俺は転生の間の扉を開ける。真っ白い空間が広がっている。
「原作開始時期のちょうど1年前にする」
転生者の声か?
「その年のハンター試験でヒソカと戦うか、合格のあと、天空闘技場で待って、ヒソカを討つ!」
「ハンター試験は超難関だぞ」と俺。
転生者が俺をみる。転生者は俺に完全に焦点を当てる。
「黒と青……二刀流の黒の剣士……キリトッ!?」
転生者が俺をみて叫んだ。興奮しているようだ。
正確にはちがうんだけどな。
「黄瀬光太君かな?」
「俺は黄瀬光太じゃない。俺は最強ゾオン系、悪魔の実の能力者! グラスだ!!」
「あぁ、黄瀬光太君か」
「本名を言うな。グラスだ!」
「光太君! ハンター試験は難しいぞ。アルカ編で、ヒソカに3点の評価を受けたプロハンターに転生者がやられている。ヒソカ戦にたどり着くことすら難しいのが現状だ。原作でナビゲーターの場所が明かされているから、おそらく本試験までは行けるだろうけれど、そこからが難しい」
「おそらく? 本試験までは行ける? おい、キリトさん! あんたこそ、俺を舐めてるだろ?」
黄瀬光太は薄ら笑いを浮かべる。
「わかってないな。ハンター試験は受験者同士で潰し合いをしながら、試験もこなしていかなきゃならない」
黄瀬光太は薄ら笑いを浮かべている。
「ハンパじゃなく、レベルが高い。今の一般人のキミじゃ合格は難しい」
黄瀬光太は薄ら笑いを浮かべている。
「例え、念能力を持っていたとしても」
黄瀬光太は薄ら笑いを浮かべている。
「ハンター試験において、念能力なんて、何の気休めにもなりはしない。光太君はそれがわかってない」
「だから、光太はやめろ!」
黄瀬光太は怒りをあらわにする。
「グラス、行けばわかる。でも、それじゃ遅いから、今、言ってるわけだが」
「クラピカに説教するイズナビのつもりかよ! 冨樫にでもなったつもりか?」
グラスはあからさまに苛立っている。
「原作のハンター試験後の天空闘技場に行って、転生者をみつけて、勝ち上がって、しっかりと実力をつけてから、ヒソカと戦う。これがベスト。これでも勝てるかあやしいが」
今、言ってもわからないだろうけど。
「キリトさん? いや、ブラッキーさん? わかってないのはあんたのほうだぜ。覇気のないハンターハンターの世界で、ロギア系悪魔の実の能力者であるこの俺に、ヒソカが勝つ方法なんて存在しないんだよ」
ゾオン系じゃないのかよ!
さっきゾオン系悪魔の実の能力者って言ってなかったか?
あぁ、なるほどね。
実質メラメラの実だが、ヒトヒトの実、幻獣種モデル、ゴール・D・エース。金出一太のパターンか。
「確かに、そうだ。転生者に、メラメラの実の能力者がいた。物理攻撃が通らないロギア系に、ヒソカのバンジーガムが通じないのは道理だよ」
グラスは薄ら笑いを浮かべている。
だが、
「それだけで、ヒソカが攻略できるとはとても思えない」
「それはただのあんたの感想でしょ?」
「!?」
「ヒソカは俺が倒す。この最強のゾオン系、ヒトヒトの実、超幻獣種、モデル、伊右衛門によって」
大そうな名前だな。ワンピース原作にはなかった悪魔の実だ。彼のオリジナルか。どんな能力だ!?
「論より証拠。みせてあげるよ。ブラッキーさん」
グラスの手にオーラが纏われる。
「纏……練ッ!!」
グラスの手から凄まじいオーラが迸る。
練というより、これは凝。
一瞬、グラスの視線がステイシアに向いた。俺もステイシアを視界の端にとらえる。
目の前から、グラスが消えていた。
微かな気配を背後に感じる。隠か!?
「曲玉!」
回避、否。受。選。
俺はグラスのコブシに吹き飛ばされる。
「そこまでよ」
「さすが閃光姫。閃光の名はダテじゃないね」
ステイシアのレイピアが、グラスの喉をとらえていた。
速いな。ガンゲイルオンラインの弾丸よりも速かった。俺が経験した攻撃の中で、最速だ。
「ブラッキーさんも。あの一瞬で、夜空の剣の鞘で受けることを選択した。さすがです」
俺は立ち上がる。
「グラス、ひとつだけ助言するよ。ヒソカを倒すための」
「聞いてあげるよ」
「ヒソカを愛せ」
「は?」
グラスは意味がわからないと言った表情をした。
かつて、俺はアンダーワールドで、ラフィンコフィンのプーと再戦した。そのプーは言った。愛してるぜ。キリト、と。ヒソカも似たような感情を持っている。
ヒソカを愛せなければ、ヒソカは倒せない。そんなふうに思う。
グラスはヒソカの足元すらみえていないんだろう。
ヒソカは得たいが知れない。
気づくと、俺はヒソカのことを考えている。もしかしたら、これはヒソカと俺を戦わせるためのプロジェクトなのかもしれない。しかし、それは実現することはない。
俺はヒソカと全力で戦えない。俺がヒソカを愛するイメージが湧かない。
「ブラッキーさん、証明してやるよ。ヒソカがただの雑魚専だということをさ」
◆ ◆
「あなたが背後を取られるところなんて初めてみたかも。彼、強いね。とんでもない化け物が生まれたんじゃない? バンジーガムで、どうやったら、彼を倒せるのかしら?」
「知らん」
「ちょっとぉ、キーリートーくぅーん? 彼の戦いに、私がかかってるんですけど?」
「ヒソカが負けることはないよ。どうやって勝つかは知らないけれど。ヒソカには得体の知れない強さがある」
「それはキリト君も同じじゃない?」
「えっ?」
「いっつも、びっくりしちゃうようなことを思いつくし。100年以上一緒にいても、まだわからないことばかりだよ」
ステイシアは微笑んだ。