「
「はん!雑魚が我に歯向かうからこうなるのだ!」
「どうやって喋ってるんでしょうか」
糸目美女だった肉塊がうぞうぞと蠢きながら辛うじて理解できる声を出す。
それに対してふんぞり返る角付き褐色幼女と逆に生きていることに興味を示す彼。
一応神話枠であるが『混沌の使者
『悪神ウ
普通なら巨大決戦になるところだが、あいにく一家屋の玄関で行われたキャットファイトであったため被害自体は全くない。
「まあ、茶番はこれくらいにしておいて」
瞬きした間に肉塊が糸目美女へ戻る。いや、作り直されると言った方が正しい。
一瞬ではあるが聞きたくない音と共に知った姿へと変化したのだから、やはり人外だということを認識できる。
「改めて自己紹介はしようか?」
「結構です。どうやら二人も知り合いのようですので」
「つれないじゃないか!私たちの仲なのに!」
「もう少し丁寧に挽肉にしたほうが良かったか?」
「玄関の掃除が大変なのでやめてくださいね」
「あれ、私の心配はしてくれないのかなぁ!?」
茶番と化した空間ではあるが、『悪神ウェロボラウス』とホティという理外の存在がほぼ敵対に近い状態で和やかに済んでいる方がおかしい。
それもこれも、全て彼がいるからこそ均衡が成り立っていると言える。
「まあ私とそこのチビは別にいいです。今知っておきたいのは貴方の名前ですよ!」
「私ですか」
「そう!ルビをつけないと見分けづらい一人称をしてる両手に華の男性の貴方です!」
「埋めるか?」
「変な植物が生えてくると思うのでやめてくださいね」
ビシッとホティが彼に指を指す。
「申し訳ありません。私には名前がもうないのですよ」
「ほほう?『虚無』に奪われた訳ですか?」
「世界を再構築する際に最初に捧げたので」
あれ、我が思ってるより大きい規模のことやらかしてる?と疑問顔になる『悪神ウェロボラウス』をよそに相変わらず微笑みを崩さず彼は言った。
『虚無』、白でもなく黒でもない別種の理外。その影響は神に属する存在ですら認識が難しく知らぬ間に関わっている、なんてこともザラであるほど強い。
『悪神ウェロボラウス』も関わったことはあるが、ほとんどが間接的な接触であるため大半のことは忘却している。
過去に彼が関わったことさえ忘れているのだ。
「名前を捧げた程度で世界を救えるわけないじゃないですか!他になに捧げたんです?」
「私が存在していた記録ですね。これが一番困りましたよ、財産を引き落とせなくなりかけたので」
「やはりバトルで取り戻したのか?」
「所有者不明でもバトルで何とかできるあたりセキュリティもへったくれもありませんでした」
「あははっ、理不尽なところありますなぁ!やはり暴力が全てを解決します!」
「間違ってないな」
混沌の使者と悪の神が肯定するのだから間違いではない。
バトルさえ通れば無理難題も通ることが多いこの世界ではバトル強者であるほど地位も強い傾向にある。
「そんなバトルが強い貴方は、全部無くなる前は何してたんですか?私、気になりますよ!」
「管理局で8番隊を率いていたのですが、今はもうあまり活動がないようですが」
「む?聞いたことがあるな、たしか解散に近いはずだったか?まあ、どうでもいいか」
愛する人の古巣にはあまり興味がない『悪神ウェロボラウス』。
何故なら今更気にされたところで僅かでも意識を逸らされるのが嫌だからである。
「ああ、あのよく分からない混成部隊!確かに貴方のようなカリスマある変わり者が率いていなければとっくの昔に瓦解しているような集まり、誰かを待ってるような感じはそういうことでしたか」
「元気にしていましたか?」
「かなりギスギスしてましたよ!」
「まあ、黒のカードを扱う部署ですからね。このご時世、前よりも厳しく取り締まられるようになってきているのが逆風になっているのでしょう」
「どう介入するおつもりで?」
「何もしません。あの子たちは元々厳しい環境で育ってきたのを鍛えたので必ず自立します」
「ふーん、信用してるのか。ふーーーーーーん?」
割と深い関わり合いがあると知っただけで『悪神ウェロボラウス』は彼にピタッとくっついただけでなく上目でじっとりと見てくる。
悪神の隠さない嫉妬という珍しい構図を眺められる事にホティもニッコリ、揶揄いたくなるのも分かるだろう。
「いやー、見ものですな。悪の神と呼ばれる身体も性根も腐り切った蛇がちっぽけな人間ごときに執着するとは!」
「こいつの凄さを分かってないから言えるのだ。ふっ、理解力がないゴミが何か喚いとるわ」
「理解がないということは無知ということでもあり、新たな驚きを真剣に楽しめるのですよ?これだから全能(笑)は」
「ふはははは」
「あはははは」
玄関という狭い空間で互いに異なる圧を出しながら笑い合う人外二人。
人間がその間に入っていれば恐怖のあまり失禁、ストレスにより胃潰瘍を起こし血反吐を吐いていたことだろう。
「立ち話はこれくらいにして、そろそろ物を買うフェイズにしませんか?」
だが彼は話を戻してホティが持ち込んだ商品を買おうとしていた。
「こんな役立たずで細工されたゴミを集めてどうする?壊して遊ぶか?」
「いえ、彼女は細工の過程までは非常に巧妙なのですが、いざ実践となると大量のボロと大量のオリチャーが見えるので、物さえあれば何かが起きてるということをすぐ察知できるんですよ」
「あれあれ、私、ポンコツだと思われてます?」
「やーい、クソ雑魚AI以下ー」
「この幼女の角、折って商品にしていいかい?」
「倉庫に山ほどありますよ(16話参照)」
「何で???」
ホティは困惑したが、くねくねと体を捩らせる『悪神ウェロボラウス』の様子で惚気が始まる気配を察したため追及しなかった。
「まあ、置くものは置いていきます。流石に物理的に何回も潰されるのは面倒なので」
「帰れ!星に帰れ!」
「こらこら、中指を立ててはいけませんよ」
面白いものも見れたし、後の混沌を考えたらタダでいいやとホティは紹介していった商品を出す。
『悪神ウェロボラウス』と同類で変わり者の人間の夫婦漫才はホティを満足させるに値した。
「では、全国バトルカップでお会いしましょう!私、そこでしでかすつもりなので!」
「出ませんよ、全国バトルカップ」
「あはは!そう言っていられるのも今のうちですよ!全国バトルカップは毎回何らかが起きるのでね!」
快活に笑いながらホティは扉をくぐる。
玄関の扉ではなく異界の門、ポータルと呼ばれるものだ。
「いよいよ隠そうとしなくなったな」
「悪神がいるので今更!」
あははと笑いながらホティは消える。後の混沌を示唆するように、高らかに笑いながら。
「ではこちらも細工をしましょうか」
「細工?何のだ?」
「彼女の商品に仕込まれた魔術的な儀式システムに反応してカウンターを発動させ失敗するようにするんです」
「何だそれは面白そうだ!我もやるぞ!」
ホティにのみ大惨事が起きるよう二人の共同作業が始まるのであった。
〜改めて情報更新〜
主人公(名前が無い)
世界を救うために多くのものを捧げた転生者。
『虚無』に関わる大いなる存在と相対しバトルには勝ったが、その間に世界が消滅してしまった。
それを取り戻すために『名前』、『記録』、『親友』を失い世界を再構築した。
なお、最初に捧げたのは転生前と現在の『名前』であり、『記録』の部分は子供の頃から何十回と上位存在と敵対し単独で世界を救ってるため膨大で、『親友』の献身もあって本人の存在そのものの消滅は免れた。
「世界を救うのが子供だけだと、誰が決めたのでしょうか?」
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