アイに天才の兄がいたら、上手く行くんじゃね?   作:にゃん໒꒱

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膿み

この部屋どこかで。

 

「真!こっちおいで」

 

え。

 

「おいで!」

 

なんで。なんで。いるの。

もう、いないはずの。

 

ーお姉ちゃんー

 

言葉口から出ず、足が勝手に動く。

 

「どうしたの?お姉ちゃん」

 

「ふふ。ここに!あった!

飴さん!」

 

「バレたらまた殴られるよ」

 

「二つぐらいとったて、大丈夫だよ。

前、道端で食べて美味しそうにしてたじゃん」

 

「だけど」

 

ー絶対だめだ!ー

 

この言葉。

覚えている。だめだ。止めないと。

なのに、口が思うように動かない。

 

「良いの!

だって、明日は真の誕生日でしょ?」

 

「あ。そっか。ありがとう。お姉ちゃん、愛してる」

 

とまれ!

 

「ふふ。あ。0時だ。

私の最愛の弟に神の祝福を。ほら、ケーキの代わりだけど飴ちゃん食べよ」

 

止まってくれよ。

何だよ?何の罰だよ?

 

「ねえ。何してるの。それ、私の飴」

 

扉が開いて、声を荒らげる。

 

「あ。笹恵ちゃん。今日は真の」

 

「なんで、こんなゴミにやるわけ。返してよ」

 

「お。お姉ちゃんを殴らないでよ!」

 

「は?なに?

ゴミが立派に口答えするわけ?」

 

ぎゅと首で持ち上げられる。

暴れても喋りたくても動かない。

 

ああ。そうだ。

これは夢だ。

なにも出来ない夢。

これは、罰なのかな。

たくさん犯した罪をちゃんと見ろって?

 

「やめて!飴を取ったのは私だから」

 

お姉ちゃんがあいつを突き飛ばして俺をおろす。

 

「なによ!」

 

そのあとは、悲惨だ。

周りにある皿とか投げ合って。

なにも出来ず本能のまま下がっていく。

 

こんな喧嘩のシーンを撮ったことあるけど。

お姉ちゃんの気持ちはわかりそうもないや。

大分、場違いな思考になっていく。

 

ーみてー

 

見ないと。

 

「ほんと、死になさい!」

 

そして、この争いにも終わりが来る。

勝者はあいつだ。

 

「お姉ちゃん?

血。血が」

 

「え。そ。そんなつもりじゃ!」

 

「お姉ちゃん!!」

 

「ねえ。真」

 

震える手が俺の頭に置かれる。

 

「どうしたの?痛い?痛いか。えーと」

 

「無理だよ。頭は急所なんだよ?

幸せに生きてね。私の分まで。

愛してるよ。最愛の弟」

 

「お姉ちゃん?」

 

痛みを我慢して震えていた口角は止まり、だんだん冷えてくる体。

撫でようとしてか頭に置かれた手は滑り落ちる。

 

「・・・。ねえ。あんた、人を殺した気分はどうよ?」

 

全てが終わり、やっと動けるようになった。

 

「お姉ちゃん」

 

ぴくりとも動かない。

そうだよね。

死んでいるんだから。

こうやって、段々温度が溶けてなにもなくなる。

 

ゆっくり視線をあげればあいつがいる。

腰を抜かしたように座り込んでいる。

 

近づいて、さっきやられたことをやり返す。

 

「これじゃあ。ただの人殺しか」

 

苦しみもなにもないあいつ。

なにも満たされない。余計に眩暈がしてしまいそうな、妙な空腹感。

 

あ。飴。

本来なら、食べることの無かった飴を手に取る。

そういえば、夢の中で食べちゃダメなんだっけ。

そしたら、ずっとこの世界にいるのか?

それも良いかもしれない。

 

なにもしなくていいし、ずっとお姉ちゃんといれる。

何も考えなくていい。

だんだんと良い選択なのかもしれないと思えてくる。

 

ー私をみてー

 

一層、飢えが体を回る。

 

ー幸せになってー

 

さしぶりに聞こえた声。

忘れていた言葉。

 

「俺が幸せか」

 

俺は罪人だ。

いや、罪人だなんて。言い訳か。

ただ。

誰にも罰されない自分が嫌でたまらないだけ。

あいつが幸せになって欲しくないのも。

ただの我がまな。

 

「お姉ちゃん。アイ。ごめんな。

俺は堕ちる所まで堕ちちゃった」

 

アイの求めるものを見た。

でも、俺にはできない。

 

「俺にはこの飢えを耐える方法なんて知らない。

だけど、アイは見続ける。だから。それで、許してくれ」

 

全部、全部。我儘だ。

妹が完璧で無欠で欲張りなら。

 

我が儘ぐらいでちょうどいい。

 

飴を放り投げる。

その瞬間、この世界が崩れた。

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