隣の席の赤新さん   作:トモットモ

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赤新さんは調べたい

 そんな調子で僕と赤新さんは校内でアンケート聞き込み調査を行った。なんだかんだ皆学校には色々と言いたいことがあるようで、1番多かったのは、校則のことだった。やれスカートの膝丈だー、髪の色だー、ゲームの持ち込みだーと集まること集まること。ぼっちの僕は知らなかったのでへえ~と思った。

「今日はありがとう吉川君」

 赤新さんがメモ帳をぱらりこぱらりこしながら僕に言う。

「こちらこそ。ありがとう、楽しかったよ。赤新さん」

「おや。わたすの記者魂……きしゃだまにあてられたのかい?」

 きしゃだまって。

「まあ、そんなところかな」

「えへへ。嬉しい」

「!?」

 ボフン! と頭から音がする感覚。その笑顔は反則だよ赤新さん。

「どうしたの?」

 僕は下を向いていた。今は顔見れないや。

「ううん。何でもないよ。じゃあ僕はこれで」

「あ、待って」

 パシッ。

「!」

 赤新さんが僕の手を取った。僕はその場で固まってしまった。

「あ、ごめん」

 赤新さんがパッと手を離す。

「えっと……そう! お礼をしなきゃと思いますれば!」

 赤新さんは、ワタワタと言う。

「え? いや大丈夫だよ」

 僕が遠慮しようとすると、赤新さんは首を横に振ってさらにターンも決める。なぜ?

「ん~~~~~~。せいっ!」

 赤新さんはいつの間にか取り出していた新500円玉を正確なコントロールで投げて、近くの自動販売機に投入した。凄すぎる。思わず僕は拍手した。パチパチパチパチパチパチ~。

「好きなのをどうぞ」

 すっと、自動販売機の方へ手を向けて赤新さんは僕に言った。

「あ、ありがとう……じゃあ」

 僕は缶コーヒーのボタンを押した。ガコンと音がして缶を取り出す。

「コーヒー好きなの?」

「うん。わりと」

 僕は赤新さんの問いに頷く。ちなみに微糖。

「あ、ポチッとな」

 赤新さんはミルクティーのボタンを押す。ガコンと音がしてペットボトルを取り出す。

「じゃあ、乾杯」

 赤新さんはミルクティーのペットボトルを僕が持っている缶コーヒーにカツンと合わせる。

「か、乾杯」

 まさか赤新さんと乾杯出来るとは思ってなかった。缶コーヒーのプルタブを開ける。

「クピクピ」

 赤新さんはミルクティーをクピクピ飲んでいる。

 僕も缶コーヒーに口をつける。何だか凄く……。

「んめ~」

 赤新さんがそう言う。うん。沁みるなあ。

 

「文芸部って新聞部と結構近いよね」

 文芸部の部室にて、赤新さんがふとそう零す。

「そうだね。活動内容も被ってるところもあるかも」

 色々と調べ、それを活字にしている所とか。まあ、こちらは虚構で向こうは事実という点は大きな違いかな。

「カリカリ」

 赤新さんはせっせと紙に記事を作成している。僕と同じアナログで。デジタルもまたいい。それぞれの良さがある。

「サクサク」

 なんだかこう聞いていると、原稿書いているのか、お菓子食べているのかどっちなんだろうと思ってしまう。

「カリカリサクサクウマウマ」

 正解はどっちもだ。赤新さんは持参していたスナック菓子を食べながら記事を書いている。器用だなあ。

「あっ、と」

 ちょっと誤字った。僕は消しゴムで字を消して修正する。普段の授業では板書するのに追われて、内容が頭に入ってなかったりすることもザラなんだけど復習する時にも綺麗にノートを取っていれば、もう1度勉強する気にもなるのかもしれない。まあ、そりゃ人によるだろうけど。

 僕がつらつらとそんなことを考えていると赤新さんがピタリと手を止めた。

「あり? もうなくなっちった」

 袋の中に手を入れ、ありゃま~な顔をしている。また可愛いな。というかペース早くない? 書きながらだよね?

 赤新さんは物を食べながら書くと集中出来るタイプなんだろうか? ふと僕はそう思った。

「あ、よかったら」

 僕は制服のポケットからガムを取り出す。

「食べる?」

「かたじけない」

 食べるんだ。迷いがなかった。それもまたいいよね。

「赤新さんの書いた新聞って掲示されていたかな?」

 僕はふとそう思って呟いた。赤新さんはピタッと手を止める。

「んにゃ。あまり掲示はしておりませぬ」

 赤新さんは鼻の下と唇の上にペンを挟みつつ首を振る。器用だなあ。

「そうなんだ。どうして?」

「……ぱずかしいから」

 ぱずかしいとは? 恥ずかしいと言うことも恥ずかしいのだろうか。

「そんなぱずかしがることないと思うけど」

「ほんとに?」

 赤新さんは、ちらりんと僕を見る。

「うん」

「……そっか」

 僕がすぐさま頷くと、赤新さんはガムの包み紙をゆっくりと開く。

「遂に開示する時が来たか……」

 赤新さんは決意の秘めた瞳をしていた。

 

 下校時刻。部活終わり。僕はまさかの赤新さんと途中まで一緒に帰ることになった。本当にまさかだ。

「今日は、捗った~」

 赤新さんは、頭をゆらゆらと動かしながらそう呟いた。

「それはよかったね」 

 筆が進むのはとてもいい事だと思う。

「いつもはね~結構ドスランプの事多いんよ」

 ドスランプって凄いね。

「でも、今日は進んだ。吉川君がいてくれたお陰だね」

「いや、そんなことは」

「あります?」

「ないよ」

 僕と赤新さんは通学路をゆっくりと歩く。

「赤新さんは、何で新聞部に?」

 僕は、ふと気になってそんなことを聞いた。

「吉川君は、何で文芸部に?」

 あれ? 質問が返ってきた。先に言いなさいってことかな。

「僕は、単純に本が好きで、自分でも書いてみたいって思ったからだけど……。ちょっとありきたりかな?」

 僕がそう言うと赤新さんは首を横に振った。

「ううん。とっても素敵だと思う」

「あ、ありがとう……」

 そうストレートに言われると凄く照れてしまう。

「私が新聞部に入ったのは伝えてーことがあったからですね。ハイ」

「伝えたいこと?」

「どこぞの誰かが造ったこの世に起きている出来事を見つめて、私自身をアップデートしたいんだよ」

「な、なんか凄いね」

「私はね、ちっぽけな存在かもしれないけどそれでも大きくありたいと思っておりまする」

「赤新さんがちっぽけだなんて事ないと思うよ」

「……ありがとう。何でか吉川君の言葉にはすっと入り込める」

 そうなんだ。それは、嬉しいな。

 僕は、赤新さんと違ってただのぼっちなんだけど。

「今度見せてあげるね。私の……赤新聞を」

「赤新聞?」

 ああ、赤新さんの新聞だから赤新聞なのか。

 僕は1人納得する。

「楽しみにしているよ」

「うい」

 赤新さんはちょっぴり口元を綻ばせて、小さく頷く。ぱずかしいなんて言っていたけど、赤新さんの書く記事はきっと素敵なんだろう。根拠はないけど、それでも僕はそう思ったんだ。僕もぱずかしいけど小説出来たら赤新さんに……。本当にぱずかしい。

 




赤新さんとのアンケート調査楽しいです。赤新聞も楽しみだ~。ぱずかしいな~。青春だなあ。また次回です~。
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