アイに天才の兄がいたら、上手く行くんじゃね? 作:にゃん໒꒱
思わず家から出て、向かったのは墓地。
どこに行くもなく、電車に乗ってお姉ちゃんの墓地まで来ていた。
スマホの光を頼りに歩けば見えてきた。
「はー。どうしよう」
失礼だけど、座り込んで持たれかかる。
ただの石だし冷たいはずだけど、温かく感じる。
いや、どうしようもないのはそうなんだけど。
謝るか?
でも、謝って済む話でもない。
だって、喧嘩をしたわけじゃない。
踏み込んじゃいけない所に俺が踏み込んで、でも怖くなって逃げただけだ。
確かに、星野アイは俺を信頼してたし、俺はアイの素の姿を知っている数少ない人との一人。
でも、踏み込んでいないことがあるのは分かっていた。
アイ自身にも愛に執着している理由なんて、しっかり自覚しているわけじゃない。
俺自身だって、自分がなんでこんなにも狂ってるかなんて説明しろって言われても困る。
言えても、虐待環境から自分で評価することができず、生に異常に執着したからぐらいの程度だ。
合ってるかも分からないが、学問的に考えればこんなもんんだろう。
最初の目的通り、冷静にはなったけど。
次からどうするればいい?
何もないようにすれば良いんだろう。アイもなかったように嘘をつくだろう。
俺がいてもいなくても、アイはアイだ。
そろそろ帰らないと心配かける。
立ちたくないという我儘は心の奥深くに沈めて、家に向かう。
「あ!帰ってきたー。良かったー」
「起きてたのかよ。さっきはごめん」
「え?別に良いよ〜。心配してくれただけでしょ?」
「なんでそうな」
冗談かよって思ったけど、顔がガチだ。
「今も泣きそうな顔してる」
「え?」
「そんな嘘じゃあ、天才的アイドルは騙せないよ。
私にとって愛は。分からない。
なんでって言っても分からない。
でもね。愛がある生活は楽しいと思うんだ」
「・・・。そうだろうな」
「ねえ。私言ったから、真の話を聞かせて?
真はなんで私にそこまでしてくれるの?」
そうだ。フェアじゃない。
喋ろうとしても息しか出てこない。
アイが大嘘つきって言うなら、俺はどうなっちゃうのだろうか。
最初は償いだった。
助けられなかった姉を同じ瞳で、俺と似ている所を持つアイを助ければ。
助けることができれば、俺に価値があるのではと思った。
でも。
今は。
認めたら、口に出したらまた呪われるのだろうか。
また、無くなってしまうのだろうか。
お姉ちゃんみたいに。
きっと、今しかないんだろうなと思う。
アイが近づいてくれるのは。
さっき、外で酔いも溢れそうな感情も冷めたと思ったけど。
言い訳にして良いだろうか。
「真。教えて」
そう言って、アイは俺の手を握る。
さっきと違ってちゃんと温かい。
熱に嘘をが溶けていく感じがする。
ここまで、されて何もないはダメだろう。それに、今は嘘をつけないだろう。
「大切だから」
たった、5文字。
やっと言えた。
認めてしまった。
もう、戻れない。
また。
消えるかもしれない。
だから、その分守ろう。
何もないように。
「ふふ。やっと言ってくれた!
にしても、手めっちゃ冷たい!」
「外くそ寒かった」
「そりゃあ、春の夜は寒いよ」
「いつもと逆だなー。
お風呂入ってくる」
「うん!もう、私は寝るね。おやすみ。真」
「おやすみ。アイ」