アイに天才の兄がいたら、上手く行くんじゃね?   作:にゃん໒꒱

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狂笑

今日は、あいつと会う。

なんとか一緒の現場ができた。その、顔合わせと軽い練習。

怒りとかでセリフが飛ばんでも大丈夫なように、1回目とは思えないほど詰めてきた。

大丈夫。何があっても、演じ切る。表に出さない。笑顔をキープ。

 

楽屋の前でゆっくり深呼吸をする。

 

「失礼します。

奈凪 悠役、苺プロ所属 山口 真です」

 

視界の端で捉える。

抑えろ。抑えろ。今、しても意味がない。

笑顔。口角を保て、目は優しめに。

 

「よろしく。小林 奏役の岡野 陽菜です」

 

「よろしく」

 

ゆっくりとあいつとの時間が迫ってくる。

でも、慌てずにいつも通り挨拶をしていく。

 

そして。ついにやってきた。

どう反応するだろうか?

 

「奈凪 悠役 山口 真です。共演よろしくお願いします」

 

「え!あ。

夜凪 桜子役の山崎笹恵です。

山口さんの演技、ほんと凄くて!

短い間だけどですけど、よろしくお願いします」

 

「よろしく」

 

どういうこと?

忘れている?

 

なんでだよ。

こんなことがあって良いのかよ。

ふざけるなよ。

 

無理やり、笑顔で返事して椅子に座る。

 

ほんと。どういうことだよ。

俺がずっと苦しんでいた間、あいつは忘れて笑ってた?

 

そういや。殺したことに驚いていた気がする。

 

ショックによる記憶喪失?

 

なんで。加害者が。

被害者はこうやって、苦しんできたのに?

忘れなかったのに?

忘れたいなんて思わない。だけど、こんなのあんまりだろ。

 

その後、どうやったかなんて覚えていない。気づけば、帰りの車だ。

何も言われてないから、大丈夫だろう。流石に、迷惑をかけたいわけじゃない。

 

スマホを出して、調べる。

 

忘れたんだから、何もなかったように過ごせば良い。

それこそ、芸能界に入り出したときみたいに、お姉ちゃんの願っていた景色を見続ければ良い。

これからも、活動する皆のために頑張れば良い。

そもそも、あいつを知る前に戻るだけだ。

 

そんなの分かってる。理性では無駄なことって分かっている。

じゃあ、これで諦めよなんて思えない。

 

「あ」

 

ストレス性の記憶喪失では、無理やり思い出させるのは危険。

 

なら。追体験させれば?

『山崎 笹恵』を役をさせれば?

それで、俺が『山口 真』役をして。

復讐物にでもすれば。擬似的に復讐になるのでは?

それで、壊れればなお良し。

 

別に、壊すのが目的じゃないんだ。

あいつだけ忘れてるのが、不平等だから思い出させるだけだ。

 

帰ったら、早速作って監督に送ってみよ。

あの人なら、こういうの好きだろうし、きっと嬉々としてやりそうな気がする。

しかも、ノンフィクション。リアル感があって良いだろう。

 

 

 

このとき運転していたマネージャーは、得体の知れない恐怖を感じたらしい。

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