アイに天才の兄がいたら、上手く行くんじゃね?   作:にゃん໒꒱

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消えない憎しみ

『私のことを忘れないでね』

 

「まじ、かよ」

 

足元から崩れる感覚に襲われる。

信じたくなかった。

こんなことがあるわけないと、思っていた。

理解したくないのに、テレビはずっと現実を突きつけてくる。

 

 

最初は、気のせいだと思っていた。

映画の撮影の時に、先輩が喋っていた。

最近の俳優についての情報交換である。

これに関してはよくある、芸能界はコミュニケーションが大事だというが、本当にそうである。

ああやって、自分がいない所で評判が決まる。

 

そこで、聞いた名前。

 

『山崎 笹恵』

 

この世には沢山の名前がある。

そりゃあ、同姓同名だっているはずだ。

 

そう思って、記憶の片隅に置いていた。

もし、そうなら知りたくなかったから。

知ったら絶対許せなくなる。

 

今はアイがいる。

山口真は"普通"じゃなくちゃならない。

 

でも、もし。もし。

『山崎笹恵』がお姉ちゃんを殺した原因かもしれない、あの少女なら。

見逃したくはなかった。

 

きっと違うという願望を抱いて、ドラマを予約した。

でも、現実は非道だ。

確かに、顔つきは少しだけ変わっているけどあの少女と同一人物というのはすぐわかる程度の物だ。

 

「ゔ」

 

思わず上がってくる吐き気を飲み込む。

そしたら、喉が焼ける痛みからか目の前が滲む。

 

ふざけるな。ふざけるな。

人の命を奪っておいて。

なんで、そこに立っている。

姉ちゃんが憧れていたその場所で笑っている。

ふざけるな。

こんなことが現実なんて、ふざけるなよ!

 

「ゔぇ」

 

苦しい。

溢れて止まらない感情のせいなのか。

苦しさからなのか、痛む喉のせいか溢れて止まらない涙のせいなのか。

溺れてしまっているようだ。

 

震える手で、ペンダントを取り出して、開ければ。

 

笑顔なお姉ちゃん。

 

ふざけるなよ。

奪っておいて。奪っておいて。

 

「奪ってやる。優香姉ちゃんを殺した奴を殺せば。

きっと、俺にも価値が生まれる」

 

ああ。そうだ。簡単じゃないか。

ああ。どうやって、奪おう。

絶望の絶望まで突き落として。

縋ったのを落とせば。

 

きっと。愉快だろうな。

 

まさか。アイのために作っていたパイプがこんな時に使えるなんて。

人気にしてやろう。

そして。そして。

最高の場面で喰ってやろう。

それで、壊して壊して。崩れてたら捨ててしまおう。

 

なら。

まずは、あいつをどうするか。

監督に言おう。あの人なら、きっと望みを叶えてくれるだろう。

だって、欠けた人間の醜い争いを神のように眺めるのが好きなあの人なら、乗ってくれるだろう。

 

飢えと似たような渇望が脳を支配する。

アイのことなんて、思考から消えていた。

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