ヒソカは過去を語らない   作:マネ

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ヒソカとのバトル条件

 白い。

 

 「なんだこれ!?」

 

 病院?

 いや違う。もっとこう、雑に白い。世界ごとペンキで塗りつぶしたみたいな雑な白さだ。

 

 さっきまでコンビニで週刊少年ジャンプを読んでたはずなんだけど。

 

 そこまでは覚えてる。なのに何で今こんな真っ白空間に立ってんだよ。

 

 意味わからん。

 

 ドッキリ?

 誘拐?

 催眠?

 

 どれもしっくりこねェ。

 

 というか、そこまでやる理由が俺にない。芸能人でもねェし。もっとこう、狙うなら別のやつ行くだろ。

 

「お目覚めですか」

 

「うわっ」

 

 いた。

 

 女だ。

 

 なんか後ろに立ってた。普通に。

 

 足元まで伸びる栗色の長い髪。白い髪飾り。真珠色を基調とした薄紅色の桜の花びらを象ったシルエットのドレスを身につけている。

 

 顔もやたら整ってて、ぱっと見すげェ綺麗なんだけど、目が終わってる。終わってるっていうか、全然興味なさそう。道端の空き缶でも見てるみたいな目してる。

 

「誰だよ」

 

「ステイシアです」

 

「いや、会話ヘタか」

 

 名前聞きたいんじゃねえよ。

 聞いたけど。聞いたけどそういうことじゃねェんだよ。

 

「ここどこだよ」

 

「あなたにはこれから『HUNTER×HUNTER』の世界に転生してもらいます」

 

「……えっ!?」

 

 心臓がどくってなった。

 

 『HUNTER×HUNTER』の世界?

 

 いや、ちょ、待っ――

 

 ゴン。キルア。ハンター試験。念。幻影旅団。GI。蟻編。

 

 一瞬でいろいろよぎった。

 行けんの? マジで? あの世界に!?

 

 いやでも次の瞬間には別の感情が来た。

 

「いやいやいやいや、説明が雑すぎるだろ!」

 

「そうでしょうか」

 

「そうだよ!」

 

 なんだこいつ。

 転生してもらいますで済む話じゃねェだろ。普通もうちょいあるだろ。段階とか。こっちの心の準備とか。

 

 ……いや、でも『HUNTER×HUNTER』の世界か。

 

 ちょっと待て、普通に羨ましがられるやつじゃね?

 いや、でも今それ出すのダサいな。落ち着け俺。

 

「で、なんで俺なんだよ」

 

「依頼です」

 

「軽いな」

 

 てか、さっきから、俺の質問に答えてるようで、何も答えてねェな、こいつ。

 

「ある人物と戦ってもらいます」

 

「誰だよ」

 

「奇術師ヒソカです」

 

「……ヒソカ?」

 

 そこでちょっと力が抜けた。

 

 ヒソカ。

 あぁ、あのヒソカね。

 

 強いは強い。まあそこはわかる。

 でも、ぶっちゃけネットで持ち上げられすぎなんだよな、あいつ。ヒソカ最強説とか、何回見たかわからんけど、そのたびに思ってた。

 

 いやねェだろって。

 

 バンジーガムが応用力ある?

 で?

 

 て、話なんだよ。

 

 所詮ゴムだろ。

 ゴムでどうすんだよ。火力足りねえだろ。上に行けば行くほど無理に決まってんだろ。メルエムに勝てんのかよ。ネテロに勝てんのかよ。ゴンさんに勝てんのかよ。無理だろ。絶対無理だろ。

 

 それどころか、その下のピトーにも、その下のレイザーにも無理だろ。

 

「要するに、ヒソカに勝てばいいんだな」

 

「戦闘不能にするか、心から敗北を認めさせれば成立です」

 

「へぇ」

 

 おもしろい条件だな。

 ただ倒しましたじゃなくて、言い訳まで封じる感じだろ。そこは嫌いじゃない。

 

「殺害するのが確実ですね。負けを認めたフリも可能性としてはなくはないですから」

 

 さ、殺害って……。

 

「勝ったら?」

 

「ヒソカと戦うために、あなたが考えた念能力を付与します。その与えた念能力を扱うための素質も与えます」

 

 まただ。俺の質問に答えろよ。

 

「素質も?」

 

「能力だけでは無意味でしょう」

 

「まあ、そりゃそうか」

 

 うん、それはそう。

 能力だけ最強でも、使うやつが扱えないなら意味ないしな。

 

「時を止める能力とかでもいいのか?」

 

「試行済みです。失敗しました」

 

「は?」

 

 てか、俺以外にも、ヒソカ討伐を依頼されてるやつがいるのか?

 

「時止めで?」

 

「はい」

 

「負けたの?」

 

「はい」

 

「アホだろそいつ」

 

 即答だった。

 

 だってそうだろ。時止めだぞ?

 

 時間を止めた時点で勝ち確で、終わりだろ。どんな使い方したら負けんだよ。逆に負けるほうがむずいわ。

 

「どうせ使ったやつがバカだったんだろ」

 

「その可能性はあります」

 

「ほら見ろ」

 

 やっぱりな。

 時止めで負けるとか、能力のせいじゃねェよ。完全に中身のせいだろ。ザコが持つと最強能力も腐るってだけの話だ。

 

「一度試行された能力を付与することはできません」

 

 チッ。

 俺を最初に選んでくれればよかったのに。バカのせいで、俺が苦労するだろ。

 

「そうだ。ノートに名前を書けば死ぬ能力なんてのはありか?」

 

「失敗しました」

 

「うわ、こっちもバカかよ。選ばられるやつらはバカしかいねェのかよ」

 

 ステイシアはじっと俺をみる。

 

 なんだよ??

 

「被験者は死亡しています」

 

「へ?」

 

 一瞬、喉の奥が詰まった。

 

 さっきまで、能力をもらって負けた間抜けの話だと思っていた。

 でも今のは違う。

 その失敗の中に、普通に死人が混ざっている。

 

「……それって失敗なのか?」

 

「契約上は失敗です」

 

 命の扱いが軽くないか?

 

 意味わからん。

 

 被験者死亡って言葉を、つまずきもせずに出してくるのが嫌だった。

 まるで書類の不備でも読み上げるみたいに。

 

 能力の使い方ミスったのか?

 名前を書く前にやられたとか?

 条件見落としたとか?

 

 いや、知らねェけど。

 

 知らねェけど、なんか嫌だ。

 さっきからこいつの説明、ずっと薄気味悪いんだよ。

 

 うまく言えねェ。

 でも、何かがずれてる。

 

「ヒソカへの挑戦には追加条件があります」

 

「まだあんのかよ」

 

「ハンター試験への合格。もしくは天空闘技場200階クラスでの1勝。不戦勝は除外します。または戦闘タイプの念能力者を戦闘不能にするか、敗北を認める発言をさせること」

 

「……は?」

 

 なんか急にしょうもないものを見せられた気分になった。

 

「いや、何その条件」

 

「挑戦権です」

 

「いや、意味わかんねェって」

 

 何だよそれ。

 ヒソカに勝てばいい話だろ。なんでその前に予選みたいなの挟むんだよ。しかも、いちいち細かい。天空闘技場200階クラスで1勝。不戦勝は除外。戦闘不能にするか、負けを認めるセリフを言わせること。

 

 何なんだよ、その神経質な条件。

 受験資格かよ。

 応募要項かよ。

 

「ハンター試験って……」

 

 思わず笑った。

 

「いや、そんなの楽勝だろ」

 

「あなたには難しいでしょう」

 

「は?」

 

「少なくとも現時点では、通用しません」

 

「いやいやいや」

 

 ちょっと笑ってしまう。

 笑うしかないだろ、そんなの。

 

「念能力もらって? ハンター試験で? 無理?」

 

「はい」

 

「アホか」

 

 こいつ、マジで『HUNTER×HUNTER』を読んだことあんのか?

 いや、あるんだろうけど、理解が浅いのはそっちだろ。

 

 ハンター試験なんて、原作知識ある時点でだいぶ有利だし、そこに強能力まで乗るんだぞ? 落ちる要素どこだよ。むしろどうやったら落ちるんだよ。相当バカじゃないと無理だろ。

 

「現時点のあなたは弱いので」

 

「は?」

 

 またその言い方だ。

 

 見下してるとかじゃない。

 もっとひどい。

 最初から価値が低いものとして処理してる感じ。ゴミ捨ての分別でも言うみたいに、さらっと弱いって言いやがる。

 

「それと、ドッキリテクスチャーに関する情報は欠損させます」

 

「……は?」

 

「原作準拠です」

 

「いや、何でだよ」

 

「必要だからです」

 

「必要なわけねェだろ! クソどうでもいい! ドッキリテクスチャーを知ってようが知っていまいが、何の影響もねェだろうが!」

 

 思わず一歩出た。さすがに言ってる意味がわからなすぎる。

 

「ドッキリテクスチャーだぞ!? 何だよあれ! ぺたって貼って、うわ騙されたってなるためだけのヒソカの自己満足の能力だろうが!? そんなもんの記憶を削って何の意味があるんだよ!」

 

 ステイシアは無言。

 

「いや、ほぼ……ほぼじゃねェ。完全に、ただのイタズラシールじゃん、あんなの! ドッキリシールぺったんこ! うわーっ!! やられたちゃったよぉー。参りましたぁーーヒソカ様ぁーーってなるか!? アホっ!! ゼッテーならねェだろ! そこ隠して、何の意味があるんだよ! なに対策だよ!? それ!!」

 

「あなたにとってはそうでしょうね」

 

「そうだよ!」

 

「だから弱いのです」

 

「今なんつった?」

 

 またそれだ。

 マジでこいつ、そればっかだな。

 

「少なくとも、あなたはその程度なのです」

 

 ムカつく。

 クソほどムカつく。

 

 けど、ちょっと引っかかる。

 

 時止めが負けた。

 名前を書けば死ぬ能力でも失敗した。

 被験者は死んだ。

 その上で、ドッキリテクスチャーの情報まで削る。

 

 ちょっとずつ、ちょっとずつ、なんか変なんだ。ちょっとの違和感がちょっとずつ積み重なって、大きな違和感になるような、嫌な感じだ。

 

 意味不明だ。

 その意味不明さが逆に気持ち悪い。

 

 いや、でもそこで、ヒソカすげェにはならねェだろ。

 

「おまえさ」

 

「はい」

 

「結局、無敵ならいいんだろ」

 

「……何の話ですか」

 

「能力だよ」

 

 そこでようやく、光太の中で話が一本につながった。

 

 ヒソカが強いとか、底が知れないとか、そういう持ち上げがまず違う。

 やっぱり大事なのは出力だ。

 火力なんだ。

 いや、火力っていうか、もっと単純でいい。

 

 無敵。

 

「ロギア系だよ」

 

「ろぎあけい」

 

「ONE PIECEの悪魔の実。知らねェのかよ」

 

「知識としては」

 

「じゃあ話早いだろ。自然化するやつ。カラダそのものが変わるやつだよ。殴られても効かない。斬られても効かない。覇気でもなきゃ触れられない。あれだよ、あれ」

 

 ステイシアは黙っていた。

 光太はその沈黙を、理解が追いついたからだと思った。

 

「で、俺が選ぶのはメラメラの実みたいな能力だ」

 

「炎ですか」

 

「そう。カラダを炎に変える能力。『HUNTER×HUNTER』の世界に覇気なんてないだろ? つまり対処法もない。だったら無敵だろ」

 

「なるほど」

 

「バンジーガム? 知らねェよ。ゴムで炎どうすんだよ。触れられねェだろ。トランプ投げても燃えるだけだろ。終わりじゃん」

 

 いける。

 

 今までの時止めやら、名前を書けば死ぬやらとは違う。

 あんなのは使うやつがバカだっただけだ。

 

 でもこれは違う。

 シンプルで、わかりやすくて、しかも強い。

 変にこねくり回してない分、ミスりようがない。

 

「じゃあ、それで決まりだ」

 

「メラメラの実は現在検証中です」

 

「……は?」

 

「すでに選択した被験者がいます」

 

 光太は黙った。

 

「その方は、現在も『HUNTER×HUNTER』の世界にいます」

 

 マジかよ……。

 

「いったい被験者って、何人いるんだよ!?」




―― ヒソカとのバトル条件 ――

・ヒソカが使える発はバンジーガムとドッキリテクスチャーのみ
・ドッキリテクスチャーに関する記憶は消される
・ヒソカが第3の能力を使った時点で、ヒソカの敗北とみなす
・ヒソカと戦う前に、使い手を選んで前哨戦をこなし、勝利しなければならない
・前哨戦は何回しても構わない
・ヒソカ戦で使える念能力は、どれか1回の前哨戦で使った能力のみ
・発以外の基本能力は除く
・念能力はギフテッドで、自分で考えた能力が与えられる
・与えられた念能力の才能は最強クラスに設定される
・ヒソカとのバトルはタイマンとする
・ただし、自分の念能力で操作した人間、作った人形などは除く
・ヒソカに接触できる時期は原作開始の2年前のハンター試験からとする
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