全肯定しただけなのに   作:蓮太郎

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22.別にいい

 

『こ、ここまで完膚なきまでに殴られるとは…………初めての経験だ』

 

「無限アタックは貴方だけの専売特許ではないので、再現性はかなりありますよ」

 

「また知らないカードで負けた…………」

 

 先に言っておくが鋼マキコは調子に乗っていたわけではない。

 

 黒のカードという法律ですら禁止にしようとする力を得てしまったからには身をひそめなければならない。

 

 新たな仲間を加えた構築を考えつつ試す相手と言えば、足のつかなそうなチンピラや同じ黒のカード使い。

 

 そしてすべてに寛容そうである師匠。

 

 念を押すが調子に乗っていたわけではない。

 

 偶然にも同じ黒のカード使いと出会い、戦って勝利して手ごたえを感じた後に彼へ挑んだのだ。

 

 まさか無限アタックを決められるとは、可能性として考えていたが事実その対面になるとやはり負けた。

 

「やはり、師匠は強いです。どうすれば私はもっと強くなれるでしょうか」

 

『…………マキコよ、儂が言うのも何だが堂々と黒のカードである儂をこの者に使ってよかったのか?』

 

「大丈夫ですよ。黒のカードを差別する理由もありませんので」

 

「私には分かってましたよ!」

 

 少し元気を取り戻したのかマキコが自慢したように薄い胸を張る。

 

 あらゆる戦術を取り込む彼は『合金拳法ニックロルト』すら感嘆させる。

 

 チラリと後ろに隠れて物凄く威嚇している褐色幼女も恐らく黒のカード関連、かなり上位の精霊と『合金拳法ニックロルト』は当たりをつけている。

 

 まさか上位どころか悪神だとは思ってもないだろう。

 

「さて、講評ですが攻撃した後に回復にいざという時の為の戦闘破壊耐性を付けるカウンター、よく考えています。ですが、彼単体では少々力不足といったところでしょう」

 

『む、そこを突くか』

 

「ええ。貴方は単体で済む効果ではありません。拳法シリーズ特有の戦闘破壊した際に発動する効果を2倍にする効果は横に並べてこそ発揮するもの。相性のいい仲間が居ますよ」

 

 ここでもしっかり拳法シリーズを把握していた彼は次々と相性のいいカードを提案していく。

 

 流石にマキコも知っている、持っているカードばかりを上げていくので即座に入れ替えが可能だった。

 

 彼に言われて金剛拳法関連のカードは持ち歩くようにしており、状況によって入れ替えするよう心がけている。

 

 何かあっては遅い。普通のバトルならともかく黒のカードやごろつき相手に加減する余裕もない。

 

 入れ替える時間があるかはさておき、心の余裕を作るためには重要な要素だ。

 

 そんな感じで黒のカードである『合金拳法ニックロルト』を活躍させつつ勝つ方法を褐色幼女以外で和気あいあいと考えていた。

 

「黒のカードの反応が複数出ていた!」

 

 マキコの背後から大声が響く。

 

 その声に心当たりのあるマキコは恐る恐る振り返る。

 

「そして、今ここに反応がある!」

 

 それは巌のようだった。恵まれた体格に鍛え上げられた筋肉。そして常に大きい声。

 

「マキコ!どういうことだ!何故、お前が黒のカードと関わっている!」

 

 管理局三番隊主席石和田ゴウタロウ、鋼マキコの叔父がとんでもない威圧感を放ちながら近づいてきた。

 

『おお、誰だあやつは。マキコ、知り合いか?』

 

「あ、叔父さんだよ…………」

 

「おやおや、管理局三番隊主席が直々に来るとは。どうやら隠れる技術はあまり上手ではないようですね」

 

『むむむ、儂としては強者に巡り会える方が良いのだが』

 

「ただの人間如きが来たところで何も変わらんが?」

 

 強さを知っているマキコは若干の怯えはあるが、彼や『合金拳法ニックロルト』と『悪神ウェロボラウス』は特に気にしていない。

 

 むしろ『どこかに居そうな強者の一人』とくらいにしか扱っておらず、褐色幼女は威圧感マシマシのゴウタロウに対して興味すらなさそうだ。

 

「そこの黒のカード!マキコから離れるんだ!」

 

『と、言っておるがどうするか?』

 

「えーっと、どうしよう?」

 

 こういった状況が初めてのマキコは師匠に助けを求める。

 

 本来黒のカードを使って正気を保っている人間が非常に少ないからこそ、ゴウタロウのような厳しい態度をとるのが一般的とされている。

 

 黒のカードが強すぎるのか、それとも人間の精神力が弱すぎるのか。

 

 黒でなくとも精霊に操られる人間も多数なので後者であろう。カードゲーム中心の世界ゆえに感情的かつ精神的な防御力は低いのだ。

 

「一つ簡単な解決方法がありますよ」

 

 と、彼が人差し指を立ててマキコに言う。

 

「バトルで黙らせることです」

 

 この強者も結局はバトル狂いの類であるため脳筋的手法で解決しようとしてきていた。

 

 隣の褐色幼女は既に興味を失って彼と手をつなぎぷらぷらと暇そうに揺らしていた。

 

「え、ええ…………?でも叔父は強くてまだ一度も勝ったことが」

 

「なら勝てばいいのです。マキコさん、君は悩み、負けて実力を感じづらくなっているかもしれません。ですが前より確実に強くなっています」

 

 不安そうなマキコの背中を優しく押す。

 

 相手は間違いなく強者、それもカードを管理する組織の中でも指折りである存在。

 

 しかも身内となれば多少の加減を無意識に行ってしまう相手だ。

 

『マキコ、儂は構わん。勝とうが負けようがこの戦いで互いに強くなれる』

 

「でも管理局にわたったら二度と日は拝めなくなっちゃうよ」

 

『だからこそ。そのような心配をされて逃げるようであるなら儂は武人ではなく臆病者だ。故に、分かるな?』

 

 灰色の老人ながら、ニヤリと笑う姿は格が違う。

 

 不安となっていた内心を見透かされていたようでマキコは恥じた。

 

 盟友に恥をかかせるわけにはいかない。勝とうが負けようが、華々しく雄々しい戦いを見せる覚悟を決めたのだ。

 

「叔父さん!私は私の意思で彼を受け入れた!言っておくけど、私が下とかじゃなくて対等だから!」

 

「マキコ!何を言っている!あれほど黒のカードに手を出すなと言っていたはずだ!」

 

「確かに、聞いてたよ。でもね、彼等だって話せば案外分かり合える!私にでも力を貸してくれる!」

 

「惑わされるな!ええい、仕方ない。バトルで目を覚まさせる!」

 

「もちろん、バトルで私の主張を通す!」

 

「「バトル!!!」」

 

『見せてやろう。儂らが対話で成した盟友の力を!』

 

 叔父と姪、しかし決して譲れぬバトルが今幕を開ける。

 

「我ら帰ってもいいのではないか?」

 

「唆した責任として見届ける義務があるので」

 

 茶番と断じた『悪神ウェロボラウス』が飽きるまでに決着がつくのだろうか。

 

 彼としては鋼マキコの勝利よりもこっちの方が不安だった。

 





今日のカードはこれ!『合金拳法ニックロルト』
拳法シリーズの中でも高パワーを誇るだけでなく一ターンに2回も効果破壊に耐えられる!しかもモンスターとのバトルが終わった相手ライフにダメージを与えてから回復(アンタップ)できて再度攻撃できるぞ!
さらに拳法シリーズの中で初代拳法である『岩石拳法』以来の打点持ち拳法カード!相手が場を開けていても直接殴ってライフを削れ!
盾となる相手モンスターも殴れ!味方の拳法シリーズがバトルで勝った後の効果をもう一度発動させる効果もあるよ!意外とテクニシャンだね!
そして外部カードで戦闘破壊耐性も付けたら無限ブロッカーになる!

でもそれを利用されて主人公に無限に殴られて根性を試されたんだよね。
主人公とのバトルには負けちゃったけど無事認められて良かったね!

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