全肯定しただけなのに   作:蓮太郎

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Q.歴代主人公たちの黒歴史って?

A.アニメのトンチキギャグ回


57.2世

 

「…………おっさん、ボンバーのやつどこに行ったか知ってるか?」

 

「いいえ、残念ながら知りませんね」

 

「そうか…………分かった、探す」

 

「闇落ちか?いいぞ、堕ちるところまで堕ちるといい」

 

 包帯をグルグル巻きにしてバットを持って徘徊するユウキと会う場面はあったが、それ以外は特に問題なく夜を過ごしていた。

 

 ついさきほどまで医務室で治療を受けていた為、晩餐には参加できなかった怒りもあるのだろう。

 

 なお、下手人の『ボンバードラゴン』はとっくの昔に逃走している模様。

 

「ケケケ、やっぱりああいう闇落ちを見るのが楽しいなぁ?」

 

「しばらくしたら戻ると思いますよ」

 

 闇のオーラを放ちながら廊下を歩く後ろ姿を見ながら彼と『悪神ウェロボラウス』はそんな感想を呟いた。

 

「みんなもああいう時期が何度かあります。私にもそういった時期がありました」

 

「本当かぁ?とてもそう思えるように見えんが」

 

「私にも若気の至りと言うものはありました。今と違って熱血を押していたこともありましたからね」

 

「全然想像がつかんな…………」

 

 トテトテとそんな会話をしていた。

 

 その後ろに巫女だった少女も居るが、あまり喋るのが得意でないため気まずそうについていくだけだ。

 

 ちょっとでも近づこうものなら『悪神ウェロボラウス』の動きが一瞬だけ変わり、その些細な違いに恐怖を抱いて一秒ほど硬直する。

 

 『虚無』から解放されたはいいが、その分他人に敏感になってしまっているのだ。

 

 それはそうとして、彼の話は気になるし『悪神ウェロボラウス』と分かりあうまではいかなくても、ちょっとでも仲良くしたい。

 

 長く他人と触れ合うことが無かった巫女だった少女は少しづつではあるが人間性を取り戻している証拠であろう。

 

 『悪神ウェロボラウス』も分かっててしており、ちょっかいのつもりで揶揄っているだけに過ぎない。

 

「ふん、巫女という割には威厳がなかったな。所詮は傀儡か」

 

「……………………」

 

「仕方ありませんよ。刺激も最低限どころかないように細工された生活を今まで送ってきたのです、あらゆる刺激があの子にとって敏感に感じてしまうんですよ」

 

「そうか?我の知ってる巫女は偉そうな奴ばかりだが」

 

「宗派が違えば大きく変わりますからね」

 

 力を失った訳ではないが感情を露出させるようになった巫女だった少女に対しての見解。つらつらと彼は当然のように語る。

 

「我にも自称巫女やら使い手やら神父やらはいたな。そいつらは基本的に自分の欲のために他を使い潰すようなつまらん奴らばっかだった…………なるほど、使う側か使われる側で相当変わるな」

 

「そうですよ。特に親からの刷り込みは子供にとって毒にも薬にもなりますので」

 

「ふーん?そう言えば親の話は聞いたことがなかったな?聞かせろ」

 

「大した話ではないですよ。私が産まれる前からちょっと宗教にハマってただけで」

 

 その言葉に巫女だった少女が目を見開く。

 

 確かに彼は大人だ。そして誰かを思いやる心を持っており、尚且つとても強い自我も持ち合わせている。

 

 なのに自分と同じ宗教の生まれの子、そう思っていた。

 

「流石に『教団』ほどの規模はありませんでした。内容としては超過激派な単色主義といったところです」

 

 もうありませんがね、と最後に付け加える彼はいつも通りの声色だった。

 

「ご存じの通り、私は全ての属性を使うハイランダーデッキが最も相性がいいです。ですが、家族はそれを許さなかった。新しいカードを組み込もうとしても『自然なデッキではない』と何度も罵られて没収、場合によっては破り捨てるなんてことがありました」

 

「馬鹿なのかそいつらは」

 

「盲信というのは賢者すら堕落させる恐ろしい薬なのですよ。止めたら効果がなくなるのに、飲み続けているためずっと効いてしまう薬なのです」

 

「……………………」

 

「毒と違わないと思うがな」

 

「『信じる者はすくわれる』、言い方も使い方も少し変えたらガラッと変わるものですよ」

 

 音を出さずに歩く彼の背中がとんでもなく広い。普通なら相当擦れて曲がった人間になりそうなのに、彼はどこまでも真っ直ぐに生きている。

 

 色々やらかした自分を救えるほどに。

 

「まあ、そういう関係でトラブルがあった時は全部実力でねじ伏せましたが」

 

「パワープレイすぎないか?」

 

「そんなこんなで最終的には調子に乗りカルトと化し始めた宗教を統也さんと潰して、私は一家離散しましたけどね」

 

「軽く語れる口か?」

 

「両親はとっくに亡くなりましたからね。それぞれの実家に帰った後に衰弱していきました。私も死に目だけは連絡をと言っておいたので最期に会うことは出来ました。残念ながら罵倒はされましたがね」

 

「恩知らずだな、自分の子がどれほど立派なのか分からず朽ちていくのは。我、不快ぞ」

 

「その後は放浪して管理局へ就職したのですよ。そこからもまたいろいろありました」

 

 第1期から第3期にかけての話がかなりダイジェストで喋っていたが、彼にとって既にいい思い出と昇華されていた。

 

「……………………」

 

「君も、これからいい思い出を作るんです。色々な波乱万丈な出来事が起こるかもしれませんが、大丈夫、私がついています」

 

「……………………うん」

 

「何だ、妙にいい雰囲気だしてるんじゃないか?ん?」

 

 背中で語る彼と巫女だった少女の間に『悪神ウェロボラウス』が割り込んでくる。

 

 やはり1人増えると彼が構ってくれない時間が増えてしまう。ここ最近はその傾向が強いため危機感を抱き始めているようだ。

 

 しかし、彼が世界を救うという事はそういった事情を持つ人間もしくは精霊がふえるということであるため僅かな時間も盗られたくない乙女心が炸裂する。

 

「おやおや、ウェロも何かいい思い出はありませんか?」

 

「我か?そうだな…………アブリガで起こった要人暗殺事件の犯人の話だがな」

 

「もしかすると、それは有名な未解決事件のことですね」

 

「うむ!実はあれに我が一枚嚙んでいてな…………」

 

 嬉々としてとある事件について語りだす『悪神ウェロボラウス』。それを廊下を歩きながら微笑み聞いている彼。

 

 そして『あれ、これ聞いたらやばい話では?』と世間知らずながら危機感を覚えてた巫女だった少女。

 

 幸いなことに、この会話を聞いた者は彼ら以外に居ない。

 

 とんでもない機密を聞いた巫女だった少女は、いつもよりも眠りにつくまで1時間長くかかるのであった。

 

 …………恐らく、一度泣きつかれて寝てしまったからと言ってあげないで欲しいね。





なお、逃げ回っていた『ボンバードラゴン』は歴代主人公たちのエースに捕まり滅茶苦茶怒られた。何なら第2期主人公のエースが彼女の父であったりする。

たんこぶ10個くらい作って無表情で鼻水を垂らしながら泣いていたので流石に許された。

なお、ユウキは闇落ちとは別にちょっとしたパワーアップ回が挟まれたらしいよ。

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