やはり俺と周囲の人間関係はまちがっている。   作:黒河桔梗

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アホの子の登場です。


そして由比ヶ浜結衣はさらに謎を深める。

校内は今日も騒がしい。

それはもう目を逸らしたくなるレベルで。

 

何故なら廊下で好きな男子について楽しげに話す女子だとか、肩を組んで冗談交じりに共通の話題で会話する男子だとかそういう一般論で言う僕達、私達仲良いです!みたいな奴等を目にする確率が高い。

だがその側を俺が素通りすると途端に状況は一変する。

奴等の顔は驚愕に変わりみるみるうちに顔色は悪くなりその上女子なんかは泣き出す始末。

なんだってんだ俺の顔は泣き出すくらい怖いってことか?通常時の顔でそれなら俺が怒った時の顔はそれの比にならないくらい恐ろしいってことだぞ。

 

 

「………はぁ」

 

ほら今だって溜息吐いただけでビクついた奴等が多数。

白い目で見られるだけじゃなく逃げる奴なんかも出てくるってどこまでだよ。

 

 

「ひぃっ!」

 

運悪く目が合った奴が顔を青くして半泣き。

俺お前に絡んでないからな?一度たりとも話しかけてもないし脅すようなことした覚えもない。

勝手にビビって勝手に誤解してこれ絶対俺の方が被害者だろ。

 

むしろ俺が泣きてーよ。

仕方ない、気にせず俺は目的である自販機に向かうとしよう。

生憎と俺が一緒に過ごす相手は幼馴染の戸塚彩加しかいないので他には期待してない。これほぼ諦めてるからな?友達は欲しいが中途半端な間柄になるくらいなら近づかれない方がいい。

 

だから結局のところ親しい友人は彩加一択になるわけで。

いいんだよ。彩加は俺にとって最強の砦だあいつがいるのといないのとじゃ話はまったく変わってくる。

それは天国と地獄程の落差が。

 

人通りの多い廊下を抜け自販機を発見する。

お、良かった今はそんなに並んじゃいねーな。

ホッとしたのも束の間、見慣れた?ピンク頭が目に入る。

確かあれはうちのクラスの由比ヶ浜じゃないか?

 

 

 

由比ヶ浜結衣。

うちのクラスでいうトップカーストに君臨する一人で見た目可愛いがお近づきになるには縁遠い存在だ。

なんといっても友達がいない俺からしたら真逆側の存在だからな、クラスでの由比ヶ浜といったらリア充の塊みたいな奴だ。つっても、あの金髪縦ロールよりは好印象だけどな……悪いがアレと俺とは気が合いそうにない。

 

ってそんなことより飲み物。

何にするか悩んでいると自販機の前であたふたする由比ヶ浜結衣の姿が目に入る。

 

 

「あれ……?」

 

しきりに自販機の下を覗き込みながらなにか探している。

この場合予測出来るのは金を落としたの一択だ。

 

だがな?だからといってそんな短いスカートを履いている状態であまりにも無防備すぎるだろ。アレですか?それは案に俺に覗いてほしいということか?

 

 

「この辺だと思うんだけど……っ」

 

どうやら見つかるに至っていないらしい。

金を探すのはいいがその体勢はなんとかならないもんか、さっきから目線をどこに向ければいいか困るというか。

 

 

「……ピンクの水玉か」

 

ちらっと見えた彼女のパンツの柄が自然と口から出た。

いやべつに言葉にする必要はなかったと思うが仕方ない、俺は嘘が苦手だ。

だから口から本音が漏れるのも仕方のないこと。

 

 

そしてまさか背後に誰かいたのだと気付かなかった由比ヶ浜はゆっくりと声のした方、つまり俺、囀二色の方向へ視線を向けた。

 

 

 

「えっ?」

 

「よう」

 

 

由比ヶ浜が俺をクラスメイトとして認識しているかは定かではないが声を掛けておくことはしておこう。女子のパンツなんてなかなかお目にかかれるもんじゃないし、っておいこれ俺最低じゃねぇか。

俺は決して見たかったわけじゃない、そうだそこで由比ヶ浜がパンツ見てくださいって晒してんのが悪い。

 

無表情で受け答えする俺に対し由比ヶ浜は呆然としている。

 

まさか人がいるとは思わなかったんだろう。

しかもそこにいたのが二色だったことが最大の汚点だったのかもしれない。

何故なら校内でもっぱら不良という肩書きだけが独り歩きしている平和とは無縁の囀二色が突然目の前に現れたら驚くなという方が無理な話だ。

しかも中身と外見のギャップの凄まじい男子高校生の真実を知る者は彼の大切な大事な大好きな幼馴染しかいない。

 

 

 

「きーーー、っ」

 

悲鳴が響き渡ると思われた瞬間、瞬時に起こることを予想した二色は由比ヶ浜結衣の口元を手で抑えた。

 

やっべぇ。

幾らなんでもトップカースト連中の一人のパンツの柄を口走ってしまうとはなんて有様だ。

しかも本人の前でなんて失態すぎるだろう。失敗するにしたってもう少しマシなもんがあるだろうが、例えばあーっと……好きな子と勘違いして告白しちゃうとか?あるあるネタだよなコレ。

 

 

「んーー!んんーーー!!」

 

うおっと、忘れてたまずは再確認するとしよう。

 

「えっと、手放すけど絶対叫ぶなよ?絶っ対に叫ぶなよ?絶対だかんな?」

 

じゃないと俺の今後の沽券に関わる。

念には念を入れる、それが親しい仲じゃなければ尚更だ。親しくないからこそ相手に相応の対応を施すのは当然の摂理だろ。

 

 

こくこくと頷く由比ヶ浜に俺は手を放した。

 

 

 

「ぷはっ、息止まっちゃうかと思った…」

 

「それに関しては悪い」

 

「ホントだよびっくりしたんだから!」

 

 

あれ?なんでこんなフレンドリー?

なに当然のように会話しちゃってんの俺達?そんな仲良くないでしょむしろ話したことすらないでしょうが。

リア充の神様は些細な城壁も飛び越えるってのかクソが。

 

 

「って、さえりんじゃん!!」

 

オイ待てコラそんな女子みたいなあだ名をつけてもらったことこのかた一度もねーよ。

 

さえりんってナニ?本当ナニ?

 

 

「おい由比ヶ浜お前……」

 

「っていうか人のスカート覗くとかあり得ないし!」

 

「いや覗いてねぇしあれは完全にお前が尻突き出してるのが悪い!よって俺は無実だ!!」

 

「突き出すとか……っ!そんなことしてないし軽々しくそういうこと言わせないでよばっかじゃないっ?!」

 

勝手に言ったのはお前だ俺の意思じゃない。

して、由比ヶ浜のパンツを目撃したのはあくまで本人の不注意であって望んでやったわけじゃない、なのに一方的に罵倒されるのは気に食わない。

 

 

「パンツの一つや二つで騒がしい奴だな!!それでもお前は女なのか?真の女はそんな小さなことに囚われない広い心を持ってるっていうのに」

 

「女の子が下着見られて黙ってる方がおかしいでしょ!てか女の子をどんなものだと思ってんのささえりんはっ」

 

 

えっと強靭な鋼の心を持った存在?

俺は知ってるぞ女子って生き物は他人を蹴落として生存争いをしている、つまり弱肉強食の戦いを日々日常の中で強いられている。確固たる意志を胸に生きているのだと。

 

 

「男漁りも戦いなんだろ?知ってるぜ。女同士だからこそ容赦無く相手の髪を掴み合ったりできるんだよな?プライドをかけて命懸けで……考えただけで恐ろしい男である俺にそんな惨い戦いは想像を絶するぜ」

 

口にするのも悍ましい。

きっと俺の想像以上のことが女子の間では行われているんだろう、それも見るに耐えられない残酷な。

人としての人権もかなぐり捨てて目的のために必死なクラスメイトの女子の姿が思い浮かぶ。

 

 

 

「どんな争いを想像してんの!?」

 

「俺の口からそれを言わせようってのか?由比ヶ浜は思った以上の鬼畜野郎らしいなこのマッドサイエンティストめ」

 

「違うからねそんなんじゃないし!マッドサイエンティスト……ってやつでもないから!ち、違うからね?!」

 

げんなりしている俺に対して由比ヶ浜は必死な表情で誤解を解こうとしている。

今更取り繕ったところで無駄だ何故なら俺がもうその一部始終を虚像という名の空想に費やしてしまった時点でアウト。

 

つーか、そんなことやってる暇がこの子にあんのかね。

自販機の前でしょうもないことに時間費やすならさっさと目的を実行すべきだと思うわけだが。まぁ、由比ヶ浜結衣というちょっとズレた子には意識がそっちへ向かないのかもしれない。

 

ここは俺が一肌脱いでやるか。

 

 

「由比ヶ浜、お前自販機に用があったんじゃねーの?」

 

「へ?」

 

「だから自販機に用があって来たわいいが金を運悪く自販機の下に落として羞恥心そっちのけで金に手を伸ばしていたと。んでピンクの水玉パンツをお披露目するに至ったわけだが……訂正はないよな?」

 

「あるよ!というか満載だったよ!!納得するわけないでしょっ」

 

 

そんな不満を叫ぶ由比ヶ浜を無視して俺は話を進める。

時間は無限じゃない有限である。

よって俺の時間もそろそろ限界を迎えようとしているわけで、不要なものは後回しもしくは切り捨てで。

 

 

「で、お前金はあるのか?」

 

結局のところ聞きたいのはこれだけだ。

要件が終われば互いにハッピー、このままこの場に居座る必要もない。ならさっさと終わらせるに限る。

 

「えっと……」

 

「大方金髪縦ロール………じゃなかった、三浦達に頼まれたんだろ」

 

「う、うん」

 

「人数分の金額はあんのか?」

 

「う、………足りないかも」

 

足りない分は出してやろう。

由比ヶ浜も困っているようだし俺もこのままだと困る。

自販機で飲み物も買えないし待っている彩加が何より心配だクラスの男子の手に堕ちていないか。

 

「えっでも!」

 

「でもも糞もねぇよギブアンドテイク。時と場合には必要なことだろ?俺もお前もそれで救われるなら万々歳。ってなわけで」

 

めんどくさいから札でいいか。

財布から野口英世を出すと由比ヶ浜に押し付ける。

えっとかあれっとか戸惑った声を出しているがこの際それには見向きしなくていいか。

しっかり札を握らせると俺は目的だった自販機で飲み物を二本確保すると由比ヶ浜に目もくれず教室へ行くことを優先する。

 

 

「ちょっ、さえりん!!」

 

そんな由比ヶ浜の俺を呼ぶ声にも耳を傾けている暇はない。

 

自販機の前に一人残された由比ヶ浜を放置して囀二色は一心に愛する幼馴染の元へ到着することを最大限に優先順位にするのだった。




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