管理局本部、街の中心に聳え立つビルに設立された、『ライジングイリュージョン』を管理する国家組織である。
大会運営の管理、カード販売、そして黒のカードの取り締まり等やることは多い組織であるが、強者ばかりが集まる憧れの職場である。
ただ、求められる水準が割と高いので万年人員不足である。
そんな管理局の本部に1人の男がやってくる。
自動ドアは電力が途切れない限り拒むものはない。機械音を立てながらガラスの扉が開き、ゆっくりと彼が入ってくる。
「こんにちは。面会の予定で来たのですが」
割と暗めな色をした服とコートを着た不審人物ではあるが、受付カウンターで対応している女性は柔和な表情を崩さず聞き返す。
「どなたとの面会予定でしょうか?」
「神宮寺ソノカさんです。前回の件で呼ばれましてね」
「分かりました。少々お待ちください」
そう言って受付の女性がカウンターの後ろにある控え室らしき部屋へと入って行く。
ここで上と確認して彼が入れるかどうか決めているのだろう。
数分待ったのちに受付の女性が戻ってくる。
「お待たせいたしました。五階の…………」
「505会議室でしょうか?」
「…………はい、その会議室です」
「ありがとうございます。では失礼」
初めての建物なら案内が必要なのだが、まるで構造を知っているかのようにエレベーターへ向かう。
なお、505会議室は通常のエレベーターでは向かうことができない。一度三階で降りてから階段で移動しなければならない。
受付の女性だけでなくロビーに待機している局員が密かに見守る中、彼はエレベーターに乗り込み上層へ登って行く。
そして、エレベーターの上にある階層を示すランプが三階で止まる。
そして何も事情を知らない外から営業でやってきた人間がエレベーターのボタンを押すと無人の状態で降りてくる。
「…………先輩。さっきの人って」
「知らない人だけど、内部のことを知ってるみたい」
一職員といえど管理局員。腕に自信がある受付の女性でも彼のことを不気味と思わざるを得なかった。
そう思われているとは思っていない、思っていたとしても気にしていない彼は会議室へ向かうため階段を登る。
まるで知った家のように、自分の家であるように案内板を一瞥もせず悠々と進んでいく。
時折り局員のような人物とすれ違うが、軽く会釈をして進んでいくのみ。
そして迎える505会議室。
現代風に軽く開けられそうな扉に彼は手をかけて、扉の前に人がいないか確認するためゆっくりと開ける。
会議室というのは大人数が集まる場である。
あるときは未来について話したり、金の話をしたり、責任の押し付け合いをしたりと用途はさまざまである。
そして、今回の用途は1人を尋問するために使われる。
「やあ皆さん、1番隊から7番隊の主席が勢揃いで。8番隊の主席は不在ですか、残念です」
ノックも無しに開けたこの男は眼前の圧に一切動じず話しかける。
そこに座るは7人、その背後に7人の天使。
「ふわぁ、この人が注意しなきゃいけない黒のカード使い?」
『この子、へえ、不思議ね』
眠そうなピンクゴスロリ少女風紫髪アラサー、7番隊・主席
「事情聴取に応じたこと、感謝します」
『あの子供を共にしていないのか。場が荒れなくて何よりだ』
金髪と赤のメッシュの入ったスレンダー美人、6番隊主席・神宮寺ソノカ。目つきが悪いイケメンの『八大天使 ザラキエル』。
「ねえねえ、おじさん強いんでしょ?バトルしないの?バトル!」
『こらこら、初めての人に挑まないの』
緑の髪に元気な男の子、5番隊主席・葛葉ミト。若いが母親のような包容力のある『八大天使 スクルエル』。
「時間通りか、もう少し早くきて我々の時間を無駄にしなければ及第点だったが」
『カナタ、人の命は短くとも生き急ぐ必要はないんだよ〜』
青髪ながら態度が悪くオラオラ系、4番隊主席・小鳥屋カナタ。ふわっとウェーブののんびり気質の『八大天使 ピオリエル』。
「…………来たか」
『うーん、やっぱり悪いようには見えないんだけどねぇ』
茶髪で腕組みをするだけで圧のある巌のような大男、3番隊主席・石和田ゴウタロウ。上半身裸の筋肉天使『八大天使 バイキエル』
「くかー、くかー…………おぶっ!?」
『いやー、ごめんなさいねこの子ったら人の前で寝てるんじゃないわよ!』
爆睡していたところを叩きのめされる赤と緑の入り混じる青年、2番隊主席・
「…………」
『こんにちは人の子。これからもよろしくね』
いかにも神経質そうな金髪の眼鏡をかけた威厳ある男、1番隊主席・
相も変わらず個性的な面々であると彼は思った、自分もその内の一人であることを自覚しながら。
今の8番隊主席は不在のようだが、恐らく『いつもの発作』だろうと彼は決めつけていた。
「そうですね、まずは何から話せばいいか…………」
彼とて悩む。自分のどこから話すべきか。
自分自身、元8番隊主席であることを言っても簡単に信じることはない。そう素直に信じることができるなら彼ら彼女らは主席としてここに居ない。
まず突きつけられるのはすぐに戻らなかったことになるだろう。
『悪神ウェロボラウス』という特大の地雷処理という名目はある。だがそれだけで彼は戻らないという選択肢は取らなかった。
「申し訳ありません。今の私に名乗れる名前が無いのです」
「えー?なんでー?みんな名前があるでしょー?」
「そうなのですが、『虚無』の案件で私に関する記録と親友の『八大天使 ザオリエル』と共に失ってしまいましたので」
すんっ、と空気が冷える。
これでいい、この空気が皆が成長している証拠なのだと彼は実感する。
わざわざ『八大天使』の名を使うということは彼らにとって相棒となる者を、同じ創造主から作られた兄弟を語ること。
彼ら彼女らが『八大天使 ザオリエル』の事を覚えているかどうかは別として、騙ることは決して許されないラインを簡単に踏んできた彼を見る目が変わるのは当然なのだ。
「皆さんが私を思い出さず忘れられていた期間が1年ほどです。少々悲しいところではありましたが、1人で動けたことで収穫はありました」
何を言っているのか分からない、何も言わないでほしい、事実に気づいてしまった天使を含めた各々は彼を見つめ続ける。
「改めて、やあ皆さん」
彼は両手を広げ、いつものように語る。
「私はそこの空席の前任者、肩書は元8番隊主席。ただいま作戦の報告のため帰還しました」
管理局にとって全てがひっくり返るほどの、彼にとってはいつもの地雷解体が始まる。
Q.どうしてウェロちゃんはお留守番なんですか?
悪神「嫌だ嫌だ嫌だ!我も管理局に行って保管されてる黒のカードを無秩序に開放したり奪ったりしたい!人間関係をギスギスさせて崩壊して行く様を眺めたい!」
主人公「二番煎じになりますよ」
悪神「二番煎じも嫌だー!」
虚無による世界消滅からの彼の記録消失という歴史改変で随分事情は変わっているけど、しっちゃかめっちゃかになったことがあるよ管理局。主人公が滅茶苦茶苦労したよ管理局。
何で管理局って名前にしたんですか?(過去の自分に向けて)
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