全肯定しただけなのに   作:蓮太郎

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19.全国バトルカップと少しの裏側

 

「おや、もうこんな時期ですか」

 

「む?なんだ?なんの時期だ?」

 

 夕食後の団欒にて、テレビに映っているあるニュースが彼の目を引いた。

 

「ああ、そうか。全国バトルカップの時期か」

 

 『悪神ウェロボラウス』がテレビを見て言うように、カードゲームが中心の世界では店舗大会は月一、全国大会は年一というサイクルで行われている。

 

 店舗大会よりもサイクルが遅い全国大会はそれはもう大盛り上がりである。

 

 彼は都合上、全国大会には出たことは無いが『悪神ウェロボラウス』が見たら意識する程度に人間界の大会というのは注目を浴びている。

 

「懐かしい。知り合いが出ることはよくありまして、応援には何度駆けつけた事か」

 

「ほーん?我以外を応援か?」

 

「ウェロ、あの頃の貴女は裏方で囁いていたのでしょう?」

 

「ちぇ、バレていたか。ああいう大会ほど悪意が集まりやすいからのぅ」

 

 最初は嫉妬に見えて、しっかりと悪事を裏から操ろうとしていたことがバレていたことでころっと態度を変えた。

 

「ケケケ、少し囁けば勝手に走り出し、勝手に周囲を巻き込んで転ぶさまは面白かったんだぞ?」

 

「その後始末した身にもなってください」

 

「む?そうだっけ?そうだったか…………」

 

「記録に残っていませんけどね」

 

 彼は別に力を誇示したい対応ではない。しかしバトルはしたいタイプである。

 

 だが先述した通り、昔は後始末に走るような仕事をしていたため表舞台に立つことはかなり少なかったが。

 

 彼も優勝プロモに興味が無いわけではなかった。ただ、色々とめぐりあわせが悪くて参加できず、内心では非常に悔しい思いをしていたことは秘密である。

 

「まあいい。結局は大したことにはならんかったし、我、どうでもよくなっちゃったもーん」

 

 ごろん、と我先にとソファーに寝そべり食後の菓子としてマーブルチョコをぽりぽりと食べ始めた。

 

 食器は片付けないのは今に始まった事ではないので何も言わずに彼は片づけを始めた。

 

 今日の夕飯はカレーであり、次の日の朝食にも軽くカレーを出すつもりでやや多めに作っていたのだ。

 

 角無し褐色幼女姿に慣れてきた『悪神ウェロボラウス』も体躯に似合わず大食いなので量もそれなりに用意せねばならず、食器も洗う手間を含めたら時間もかかる物だった。

 

 これでもマシになった方である。

 

 昔の『悪神ウェロボラウス』は暴飲暴食は当然、愛を覚えたてだったせいで調理中や食器洗いをしている最中でもちょっかいを出すことが多く、それによって手が回らなくなるという事もしばしばあった。

 

 それらも彼が懇切丁寧に説明して本性を抑えつつある程度の社交性を得ることができたのは偉業と言えるだろう。

 

『前回チャンピオンとなった「神楽坂キボウ」選手も出場するのでしょうか?』

 

『彼女も前回覇者となりましたがここ最近は大会に出たという話はありませんね。ですが「ライジングイリュージョン」における最強を決める戦いに参加するのはほぼ間違いないでしょう』

 

「何を根拠に言っとるんだか…………ふむ」

 

 最強は誰なのかを身をもって知っている『悪神ウェロボラウス』が司会者の言葉に嘲笑するが、実のところ本当に最強なのかと考えてみる。

 

 彼の強さは天下無双である。ハイランダーという明らかに地雷にしか見えないデッキで無敗、『悪神ウェロボラウス』ですら本体は戦闘破壊はされなくとも敗北を喫したほどの実力者。

 

 しかも毎回狙ったカードをデッキから引き当てるという豪運では足りないほどの引きの強さも持つ。

 

 悪神と言われても全知全能ではない。

 

 全知であれば彼の事を知らないはずも無いし、全能であれば彼に勝ち憑代にしていただろう。

 

 故に、知らぬ強者がいる可能性ははるかに高いのだ。

 

『今年の選手は豊作とされてますからねー』

 

『「北の熊」に「赤き烈風」、最近は「虹の虹彩」の異名を持つ方が上がってますからね。店舗大会で結果を残せば残すほど全国バトルカップへの切符に手が届きそうになりますからね』

 

 全国バトルカップへの道、それは純粋に店舗大会で勝利数が多いものが優先されることが多い。

 

 全国レベルだと世界中からプレイヤーが抽選に参加するため、抽選するだけで半月以上かかることもよくある事。しかし、店舗大会で結果を残した者は店舗からの推薦で予選に参加できるのだ。

 

 もちろん、その枠は一つしかなく日々苛烈な争いが繰り広げられているのは言うまでもない。

 

 だが、抽選という非常に運の要素が強いとはいえどんなものにでも可能性は恵まれている。

 

「気に食わんなぁ。我を打ち負かしたのだから最強は1人でいいのに…………」

 

 自分たちは世界の危機が訪れていたことに気づいてすらないテレビの出演者に『悪神ウェロボラウス』は苛立つ。

 

 元々は裏方で悪さをするタイプではあるが、ひとたび登場すればド派手な効果を持っている矛盾した性質。自分でも思っているより陰キャ気質なのだが目たちがり屋でもあるのだ。

 

「…………ふむ、抽選、か」

 

 全国バトルカップの応募方法が番組の最後に移されて『悪神ウェロボラウス』は考える。

 

 彼の考え、黒のカード、そして黒と対になるカード(・・・・・・・・・)の事を考えた。

 

 世間一般では基本は六色、それに黒とされているが実のところ違う。

 

 まだ他にも『色付き』のカードは存在するが、全知ではないため『悪神ウェロボラウス』ですら全てを把握できていない。

 

「もっと面白いことになりそうだなぁ」

 

 ニチャア、と幼女とは思えない悪い顔で悪だくみを企て始める『悪神ウェロボラウス』。

 

 彼女の思う愛のために、そして彼の『夢』のために一肌脱ごうではないかと画策し始める。

 

 なお、それで世界の命運が何度も転がってしまうのはご愛嬌と言うものだ。

 

 彼もまた、全知でも全能でもないため『悪神ウェロボラウス』の悪だくみに気づくことはしばらく先になる。

 




ギザ歯に悪い顔(顔芸)の幼女と言ったら確かにファプタっぽい顔になる気もする『悪神ウェロボラウス』。例え愛を知っても悪だくみはする、習性だからね。

次回、奴らが来る『ねー』。

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