『知識、知能、知恵。そのようなものは羽子板を手にした瞬間に投げ捨てる。勝負の場に立つ時の私は常に獣だ。ただ貪欲に勝利を欲し、ただ猛然と敵を食らいつくす。羽根つきのコートの上では、私は一匹の獣と化するのだ』冠典ゼリィ、第270回試合開始前のインタビューより抜粋
『第271回に続く今回の敗北は、ひとえに私の至らなさが原因だった。些末なことを言えば、ゼリィ先輩の動きが遅かったり、ゼリィ先輩の運動神経が酷すぎたり、ゼリィ先輩が本当に邪魔だったりと色々あるが、それでも今回の敗因は全て私に帰する。それだけだ』風待ウメ、第272回試合後のインタビューより抜粋
『今大会の敗戦は、私に多くの経験を与えてくれた。基本フォーメーションの改革や、決定力の強化、積極的な攻撃など、今後の課題を見つけることができたのは幸甚であったと思う。SWOT分析はすでに終えている。課題は山積だが、その先にある勝利はすでに射程内だ。次回の大会、私たちは、負けない』芭照瓦セノカ、第273回試合後のインタビューより抜粋
『今回の双関杯を制することができたのは、勝負に対する姿勢、そして毅然とした決断力の差だったと思う。羽子板を手にした者に、一切の妥協は許されない。観的哨跡の焚火を飛び越すことを決断した若者だけが、勝利の女神の裸体を抱きしめることができるのだ』歌島メカブ子、第273回勝利インタビューより抜粋
『第269回から5試合、楽な勝負など一つもなかった。運天港で颱風に遭遇した歌島丸の様に、我々は毎回相手に翻弄され、勝敗は常に紙一重だった。しかし、歌島リコリスは気力だ、気力があればいいと照吉も言っていた。今回の試合も、気力で勝利を掴む』歌島モズク子、第274回試合前インタビューより抜粋
『メカブ子さんもモズク子さんも、普通に喋れるんですね…』筑詩スギナ、第274回試合前インタビューより抜粋
あれ見ぃやれ向ぅこう見やれ
ろぉくまい屏風にすぅごろく
すごろぉくぅに五ぉ番負けて
二ぃ度と打つまいかぁまくら
アパート横の空き地で、スギナは手毬歌を口ずさみながらリフティングの練習をする。
右手に持った羽子板で、ピンポン玉より少しだけ小さいゴムボールを打ち上げ、落ちて来たらまた打ち上げる基礎練習、リフティング。
羽子板に慣れ、また羽子板で打つ感覚にも慣れるためのリフティングは、羽根つきの基礎だという。
よく跳ねるゴムボールの球筋がつかめず、最初は周囲を動き回りながら落下する球を追いかけていたスギナだったが、今は体の動きも安定し、その場に立ったままリズミカルな動きで球を真上に打ち上げている。
手毬歌の拍子で打ち上げられた蛍光色のゴムボールは、雲一つない夏の青空に吸い込まれた後に、またスギナの手元に戻って来る。
羽子板で球を打つ感触、高く上がった球とどこまでも高い空を見上げる感覚が、妙に楽しい。
夢中になってリフティングを続けるスギナの横で、歌島の二人が竹箒で空き地の清掃をする。
小石などが取り除かれた空き地に、風待が背負ったサッシェルバッグからマーキングチョークを出し、地面にコートのラインを引く。
定規で引いたかのような見事なコートを描き終えると、三人はそれぞれ歩幅でラインの長さを確認する。
リコリスは皆がミリ単位まで同じ一定の歩幅で歩くことができる。コートの幅を測量する程度なら、巻尺を使うまでもない。
「スギナ、もう羽子板には慣れた?」
「はい、小さなラケットって感じで最初は戸惑いましたけど、慣れてくると一体感が出てきますね」
コートを描き終えた風待の呼びかけに答え、リフティングを中断するスギナ。落ちて来たゴムボールの横に羽子板を沿わせ、掬うように手首を返して受け止める。落下スピードを完全に消し、弾力のあるゴムボールを再び跳ね上がらないように羽子板の表面で停止させるという、難易度の高い技術。
たった少しの練習で、そこまでの感覚、そこまでの技術を自得したのは、底辺サードとはいえ流石は本部リコリスのはしくれである。
「ところで、なんで私たちだけ制服姿なんですか。それも鞄まで背負って」
そろそろ試合開始よと声をかけた風待に、スギナは質問する。
ルール教えてくださいとか、照吉って誰なんですかとか、聞きたいことは多かったが、今のスギナにとって、これが一番聞きたい質問であった。
歌島リコリスたちの姿は、半袖シャツにハーフパンツの、夏の運動着姿。
対するスギナと風待は、リコリスの制服姿。それも銃を収納したサッシェルバッグ付きだ。
「なんで私たちも運動着に着替えないんですか? というか着替えたいんですが…」
スギナは質問という名の不満を、風待にぶつける。
リコリスの制服、特に本部卒の制服には、重大な欠点が一つだけある。
夏、暑いのだ。
本部卒リコリスの制服は、世界に類のない特殊な生地によって製作されている。
日本の技術力を総結集して作られた超繊維で作られた制服生地は、NIJ規格タイプⅢAクラスの対弾性能を筆頭に、対刃、対火、対爆、対瓦斯、対酸対アルカリといった様々な耐性を本部リコリスの制服に与えることに成功したが、その代償として、一般制服と比較すると三倍にもなる重量と、通気性のなさといった短所が付与されていた。
鍛えた本部卒リコリスにとって、制服の重量はさほど気になる点ではなかったが、通気性の悪さは問題だった。
常に体臭が籠る。雨の日は蒸れる。暑い日は汗が滴り落ちる。
任務上は何ら問題ない欠点とされてはいるが、日々この制服を着て暮らす年頃の少女たちにとって、夏季の着心地の悪さは任務以上に頭を悩ます大問題であった。
熱い日差しが降りそそぐ空き地で、重い制服と鞄を身に纏い羽根つきをするのは、どう考えてもおかしいとスギナは訴える。
「歌島が軽装なのって、実はハンデのひとつなのよ。ほら、本部卒と分校卒って運動能力に差があるでしょ。だから少しでもハンデをつけないと、均衡のとれた試合にならないのよ」
これも双関杯のルールなのよと、申し訳なさそうに風待は説明する。
「それなら仕方ないですね。けど、これまで諸咲側は三敗しているって聞きましたけど、それでもこんなハンデいるんですか?」
「去年の夏はセノカのエンジンのかかり具合が遅くてね、結構いい勝負だったけど一点差で負けたのよ。だからこういうハンデがあるくらいが勝負になって丁度いいのよ。その前の試合は、まあ…」
「セノカさんの前の年の試合は、風待先輩とゼリィ先輩のペアでしたね」
「ゼリィ先輩が分校卒だったってことを差し引いても、酷い試合だったわ…」
晴れた空を見上げ、2年前の試合を振り返る風待。
「酷いというより、試合になっていなかったって感じね。ゼリィ先輩の頭の中では、風速、標高、空気抵抗、地球の自転まで計算に加えた完璧な弾道計算で相手の球の移動を瞬時に計算していたらしいんだけど、それを活かす体がなかったのよ」
「ゼリーさんって、運動苦手だったそうですからね」
「動くたびに私の邪魔をして、何度もコートの中でぶつかっていたわ。本当に何度も、何度もね」
明るい青空の下で、暗い愚痴を吐く風待。冠典先輩と風待後輩、試合中の二人の相性は悪く、ぶつかるどころの騒ぎではなかったらしい。
冠典支部長に前衛を任せると相手の球を頭に受けて昏倒し、後衛に立たせれば風待の後頭部に羽子板をぶつけて昏倒させてしまう。昏倒に昏倒を重ねた混沌のコントの結果、冠典風待の諸咲ペアは2年前の夏と冬、2度の大会を敗北したという。
「けど、風待先輩がここに来る前の試合は、ゼリィ先輩のいる諸咲側が2度勝っていたんですよね」
「そのときはゼリィ先輩のペアがルミナ先輩だったからね」
「やっぱり凄かったんですかね、ルミナ先輩って」
現名古屋支部長の臥観手ルミナは、DAの訓練生時代からファーストリコリスだったという。当時新人リコリスとして諸咲で暮らしていたルミナ先輩なら、運動神経に劣る冠典ゼリィ支部長を的確に補佐しつつ、二人で力を合わせて勝利を手にしたのでしょうねと、スギナは考えを述べる。
「いや、それがね…ルミナ先輩って、最初のサービスでゼリィ先輩が使い物にならないことを知ると、すぐさまゼリィ先輩を気絶させたのよ」
「気絶?」
「そう、こんな風にね」
風待はスギナの首元に腕を伸ばすと、顎の下で人差し指と親指をパチンとはじく真似をする。
「弾いた親指を顎に当てて、その衝撃で相手の頭蓋骨を揺らし気絶させる。ファーストリコリスと一部のセカンドにしかできない技よ」
箸から滑り落ちた葛餅のような姿で地面に崩れ落ちた冠典先輩をコート上に残したまま、臥観手ルミナはゆっくりと歌島リコリスたちの面前に立ちはだかったという。
勝利のためなら支部長をも倒す、狂気の執念。邪魔な先輩から解き放たれ、自由に敵と闘うことができる喜びに沸きあがる、威嚇めいた笑顔。
背丈も威圧感も人一倍ある、後の名古屋支部長である新人ファーストリコリスの姿は、メカブとモズクの目には、一匹の巨獣に見えたという。
その後は、一方的な殺戮劇だったらしいわよ、と風待は語る。
ルミナが振り抜いた羽子板の風圧は衝撃波となってメカブとモズクを襲い、渾身の力を込めて打ったジャンピングスマッシュによって四散したゴムボールの破片は、散弾となって二人の体に突き刺さる。
ファーストリコリスの力を惜しみなく開放し、連続した連弾の連撃を、連綿と歌島リコリスたちにぶつけ続けるだけの、一方的な地獄絵図。
これはもはや試合ではなく、単なる射撃訓練だった。訓練に使う銃は羽子板、射撃の的は生きたリコリス2名。的から恐怖の悲鳴が上がる、少し変わった射撃訓練場だった。
コートの上に神はいない、ただ一匹の悪魔がいるだけだ。この戦場から奇跡的に生還を果たしたメカブ子とモズク子は、後にそう語っていたという。
「…私、ルミナ先輩が敵じゃなくて良かったと思います、心から」
「ルミナ先輩がいた年の双関杯は、こんな感じで夏も冬も諸咲側が勝ったらしいのよ。あまりに戦力差があったから、歌島側は今でも釈然としていないらしいけどね」
任官前昇進で、候補生時代からすでにファーストリコリスになれたほどの実力を持つ臥観手ルミナに全力を出されては、分校サードでは手も足も出なかったことだろう。歌島リコリスたちの胸中に未だ燻っているであろう不満は、サードリコリスのスギナには容易に想像がついた。
「邪魔者扱いされて、あっさり気絶させられたゼリーさんも、さぞ怒っていたことでしょうね」
「それがね、さすがにその日の夜は呪詛の言葉を吐きながら部屋の柱で爪を研いだり、畳の目を数えたりして怒りを表していたらしいけど、翌朝にはぴたりと収まっていたんだって。よく考えてみたら勝利は勝利だし、こんな危険で凶暴な部下を従える支部長ってのも、これはこれでキャラ立っているな、って勝手に納得しながら、笑顔でどんぶり飯を食べていたそうよ」
「天才タイプって、頭の切り替えも早いんですね」
「キャラが立てば、なんでもいいんでしょうね。さて、スギナ。そろそろ試合開始よ」
少し昔話が長すぎたようだ。風待は気持ちを現代に戻すと、スギナをコートに誘う。
アパートの横にある、駐車場替わりの空き地に作られた、急ごしらえのコート。サッシェルバッグ内に収納されたマーキングチョークで、地面に四角のラインを引いただけなのだが、歪みなく丁寧な直線で構成されたコートラインは、ここが試合の舞台だということを、明確かつ力強く主張している。
しかし、何かがおかしい。スギナはしばらくコートを見つめながら、首をかしげる。
「先輩、このコート、幅が狭くないですか?」
スギナは地面に描かれたコートのライン横を歩き、歩幅で計測する。
横幅は丁度2メートル。バトミントンのコートの三分の一だ。
縦幅は12メートル。ちょうど真ん中に区切りの線があるので、自陣のエリアは縦6メートル、横2メートルとなる。
中央にポストやネットはない。まあテニスやバドミントンではないので、これは当たり前なのかもしれないが。
というか、羽根つきにコートって必要だったっけ? と、スギナは首をかしげたまま考える。
「コートは狭いくらいでいいのよ、逃げ場がない方が、試合も早く進むしね」
「逃げ場?」
これからやる羽根つきは、どうやら特殊なルールがあるようだ。
いったいどのようなルールなのだろう。不安になるスギナの胸ポケットが、ガサガサと動く。
「じゅんびはいいか風待」「それでははじめるぞスギナ」
アパートの壁際で準備運動をしていたメカブ子とモズク子が、羽子板を手にコートに入る。
スギナもよくわからないまま、気が乗らないまま、羽子板を持ったまま、風待に手を引かれコート内に足を踏み入れる。
幅2メートル。入ってみると、かなり狭い。数歩の横移動だけで端に触れる両ラインは、外から覗いた時以上に圧迫感がある。
「それでは、はじめるまえにひとこといっておくぞ」「しあいまえのマイクパフォーマンスだぞ、よくきけよ」
歌島のモズク子が、ハーフパンツのポケットから、片手で包める程度の大きさのゴムボールを取り出す。
「試合前の名乗り口上よ。スギナ、ついに始まるのよ、第274回、双関杯が!」
「そうですか」
「長きにわたる諸咲と歌島との因縁の戦い、これから始まる熱く長い試合が、今始まるのよ!」
「短く終わるといいですね」
未だ乗り気でないスギナを、風待はコートの前に立たせ、自分は背後に回る。
「いいかスギナよ、よくきけよ」「このたたかいは、どちらがしんのへんきょうかきめるたたかいでもあるのだ」
「真の辺境?」
蛍光色のゴムボールを空に掲げながら、羽子板をマイク代わりにして語るメカブ子とモズク子に、思わずスギナが聞き返す。どうやら歌島側のマイクパフォーマンスに乗せられてしまったらしい。
「そうだ、スギナよ。おまえは諸咲がいなかだとおもっていないか」「諸咲がへんきょうのちだとおもっていないか」
「まあ…田舎だとは思いますけど」
「スギナよ、それはおもいあがりだぞ」「おもいあがりもはなはだしいぞ」
「そうなんですか?」
二人の剣幕に、少し戸惑い気味になるスギナ。それもそうだろう、自分の暮らしている所は田舎だと思うと答えただけで、何故思い上がりも甚だしいと説教されなくてはならないのか。
「諸咲しぶないには、コンビニがある、ハンバーガーチェーンてんがある。スーパーもあるし、だいがくもある!」「ふつうそういうところは、いなかとはいわない!」
「はあ…」
「それにくらべ歌島は、えいがかんもパチンコやも、のみやもきっさてんもないと、平岡さんがいっていた!」「しゅうい一りにみたないこじまであると、公威さんがいっていた!」
悲憤と悲哀を込めて、演説調で語るメカブ子とモズク子。その熱気に気圧されたスギナは、ただ二人の前に立ちすくむ。平岡さんって誰ですかとも聞けず、ただ立ちすくむ。
「いいかスギナ! このたたかいにかったほうが、しんのへんきょうだ!」「このたたかいにかって、へんきょうのざを諸咲からうばいとる!」
「そんなことはさせないわ!」
スギナの背後から、風待が叫ぶ。艶の輝く長い黒髪をかき上げて、決然とした口調で叫ぶ。
「辺境の座は、諸咲支部こそが相応しいのよ! あなたたちは、歌島の青年会でキョロキョロと物狂おしくしているのがお似合いよ!」
「おのれ風待、よくぞいったな!」「ヴェルレーヌはキョロキョロではなく、きょうきょうだぞ!」
意味がよく分からない三人の掛け合いの間に挟まれ、一人ため息をつくスギナ。
こういうノリに加わるのは苦手だ。こういうノリに付き合わされるのは苦痛だ。
誰か助けてください、とスギナはやつれた顔で空を見る。
雲一つない夏の青空。明るく、広い、どこまでも続く果てなき青色。
去年このコートに立っていたセノカさんも、同じこと思ったんだろうなと、スギナは空を見上げて考える。
「メカブもモズクも、口上はこの程度かしら? 気が済んだなら試合開始よ! スギナ、準備しなさい!」
「…そうですね、ちゃっちゃとやって、手早く終わらせちゃいましょう」
「おっ、いうじゃないかスギナ」「じしんありげだなスギナ」
早く試合を終わらせたいというスギナの本心が、歌島の二人には挑発と受け止められてしまったらしい。闘志を燃やすメカブ子が、左の手に握っていたゴムボールを手毬の様に突きながら、右手の羽子板をイースタングリップに握り、両足を広げ上半身をわずかに屈める。
その背後には、モズク子が影のように付き従う。羽子板の握りは同じだが、メカブ子の背中から覗き見るかのような、踵を浮かせ背筋を伸ばした格好で待球姿勢をとる。
「いくぞスギナ!」「いくぞ風待!」
「あのー、それよりまだ私、ルールが…」
ぼんやりと空を見ていたスギナが、なんとなく目を歌島の二人の方に向ける。
前を向いたスギナの視界に入ってきたのは、高速で飛んでくるゴムボールの、カラフルな色彩だった。
子どもの遊びに使う、よく跳ねるゴムボール。中身の詰まった、ちょっと重いゴムボール。球技用の球としてみれば、卓球の球より少しだけ小さい、最小ランクのゴムボールだが、スギナにはなぜか大きく見えた。
ああ、目の前まで来ているから大きく見えるのか、と気が付くより前に、内箕の100均で購入したゴムボールは、スギナの額に勢いよく命中する。
「ごっ!」
ゴムボールの直撃による物理的な衝撃に、スギナの体が大きくのけぞる。崩れ落ちるほどの痛みはないが、油断して弛緩していた体にとってはかなりのショックだったらしく、のけぞった姿勢のまま数歩後退してしまう。
のけぞったスギナの目に、今日何度も見上げた青空が映る。ただ青く、ただ美しい青空。不明瞭な色ひとつない、純真な青色のみで構成される、夏の青空。
夏空に不明瞭な点はない。不明瞭なのは今の自分の状況だけだ。
なぜ私は、いきなりボールを打ち込まれたのだ。
羽根つきなのに、なぜメカブ子さんは私の額にボールを打ち込んだのか。
とりあえず質問をぶつけよう。怒りの抗議をぶつけよう。
姿勢をとり直し、眉に険をよせて前を向くスギナ。
前を向いたスギナの視界に入ってきたのは、高速で飛んでくるゴムボールの、カラフルな色彩だった。
「ごっ!」
額に受けた物理的な衝撃に、再び同じ角度でのけぞるスギナ。彼女の顔が、また青空と対面する。
諸咲の地を照らす夏の空との、本試合中二度目の対面であった。