全肯定しただけなのに   作:蓮太郎

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〜前話のちょっとした補足〜
オタマ達のデッキは殆どが『猛毒殺両生類オタマ』で埋まっており、専用トドメカードとカウンターカード数枚で構成されてる。
なので道に落ちてたカードは1枚でも実際はオタマ達が大量に持っています。
毎ターン、オタマを出し続けて手札を勝手に枯らしながらコストも余るので、手札にカードが残ってコストが余ってる場合はカウンターかトドメ用と警戒しやすいデッキでもあり、全体破壊破壊に弱いデッキです。
なお、オタマ達の事情で真の切り札が今はない模様。



11.夢は詰まっている

 

「おめでとうございます!一等賞の新弾3ボックスでーす!」

 

「おやおやおや、まさか当たるとは」

 

『我は何もしてないぞ?』

 

「ええ、まさしく運がいい」

 

 商店街で買い物した際に貰った福引券で福引を回してみたら、まさかまさかの一等賞。

 

 この世界のカードパックの単価は彼の知る世界よりも遥かに高いが、箱で買うなら更に高くなる。

 

 多く買えばレアものも当たりやすくなる、当然の理だからこそ多々買えば強くなると勘違いして買い占める人間が居るからだ。

 

 そのため、そういった者を輩出しないため法律でパックを多く買うなら更に金額がかかると制定された。

 

 ロマンはある、がある程度のレアリティが欲しいならボックスよりもシングルカードで買った方が安上がりということもある。

 

 よって、この新弾3ボックスは普通の旅行にかかる金額よりも高いのだ。

 

「すっげえ、いいな~」

 

「マジかよ。俺ずっとティッシュしか当たったことないのに」

 

「3箱…………夢があるぜ」

 

 周囲の反応は羨望と嫉妬、そして祝福。家に帰って開けるという楽しみは出来たが、彼はふとある物に気がついた。

 

「一等が出た際は配信します、か」

 

「ええ!ただ、恥ずかしいとかプライバシー的な問題があれば止めますが…………」

 

「ふむ、どうしましょう」

 

 3箱を開けるというのは普通に考えて滅多にないイベントだ。

 

 それを配信だったら動画にするだけでそこそこな視聴数を稼ぐことはできる。

 

 一部の金持ちは一般人には真似できないカートン開封を動画にすることで小遣いを稼ぐ、なんて言われるくらいパック開封は数が多いほど視聴数が伸びるのだ。

 

 この箱開封の配信は商店街が宣伝目的でやりたいようだ。

 

「いいですよ。ただし、手元だけを映すようにしてくださいね」

 

 なんだかんだでこの商店街は昔からお世話になっているので顔出しでなければいいと思った彼は了承した。

 

「ありがとうございます!では、こちらに設備があるのでよろしければ…………!」

 

「良いですよ。手袋は持参のものでいいですか?」

 

「もちろんです!どうぞどうぞ!」

 

 彼は懐から手袋を取り出し装着して配信のために用意された椅子と机に向かう。

 

 椅子に座り、丁寧に手を組んで配信するタイミングを待つ。

 

 手元のみ許可を出したので正面から机を上から映すようにカメラをセットし直し、配信を開始する。

 

「こんにちは!本日商店街で一等賞を当てて新弾3ボックスを手にした方が今からボックス開封します。よろしくお願いします!」

 

「よろしくお願いします。パック開封というのはいつでも心が躍ります。今から何が出るか楽しみです」

 

 彼は丁寧な手つきで箱を開封しパックを手に取る。

 

『む、やはり黒のカードの気配がない』

 

「今回発売されたカードはどれもいい子で使い道も多種多様です。では、まず一つ目から開けましょう」

 

 そう言って彼はパックを頭の部分からハサミで切るように開きながら、手袋を付けて手でハサミと同じように開けるのはおかしいが、丁寧にカードをパックから取り出す。

 

「おや、『木の葉の幼精霊』ですね。土属性の低コストカードで前弾に収録された『木陰のゆりかご』を持ってこられるサポートカードです。次のカードは『滝壺から見上げる石ころ』、水属性の防御要員です。パワーも打点もありませんが対象に取られない効果を持っているので除去しづらく場に残りやすいカードです」

 

 はっきり言おう、凄く長い。

 

 一枚一枚丁寧に解説する知識量は勿論のことながら、全てのカードに愛を込めて接しているのだから仕方ないだろう。

 

 ペラペラと一枚ごとに効果の解説を簡単に挟み、被りが出てきたら背景ストーリーを語り出す。

 

 そうなると単純に話が長くなる。びっくりするくらい語るやんおじさんになってしまうのだ。

 

『ふわぁ、我眠くなってきたぞ?まだか?』

 

「まだ一箱目の半分ですね。レアカードはまだ出ていませんが、気長に開封していきましょう」

 

 パックが高いだけでなく封入率もかなり渋い。伊達にレアカードが弱くても数万するくらい渋い。

 

「おや、おやおや、おやおやおや、『光輪のコーリング・ソーン』ですね。このカードはなかなかいいですよ、光属性でエースカード級の力を持っています。まずコストですが単純に高い、と見せかけておきながら場のモンスターの数だけ軽減できます。偉いですね」

 

 後半になってようやくレアカードが出てきた。

 

 ただ光ってるだけのカードならたまに出るが、雰囲気すら違うのが真のレアカードなのだ。

 

 そして『光輪のコーリング・ソーン』と名がついた光の輪っかの集合体のイラストが描かれたカード解説に彼は集中し始めた。

 

 効果を読み上げるだけでなく、どのような活用するか、突破方法、既存のカードとの組み合わせなど解説していく。

 

 コレだけでも10分も時間を費やしてなお解説が終わらない。むしろ今の段階で出たカードで『光輪のコーリング・ソーン』のデッキを組んだらどうなるかというシミュレーションまで解説し始める。

 

「あの、すみませんがパック開封の方を…………」

 

「ああ、申し訳ありません。この子も活躍できるカードなのでつい」

 

 スタッフからの声かけて彼は何をするべきかを思い出し、懐からスリーブを一枚取り出して丁寧にしまった。

 

「このレアカードはエースにするんですか?」

 

 レアカードが出たことでデッキを一新するプレイヤーも少なくはない。

 

 彼に配信の許可をもらった女性は思った事を言っただけだが、彼の胸ポケットがざわつき始めた。

 

 『光輪のコーリング・ソーン』は高級カードであり強いカードである。乗り換えられるのではないかと急に不安に思ったのだろう。

 

 だが忘れてはならない。

 

「いいえ、私のエースは常に決まっていますので」

 

 胸ポケットに手を当てて和かに答えた彼は狂人なのだ。

 

 そう答えたら満足したようで胸ポケットのざわつきは収まり、彼は内心ほっとした。

 

「では開封を続けましょうか」

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

 残り2箱、最高レアリティは当たらなかったものの、しっかり解説したので1時間かかった。

 

 





観衆(あの人、話長いけど知識量ヤバい。知らないカードの話がどんどん出てくる)

主人公「少なくともネット上で情報が出ているカードは全て把握してますよ。デッキを作るのは別ですが」

ウェロ『我がエースなのは当然だな!!!!!!!!(平たい胸張り)』

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