突如現れた『猛毒殺両生類オタマ』とのバトル、およそまともな相手ではないとショウマが彼ら彼女らのバトルの申し込みを受け入れてバトルをした。
ショウマはオタマ達の防御力に非常に苦戦し、ライフを削ることが出来なかった。
だが、ある閃きによって策を変えたショウマの手によりオタマ達はデッキ切れを起こしバトル継続不可となったため敗北した。
まさかの弱点が発覚したことでオタマ達は駄々をこねるがある人物が10匹を捕獲する。
その者の名は常世ヤオロズ。存在しない筈の管理局8番隊主席だった。
「その後に普通に逃げられましたが」
「ハッ、あのチビを逃がしてる時点でたかが知れてるな」
「なんですかこのチビは」
「喧嘩はいつでも安値で叩き買いしてやるぞ小童」
「神格の割に小さい姿しか取れず行動制限すら自ら受けてる黒幕気取りのマゾヒストに興味はありませんが?」
「我とて図体がデカいだけの小娘を好き好んで娘とするものか」
「「ああん?」」
「二人とも、喧嘩はいけませんよ」
「「してない!」」
喧嘩するほどなんとやら、それか争いは同じレベルでしか発生しないの間違いか。
残念なことに、後者の同じレベルというのがどちらも街や世界を簡単に滅ぼすポテンシャルを秘めているので笑うに笑えない。
その事実を知っているだけに内心は仲良くしてほしいと冷や汗を流す彼だが、表情は微笑んだままだ。
良くも悪くも、何度も世界を救った男だ。動揺を隠すのは長けている。
「わざわざ小さな事を大事のように報告するとは子供でしかない。アレか?ネズミ持ってきて主人を驚かせるやつか?」
「わざわざ子供に偽装してまでパパの関心を買おうと躍起になっている癖に邪悪が漏れ出てるからずっと警戒されている奴が言うと違いますね?」
「パパだぁ?はっ、こやつの種から生まれた訳でもないぐちゃぐちゃの肉塊を繕っただけの奴が妄言を垂れ流しとるわ」
「一緒に住んでるだけで妻気取りの気狂いに言われたくありませんな。パパの薬指に無駄な傷までつけて、パパも何か言ってあげてください!」
「2人とも可愛いですね」
「ほら!パパもああ言っています!」
「貴様の耳は腐ってるのか?」
なあなあで持っていきたい彼VS知らん娘が気に食わない妻気取りVSお前を母と認めない義理の娘。
同じ黒のカード同士なのに明らかにソリが合わないという珍事が起きていた。
良くも悪くも個性が強く出る黒のカードが引くことは滅多にない。
引くとすればバトルで負けた時だけだ。
「ああそうか、無駄に詰め込んだ身体じゃ我が何言ってるか分からないか?ごちゃごちゃと無駄に思考してるから答えに辿り着けない馬鹿なのだな!」
「一つのことを無限に考え続けて前に進めない、多様な視点を持たないお子様が言うだけありますねぇ?」
「よし、外に出ろ。死体に変えてやる」
「嫌ですよ、普通に」
「断るか?臆病者めが、我に勝てないから泣きつくか?ん?」
ガルルルル、と互いに威嚇し合う2人にどうしようかと彼が考えていた矢先だった。
チーン、とオーブンのタイマーが台所から鳴り響く。
「おや、ちょうどチョコケーキが焼き上がったようです。モモ、食べていきますか?」
「食べる食べるー!」
「あ、貴様!あれは我のだぞ!」
「パパが一緒にと言ったので誰のものでもありませーん!みんなのものでーす!」
「喧嘩をすると冷めてしまいますよ」
「「…………ふんっ!」」
同じ黒のカード同士で少しは仲良くなれるかと思っていたが、こうなるとは。
仲良くなれるよう一緒にチョコケーキを食べるようセッティングしてもピリピリとした空気は消えぬままだった。
〜●〜●〜●〜●〜
「そういえば、パパは全国バトルカップに出場するのですか?」
「いえ、応募してませんからね」
「我が応募したぞ!」
今明かされる衝撃の真実。彼が知らぬ間に『悪神ウェロボラウス』が勝手に応募していたというのだ。
「おやおや、いつの間に」
「ふふん、見てないところでハガキを書いて身体の一部となる蛇を郵便局へ遣わせたぞ!」
「その郵便局、どこか教えてほしいですな」
「貴様如きに教える訳なかろう」
「いや、妨害とかじゃなくて金銭のやり取りが発生する抽選予選に蛇だけで対応していたという事実確認をしたくて」
「真面目に仕事できて偉いですね」
「でへへ~、そうでしょうそうでしょう?」
彼に褒められてにへらと口の端にチョコがついたまま笑うヤオロズ。
彼女が褒められてるのが不快な『悪神ウェロボラウス』が密かに舌打ちをするが、実際一匹の蛇だけで対応した郵便局もだいぶおかしいのは事実である。
「パパの運なら抽選には当たるでしょうし、私が介入しなくともいいでしょう」
「ふんだ、貴様の力を借りなくとも何とかなるわ」
どこからその自信が出てくるんだろうと疑問に思う彼ではあったが、実際運だけで何とかなってきているようなものなのでそっとしておく。
それはそうと、彼は過去の全国バトルカップの思い出に浸る。
この世界では彼の記録が世界を救った代償として抹消されているが、彼の頭の中にはきちんと残っている。
何も起きなかったことは無い。必ず何かしらのトラブルが起きた波乱の大会であった。
過去にも何度か出場したことはある。ただ、先ほど述べたトラブルのせいで棄権していたので最後まで出たことは無い。
色々あったな、そう思いながら一口チョコケーキを口に入れる。
「まあ、そもそも細工できないように警備もしてありますのでお前が入る隙もありませんがね!」
「ほほう?だったらやってやろうではないか?貴様のプライドが滅茶苦茶になるくらいに!」
「へぇ、つまりどんな感じに?」
「そうだな、まずは外のアレくらいに…………」
『悪神ウェロボラウス』が指をさす先は窓の外、高く上がる煙、否、キノコ雲。
大事件があったかのように立ち上るソレに気づいたチョコケーキを囲む食卓は一瞬凍り付いた。
そしてドンッ!と遅れて音が響き渡る。
「…………ごめんなさいパパ。もっと楽しみたかったけど仕事が出来ました。そこのチビ!いったんこの場は預けておくから首あらって待ってろ!」
「そっちこそ千切りになる準備をしてろ。魂の数だけ丁寧にごちゃ混ぜにしてちぎってやる!」
音を出さずにチョコケーキを食べるために使っていたフォークを丁寧に置き、リビングから出る。
その横顔は、使命に満ちた大人の顔だった。
「ええ、いってらっしゃい。君の無事を祈っています」
彼はヤオロズに向けて短い言葉をかける。
かつて数多の精霊と融合し心の均衡を失った少女は自立した。悪と呼ばれる身に成り果てようと人のために走り出せるまでになった。
育てた芽は着実に育っている。その事実に彼は安堵した。
自分の活動は無駄ではない。それだけで救われるものだ。
「ところで、あの方向は抽選予選のハガキを保管する倉庫がある方でしたね。心当たりはありますか?」
「我、まだ何もしてないもん!」
何か仕込んでることを自白した『悪神ウェロボラウス』はまだまだ我儘盛りの子供であると彼は苦笑いした。
『『『『『『『『『『
なお『悪神ウェロボラウス』の仕掛けも他の応募ハガキを燃やすための火災だったりするが、本件とは無関係である。
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