剣と魔法を極めるのに必要な命の数は?   作:水色の山葵

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87「彼方の秘密」

 

「ここは宇宙空間だ。真空中では皮膚表面の油分や水分が蒸発し、皮膚には凍傷のような跡が刻まれる。さらに体液沸騰症(エブリズム)に陥り身体が膨張する。勿論呼吸も不可能。この環境下における人間の生存可能時間は数分だ」

 

 余裕そうな表情でアルカナは語る。

 星の外側、宇宙に行ったなんて話は聞いたこともない。

 なのに、こいつはこうも深くその環境を熟知し、再現できている。

 

「けれどここは僕の領域、どうやったって加圧環境に戻ることはできないよ」

 

 こいつは今の時代を生きる人類とは隔絶した知識を持ってるんだろう。

 

「すげぇな……」

「ありがとう。手加減してあげようか?」

「はっ、要らねぇよ」

 

 リアと戦った時は、龍魔断概によって世界ごと斬り裂いた。

 しかし、今の守るべきものを何も持たない俺にはその剣を呼び出すことはできない。

 

「聖剣召喚【加具土命】」

 

 俺の最強、【神格思考(マスター・プロセス)】による思考能力の強化は術式の並列処理能力を向上させる。

 それによって俺は魔力逆流を単一の術式ではなく状態として確立している。

 

 魔力逆流によって生命力を使い果たすまでの残り時間は十分程度。その時間が終われば俺は最悪死ぬだろう。

 けれど、この十分間は俺はすべての術式を魔力消費なしで発動できる。

 

「白熱連環」

 

 身体の周囲に展開した聖属性の結界は、その空間に存在する俺が発動したもの以外の魔力的作用を完全に無効化する。

 俺のへそを中心に周囲三メートルの球体内は、元の世界の環境に戻る。

 

「はぁ――」

 

 呼吸が回復した。凍傷は問題ない。血流ももとに戻っていく。

 

「結界内にさらに自分の結界を展開することで自分の周囲の領域権限を奪取したのか。やるね君」

「ありがとよ。手加減してやろうか?」

「必要ないよ」

「そういや、真空ってわりに声は出せるんだな」

「僕が会話好きだからそういう風に設定してあるってだけだよ。当たり前だけど僕は呼吸困難にはならないし、血流の沸騰もないしね」

「なるほどな。世界を創ってるんだからそんくらいはできるか……」

 

 さぁ、残された時間は多くない。

 正真正銘、俺は最後の力を振り絞っているのだから。

 

「けど、まさかこれで全力じゃねぇよな?」

「ははっ。んー、例えばさ〝火の玉を出す魔術〟があったとしてさ、それは攻撃とは呼べないよね? それを〝相手に向けて放つ〟ことで初めてその魔術は〝攻撃〟になるわけだよね?」

「……また話が長くなってんぞ?」

「だからさ、まだ僕は君を一度も攻撃していないのに『全力じゃねぇよな?』なんて言われても意味が分からないって言ってるんだよ」

 

 アルカナが杖を翳す。

 

「知っているかい? 太陽系圏内における〝ソレ〟の速度は秒速数十キロに及ぶ。人間の反射神経じゃ反応は不可能だし、物理的な威力は天変地異と呼んで差し支えないものだ」

 

 煌々と輝く星の一つが光を巨大化させていく、それはまるで〝隕石〟のように俺へ迫る。

 

「知ってるか? 魔力で強化された矢の速度は時速三百キロ以上だ。だが剣の達人はその動きを見切り斬り裂く。そして、今の俺の情報処理速度は平時の三百倍だ」

 

 聖剣を構え、隕石へ身体を向ける。

 断絶空創は、魔界と同じように世界のすべてを魔力によって構成している。

 流石に『白熱連環』であの質量を消し切るのは無理だろうが、剣で斬るなら必要な魔力量は最低限まで軽減できる。

 

 力は必要ない。

 

 隕石が聖剣に触れた瞬間、剣身に触れた部分が消滅し、真っ二つに切り裂かれる。

 隕石は俺の左右を抜けていった。

 

「隕石を斬る体験までさせてくれるたぁ良いアトラクションだな。年パス買ってやるから遊園地でも開いてくれよ?」

「そう、それじゃあもっと楽しませてあげるよ」

 

 迫る光の数が増す。我こそが滅びの象徴であると主張せし天変地異の群れが、俺を目掛けて移動を速めている。

 

「二刀流【聖剣召喚】」

 

 だが、関係ねぇ。

 

 俺の前に立ちはだかるすべてのものは、俺に斬り伏せられるためにある。

 

 飛来する巨大な岩に白い剣を宛っても腕には大した感触はない。それが魔力である以上触れれば消失するのだから、その抵抗は豆腐を斬るより些細なものだった。

 

「これで終わりか?」

「本当にそうかもしれないと思っているんだとしたら、君は相当な楽観主義者だね」

 

 その言葉と同時にアルカナが杖を一振りした瞬間……

 

 

 ――太陽が顕現する。

 

 

 ヤツの頭の上に現れたさんさんと輝く太陽(ソレ)は、大きな屋敷くらいのサイズだった。現物に比べれば極めて小さいサイズなはずなのに、肌を焦がすような超大な熱量を保有している。

 白熱連環という壁がなければ、炎に耐性を持つ俺ですら即座に蒸発していたであろう熱気を感じる。

 

「これは『世界の法則に乗っ取った魔力運用』である魔術ではない『世界の法則そのものを捻じ曲げる力』。それこそが〝魔法〟だ。僕の力は所詮独り遊びさ。こんな世界に引きこもらなきゃ僕は何もできやしない。でも僕は僕の世界の中じゃ多分世界で一番強いよ」

 

 アルカナが太陽を持った左手を前へ向ける。

 

「だから、僕には僕の世界だけで十分なんだ」

 

 こんな力を見せられれば、普段の俺ならもっと熱くなっていたはずだ。

 なのに、こいつの物悲しそうな顔を聞いていると俺の心は静かになっていく。

 

 きっと、俺とお前は根本的に違うんだろう。

 お前は俺なんかよりもよっぽど普通だった。

 

「けど、自分の中の妄想で満足してるヤツが宇宙(こんなせかい)を想像なんてするのかよ?」

「満足するしかないじゃないか……こんな力を持ってる僕は、どれだけ可憐に取り繕ったって化け物でしかないんだから」

 

 力があるから孤独だと?

 誰にも頼れないだと?

 

 その通りなんだろうな……

 

 だからエンヴィは俺に何も言わなかった。

 

 だがな――

 

「今の俺がテメェの期待に応えられないような雑魚に見えてんのか!? どいつもこいつもムカつくんだよ、勝手に人を見下してんじゃねぇ!」

 

 俺はもうあの時とは違う。

 

「テメェが何しでかしたって、俺の前じゃ子供の遊びだ。心配なんかしてんじゃねぇよ」

 

 俺はまだ最強ではないかもしれないが、それでもお前一人くらいどうとでもできるんだよ。

 

「神剣召喚【龍魔断概】」

 

 俺は、太陽ごとアルカナの身体を真っ二つに切り裂いた。

 

「お前は俺より下だ」

「ははっ、君の方こそ人を見下してるじゃないか……」

 

 黒い空間が白に戻り、アルカナの身体を消失現象が包んで行く。

 

「ねぇ、君はどうして強さを求めるんだい? もし君が誰にも追い付けないような強大な存在になれたとして、それに何の意味があるの?」

「俺が俺に納得できる」

 

 それだけが俺が生きる理由だ。

 

「……はは、虚しいでしょソレ?」

 

 そう言ってアルカナは消えた。

 

「かもな。それでも止まる理由にはならねぇんだよ」

 

 俺は俺を満たす。この生き方に疑問はない。

 

「ッチ……」

 

 魔力を使い果たした。もう魔術の一つも使えやしねぇ。

 けど身体の不調はあまりない。休めば魔力も回復しそうだ。

 そう言えば、リアと闘技場で戦った時も逆流の後遺症がなかったな。

 

 あの時と今回の共通項は『断絶空創』の中で戦ったってことだ。

 

 すべてが魔力によって構成された世界。そこは現世よりもずっと魔術が自然な場所だ。

 そこで戦闘したことで逆流の後遺症が抑えられているのかもしれない。

 

「けど、休んでる余裕はねぇな」

 

 依然食料不足という状態は変わっていない。これは最初から連戦だ。

 

 

 

 俺は次の部屋へ向かう。

 

 そこにいたのは黄金の巨人だった。

 

「クソ、やっぱりまだ終わりじゃねぇか……」

 

 神々しい光を放つ仏像は巨大な両手で俺の身体を叩き潰す。

 

 魔力を込めることすらままならない俺はその光景を目に焼き付けながら死んだ。

 

 

 ◆

 

 

 剣を極めた鬼を斬る。

 

 雷鳴を纏う虎獅(ライガー)を殺す。

 

 蠅の王が率いる虫の群れを潰す。

 

 天を具現する魔法使いを落す。

 

 

 繰り返す。

 

 

 繰り返す。

 

 

 繰り返す。

 

 

 体力と魔力をより温存し、より効率的に、より効果的に……

 

 弱点を分析する。適切な戦い方を考える。

 

 繰り返すほどに俺の動きは洗練され、分析眼は鋭くなっていく。

 

 

 何度も死んだ。何度も落ちた。

 切り裂かれ、消し炭にされ、毒に侵され、質量に潰される。

 

 死が俺の中へ蓄積していく。

 死と共に経験が俺の中で育っていく。

 その感覚は心地よくて、楽しくて、俺は何度も繰り返した。そこに迷いはなかった。

 

 毎日、毎時、毎分毎秒……あいつらを倒す方法だけを考え続けた。

 

 それ以外の思考が削ぎ落され、必要な情報だけを頭の中でこねくり回す。

 

 無駄な研鑽、不要な努力。

 されど俺は、その〝無意味〟に中毒的にハマっているのだ。

 

「ネルザッコ~、また僕の勝ちだね」

 

 アルカナも他の魔獣と同じように次に同じ部屋に行った時には復活していた。

 しかも他の魔獣と違ってこいつは何故か記憶を引き継いでいた。

 

「およよ~? やっぱり最初の一回はまぐれだったのかにゃ?」

 

 てかクソウゼェなこいつ……

 

「一個前の虫の手数が多くて、魔力の節約が間に合ってねぇだけだっつの」

「言い訳おつ」

「マジで泣かす!」

「やってみなよ?」

 

 アルカナは嬉しそうに俺を揶揄ってくる。

 イラつきながら剣と魔術を使うが、やっぱり本気を出せないと倒すのは難しい。

 

 虎の攻略法を見つけ出し、虫の攻略法を思いつき、アルカナに挑戦する。

 けど、こいつの『魔法』はかなり面倒で全力を出さないと勝てない。

 

 魔力消費が尋常じゃない『神格思考(マスター・プロセス)』は使えないし、『龍魔断概』も最初以降発動しない。

 

「黙って相手してろ。顔面以外取り柄のねぇ人間にしてやるよ」

「酷いな、っていうかネルって男にも惚れられるタイプ?」

「俺の好みは、面の良さと強さだ」

「うわ、もっと内面見てあげなよ」

「俺なんかに内面査定されたくねぇだろ」

「そういうところは自信ないんだ……」

 

 そう言いながら放たれた巨大隕石が俺の白熱連環を砕いて俺を圧し潰した。

 秒速数十キロなんて速度、『神格思考(マスター・プロセス)』なしで見切れるわけねぇ。

 

 聖剣を置くだけではあるが、それでも連発されると押し潰される……

 

 潰されて、転生して、また同じ部屋に戻ってくる。

 

「僕の後ろに控えてるのはあと二体だよ。頑張ってねネル、まぁ僕は話相手がいてくれた方が楽しいから加減する気はないけど」

「しなくていいっての」

 

 隕石を相手にするのにも少しずつ慣れてきた。

 いくら速度があったとしても、発射から到達までにはそれなりに距離があり時間が掛かる。

 聖剣を構えるだけなら素の状態でもできないことはない。

 

「魔法なんて突然変異が発現したせいで僕らは滅んだけど、君みたいに楽しんでくれる人がいると知れて良かったよ」

「そりゃいつの時代の話だ?」

「ずっと昔さ。僕らがここに来るよりもずっと昔……」

「説明してくれる気あるなら聞いてやってもいいぞ?」

「珍しいね」

「まだお前を完全に超えるには時間が掛かりそうだからな、ただの暇潰しだ」

「なるほどね。いいよ、語ってあげる。結構長い話になるんだけどさ……」

 

 何十、何百、何千と、俺はこの部屋に訪れて殺された。

 その度に、アルカナは少しずつ世界のことを教えてくれた。

 

 

 ◆

 

 

「今から百億年くらい前かな、とある星が終焉を迎えようとしていたんだ。その星は科学と魔法を極めた文明を持っていたけれど太陽の爆発という終焉は防げなかった」

 

「ほとんどの人は逃げることにしたんだ。母星を捨てて他の星へ旅立った。けれど人が住めるような星が宇宙船の寿命を懸けても見つからない可能性も考えた。燃料も無限じゃなくて、旅路は過酷だったからね」

 

「その星の人類は惑星が崩壊する前に、再生の種となる幾つかの遺伝子情報を保管した。そしてとある装置にその情報を託し宇宙へ放った。その装置は休眠状態で宇宙を泳ぎ、太陽との位置関係から生物が生存できそうな星を探した」

 

「休眠状態の装置はほとんど電力を消費しないから目的の星が見つかるまで悠久の時間をかけて宇宙を漂った。装置の名前は【システム・RE・ユニバース】、君に伝わるかは分からないけれど『テラフォーミング』を自動で行うものだ」

 

「システム・RE・ユニバースは百億年の旅路の中で条件に合致する星を見つけ、そこで環境整備(テラフォーミング)を開始した。環境は強制的に整えられ、保存された遺伝子情報から生物が再誕したんだ」

 

「最初に生まれたのは【微生物】だった。この星には【龍】という種族がいるでしょう? いずれ分かることだとは思うけど、微生物と龍の遺伝子構造はかなり似てるんだよね。君が見つけたリアスコードに書かれていた龍の遺伝子には微生物も含まれる」

 

「ただシステム・RE・ユニバースは星を管理する機能であり、種を存続繁栄させるには種族という単位での管理者が必要だった。そのためにシステム・RE・ユニバースが創ったのが【女神】という構造だ。女神の役割は担当する種族を守り健全な進化を促すこと」

 

「僕はそのシステム・RE・ユニバースに保存された人格データの一つだ。これでも結構な偉人なんだよ? 最初に魔力を発見し、操った人間だからね」

 

「君が戦った剣王や殺戮者も同じような偉人の人格を再現したAIだよ。蠅はあらゆる戦術を蓄えた自己学習プログラムだからちょっと違うけど」

 

「太陽が爆発する時にはとっくに死んでた僕が色々と知ってるのは、システム・RE・ユニバースの持つ情報の閲覧権限があるからだよ。ちなみに君のことを知ってるのも女神から送られてきたデータを閲覧したからってわけ」

 

 

 ◆

 

 

 数百回の命を賭した俺にアルカナはそんな話をしてくれた。

 なんか、スケールがデカすぎてピンと来ねぇ……

 けど、嘘じゃねぇんだろうってことはなんとなく分かる。

 

 もういいや、そういうモンだと思って聞いとこう。

 

「つまり、俺らの先祖は宇宙人ってわけかよ?」

「まぁそうなるね。けど現存してるのは機械だけで別に気にする必要はないよ? このダンジョンはこれまで話した世界の真実を英雄に継ぐための場所なんだ」

「って、それクリア報酬じゃねぇの?」

「君は特別だよ。だってナイアセラムを倒したんでしょ?」

「ナイアセラムがなんか関係あんのか?」

「七番目の女神アポルの存在はシステム・RE・ユニバースからしても想定外のものだったんだよ。だからそのバグを消すために君を利用してるんだろうね。まぁシステム・RE・ユニバースに自我はないから、方法を考えたのは女神たちなんだろうけど」

 

 結局俺をここに閉じ込めたのは女神の仕業ってことか……

 いや、まぁこんなことできるのは奴らくらいだと思ってたけどな……

 

「女神も焦ってるんじゃないのかな? ネルがナイアセラムを倒したことでアポルも本気にならざるを得ないだろうし」

 

 そういや、エルドもビステリアが捕まったとか言ってたな。

 こういう意味か……

 

「女神はシステム・RE・ユニバースの力を使って君の器となる人造人間(ホムンクルス)を創って、最初の迷宮に君を閉じ込めた。それは君の成長に期待するってことなんでしょ」

「そりゃ、過度な期待だな。俺は英雄でもなければ勇者でもねぇってのに」

「それでも君に発現した魔法にはそれだけの価値があると僕も思うよ?」

「魔【法】……?」

「気が付いていないのかい? 君は輪廻という世界の法則を完全に超越している。その技術は魔法の定義にあてはまるものだ」

 

 俺の【ネクストゲーム】が魔法?

 リアやこいつの使う断絶空創と同じ世界の法則を捻じ曲げる力?

 

「これは凄いことだよ。魔術と違って魔法には僕らの星でも再現性が見つかっていなかった。それは君のレベルが君を創った文明を超えたってことだ」

「そらどうも。話はだいたい分かった。けどやっぱりくだらなかったな」

「この星に生きる知的生命体にとっては結構重要なことだと思うんだけどなぁ」

「結局は全部過去の話だ。それにそれを聞いたからって俺のやることは変わんねぇ」

「そっか」

 

 隕石の速度にも、太陽の熱量にも、もう慣れた。

 

「不死身どうし楽しかったよ。ネル」

「あぁ、俺も感謝してるぜ。アルカナ」

 

 迫る隕石の群れを薙ぎ払い、太陽を割断し、俺の聖剣はアルカナの心臓を突き刺す。

 

 

 あと二つ。アルカナはそう言った。

 

 

 次の部屋にいた黄金の仏像。

 

『種族名:開巡観音(かいじゅんかんのん)。レベル:100。AIモデル:暗星の教祖・窮宮守(きやみやまもる)

 

 その仏像は動かない。

 動くのは腕だけだ。

 両の手に込められたのは聖剣と同じ光。魔力を掻き消す無効の輝き。

 

「お前の戦いは一度見た」

 

 だからずっと頭で考えていた。お前の魔力を辿り、お前の動きを描き、加速された思考の中でお前と戦う。

 そうしてアルカナやそれ以前の魔獣との何百、何千にも渡る生死の中でこの力は目覚めた。

 

 

 神格思考(マスター・プロセス)Lv2――【加速学習】。

 

 

 一度戦った相手と俺は頭の中で何度でも戦える。

 

「俺はすでに、お前を攻略している」

 

 拳も、掌底も、合掌も、命中することはない。

 動きのすべてはここへ来る前に読み切っている。

 

 掌を避け切れるのならば、残りは本体が纏う聖光だ。

 あの鎧がある限り魔力による攻撃は無効化される。

 

 だが、聖剣ならその制約を打ち破れる。

 

 時間は掛かったが、消費魔力は最小限に抑えられた。

 使った術式は感知系と身体強化を除けば『聖剣召喚』だけだ。

 

 魔力残量68%。

 

 俺はまだ戦える。

 

 

『種族名:覇帝龍種(イビア・グラン・ドラゴン)。レベル:100。AIモデル――ザザッ――――最終試練の内容変更を確認』

「お久しぶりですね、ネル様」

「遅かったですね貴方様」

「それじゃあ始めましょうか? 限りなくお前を殺してあげるわ」

 

 種の違う三人の女の後ろには巨大な蒼い龍がボロボロになって倒れ、消失現象を始めていた。

 

 獣人、龍人、エルフ……その三人を俺は知っている。

 

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