「パパ―!お疲れさまでしたー!」
「…………パパ?」
「気にすることは無い。あれはただの気狂いの戯言だ」
「チビ、聞こえてるからな」
控室、天下原ジョウタロウを下した彼は備え付けられているテレビにて津久葉ユウキとミスターコンバットこと統也カズトのバトルを見届けていた。
ユウキが勝つ可能性は、彼の見解では3割程度であったが、見事勝ち進んだことを確認していたら常世ヤオロズが颯爽と入室してきた。
もちろんサボりである。
ヤオロズと巫女だった少女はもちろん初対面であるため『悪神ウェロボラウス』の戯言を鵜呑みしそうになる。
流石に嘘と見破ったが、見た目から彼との年齢差を考えると若干ヤオロズが大人すぎるため本当に娘かもしれない可能性はちょっとだけあるのかもと思っていたりする。
「おお、その子が『虚無』の。あれは大迫力でしたね、いや、チビの事ではなく鯨の方が」
「ほう?我の無限のぱぅわーが見えなかったと?二千もある眼球は飾りか?いや、二つしか常用してないから飾りか」
「なんか言ってら、私の眼球は二千以上あるし、複眼とか単眼も取り込んでるからほとんどの外見上の性癖は満たせるが?チビはロリしかできない口?」
「よおし、そこに寝ろ。今から貴様の膝から下をちぎって我と同じ身長にしてやる」
顔を合わせたら喧嘩、喧嘩するほど仲がいいなと彼は思った。
ロリと高身長お姉さんの取っ組み合いが突如始まったことに巫女だった少女は困惑し、大体無事に終わることを知っているため何もしない彼が止めないのかヒヤヒヤしながら見ている。
物凄く騒がしいが、この家に来たらこれを見る頻度が高くなるのか。恋愛の醜さを見せつけられるのかと戦々恐々とした。
大怪獣基準でこんなに狭い部屋で暴れられたらひとたまりもない。巫女だった少女が逃げようとする間にミンチにされて短い生を終えることになるだろう。
「二人とも、それまで」
彼が居なければの話である。
「パパ、今日こそチビを引きはがさないと」
「今日こそこやつを殺さないと」
「物騒なのはいけませんよ。仲良くしましょう、互いに私の関係者なんですが」
「むむむ…………」
「ぐぐぐ…………」
邪悪なる存在すらその胸で受け止めてくれる聖人の言う事は従うしかない。
闇の住人としか生きられなかった運命を変えてくれた人のために素直に従う二人を見て巫女だった少女は何を思うのか。
「…………なんで、パパ?」
「お、いい事を聞いてくれましたね。これは12年前のことなのですが」
「おい、何昔話をしようとしている?貴様、これから我がイチャイチャタイムに入ることに気づかんのか?」
「何でチビに配慮しなきゃいけないのか論文でまとめてくれませんか?最低10万文字で」
「どこぞの小説サイトに投稿する気か?」
「物語、いいですね。君が見てきてやった犯罪集をフィクション混じりに入れると人気が出そうですね」
「我、作家になる!」
「ダメですが?犯罪知識が流出しますが?」
彼の言うことを全力で実行しようとする『悪神ウェロボラウス』と全力で止めようとする常世ヤオロズ。
「モモ、この場合は実際に知識としてひけらかし、対処する場面を徹底的に見せつけることで実際にやっても相当な幸運がない限り不可能と見せつけるんです。ウェロが流出させた知識を使い犯罪をするということは、君がやった悪事は簡単に足取りを掴めるぞという警告でもあるんです」
「そう、いうものでしょうか?」
「そうだぞ。二度目以降の犯行は思ったよりもバレやすいぞ」
悪の神が言うのであるならそうなのかもしれない。ここのところ素直な『悪神ウェロボラウス』の言葉をうのみにする訳ではないが、妙な説得力があるので一旦は黙ることにした。
言いくるめられている気もするが、ただ遊ばせておくだけでは社会的貢献がないと考えた彼が苦肉の策として提案した話でもある。
彼は『虚無』によって記録を消されたが、元々あった財産はなんやかんやで回収しており、株や不動産で一生は遊んで暮らせる金額は稼いでいる。
それはそれとして『悪神ウェロボラウス』が現代社会に馴染んでもらうには、やはり社会的地位も必要というわけで、悪の神でありながら善の位置に立たせるには真っ当に働かせるしかない。
神である以上、何らかの影響を及ぼすのは間違いないが、下手に『教団』のようなカルト信者が集まるようなことを避けるために表沙汰にするという手法である。
これで裏で『悪神ウェロボラウス』を讃えるような行為があれば誰かさんが駆けつけてとっちめる、それだけのことである。
「普通に難しい…………いや、パパなら可能ですか」
「小娘、分かってないなぁ?我を下した時点で相当なものだぞ?貴様如きが測れると思うなよ」
「…………ファレクサマーレ様も倒してた」
「やっぱりパパって規格外という言葉が合いますね」
「いえいえ、私はただの人間ですよ」
「「どこが?」」
人外代表のような仲の悪い2人が異口同音になるほどのツッコミどころがあった。
巫女だった少女も2人に同意するように彼に見えないところで小さく頷いていた。
「おやおや、そこまで言われてしまうと悲しいですね」
「だがなぁ?実は何かの精霊と言われても我は驚かんぞ」
「まあ、確かにパパは…………あ、もしかして」
「……………………?」
微笑んではいるが、内心割と悲しんでいる彼と周囲から思われていることを鋭く突きつける『悪神ウェロボラウス』、そしてあることに気づいたヤオロズは何かを口にしようとしたが言わず、それを見ていた巫女だった少女は首をかしげる。
「…………おい、何を知っている?」
「いや、やっぱり何でもなーい」
「絶対何か知ってる口ぶりだろうが!吐け!出なければ口に手を突っ込んで胃袋引っ張り出すぞ!」
「残念でした!私は胃袋を直接引っ張り出された程度では死にませーん!拷問にもなりませーん!」
「うぎぎぃぃぃぃっ!何だ!秘密があるのか!クソッタレめ、何なのだ!何を隠している!」
「8番隊の方々は覚えてると思いますよ」
「だから!我が!知らんことを!教えろ!」
「暴く事ができる秘密はいいものでしょう?」
まさかの教えないというヤオロズの悪意にブチ切れる『悪神ウェロボラウス』だが、彼からも8番隊全員が彼の秘密を知っていると言われ、秘密を探るのが楽しいのだと言われたら奇声を上げることしかできなくなった。
確かに秘密は蜜の味だ。それを暴いて晒しあげるのは楽しいと『悪神ウェロボラウス』は知っている。
ただ、そう言った類の秘密を愛する彼が保有している。
「ぎゅわるるるる…………貴様らの奴らを拷問してでも吐かせてやるからな…………」
「おとといきやがれ、8番隊はお前を倒せなくても足止めはできますから」
「2人とも、仲良く」
睨み合う2人を仲裁するように入る彼を見て、巫女だった少女は「これ、あの人が楽しむためにわざわざ対立させてるのでは?」と訝しんだ。
そんな事はないが、仲の悪さは簡単に治るものではない。
準々決勝が終われば、また明日に準決勝が待っている。全国に流される放送のため、視聴率のために丁寧に分けられてバトルする。
1日4試合、2試合、そして1試合と分けてもなお収まらない熱気や上がっていく視聴率。
彼もまた、明日に備えて残りの時間は喧嘩を仲裁しながら英気を養うのであった。
エネルギーを余計に使っている?それはまあ、そう。
主人公の秘密についてはほんのちょっぴりヒントは出してたりする。彼の秘密を暴いてみよう!
秘密を暴けたら、まだ秘密を知らない『悪神ウェロボラウス』がお前の家に行ってお前を拷問にかけるよ!不正解だったらどうなるのか、その身で確かめよう!
感想をいただけると励みになります。