全肯定しただけなのに   作:蓮太郎

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24.バトルの後は仲直り

 

「素晴らしい。見事な戦いでしたよ」

 

 パチパチと勝負が決まったバトルへ彼は惜しみなく賞賛を贈る。

 

 何故なら石和田ゴウタロウという強者へジャイアントキリングをかましたのだ。見応えがないはずがない。

 

 えへへ、と少し照れたような様子を見せた鋼マキコだったが、すぐさま自身の叔父であるゴウタロウへと顔を向けた。

 

 バトルの衝撃によって身体にもダメージを受けたらしく片膝をついて荒い息をしている。

 

「ぐっ、未熟…………!まさか黒のカードにしてやられるとは!」

 

『はっはっはっ、そういう時もあるさ!』

 

「バイキエル!笑い事ではない!」

 

 姪が黒のカード、違法とされているものを所有しているとなれば立場以前に叔父として心配しない訳がない。

 

 既に取り込まれているのかとゴウタロウは思い込んでいたがバイキエルは違った。

 

『黒のカードは基本的に使用者を力に溺れさせるから禁止とされてるんだ。だが、あの子は力に溺れていたかい?』

 

 正面から堂々と殴り込まれたからこそ分かる。

 

 バイキエルは戦闘で破壊された程度で存在を保てなくなるほど格は低くない。むしろ敢えて加減されていた節があったのだ。

 

 結果的には『合金拳法ニックロルト』がボロボロになっていたが、仲間の為に身を削り勝負ではなく試合として勝利をもぎ取れるよう動いていたことを理解した。

 

 普通、黒のカードであるなら自身を活躍させる為にカードを集めることが多い。

 

 サポート系であるにも関わらず何故かエース級に無理やり強化して殴り込む様な通常プレイヤーなら理解できない行動も目立つことが多々ある。

 

 だがマキコと『合金拳法ニックロルト』はその例から外れて正しい連携を取り合い、見事勝利を収めた。

 

 ゴウタロウのほうがむしろ熱くなりすぎて冷静さを失っていたまである。

 

 互いが強くなるための信頼関係。無償の友情より出力では劣るが平時の安定力はこちらの方が上だろう。

 

「では、仲直りの握手です。バトルの後は後味の悪い思いをしてはいけませんからね」

 

 各々の胸の中の想いをまるっと無視して彼は言い出した。

 

「え…………え?」

 

『忘れておらんか?儂とあの天使は相容れぬ存在であるぞ?』

 

「何を、言ってるんだ!?」

 

『はっはっは!なるほど、イカレている!』

 

 四人全員に正気を疑われていて心外ですねと言った顔をした。

 

「おや、私は何かおかしなことを言いましたか?」

 

「そうだそうだ、愛だぞ愛」

 

「いやいやいや、白と黒ってそう簡単に交わらないって知ってますよね師匠!?」

 

「そ、そうだ!そのような例外など…………!」

 

「管理局にも居ますよね、黒のカード使い」

 

「…………!」

 

『…………ほう?』

 

 本来なら極一部しか知りえない情報、決して外には出るはずがない話を彼は口に出す。

 

 それが間違いではないことはゴウタロウの表情、そして『八大天使 バイキエル』が漏らした声が物語っている。

 

『マキコちゃんの師匠と聞いたから気になっていたけど、やはりただ物じゃないな』

 

「いいえ、私はどこにでもいそうなただの一プレイヤー」

 

「そんなはずはない!その情報を知っているということは…………いかん、マキコ!」

 

 巨漢に見合わぬ素早さ、バトルをして手加減されているとはいえダメージを負った身体でマキコを確保し抱えながら彼から距離を取る。

 

 管理局三番隊主席である彼らしいフィジカルの高さで彼から距離を取り、そしてマキコに合わせてしまったことを後悔する。

 

「何者だ貴様!まさか、あの件の残党か!」

 

「人と精霊を混ぜ合わせる、本来なら禁忌ではありますが極一部の事例に限っては正解となる。もちろん私はそんなことをしたことはありません」

 

「ならば!」

 

「立ち会ったことがあるだけです」

 

 マキコは状況を全て理解できていない。師匠が何やら管理局との間にただならぬ事情がある事だけは察せた。

 

 だからといって介入できるわけではない。所詮は一般人、関係者の姪とは言え部外者なのだから知る余地もない。

 

「マキコさん、今の君なら『彼女』と仲良くできるはずです。出会うことがあればよろしく伝えておいてください」

 

「え、ええ?」

 

 一体誰のことを指しているのか、完全に置いてけぼりになっているマキコは疑問を浮かべることしかできない。

 

 しかも、それだけを言い残して帰ろうとしているではないか。

 

 その理由は明白であり、片腕で抱きかかえた褐色少女の機嫌を取るためだ。

 

 どうみても不機嫌になってマキコ達に威嚇し続けており、彼の興味を引いていたことが気に食わなかったのか常に中指を立て続けている。

 

 思っているよりも傍若無人な態度かつ、彼にとって相当な重要人物ではないかと思われる。

 

 そして飄々とした態度の裏で幼女に振り回されているんだなとちょっと思っていたりする。

 

「待て!貴様は何者だ!」

 

「ただのプレイヤーです。どこにでもいて、多くを経験しただけの一人です」

 

「もういいだろう、あんな端役にかまう必要もない」

 

「ウェロ、彼は管理局の三番隊を任されています。今回は負けても次は必ず強くなっていますよ」

 

「ふん!そういって我以外のことを構うんだ!いっぱいすねるぞ!」

 

「おやおや、困りましたね。今晩は何が食べたいですか?」

 

「ハンバーグを所望する!」

 

 何とも和やかな会話ではないか。黒のカードが関わらなければ日常の一部として切り取られていただろう。

 

 重大なインシデントが発生しているのだが、体力を多く失ったゴウタロウに彼の歩みを止めるすべはない。

 

「では、またお会いしましょう。全国バトルカップ、楽しみにしていますよ」

 

 意味深に見えて彼本人は一切出る気のない大会にマキコらが参加すると思い込みながら立ち去った。

 

 抱きかかえている『悪神ウェロボラウス』がニタリと笑ったことに気づかずに。

 

 なお、その笑みは二人と黒のカード一枚にばっちり目撃されていた。

 

 





主人公
まだ何も知らない。

『悪神ウェロボラウス』
悪だくみ中。とりあえず全国バトルカップに出ようとしている。
それはそれとして昔の女の話をしたか?

鋼マキコ
師匠の底知れ無さを知る。

石和田ゴウタロウ
何故内部情報を知っているか調査し始める。

『合金拳法ニックロルト』
褐色幼女を警戒するよう二人に伝える。

どう見ても怪しいね!そして主人公が操り人形ではないかと疑われてたりするよ。全部『悪神ウェロボラウス』の詰めが甘いせいです、あーあ。

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