モブリコ辺境暦   作:杖雪

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7月 モブリコ寿司本日開店 ②

「先輩、両手塞がっているのに、どうやって自転車乗って来たんですか。あと、どうやって自転車の施錠とか、扉の開け閉めしたんですか?」

 

 スギナの素朴な疑問を華麗に無視して、風待は手に持った鍋と重ねたタッパーをつけ台に置く。

 

「上のタッパーが玉子、寿司ネタ用と飾り用にもう切ってあるから。下は茹で海老4匹、取った頭は味噌汁の出汁にしたわ。あと、ここに来るついでに、空き地に生えているミョウガも取って来たわよ」

「先輩、両手塞がっているのに、どうやってミョウガ掘ったんですか?」

 

 スギナの素朴な質問を優雅に無視して、風待は手に持ったビニール袋をスギナに渡す。

 

 袋を覗き込むスギナの顔を、とれたてのミョウガの爽やかな香りが撫でる。

 中には掘りたての大きなミョウガが4個。膨らんだ胴部を彩る深い紅色が瑞々しい、新鮮な食材。

 

 この時期、モブリコ寿司ではツマとしてミョウガの千切りを添えるのが伝統だという。他ではあまり見かけない組み合わせだが、季節を彩る食材として寿司を引き立てるミョウガは、銀座の有名寿司店でも季節限定で添えられることがあるという。

 

 モブリコ寿司は、他の観光支部がそうであるように、地の産物を豊富に使った料理を振る舞っている。添え物のような小さな野菜も、できる限り地のものを、そして下宿近辺で栽培している食材を供している。

 

 スギナたちの下宿は、野菜や果物に囲まれている。

 

 アパート横にある小さな雑木林の一隅を切り開いた、駐車スペース代わりの空き地の片隅に、かつての諸咲リコリスが遊び半分で植えた果樹や、アパート周辺の露地部分を使い、大家のおばさんが趣味で育てた様々な食用植物が、夏の暑い日差しを受け、立派に成長を続けているのだ。

 

 特に、アパート前のフェンスの下に植えらえたばかりのゴーヤは、日々旺盛に成長し、濃緑の葉を少しずつ増やし続けている。金網製のフェンスが、緑の壁となるのもそう遠い日ではないだろう。

 

 毎年植えられ、毎年大量に生えるゴーヤは、食べきるのも大変だったらしい。ゴーヤを育てた大家さんが、ある程度は親族や近所に配ったりするのだが、それでも需要を上回る勢いで実をつけるゴーヤは、201号室の男子2人と、205号室のリコリスたちの努力によって毎年消費されるという。

 

 今風待が持参したミョウガも、以前大家さんが植えた植物の一つである。

 

 アパート横の空き地の隅に植えられたミョウガもまた、ゴーヤやその他の野菜と同じく、自由に採っても良いという大家さんの了承があるという。寿司屋の主人と同じく、普段はなるべく顔を合わせないようにすごしているが、それでも同じ宿で暮らす少年少女達へ無言の気遣いをしてくれている大家のおばさんのご厚意に、二人は毎回感謝しながら旬の食材を収穫している。

 

「スギナの方は、どこまで準備できた?」

「酢飯と寿司ネタは揃いました。後はお寿司握ってアナゴを焼いて、茶碗蒸し作って完成です」

 

 スギナの報告を聞きながら、風待は調理場に上がり、濃紺の制服の上から前掛けを巻く。

 

「あいつらが来るまで、まだ30分程度時間があるから、少しだけ手伝うわ」

「歌島のお二人って、今どこにいるんですか?」

 

 蒸し器を準備した後、つけ場の背後にある冷蔵庫から玉子を取り出し、片手で器用に割る風待。ボウルに入れた玉子に白だしを混ぜ、手早くかき混ぜると茶碗蒸しの容器に流し込む。

 器の中には、具材としてスギナが細かく切った、アジとイカの身がすでに入れてある。風待は4つの容器に卵液を入れ終えると、手際よく蒸し器に並べ蓋をする。

 

「最後の連絡文には、今は内箕の100均にいるって書いてあったわ。もう衣料品店とドラッグストアの買い出しは終わったから、100均での買い物が終わったらコミュニティバスで十与浜に来るそうよ」

「買い出しも大変ですね…」

 

 歌島支部の二人にとって、年に2回の諸咲支部での会合と、同じく年に2回ある烏羽支部での健康診断、そして年に1回名古屋支部で行われる基礎能力検査は、島から出ることができる貴重なイベントでもある。

 

 この三つのイベントの内、彼女たちにとって最も重要な外出は、意外なことに都会に行くことができる名古屋支部への出頭ではなく、一番近くの、大して自分たちと変わらない田舎である諸咲支部へ訪れることだった。

 

 名古屋や烏羽は確かに都会だが、検査や診断に時間がとられ、自由時間が少ない。さらには、遠隔地での買い物は、多くの荷物を背負いながら、電車を乗り継ぎながら、定期船に乗り換えながら帰るのが大変だという問題もある。

 諸咲ならば、店の数こそ少ないが、必要な店舗は内箕周辺にまとまっているという利点がある。気心の知れた諸咲支部の仲間に会いに行くだけの用事なので、自由時間も多い。諸咲のリコリスたちも、自分たちの主な目的が買い出しであることを理解してくれているので、必要ならば買い出しを手伝ってくれたり、自転車を貸してもらえたりもするのだ。

 

 島からの移動も楽である。歌島と諸咲の間には定期船は運航していないが、定期報告や緊急事態の際には、歌島の漁船をチャーターできるシステムが戦前からあるという。

 

 歌島の平和を守るために取り交わされた、漁業関係の方々とDAとの、裏の協力関係。取り交わしの書類は一枚もないが、長年受け継がれてきた、裏の友好関係。

 

 歌島から十与浜の港まで一直線で送り迎えをしてくれるこの運送方法ならば、たとえどれだけ買い出しの荷物が多くなろうと問題はない。電車や定期船を乗り継いで帰るより、よほど楽である。

 

「買い出しした荷物を私たちの部屋に置いてからモブリコ寿司に行きたい、って書いてあったから、12時になったら鍵を開けに一度アパートに帰るわ。荷物置いたらあいつらを連れてここに戻って来るから、スギナはそれまでにお寿司握っちゃいなさい」

 

 スギナに状況を説明した後、さばいたアナゴの身を網に乗せ、爪楊枝に刺した肝と一緒に焼く風待。アナゴは塩を振り白焼きに、肝は醤油を塗りながらゆっくりと焼く。

 

「握るのはお客さん来てからの方が良いような気がしますけど…」

 

 ミョウガを洗い、千切りに刻みながらスギナが答える。手を止めずに会話ができるようになったのも、修行の成果なのだろう。

 

「あいつら騒がしいから、来ちゃったらもう落ち着いてお寿司を握ることはできないわ。話すこともいっぱいあるだろうから、今回だけは先に握っちゃったほうがいいわよ」

 

 本当は握りたてを食べてもらいたかったスギナだったが、風待に促され先に寿司を握ることにする。

 確かに隣同士のリコリス同士、話すことは多いだろうし、何より今回は自分たちの分も含めて4人分も作らなければならないのだ。早めに握った方がよいのだろう。

 

 スギナは台の上を片付けると、シャリ櫃と盛り台、そして先ほど調理したネタが入ったバットを手元に並べる。 

 寿司ダネを並べたバットから、まずはアジの身を取ると、左手の指の上に置きワサビをつける。右手で酢飯を乗せ、左手首を返すように振り、寿司を手のひらの中で転がす。

 優しく握って形を整えた後、左手の上で寿司を半回転させてさらに形を整える。

 最後に寿司の上部を右手の二本指で軽く押さえ、全体の形を引き締めてから、カウンターの上に置いた盛り台に置く。

 

 ネタの艶を消さず、指の跡もついていない、軽めに握られたアジの握り寿司。4月から少し背は伸びたとはいえ、未だ幼さの残る小さい手で握ったにしては、まずまずの出来だろう。

 スギナは黙々と、同じ手つきで寿司を握る。アジの次はイカ、そしてマグロと、スギナが手を動かすたびに、盛り台の上に色華やかな寿司の花が咲く。

 

 エビとアナゴは、それぞれ力加減を変えて握る。

 厚めに焼いた玉子は、中央に切り込みを入れ、寿司飯を挟み込むようにして握る。

 

 今日の玉子焼きは、すり鉢で丁寧に摺りつぶしたエビの身が入っている。風待が下宿で焼いた玉子は、原色で塗られたかのような黄色の表面に、飾り模様を思わせる焼き目が乗り、見た目も美しく鮮やかだ。

 

「今日来る歌島の皆さんって、どんな人なんですか?」

 

 玉子の寿司を握りながら、スギナが尋ねる。

 

「スギナって、あの二人の事、どこまで知っていたっけ」

「えーと、諸咲から分化した分支部の分遣員で、分校出ってことくらいしか…」

「分ばっかりね」

 

 アナゴを焼く手を一度休め、おもむろに腕を組んでから、風待はとりあえずツッコミを入れる。

 

 風待は、会話をしながら料理をすることが苦手だ。苦手というより、できないのだ。

 

 特に不器用というわけでもない、むしろ何をさせても器用にこなす風待なのだが、なぜか料理をしているときは、一切言葉が出なくなるのだ。

 

 寿司を握りながら会話をすることができないという、観光支部の接待役であるリコリスとしての、重大な欠点。

 

 去年半年間、風待は一人で店を切り盛りしていたが、この難点があったため、大変苦労したという。

 

 しかし、今年度からは、人見知りで話下手なスギナが裏で寿司を握り、簡単な調理や配膳ならば活舌に支障がない風待がカウンターに立つという黄金のコンプレメントで客を迎えることができるようになった。互いに欠点を補い、互いの長所でおもてなしができる、理想の接客体制が実現したのだ。

 

「先輩がしていた定時連絡でのやり取りの内容はたまに聞きましたけど、なんというか、それだけではよくわからなくて…どういう感じの人たちなんですか?」

 

 海苔と簀巻を取り出しながら、スギナが改めて尋ねる。

 

「んー、そうね…一言で言うなら、モブね」

「モブですか?」

 

 握り寿司を作り終えたスギナが、次に巻き寿司の準備をしながら聞き返す。

 

「モブですよ」

 

 アナゴの焼き加減を見ながら、なぜか自慢げに風待が答える。

 

 二人の間に、焼きあがるアナゴの煙と沈黙が漂う。

 

 しばらくの間二人は、よくわからない空気のまま、無言でそれぞれの料理を作る。

 アナゴを焼く風待の横で、スギナは巻き寿司を作る。巻簀に半切の海苔を置き、その上に寿司飯を薄く広く均しながら乗せ、またその上に細く切ったマグロを乗せる。そして巻簀を手前から、やや四角になるように巻いた後、6等分に切り分ける。

 

 同じように細く切ったキュウリも巻簀で巻く。隠し味として、キュウリの横に千切りに切ったミョウガを少しだけ添えて巻き、これも6つに切る。

 

「…私たちも、モブですよね」

 

 沈黙に耐えきれなくなったスギナが、細巻きを切りながらツッコミを入れる。

 

「いや、あいつらのモブさは本物よ。加減を知らない、モブの中のモブよ」

 

 焼きあがったアナゴを乗せるための皿を並べながら、楽しそうに答える風待。配膳程度なら止まることのない風待の口から、滔滔と歌島リコリスの評が流れ出す。

 

「この世界をアニメで例えれば、私たちは正式な設定画はないけど設定用っぽいラフ画が一枚くらいあって、作中でもちょっと動いてセリフも一言ぐらいあるタイプのモブだけど、あいつらはアニメーターが手癖で描いた簡単作画で、作中では動きもセリフもないタイプの背景モブって感じなのよ。なんとなく想像つくでしょ?」

「よくわからないです…」

 

 設定画とか簡単作画とか言われても、アニメ映画やアニメ番組をほとんど観ずに育ったスギナには、いまいちピンとこなかった。というか、なぜ風待先輩はこの世界をアニメに例えたのだろうか。

 

 歌島リコリスの人物像もこの世界の真実も、まったく理解できないまま、スギナは次に軍艦巻きを作る。

 

 握り寿司と同じ要領で寿司飯を8個握ると、短冊状に切った海苔をシャリの横に巻き付け、その上にスプーンを使いネタを乗せる。

 

 今回の軍艦巻きのネタは、生ウニとイカの塩辛。

 小ぶりだが甘みとコクが強く、潮の香りが豊かなウニと、数日前に漬けた自家製のイカの塩辛。

 イカの塩辛は、スギナの下宿で毎日饗されている一品である。最初は小鉢で提供する予定だったが、今回は少し趣向を変え、軍艦巻きのネタにしている。

 

 塩辛を軍艦巻きにする案を出したのは、スギナである。風待は小鉢で出した方が酒のあてになると主張したが、スギナはその言葉を無理やり却下していた。

 

 風待先輩は、汚いところなどない綺麗な先輩だが、酒にだけは意地汚い。昼に酒のつまみになりそうな品など出したら、本当に吞みかねないのだ。

 同居人として、バディとして、恋人として、スギナは日々風待の体に気を遣い、まだ未成年である彼女の飲酒量を減らそうとしているのだが、その気苦労はなかなか実を結ばない。

 断酒までの遠い道を思い描き、一人ため息をつくスギナの苦悩をよそに、風待はアナゴを焼き上げる。

 

 火を通すことで引き締まった厚い身に、香ばしい焼き色を纏ったアナゴ。これはビールより日本酒よねと、スギナを軽く絶望させるような独り言をつぶやきながら、風待はアナゴを皿に盛る。

 

 アナゴの身の色が映える織部色の長皿に盛ったアナゴの白焼きの隣に、風待が下宿で作った切り違い切りの厚焼き玉子と、爪楊枝を打って焼いたアナゴの肝を添える。

 自分の焼いたアナゴの出来栄えに満足すると、風待は白焼の皿をカウンターの上に置き、使った網を洗う。

 

「そろそろ時間だから、あいつら迎えに行ってくるわ。アパートに荷物置いたらすぐ戻ってくるから、スギナは盛り込みまでしておいてね」

 

 茶碗蒸しを入れた蒸し器の火を止めると、風待は前掛けを解く。

 

「わかりました。先輩」

「…スギナ、緊張しているの?」

 

 スギナの返事にわずかな硬さを聴き取った風待が、寿司桶を出そうとするスギナの頬に手を伸ばす。

 

 頬に触れる5本の指。綺麗で長い、大人の指。

 

「大丈夫よスギナ。とっても良い子よ、二人とも」

 

 軽く触れているだけの指によって、スギナの顔が誘導されるかのように風待の方に向く。

 

 ただエアコンの音だけが聞こえる静かな店内。ただ優しさだけが溢れる風待の微笑。

 

 風待の唇が、スギナの唇にそっと触れる。

 

 触れあった場所から感じるのは、相手の体の温かさ、心の温かさ。

 風待の愛情を唇で感じ取ったスギナは、目を伏せて小さくうなずく。

 

「先輩がそういうのなら、信じます。いっしょにお食事をして、いっぱいお話をして、仲良くなります」

「うん、スギナも良い子ね」

 

 頬に伸ばした手で、スギナの頭を軽く撫でると、風待はつけ場を離れる。

 

 残りの準備お願いね、といい残し店を出る風待。来た時と同じ自転車の音を店外に響かせながら、アパートへと戻っていく。

 

 一人残されたスギナは、しばらくは風待との接吻の味をかみしめていたが、やがて初めて対面する相手への不安感を取り払うかのように、残りの作業にとりかかる。

 

 次の仕事は、盛り込み。寿司桶に寿司を並べるだけの簡単な作業である。

 しかし、盛り込みは、料理人のセンスが光る場所でもある。簡単ではあるが、難しい。

 

 一人前の盛り込みについて、しばし思案するスギナ。

 

 いろいろと脳内で案を出しては見たが、とりあえず、今の盛り込みの主流になっている流し盛りで、握った寿司を盛っていくことにする。

 

 黒色の寿司桶に、それぞれの色が重ならないように考えながら、真菜箸を使い慎重に寿司を並べていく。

 手前に握り、左側に軍艦、奥に巻き寿司、右にミョウガの千切り。図書館で見た寿司の本に載っていた写真を思い出しながら、それなりの形になるよう配置する。

 

 まあ、こんなものかなと、スギナは出来上がった寿司盛り合わせを、ゴソゴソ動く胸裏の隠しポケットの上に手を当てながら、不安そうな目で見つめる。

 

 頑張って作ったが、それでも素人料理っぽさが隠せないお寿司たち。

 

 初めて包丁を握って2カ月程度の少女が作ったにしては、まずまずの出来だと思うが、他人様に出す料理がこれでいいのか、完成品を目の前にすると改めて心配になる。

 

 じっと眺めていると、次第に粗が気になってくる。

 

 シャリの大きさが不揃いだ。ネタの切り方にまとまりがない。細巻きのネタが潰れている。軍艦巻きの海苔がもう湿気始めている。

 写真でしか見たことはないが、本物の職人が握った寿司は確かに輝いていた。自分の寿司にはそれがない。

 

 これでいいのだろうか、こんなのでいいのだろうか。

 

 これでいいのよ、と以前に習作を見せた時、風待先輩は言ってくれた。

 

 自分たちと同じリコリスが作る料理に、お客様は過度の期待はしていないわ。たとえ見た目は悪くても、旅行中の高揚感に包まれている目で見れば結構気にはならないものだし、味は地元産の上質な食材がある程度カバーしてくれる、だから胸を張ってお寿司を出しなさい。クリエイターならば、たとえハッタリでもこれが最高傑作ですと言って作品を提供するのは大事なことよ。卑屈な態度で作品をお出しするのは、受け取る側にとっても、作品にとっても失礼なことだということを、よく覚えておいてね。と風待は熱く語っていた。

 

 お寿司を握ることが、何故クリエイター論に飛び火したのかわからないまま、なんとなく聞き流していたが、弱気な自分にとっては大事な話だったのかもなと、完成した寿司を見ながらスギナは考える。

 

 外観は多少悪くても、これまでの自分の努力の結晶だ。これからの自分の、モブリコ寿司店員としての第一歩だ。

 それならば、胸を張ってこのお寿司を出そう。どのような評価も、どのような感想も、これからの自分の成長の糧として受け入れよう。

 

 一人覚悟を決めたスギナは、完成した料理をテーブル席に並べる。

 

 諸咲リコリスと歌島リコリス。今回だけは、4人そろってテーブル席での会食となる。

 寿司桶と白焼きの皿を配膳し、赤味噌を使った味噌汁を温め直していると、店の外から騒がしい声が聞こえてくる。

 

 風待先輩の声と、初めて聞く二人の少女の声。

 

 スギナの緊張が高まる。人見知り特有の、逃げ出したくなるような感情を抑え、店の引き戸に目を向ける。

 軽い世間話の声と共に、格子状の引き戸が開けられる。夏の光と共にあらわれる、3人のシルエット。

 

「さあスギナ、こいつらを見てくれ!こいつらをどう思う?」

 

 テンションの高い、風待の声。

 風待の背後にいる二人のサードリコリスの顔を見たスギナの口が、半開きになる。

 

 少しの間をおいて、スギナは素直な感想を述べた。

 

「すごく…モブです…」

 

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