

 ――もう神には願わない。

 ――もう他人には願わない。

 

 ――女神は手中に収めた。

 ――友達だって利用しよう。

 

 ――全部どうでもいい。

 ――何を捨てても、どれだけの嘘を吐いても、

 

「最後に私が勝てるなら、それでいい」

『えぇ、それでこそ私の勇者です』

 

 黙れ、上から目線で気取ってろ。

 勝手に自分が利用してる側だと思い込んでいればいい。

 これは貴女の算段じゃない。

 

 これは、私の計画だ。

 

 私の拳はヨスナさんの鳩尾を穿つ。

 

 だが――

 

黒砕踵(こくぎょくしょう)ッ!」

 

 同時に、ヨスナさんの後ろ回し蹴りが私の横腹を抉った。

 

 互いに大きく吹き飛ぶ。

 私は空中でなんとか姿勢を整え着地するが、ヨスナさんの方は完全に意識を失ったようだ。

 動く気配はないが魔力は感じるから生きてはいるだろう。

 高ランクの冒険者だって腹に風穴を開ける威力のはずなのに、驚異的な防御力(うろこ)だ……

 

 私のは渾身の一撃。

 ヨスナさんのは咄嗟の反撃。

 

「はぁ……ッ……」

 

 なのに、ここまでダメージをもらうのか……

 

 内臓がどこか壊れた。肋骨も幾つか砕けてる。

 呼吸がきつい、肺に損傷がありそう。

 すぐに治癒術式を使用するが、短時間で治せる傷じゃない。

 

 ヨスナさんはリアファエスさんを警戒して完全変化を使っていないのに……

 

「やっぱり格が違いますね……」

 

 でも、勝てた。これでいい。

 

「畜生の分際で、お前は本当に邪魔が好きね」

 

 あとは、この超越者(リアファエス)をどうするか……

 いや、治癒術式の発動中は戦闘行動に(ラグ)がでる。

 この状況でどうにかなる相手でもないか。

 

「申し訳ありませんが、ここは一度退かせていただきます」

「は?」

 

 気絶したヨスナさんをチラ見する。

 この戦いに勝つためには石が必要だ。

 だが、今ヨスナさんに近付いてその懐をまさぐっていれば、確実にリアファエスさんに攻撃される。

 

 まだ私にはやることがある。

 ここで落ちるわけにはいかない。

 私の目的は剣聖になることじゃない。

 私がここに来たのはネル様がここにいるから。

 

 ――ネル様に勝つため。

 

 リアファエスさんとヨスナさんは参加者の中で『最強』の二人だろう。

 その二人との戦闘データは取れた。

 私の能力の実践検証もできた。

 

 収穫は十分。ヨスナさんにもリアファエスさんにも、やり方次第で勝機はあると分かった。成果は上々。焦る必要はない。

 

「失礼します」

 

 私は屋敷の中へ逃げ込んだ。

 

「はぁぁああああ!??」

 

 

 ◆

 

 

『よければ剣聖を決める御膳試合に一緒に参加しませんか?』

『剣聖の称号があれば貴女の活動もやりやすくなるのでは?』

『ネル様も参加する可能性が高いので私は参加するつもりです。けど一人では少し不安なので』

 

 そんな風にリンカちゃんに誘われて、私は二つ返事で了承した。

 今思えば言いくるめられていたような気もする。

 ヤミちゃんはリンカちゃんの言うことをほぼ無条件で聞く。

 

 私や他の参加者を使ってネルが削られたあとで、ヤミちゃんを当てる。

 ネルの戦力分析、ヤミちゃんの能力、私の限界……ビステリアちゃんなら計算できる。

 

 ヤミちゃんの『魂を抜き取る術式』を知っていたなら……

 ネルがヤミちゃんに勝つことも、負けたヤミちゃんがその術式に頼ることも……

 全部、想定できたことだ。

 

 考えたくはないけど、リンカちゃんが後ろで糸を引いている気がする。

 

「戦闘中に考えごとか?」

「あぁ、ごめんね。別に集中してないわけじゃないよ」

 

 目の前には魔獣が二体。

 水の龍と三頭犬(ケルベロス)

 

「ただ単純に二人に聞いておかなくちゃいけないと思ったんだ」

「何を?」

「僕の好みのタイプは普段はキリっとしてるけど二人きりになるとデレてくれる女の子かな」

「惜しいね。私は二人きりじゃなくても手とか繋ぎたいタイプだから。って違くてね、あの二体を最初に相手にしてたのは君たちなのに私が盗っちゃってもいいのかなって」

「わお」

「随分な自信だな」

「単純に心配してるんだよ。二人は本気を出さなくてもいいの?」

 

 風属性の加速。

 炎属性の蒼い火球による攻撃。

 それくらいの魔術しか二人は使っていない。

 

 あとは単なる身体強化と剣術だ。

 

 だけど二人は余裕の表情で魔獣の攻撃を受け流す。

 

 まるで、本気なんてこれっぽっちも出していないみたいに。

 

「奥の手というものはみだりには見せぬものだろう?」

「必殺技って疲れるじゃん」

「けど早く終わらせたくない? だからこういうのはどう? 三人一緒に今出せる一番強い技を使う」

 

 二人共数瞬の沈黙ののち、答えを出した。

 

「面白そう」

「はぁ、確かに時間をかける相手でもない」

「決まりだね」

「じゃあ僕は水龍の方を狙うから」

「ではオレはケルベロスを受け持とう」

 

 私の分残ってないじゃん。

 どっちに協力しようかな。

 いや、どっちも狙うか。

 

「それじゃあ行くよ、せーの!」

 

 最初に動いたのはミラエルくんだった。

 

「疾風迅雷」

 

 風と雷を同時に纏った加速は、私でも目で追うくらいしかできない圧倒的な移動速度を体現した。

 

「終奥――」

 

 アルくんはその場から動かない。

 抜刀術のような構えを取り、体内の魔力が回転を始める。

 私はその動きを知っている。

 

「雷切!」

「龍太刀!」

 

 水の龍の身体の周りを高速で飛び回るミラエルくんは、刀に纏った雷の連撃によって水龍を蒸発させていく。

 

「キュアアアアアアァァァァァァ!」

 

 ネルが使う技と瓜二つ。

 いや、蓄えられた魔力量はそれ以上。

 人外とも思える圧倒的な魔力を宿した一刀が、三頭犬(ケルベロス)の三つの頭を同時に切り裂いた。

 

「グルルルルルルルゥゥゥゥゥゥ!」

 

 二頭の絶叫を聞きながら、私も聖属性(白い)魔力を聖剣へ纏う。

 

「ごめんね、結局イイトコはもらうことになっちゃった」

 

 水龍は周囲の水分を吸収して肉体を再生する。

 三頭犬(ケルベロス)は三つの頭それぞれが治癒術式を使えるみたい。

 二体とも悶絶しているが、それでもまだ完全には倒し切れていなかった。

 

「二連――魔理断概(ディスペルスラッシュ)

 

 聖剣の魔力は魔獣の遺伝子を破壊する。

 故に、再生はできない。

 

 水の龍へ放った聖剣は、その肉体を二つに裂いた。

 原型をとどめることが不可能になった水の龍は何度も再生を試しているが、それは意味を成さない。

 むしろ、水によって聖属性の魔力を循環させてしまったことで崩壊が始まる。

 

 べちゃりと音を立て、水龍は地面の沁みへと姿を変えた。

 

 私の魔理断概(ディスペルスラッシュ)は所詮はただの斬撃だ。

 龍太刀のような飛翔性の魔力じゃない。

 だから三頭犬(ケルベロス)の首の一つを落すのが限界だった。

 けれどそれで充分だ。

 

 大量の血が首の傷からしたたり落ちる。

 治癒術式は影響を及ぼさない。

 首が断ち切られた今の姿こそが、あの生物の正常な形なのだから。

 

 だが血液を大量に失えばどんな生物も失血死する。

 動脈が集中する首からの流血はソレを瞬く間に死へと導く。

 数秒で三頭犬(ケルベロス)はこと切れた。

 

「何今の、すごいね」

「あぁ、素晴らしい技術だ」

 

 顔の良い男の子に褒められて悪い気はしない。

 でもなんでかな……

 

「なんで二人とも少し殺気立ってるの?」

 

 二人が私を見る目は、今までとは少し違った。

 疑うような視線を受けて、私は二人の武器を自然と見た。

 聖剣を握る力が少し強まる。

 

「いや、昔見たことあったんだ。今ネオンちゃんが使ったのと同じ魔力を」

「オレもある。それはあの男だけの力だと思っていたが……」

 

 二人は同じ二文字を呟く。

 

「「ネル」」

 

 空気がピリ付く。

 この二人にとっても、あの人の名前は何か意味のあるものらしい。

 

 もしかして返答を間違えたら敵対したりしちゃうのかな。

 それだと残念だ。折角仲良くなれそうだったのに……

 

「いや、ごめんごめん」

 

 そう言ってミラエルくんは剣を鞘に仕舞った。

 

「よく考えたら魔獣を倒したのに抜き身の武器を持ってるヤツなんて怖いよね。アルくんも仕舞ったら?」

「……あぁ、そうだな。すまない」

 

 そう言ってアルくんも剣を仕舞う。

 私も習うように聖剣を鞘へ納めた。

 

 それを見たミラエルくんはぽつぽつと話始める。

 

「……僕には生意気な弟がいたんだ」

「いたってどういうこと、って聞いてもいい……?」

「死んだんだ。あいつは僕より強くて、勇敢で、カッコいい奴だった。だから一人でダンジョンの奥へ行って、戻ってこなかった」

「その弟くんがネルって名前だったの?」

「そう、それで君がさっき使ってた白い魔力とアルくんの『龍太刀』という技をネルも使ってた。だからちょっと思い出して怖い顔になっちゃったんだ。ごめんよ」

 

 そんな偶然あるわけない。

 間違いなくネルの『前世』だ。

 

「全然大丈夫だよ。むしろ私の方こそごめんね、気を使えなくて」

「いや、でも僕は何度も助けに行こうと思ったんだ。兄だしね。でも師匠に止められた。師匠の理屈は完璧で立ち入る隙もなかった」

 

 ――ネルより弱い貴方が行って助けられると思っているのですか? もし生存しているとしても、貴方が来たせいで死ぬかもしれない。

 

「ってね。それはどうしようもなく真実だった。そして師匠は言ったんだ。最低でも自分より強くならない限りは行かせないって……」

「……なんとなく分かったよ。その師匠っていうのは『剣聖』なんだね」

「うん、そう。それがこの戦いに僕が参加した理由。僕は剣聖になって二十年前にダンジョンへ行った弟を助けに行く。もしネルが死体だったとしても、僕は兄としてそれを持ち帰る」

 

 その顔を見れば、嘘を言っていないことは明らかだった。

 ネルってば、君はほんとに悪いヤツだよね……

 君のためにこの人は命を懸けてるんだってさ。

 

「だからもしネルのことを何か知ってるなら教えてくれないかな? 頼むよ、ネオンさん」

 

 そう言ってミラエルくんは私に頭を下げた。

 

 負けた。そう思った。

 

「いいよ。ネルのことを教えてあげる。その代わり『さん』はやめてよ」

「分かった。ありがとう、ネオンちゃん」

「こちらこそ。それで彼はね……」

「転生者だ」

「「え?」」

 

 ミラエルくんの『どういう意味?』って疑問と、私の『なんで知ってるの?』という疑問の「え?」が重なった。

 

「あの男は、人類で、いやこの星の生命でおそらく唯一、【転生術式】という超越した魔術を生み出した男だ。故にあの男は不滅であり、貴方がダンジョンへ赴く必要はない」

「転生……?」

「まー、そーゆー反応になるよね。要するにネルは死なないってこと。肉体が滅びても別の肉体に乗り移って生き永らえる。そういう性質を持ってるんだ」

「……そっかそれで急に……確かにそう考えれば辻褄は合う。本当に?」

「うん、しかもネルは今この森に居る。ちょっと長くなるかもだけど、私が鎖に繋がれていた理由を聞いてくれる?」

 

 ミラエルくんはおそるおそる頷いた。

 

 私は包み隠さずに話した。

 剣聖として参加しているネルのことも、ヤミちゃんに魂を封印されていることも。

 そして私がその魂を取り返そうとしている、ってことも。

 

「なるほど。初めから気になってはいたが、あの死体はやはりネル殿のものか」

「アルくんはあれがネルって知ってたんだ」

「数カ月前に一度会っているからな。また転生したのかとも思っていたが、どうやら少し厄介な状況らしい」

「ちょ、飲み込み早っ……でも僕もなんとなく分かったよ。色々合点もいった」

 

 まぁ、ネルを見て普通だと思う方がどうかしてる。

 それにネルは隠し事が上手くないし、この王子様も色々と思い当たる節があったんだろう。

 

「よかったよ。ちなみに二人はこのあと暇?」

「……なるほどね、暇っちゃ暇だけど」

「あぁ、オレも暇だ」

「だったらネルの魂を取り返すの、手伝ってくれない?」

「いいよ」

「分かった」

 

 私のお願いに二人は勇ましく頷いてくれた。

 

「でも一つ問題があるんだよなぁ」

「あぁ、魂を入れる肉体のことだろう?」

「そ、あれはもう死体だから魂を入れても生き返りはしないだろうし」

 

 そもそも魔力逆流の後遺症を回避するためにヤミちゃんが魂を抜いたんだ。

 その身体に戻せたとしても、あんまり良い結果にはならなさそう。

 

「いや、それは私がなんとかしよう。あの男と適合する身体には心当たりがある」

 

 アルくんはそう言って空を仰いだ。

 

 けど、どうしてだろう?

 なんで君は、そんなに切なそうな顔をしているの?

 

 とは、聞けなかった。

 

 

 ◆

 

 

 屍がところ狭しと並んでいる。それは全て下級の悪魔の残骸。

 

「おい、いい加減帰り方教えろよ」

 

 最後の一匹、ヤミが使役しているという悪魔『ラプラス』を踏み潰しながらそう問いかけると、ラプラスは潰れた声で返答した。

 

「お前、強すぎやろ……」

「お前らがザコなだけだろ」

 

 悪魔は超魔力存在だ。

 身体組織自体が魔力によって構築されている。

 生物というよりは『魔術現象』に近い。

 だから聖剣が良く通る。

 

 聖属性は他の魔力と対消滅する性質を持つ。

 その効果は人間には無害だが魔獣には極めて高い殺傷性を誇る。

 魔獣という生き物の生命活動は、人間とは比べ物にならないほど魔力的要素が必要不可欠だからだ。

 

 だが悪魔は存在自体が魔力の塊。

 だから聖剣が掠っただけで致命傷になる。

 

 こんな奴等とヤッても面白くねぇ。

 

 龍魔断概なら世界ごと斬れるかとも思ったが、そもそも守護対象がいないから使えない。

 それにこの魔界はリアの『断絶空創』よりもずっと広大な領域を持っている。

 仮に龍魔断概を使えたとしてもこの世界を一撃で斬り飛ばせるかは分からない。

 それに、出た場所が現世だとも限らないしな……

 

「ザコ過ぎて途中から聖剣を縛って戦ってたけど、それでも相手にならなかった。悪魔ってのも大したことねぇんだな」

「……オレ様がコキ使っとるのは下級悪魔、そしてオレ様は上級悪魔や。けど貴族やない……」

「貴族?」

「せや、オレ様たちは所詮一般市民。せやけどこの魔界には男爵~公爵からなる悪魔の貴族はオレ様たちとは比べ物にならん力を持っとる。そいつらと比べればお前かてただのザコやで」

「へぇ……」

 

 それはちょっと面白そうだ。

 こいつは俺を外に出したくねぇんだろう。

 それはつまり俺の匙加減で出る方法があるってことだ。

 それをさせないためにこいつは態々姿を現して、俺を足止めしてる。

 

 俺が出ると困ることがあるんだろう。

 

 だから俺の趣味に合うような情報を敢えて提示して、もっと時間を稼ごうとしてる。

 外がどうなってるか分からないが、御膳試合がそう簡単に終わるとも思えない。

 

「お前の策に乗ってやる。その貴族とやらのところへ案内しろよ」

「ええで、せやからさっさと足退けんかい……」

「あぁ、そうだな。仲良くしよう」

 

 ラプラスを拾い上げるが、砂まみれで汚かったから砂をはたいて落とすことにした。

 

「痛っ、痛い! やめぇ!」

「お前がそんな汚ぇのが悪いんだろうが」

「お前がグイグイ踏みつけんねんからやろが!」

 

 

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