隣の席の赤新さん   作:トモットモ

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赤新さんはちょっと変

 僕と赤新さんは屋上から下りて、校舎の中にある自動販売機の前で飲み物を買って、その場でゆったりとしていた。

「赤新さん。僕からも1ついいかな?」

 僕はそう切り出した。

「どうぞ~~。ズズズ」

 赤新さんは紙パックのいちごミルクを飲みながら、言葉の続きを待つ。ちなみに僕はメロン・オレ。こちらはペットボトルだ。

 僕は、キャップを回して、メロン・オレを一口飲む。甘くて美味しい。

「ルーズリーフにも書いたと思うんだけど……」

 僕は一拍置いて、赤新さんに〖とある希望〗を告げた。

 

「僕の書いた小説を読んでほしいんだ」

 

 我ながら烏滸がましいことを言っているなとは思う。でも僕は自分の欲望に逆らわず、素直になった。

 どうしてもこの小説を赤新さんに読んでもらいたかったから。僕は緊張しながら赤新さんの返事を待つ。

「いいよ~~」

 軽かった。めちゃくちゃ返事が軽かった。僕は呆気に取られてしまった。何だろう……肩すかしを食らったような感じだ。

 依然として、紙パックのいちごミルクのストローをチューチューする赤新さん。ふとその唇を見て、僕はドキッとしてしまった。

 僕が慌てて目を逸らし、メロン・オレをグビグビ飲んでいると赤新さんは僕を不思議そうに見つめていた。

「い、いいの? 本当に?」

「うん。吉川君の小説読んでみたい」

 嬉しかった。その言葉が聞けて本当に嬉しかった。僕はその喜びを胸に噛み締めていた。

「あ、ありがとう……」

「どういたしまして」

 こんな他愛ないやり取りでさえもこんなにも楽しく思えるのはなぜだろうか。ぼっちの僕には知る由もなかったこの感情の正体はきっと――

 とても温かいなにか、なのだろう。

 

 キーンコーンカーンコーン。授業終了のチャイムが鳴った。放課後だ。

「待ちに待った~~アフタースクール~~待ちに待った~~アフタースクール~~オーイエ~~♪」

 隣の席から謎の歌が小さく聞こえてきた。言うまでもなく歌っているのは赤新さんだ。ビブラートが上手い。

「あ、あの、赤新さん」

「どうしたの? オーディエンス吉川君」

 観客でした僕。

「いや、その、歌上手だね」

 僕は何の気なしにそう宣う。観客として感想を言わされているのかもしれない。

「ほむほむ。よく歌っているからねん。上手に聞こえたなら何より」

 いや本当に上手だと思う。ただいかんせん声が小さすぎる。凄く綺麗な声なのに勿体ないな、と率直に思った。

「これから帰るの?」

 僕がそう聞くと、赤新さんはふるふると首を横に振った。

「んにゃ。これから図書室に行きまする」

 えっ、と僕は思った。

「あ、僕もそうなんだけど……」

 赤新さんは僕の方にクルッと向いて、

「じゃあ、一緒に行く?」

 と言ってきた。僕はもちろん了承した。

 僕と赤新さんは教室を出て図書室へと向かう。図書室に向かいがてら僕はふと気付いた。

「あれ? 何かいい匂いする……」

「おや、気付いてしまったかい?」

 赤新さんは、フフフと意味ありげに笑い、バックから紙袋をチラ見せしてきた。それって……!

「クッキー焼いたんだよね~~。吉川君も食べる?」

「え? いいの?」

「うん。図書室で紅茶淹れるから一緒に食べよ~~」

 ウチの学校の図書室は飲食OKなスペースがある。

「そ、そうなんだ……じゃあお言葉に甘えて」

 僕と赤新さんの放課後ティータイムが幕を開けようとしていた。

 




吉川君のとある希望とは、赤新さんに自作の小説を読んでもらうこと。読んでもらえることはありがたいことです。そして放課後へと続きます。
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