全肯定しただけなのに   作:蓮太郎

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〜前話のどうでもいい補足〜
オタマの雄雌比は3:7で雌の方が多い。


21.引かぬ、耐える、切り開く

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

「はぁぁ…………」

 

 鋼マキコは落ち込んでいた。

 

 ここ最近の勝率が落ちてきていたのだ。主にその原因はデッキの混迷にある。

 

 師匠である男からデッキ内容に一切の変化がなく対策が取れたら簡単に勝てるとまで言われてしまってムキになったのがいけなかった。

 

 あえて師匠が挙げたカードを持ってる友人を集めて即席のデッキを作ってみた。

 

 負けた。

 

 それはもうびっくりするくらいに負けた。対策されただけでここまで完封されるのかと対戦相手になってくれた友人がドン引きするくらい負けた。

 

 意地になって何十と繰り返しバトルしても一向に光が見えなかった。

 

 むしろ弱点が浮き彫りになったことを周囲に知られたようで各々デッキに彼女だけのための対策をとるようになり始めていた。

 

 バトルしなければ効果が出ない。一度バトルして効果を発動させたところで一度だけなら許容して道連れを狙う。

 

 そうしてリソースがなくなってきたところを叩く。

 

 こうして鋼マキコは徐々に立場を失っていった。

 

「ううむ、あーでもない、こーでもない…………」

 

 頭の中で弱点を補えるカードの候補を考えているが、どれもこれもしっくりこない。

 

 純デッキであるが故に強みと弱みがはっきりわかってしまうからこそ扱いやすく、またそれは逃げとなっていた。

 

 隅々まで理解している、だがその理解が簡単だからこそ手放しにくいといった感情もある。

 

 多少の入れ替えをしたところで心意気が追い付かず、負けが続いているのだ。

 

「滝行するべきか…………心を鍛えねばバトルにも勝てない。師匠もそう言っていた」

 

 言ってない。気晴らしの散歩のつもりが妙に神格化し始めている師匠の言葉を捏造し始めていた。

 

『娘よ』

 

 師匠の台詞を捏造しつつ歩いていたマキコの頭に声が響く。

 

『いつまで下を向いている。右を向け』

 

 落ち込んでずっと下を向いていた顔をあげ、脳内に響く声に従い右を向いた。

 

『儂が見えるな?声も届いておる、良きかな良きかな』

 

 そこにはコンクリートの道路に鎮座する灰色の人形が居た。

 

 顔は老人、腕は4本、そして何故無視できていたのか分からないほど内包している覇気。

 

 人ではない何かが語りかけてきたことにマキコの思考が数舜停止する。

 

『カカカ、儂のような精霊を見るのは初めてか』

 

 その素人じみた様子から灰色の老人は笑う。

 

『儂はの、見ての通り人ではない。それに口を動かしてはいるが声は直接お主の頭に響いておるだろう』

 

 言われてみてそう気づいたマキコはウンウンと早く首を縦に振った。

 

「お、おまえは一体?」

 

『儂はさっきも言った通り精霊だ。カードを通じて世界をまたぎ、そして新生した』

 

 灰色の老人は四つある手で覆うように何かを生成する。

 

 それはカード、縁は黒く、そしてその中心には灰色の老人が描かれていた。

 

『「合金拳法ニックロルト」、それが儂の名よ』

 

「まさか、黒のカード…………」

 

『その通りよ。だが娘よ、お主が求めているのは正しく我であろう?』

 

「何を言って…………」

 

 その先の言葉が出ない。黒のカードではあるが拳法シリーズであることを確信し、そして圧倒的な強者のオーラに惹かれても居た。

 

 間違いなく求めていたものがある、『金剛拳法』を扱うプレイヤーとしての勘がそう囁いている。

 

『懸念していることはよく分る。儂とて黒のカードとしての自覚はある。強き力は堕落を呼び、周囲へ害をばら撒く存在となる…………だが、儂はそのような若造とは違う!』

 

 ドンッ、という気迫と共に漏れていたオーラが『合金拳法ニックロルト』に収束する。

 

『生まれながらにして誰かを求めるのは黒のカードの定め。儂も心の底では求めている部分はあるが、儂は武人である。戦うために産まれた存在である』

 

 四本の腕を器用に組み、そして真摯なまなざしでマキコを見つめる。

 

『カードとして使われて本望、それでもまだ見ぬ強敵と戦いたいのだ』

 

「それで、なんで私に声をかけたんですか?」

 

『お主が迷い、悩める若人だからだ』

 

 もしかしてバカにされているのかとマキコは思った。

 

 それでも彼女をしっかり見つめ、そして生涯とまではいわぬが研鑽できるパートナーとして見定めようとされている。

 

『こんな老人の姿ではあるが、儂だって産まれて十年其処らよ。武人として産まれたからには戦い続け、しかしどこか満足していなかった』

 

「その戦いって?」

 

『我々の住む精霊界、と言っても複数ありそのうちの一つではあるが。言ってしまえば辻斬りのようなものよ。わが身を鍛え、勝つ日もあれば負ける日もあった…………』

 

 昔を懐かしむような眼ではあったが、虚しさを感じるような目で空を見つめる。

 

『それでは満たされなかった。儂は黒のカード、純粋な色を持つ精霊に避けられ続けて正しき戦いをしたことは無かった』

 

 空からマキコへ視線を戻し、組んでいた腕を解く。

 

『この世界はバトルに参加するには儂一人ではどうにもならぬ。故に、共に戦える者が必要だったのだ』

 

「それが私、と」

 

『うむ、儂とて強さに自信はあれど道半ば。金剛拳法を扱うお主なら儂の扱いも容易く把握できるだろう。故に、儂を使うのだ』

 

 黒のカードの割には危なかしさはあまり感じられない。

 

 鋼マキコはそこそこな強者でもある。黒のカードによる事件に関わったこともあるが、無事乗り切った経歴もあるため油断はしていたのかもしれない。

 

 そして何よりも強くなりたいと言う欲望が根底に燻り続けていた。

 

 鋼マキコは覚悟を決めた。

 

 地獄に落ちるかもしれない。だけど強くなりたい、叔父を見返したい。

 

 だから手に取った。

 

『契約だ。儂に世界を見せてくれ。その代わりに儂はお主に力を貸そう』

 

 こうして鋼マキコは『合金拳法ニックロルト』と協力関係になった。

 

 新たな明日が幕を開けるかもしれない。不安を抱きつつ明日への期待を抱いて。

 

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

「なるほど、それが貴方達の出会いでしたか」

 

 翌日、そこには再び雨に濡れた犬のような鋼マキコと顔面がボッコボコに腫れた『合金拳法ニックロルト』の姿があった。

 

 絶対強者に付け焼き刃は通用しないと再認識したマキコと世界の広さを知った『合金拳法ニックロルト』であった。

 




マキコは疲れた名探偵ピカチュウみたいになってるしニックロルトはボコられたゴンみたいになってます。
誰がこんな酷いことを…………

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