「浮気だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」
帰宅して開口一番これである。
「おや、ウェロにも分かりますか?」
「貴様!貴様貴様貴様っ!我がわざわざ、あえて、仕方なく、渋々、留守番していたというのに何を引っ掛けてきた!あぁん!?」
『悪神ウェロボラウス』はびったんびったんと床に寝て跳ねた。
忘れがちだが角付き褐色幼女であるため頭部が床にぶつかるごとに角も当たって床が傷だらけになっている。
さて、全国バトルカップ予選を勝ち抜いて帰宅した彼に何があったのか。
『虚無』の力を悪用する『教団』を見つけた彼はその後を追い、プリン頭な少女少年達となり変わろうとしていた『教団』の白装束を懲らしめたのだ。
敗北した『教団』の白装束は『虚無』へと帰るのだが、『虚無』に深く関わっていた彼はそれを阻止し、さらにカードまで拝借した後に管理局へと突き出した。
「黒のカードだけでなく『虚無』まで手をつけるとはなぁ!?節操無しめ!このビッチめ!」
「おやおや、私は男ですよ」
「誰にでも股開いてるようなものだーっ!」
「まあまあ、私としても思わぬ収穫があったので、つい」
「んぎっ、ぬちゃるるるるぶるりゃああああぃ!」
一応だが褐色幼女のガワを着ているので物凄い汚い雄叫びはどうかと思う。
明らかにキャラの度合いを超えた汚い声を出し続けている『悪神ウェロボラウス』だが、彼の事は色んな意味で信用している。
その信用で何か拾ってくるというのも前から気づいてはいたが、常にスルーするよう意識していたのだ。
そのツケが今まさに回ってきたと言わざるを得ない。
「認めん!我は認めんぞ!」
「とりあえず、一目だけでも見てあげませんか?」
「嫌だね!我、見せたら速攻でそいつを殺す!」
「そうですか、では出てきてください」
『悪神ウェロボラウス』の言葉をまるっと無視して彼は1枚のカードを取り出した。
それは6色ではなく、白でもなく、黒でもない。
灰色のカードは鈍く輝き、一つの像を作り出す。
それは少年のような体躯だった。しかし、顔は包帯で覆われて容貌が見えず、髪の色も灰色と色落ちしたようなものになっている。
何よりも特徴的なのは妙に露出した肌と服と言いたげに身体に巻き付いている紐、灰色の羽毛を持つ羽を背中につけていることだ。
まさに天使、ふわりと空間に現れたソレは、誰がどう見てもそうだった。
「死ねええええええええっ!」
降臨した瞬間に『悪神ウェロボラウス』が攻撃力∞の飛び蹴りが炸裂する。
明確な殺意が籠った足が天使に飛んでいく。
受けたら即死するという気迫を持っているにもかかわらず、天使は避けるそぶりを見せない。
そして、一切の回避行動をとらずその蹴りは天使に直撃する。
「むっ」
蹴りこんだ感触に違和感を覚えた『悪神ウェロボラウス』。当たった瞬間にガラス細工が砕けるように美しく、天使の身体は粉々になる。
そして光の粒子となって虚空へと消えていった。
「…………なんだ今のは。中身がまるでないではないか」
「そうなんですよ。見た目だけで中身はない、記憶も、魂も。上辺だけの完全なる模造品でしかないのです」
『虚無』のものはそういったものが多いのかと『悪神ウェロボラウス』は考えたが、彼の様子を見る限り違うらしい。
「ウェロ、覚えていますか?私がかつて『虚月海神ファレクサマーレ』に世界を消された際、私は自分自身に関する記録と親友を引き換えに世界を再構築しました」
彼は、一度粉々になったにもかかわらず、虚空から再生する天使に視線を向けた。
「当時、私のパートナーであり親友であった『八大天使 ザオリエル』がその際に消滅しました。ただの消滅ではありません、当事者の私しか覚えていないレベルで存在を抹消されたのです」
そして、何事もなかったかのように彼と『悪神ウェロボラウス』との間で浮遊する『虚無』の天使。
攻撃されても何も言わず、ただそこに存在しているにもかかわらず気配が非常に薄い。
「しかし、彼らは、『虚無』を信奉する『教団』を名乗る者達は何らかの手段で『八大天使 ザオリエル』の姿を抽出し、量産することに成功しているようなのです」
「でも我に黙って持って帰ってきたんだ」
「既に幾らかの手段を試しましたが、完全に外見だけを真似た『虚無』の存在でした。なので『八大天使 ザオリエル』ではないのですよ」
「でも我に黙って持って帰ってきたんだ」
「デッキ調整をするにあたってちょうど良いカードでしたので」
「でも我に黙って持って帰ってきたんだ」
「ウェロ」
「でも我に黙って持って帰ってきたんだ」
ズモモモ、と壊れたレコードのように同じ言葉を言いながら剣呑なオーラを放つ『悪神ウェロボラウス』だが、彼は一見飄々としている。
しかし、彼がどれだけ強くとも人間である事を忘れてはならない。
いくら外見だけを真似た偽物とはいえど、かつての相棒であり親友であった者を、物のように扱われるのは我慢ならなかったのだ。
それを堂々と切り札のように使ってるあたり強いのは確かなのだろう。
『八大天使 ザオリエル』の本来の能力は敵味方問わず墓地からモンスターを蘇らせる物なのだが『虚無』は基本的に墓地を封じながら相手にさらなる制限を課すタイプのデッキタイプであるため普通なら相性が悪い。
だからこそ許せなかった部分もある。そして、普通に強かったから欲しかったというのもある。
そのため軽率に持ち帰った事を後悔はした。反省は全くしていないし昔からこういうところがある。
「そもそもショタ系に露出させてるわ変な格好させてる時点でおかしかったのだ。我のようなセクシーにはあまり気をかけないでクソガキ共みたいなショタばかり気にかけていたから靡かなかったのだ。我、理解したぞ」
「ウェロ、それは誤解というものです。彼は理由をつけて脱ぎたがっていましたので、その名残りかと」
「その変態をずっと相棒枠に収めてたのは、誰なんだろうなぁ?」
天使を押し退け彼に体を近づかせ、じっとりと下から恨めしそうに見つめる『悪神ウェロボラウス』だが、彼の表情は微笑みから変わらない。
「それでも、私のエースは君であることには変わりありませんよ」
「本当か?本当に本当か?」
「ええ、間違いなく切り札は君ですよ」
いつも通り当たり障りのない言葉で煽て、宥めて、鎮めることに集中する。
普段よりも何倍ものヨシヨシが必要になってしまうが許容範囲内である。
せいぜいこの日の晩御飯を作る時間もなく朝までヨシヨシする事になるのだから。
『………………………………』
その間、『虚無』から造られた天使は色んな意味で忘れていた事に彼が気づくまでずっと家の中を漂っているのであった。
見て!『八大天使 ザオリエル』だよ!男の娘で露出狂だけど可愛いね。
主人公が世界を救うのに失敗して世界再構築の糧となるために『虚無』に消えた挙句、外面だけ利用されていました。主人公のせいです、あーあ。
なお、主人公が原作第1期から介入して色々動いていなければ原作そのものが全体的にこの程度で済まなかった模様。
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