全肯定しただけなのに   作:蓮太郎

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14.空は青いか

 

「師匠!お待ちしてました!」

 

 カードショップに入ると鋼マキコが待ち構えていた。

 

「おや、マキコさん。本日はどのような要件でしょうか」

 

「何とかあの3人を下し、師匠から教えを頂く条件を整えました!」

 

「なるほど、数日で終わらせるとは素晴らしい。そういえば、この時間帯は学校がある筈ですが」

 

「特別休暇をたっぷりもらってきました!」

 

 それでいいのか教育機関、と彼は思うがカードゲームが中心の世界にそんなことを言うのは野暮と言うもの。

 

 胸を張って言い切ったマキコに彼は顎に手を当てて考える。

 

 いつまでも逃げていたらいずれ家を突き止めて突撃訪問をされかねない。そこで『悪神ウェロボラウス』が癇癪を起こせば彼はともかくマキコはとんでもない目に合うだろう。

 

 ちなみに『悪神ウェロボラウス』はお留守番している。近いうちに鋼マキコと出会うため嫉妬で暴走するのを防ぐことが目的のお留守番だ。

 

 このお留守番に対し『悪神ウェロボラウス』はしっかり駄々をこねた。

 

 彼も対策を考えていないわけではない。とある条件(・・・・・)を出した彼に『悪神ウェロボラウス』は目を丸くして、しぶしぶととある条件(・・・・・)をクリアできるよう、本当にしぶしぶと従った。

 

 よって、今の彼は鋼マキコの相手をする余裕がある。

 

「では、こちらにお掛けになってください」

 

 彼はそういってカードショップに置いてある対戦席に座る。

 

 その誘いにそのまま乗ってマキコも対面へ座り、カードデッキを取り出してシャッフルしようとした。

 

「ではマキコさん。ユウキ君、ショウマ君、カイト君に勝つまで何回ほどバトルしましたか?」

 

「はい?」

 

 突然の質問にマキコは年頃の女の子らしく目をパチクリと瞬きさせて動きを止めた。

 

「えーと、確か合計で100回は超えた筈です」

 

「なるほど、それで勝った回数は?」

 

「恥ずかしながら、相手側のリベンジ含めて5回です」

 

 戦った数は多くて覚えてなくとも勝った回数は覚えていた。

 

 何の話になるのかとマキコは首を傾げるが、彼は微笑みながら話す。

 

「素晴らしい。何度も敗北しても諦めず、何度も挑戦する精神はとても大事です」

 

「それほどでも〜」

 

「その際にカードの入れ替えをしましたか?」

 

「いいえ、私のカードで倒しました!」

 

 自信満々に彼女は答えるが、彼はにこやかな笑みを浮かべてはいるが典型的な落とし穴にハマっているなと確信した。

 

「貴女がユウキ君達とバトルを重ねていく際、貴女は実力と戦略を可能な限り費やして、最後には運で勝利した。私からしたら甘いと言わざるを得ません」

 

「…………私の何がいけなかったでしょうか?」

 

 マキコの顔が少し曇る。ライバル達との白熱したバトルは常に紙一重の戦いだった。

 

 負けはかなり多かったが勝利は勝利。本当に勝てないのであるならば運命によって絶対に勝てないのだから。

 

 それが常識なのだ(・・・・・・・・)

 

「貴女が彼等に勝てたのは慣れてきたからです」

 

「慣れ、ですか?」

 

「何度も何度も同じデッキで対戦していれば相手の動きが読めるようになるのです。それは強くなったという訳ではない、相手も同じですがカードの入れ替えを行うことによって勝手が大きく変わるのはご存じですか?」

 

「確かに強いカードを入れたら戦いやすくなりますが、相手に合わせて戦うのはどうかと?」

 

「では、何度も戦わなければならない時に、相手のデッキが分かってなお不利と判断できたとしても、貴女はカードの入れ替えをしませんか?」

 

 根本的な落とし穴、それは相手のデッキに合わせたカードの交換を怠ること。

 

 一般の、我々の知るカードゲームは早くて月に一度の新弾が発売され環境が一新される。環境デッキが次々開発されていく中でメタも考え抜かれて多くのカードの入れ替えを行っている。

 

 だが、この世界にはそのような全てが一新されて『これが最強!無敵!』みたいなものは全くない。

 

 皆が思い思いのデッキを使用し、運命力でぶん回しているためメタらしいメタはない。

 

 しいて言うならハンデスくらいだろうか、と彼が思うほど群雄割拠し過ぎて逆にメタを立てる意味がないほどしっちゃかめっちゃかになっている。

 

 滅茶苦茶強いカードは基本的に全くでないし、取引されたとしても目玉が飛び出るほどの金額になっているので彼ですら全財産を投げうっても買えるかどうか分からないものも存在する。

 

 その一枚が『ボンバードラゴン』だったりする。運命力ぶん周りのユウキだからギャンブルバトルや絶対に負けられない戦いに必ず勝つので問題は無い。

 

 無いのだが子供がバンバン使っているのに本人には危機感は無いのだろうか、と言いたいが精霊という存在があるので下手に手を出したらどうなるのやら…………

 

 余談はさておき、そんなメタがなんだという環境だが連続で同じ相手と戦うことになると話は別だ。

 

「私は試験内容として、押し付けたとはいえ貴女とバトルする前に密かにメモを残しておいたのです。彼女と戦っている間はカードの入れ替えをしないようにと」

 

「な、何故ですか!?」

 

「本当に強くなりたいなら、一つの戦略にこだわらないことです」

 

 鋼マキコが使用する『金剛拳法』の勝ち筋は相手モンスターとのバトルに勝利し続ける事。純正であるならそれ以外の戦法はない。

 

 ユウキ達もわかりやすい弱点にすぐに気づくことができ、敢えて少ないモンスターでバトルし続けていたのだ。

 

 それがマキコが苦戦していた理由…………ただし、ユウキとショウマはモンスターを並べなければいけないし、カイトも最低でもモンスターを一体場に残していなければいけないので、出た先から潰されて困ったりしていたが。

 

「ですが、純粋なものほどデッキが応えてくれるものではないですか?」

 

「同じテーマ内のみなら上手く回るのは当然です。そこに誰か別のカードを含んでも上手く回すのが真の一流というものです」

 

 テーマらしいテーマがあれば純デッキが強いと言う傾向があるこの世界、混ざり物は寄せ集めと見られることもしばしばある。

 

「では、大体を混ぜ合わせた例を今から見せましょう」

 

「っ!ご指導お願いします!」

 

 彼はようやく懐からデッキを出し、ゆったりとシャッフルする。

 

 ついにバトルできると思いマキコは気合を入れ、周囲に居た客や店員らも彼がバトルすることに興味津々である。

 

 ここ最近、彼は『悪神ウェロボラウス』のためにバトルは有事の時以外していなかった。

 

 他のカードを使うことに嫉妬したり、『悪神ウェロボラウス』自身がバトルしたいと思っても現状では周囲に影響を及ぼす可能性が高いため、彼はバトルを控えていたのだ。

 

 それでも、転生者という事を抜きにしても、彼はこう思う。

 

「では、始めましょう」

 

「バトル!!」

 

 やっぱり、カードゲームが大好きなのだと。

 





 主人公だってハメ…………じゃなくて羽を伸ばしたい時もある。

 対戦相手は地獄を見る模様。

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