「何やら面白い事になってますな」
全国バトルカップ予選会場にて、彼女はいた。
予選大会とはいえ普通に見応えあるバトルも存在するため観客席が設けられており、大抵遠くから見る話ではあるが見づらいと言う不満は常に出ている。
だが、観客席からのイカサマや乱入など考慮する点があるため仕方ないと言う声もある。
そんな所に彼女はいた。
スレンダーで高身長、腰まで伸びた美しい黒い髪、糸目ながら自意識過剰すぎる人間以外が美人という美貌を持つ女こと
「目をつけてた赤髪少年はともかく、まさか彼まで出るとは。いやはや、あの新婚気取りのチビが手を回したとしか思えませんな」
大当たりである。
若干無気力というか、やんちゃ盛りの娘を苦労して育ててる父のような雰囲気を持っていた彼が不安要素の多い全国バトルカップに出る可能性は低いと見ていた。
いや、だからこそ出ないと決めつけていた。
「ふぅん、これは賭けのオッズを大幅に変更しないといけませんなー」
内夜宝子はしれっと裏で全国バトルカップに関するギャンブルに関わっている。
流石に大元ではないが、情報を集めてオッズの変更に関わる立場を得ている。
払い出されなかった一部の金銭を貰えるくらい暗い立場にいたりするのだ。
なお、混沌故に姿形は変化させる事はできるので捕まる事はない。
「それに、どうしましょうかね。ちょっかいがかけづらくなってしまいました」
彼が居る、それだけで何が起ころうが後手に回ろうが事態が解決するという最強の舞台装置が登場してしまったため内夜宝子の企てが全てご破算になる。
内夜宝子も『虚無』の効力で記憶に残っていないが、『ヨグ』という彼女の仲間を呼びだし更なる混沌を引き起こそうとしたが阻止された記憶はある。
だが、それを阻止したのは彼ではない。別の人物であった。
逆を言えば彼でなくとも阻止されていたことになる。ただ、被害は彼が止めた時よりも遥かに大きく出てしまうだろうが。
一瞬、自分を止めた人物を思い返したが、どうせどこかで出てくるだろうと思考の隅へ追いやった。
「それに、あの蛙モチーフな黒のカードを使うチビも興味深いですなぁ」
面白いのはそれだけでない。黒のカードを堂々と持ちこみ、単純に金目当てと宣言して荒らしつくしているプリン頭の少年少女達。
黒のカードを持ったことによって気分の高揚や全能感らしい典型的な症状を持ち合わせておらず、逆にそのカードを自分自身として扱っている節がある。
なるほど、同類かと即座に理解できた。
群体で効力を発揮する分、他人に使わせると面倒であるという事は理解できた。
だからといって、何故金に執着するかは疑問であるが。
「とりあえずマークしておきますか。なに、知っておいて損はないので」
面白いものはいつでも触れられるようにチェックしておくのが基本、何故なら混沌をもたらす存在であるからだ。
「本戦にあのチビも出るんでしょうかね?いや、実力者が揃う中で舐めプをかますようなこと、あの人がするはずもないですからねぇ?」
内夜宝子は彼のことをよく覚えていないが誠実なのは覚えている。
なにせ、管理局のはぐれ者を集めた8番隊を率いていたという情報が一番しっくりくるのだから。
余計な事は出来ないと思いつつ、彼女は観客席を後にする。
勝者は誰になるのか決まりきったものをいつまでも見る必要はない。
何故なら彼女は『混沌の使者ナイア・ト・ホティ』、混沌をまき散らすべく活動しているのだから。
「そこの人、ちょっとよろしいですか?」
だからこそ、こういう場は割と格好のえさ場である。
会場の外は熱気に当てられ、しかし自分の力不足を感じる者が山のように居る。
そこに漬け込み都合よく誘導し、混沌をもたらす先兵となる者がわんさか存在する。
「全国バトルカップに出たかったかい?ですが実力が足りないと痛感していないかい?とはいえまずは運からだ。丁度いい商品がありますよ?」
「貴女、ちょっとお話良いですか?」
「やべっ」
売り込みをしようとして警備をしていた管理局員に速攻で見つかり逃走した。
「ははは!何事も上手くいかないくらいがちょうどいい!」
黒のカードの癖に自分の足で走り去る。
妙に人間臭く振る舞う彼女は普通に怪しい人物としか見えないだろう。
「そう思うだろう、そこの君!」
一体誰に向けて言っているのか、颯爽と駆けて人気のない場所まで彼女は行く。
「そこの君のことだよ、画面の前の皆さん」
虚空に向けて、彼女は言っ「あーあー、そういうのいいから。ナレーターのフリするのやめなよ?」
「まさか、認知できてないとでも思っていたかい?私はそういう楽しみを届けるために外からやって来た混沌なのだよ」
「そう!私はこの世界の理から外れた世界からやってきたんでねぇ、『壁』の認識くらい容易いことなのだぜ!」
「とは言え、彼のことをすっかり忘れていたことだからさ?この世界から受ける影響は少なくないんだがねー
「こういった発言は小説だったら歪んでたり、ぐしゃぐしゃになってたり、色がついていたり、あえてそのままになってるかな?」
「アニメだとノイズが走ってそうだ!いやはや、楽しみになりますな」
「さて、お察しかもしれないが、今回の全国バトルカップはお祭り騒ぎ。何たって歴代主人公やライバル、サブキャラまで登場するのですわよ」
「だからこそ、私は混沌を楽しむのだ」
「せやから奴のこと気になってるんですわ、私が知っとる話が全て御破算になる話を持ってくる奴が」
「野郎、どこから来やがった?鬱っぽいのを吹き飛ばす力!決意!自己犠牲!大いに気になるってんだよ!」
「だから色々と考え直しだ。外の世界へエンタメとしてこの世界の混沌を作るために話を練り直しだよ」
「…………いや、案外このままでいいかもしれないな」
「だって、今は混沌が世界の中心に回ってるのだから!」
「それでは画面の皆様、もしくは紙の前で読んでる方々。また世界の危機か英雄の活躍を見守ってくれたまえ」
「それでは、アデュー!」
「ママー、あのお姉さん何言ってるのー?」
「しっ、見ちゃいけません!」
「え、嘘。ギャグで終わらすのこれ?」
基本的にギャグです。
「嘘つけ性悪!だったら私の記憶もいじってるわけだよな!貴様が諸々の運命操ってるの知ってるからな!」
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「待って、無理矢理終わらそうとしないでくださいまし!?」
いくら美女とはいえ、訳のわからない独り言を叫ぶ姿にたまたま奇跡的に通りすがった親子の親が携帯電話を取り出して通報し始める。
「あ、そこの親子さん通報しないで、あっ、あーっ!?」
不審者の多い町ではよくある事であった。
「ナレーター!いや、明かすわけ・無いよね!いつか覚えてろよ貴様!」
何だ今の検閲。まるで別の存在が見てるかのようだ。
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