全肯定しただけなのに   作:蓮太郎

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⑤ 外道邪道も通れば王道

 

「『水面の先兵』で攻撃。何かありますか?」

 

「…………ない」

 

「ではこれでユウキ君のライフは無くなりました。いいバトルでしたね」

 

「…………ありがとうございました」

 

 終了宣言と共にユウキが顔からびたんと突っ伏す。

 

「ひ、酷い…………」

 

「たった3枚交換しただけであのプレイング…………やっぱり只者じゃないよ」

 

「おやおや、大量に手札を補充できるデッキだからこそ彼らが輝いたんですよ」

 

 彼はユウキに何をしたのか?

 

 無限に追加ターンを取って殴り続けただけである。

 

「まず盤面に誰か殴れる要員を先に置いておきます。今回は『水面の先兵』がありましたので事前に出しておき、手札が十分そうなので『リュウグウツカイのオヒレ』と『五ツ目嵐 ペンタゴン』を全力で探しに行き、揃った時に使った詠唱カードの数だけコストが下がる『リュウグウツカイのオヒレ』を出し、彼女の効果で『五ツ目嵐 ペンタゴン』を無料召喚。ただ、彼らを出す前に手札交換のコストとして『知恵の奔流』を捨てた時の効果で墓地のカードを山札に戻すことを忘れないようにしましょう。『五ツ目嵐 ペンタゴン』は1枚だけ詠唱カードを軽減できるので『リュウグウツカイのオヒレ』を手札に戻せるカードを使い、『水面の先兵』で相手のライフを削りましょう。ターン終了時に『五ツ目嵐 ペンタゴン』は『リュウグウツカイのオヒレ』の効果で手札に戻りますが、その前に『五ツ目嵐 ペンタゴン』のこのターン合計で詠唱カードを5枚以上使用していたら追加ターンを得る効果を使用し、再び自分のターンになった際に同じ行動を繰り返すだけです」

 

「長い!説明が長い!文にしたら目が滑るって!」

 

「怖いよ、どうしてデッキを一回見ただけでここまで変わっちゃうの…………?」

 

「デッキが応えてくれたからですよ。自主的に手札から捨てた場合にコストを払わず発動できるカードをドローのたびに引き込めたので、運も良かったんですよ」

 

「運がいいって、あれを運で解決できるの?」

 

「ええ、君が回せば、もっと安定してデッキが応えてくれるでしょう」

 

 彼は借りたデッキから自身が購入した3枚のカードを抜き取りカイトへ返す。

 

 にこやかに彼は笑っているが、カイトはややひきつった笑みでデッキを受け取る。

 

「君のデッキに足りないのは最終的な目的地です。手札を増やすことに注視しすぎて攻撃するエースが動けるかどうか分からない印象でした」

 

「え、あ、うん。たくさん手札を増やして、手札の数で効果が増えるのがエースだから…………」

 

「ええ、たくさん手札があるうちのエースはいいでしょう。ですが、その過程でライフを失い気づいた頃には物量で負ける、と言う展開が多いでしょう?」

 

「…………うん」

 

「明確な着地点を考えておきましょう。相手の盤面に合わせる、というのも大切ですがどこまで手札が揃えば相手を倒しに行けるか、そのビジョンをしっかり持つことが大切です」

 

 目的を達成するために手段を考えていたら目的を忘れる。人間考えが行き詰まったら陥りがちな事例である。

 

 カイト少年も同じように伸び悩み、彼は一つの道を示したに過ぎないのだ。

 

「だからって無限ループはずるいって!俺の『ボンバードラゴン』出させてくれよ!」

 

「『ボンバードラゴン』の爆発的な展開をさせる前に終わらせてよかったです」

 

「なるほど、逆に言えば準備に少し手間取るからその間に仕留めなければならない、と」

 

「ええ、速攻相手ではかなり不利ではありますが、カウンターカードを駆使すれば希望はありますよ」

 

 彼はにこやかに言うが、簡単に対処できるのは数少ないという自覚を彼は持っていない。

 

 堅実でありながら大胆で相手の虚を突く戦法を土壇場で取れるものか。相手の常識を覆すようなプレイングを出来る人間は非常に限られている。

 

 真正面から殴り合うことが正義となっているこの世界に、様々な搦手を使用する彼が異常なのだ。

 

 それでも勝てば正義な部分もあるため戦ったことがない、もしくは見たことがない相手以外は表立って非難することはない。

 

「最終的な着地点。まずは相手のライフをどうやって0にするかのプランを考えましょう。プランが完成したら相手の妨害をどう処理するかを考え、デッキを作るのが基本ですよ」

 

「…………おじさん、実は『リュウグウツカイのオヒレ』はあるんだ」

 

 アドバイスする彼に近づき、こっそりと自身の切り札になり得るカードを教えたカイト。

 

「おやおや、持っていたのですか。パックから当てたのですか?運がいいですね」

 

「うん。でも、イラストが…………」

 

 『リュウグウツカイのオヒレ』というカード、能力は抜群に強いがイラストが7割ほど裸と言って過言では無い姿のため子供が使うには問題があった。

 

 主に、イラストのせいでエロ小僧だの蔑称に近いあだ名で呼ばれることも多々あるのだ。

 

 故に恥ずかしいからと言うことであえて使わない、と言うことも多々あり本来の実力を出せていない事情もあったりする。

 

「恥ずかしがることはありません。プレイするに当たって勝つという行為が正当な道であるならば堂々とするべきです」

 

 そうすれば高みへと至れます。最後にそう付け加えて。

 

 彼は戦法はともかく、必ず勝ちへのビジョンを確立させているからこそ堂々したプレイが出来ている。

 

 一切のブレがない彼に、カイトだけでなくショウマやユウキ、彼がバトルすると聞いてたまたま見物していた人々もプロ並みの高潔な精神を持つ彼に多少の敬意を抱いた。

 

「おやおや、そろそろ行きましょうか。その前に買うものだけ買っておきましょう」

 

 耳につけた小さなイヤホンらしいものを触りながら店員を呼んでショーケースに向かい合う。

 

「では皆さん、良い一日を」

 

 クレジットカードで支払いを済ませて、知り合いの少年らやその他の客に一礼してカードショップを去った。

 

 何故か彼から彼では無い殺意を感じた気がするが、多分気のせいだろう。

 

 それに彼の全身を蛇が這っているような幻覚も見えたが気のせいだろう。

 

「変な人ですけど合計で100万円以上買って行きましたよ」

 

「ああ、何故か各種1枚ずつしか買っていかないが、太客だから余程なことがない限り通い続けて貰いたいものだ」

 

 新たにデッキ構築を考えるユウキ少年らと別で、店員達が彼が通い続けて欲しいと願うばかりであった。

 




〜軽い人物紹介〜
ユウキ
『ボンバードラゴン』を主軸とした横に展開するデッキを使う赤髪の少年。
王道らしく正面から殴り合う事が好きであり、絡めても余程の物でない限り正面から殴り勝てるが、やや展開が遅めになるのがネック。
普段は長く熱くなるタイプだが消沈すると再燃するまで時間がかなりかかるめんどくさいタイプ。

カイト
ドローと小型展開、手札の枚数で効果が変わるデッキを使うが、ドローを意識しすぎて迷走気味になっていた青髪の少年。
イラストがエッチという理由で封印していた『リュウグウツカイのオヒレ』を解禁するきっかけを得る。
気弱で考え込みやすく、迷走しやすいが他者が思うよりも頑固で筋の通ったプレイをする。

ショウマ
盾になる小型を並べて大型を出した瞬間に一斉攻撃を仕掛ける待ちと攻めを両立する光のデッキを使用する金髪の少年。
『彼』の事を怪しんでいるが、良い人の行動しか取らないので困惑している。
特別な血筋を持つエリートだが、ユウキの活発さに脳を焼かれてたりする。

『悪神ウェロボラウス』
フシャァァァー!キシャァァァーー!帰ったら巻いて全力で甘える。
『彼』が他人と交流していたため嫉妬で気配が僅かに漏れた。
少年らだけでなくカードショップにいる『彼』を除いた人間を去勢する寸前だったりする。
言い訳は『闘志は下半身からくるものもある』らしいです。可愛いイタズラですね。

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