全肯定しただけなのに   作:蓮太郎

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お久しぶりです。こいつらに苦戦して死にそうでした。


60.おこだよ

 

『『オっタマのダンス♪』』

 

『『オっタマのダンス♪』』

 

『『オっタマは』』

 

『『オっタマで』』

 

『『オっタマっタマ』』

 

『『『『『『『『『『

いえい!

』』』』』』』』』』

 

(わたくし)は何を見せつけられているんでしょうか?」

 

 全国バトルカップ出場者が宿泊するホテルにて1人と10匹が戯れていた。

 

 いや、10匹が遊んでいたところに1人が押しかけてきたため戯れてはいなかった。

 

 押し入った側とはいえ、指先に乗るサイズの小さな蛙が立位かつ両手をふりながら踊っているなんて思いもしなかっただろう。

 

「本戦に出たとはいえ初っ端から負けたチビを見に行ったら悔しがるどころか踊っているとは思いませんでしたよ、ええ」

 

 まんま同じことを言われた。

 

 本戦の最初であっさりと敗退してしまったオタマ達を唆そうとした側も呆れるほどの奇行をするあたり、このオタマはタダ者ではない。

 

『なんでー?』『僕たちだって踊る時は踊るもん』『踊りたいから踊るもん』『たーのしー!』『暇だもーん』『運動は大事だよ』『お前も暇なんだね』『かわいそうに』『やることないんだね』『働きたくなーい!』

 

「丁寧に潰してやりましょうかこのチビ共」

 

 思ったよりも煽り性能が高いなと思いながらも不法侵入者、内夜宝子は当初の目的を思い出す。

 

 混沌の使者である彼女はせっかく全国バトルカップに出場できたというのに敗退して涙をのんだ者に力を与えるためにやってきた。

 

 もちろん、ただの力ではない。状況によっては神を倒しかねない代償を伴う力である。

 

 無論、代償の事は喋らない。都合よく使うためには嘘をつかず、多くを語らないことが大事なのだ。

 

 そうして何人も闇へ落としてきたのだ。

 

 こほん、と仕切りなおすかのように未だに踊り続ける蛙ことオタマ達に問いかける。

 

「ともかく、初戦ながら画面にも映らぬうちにあっさり敗北してしまった君たちに一つ質問だ。力、欲しくないかい?」

 

『ほしー!』『ちょうだーい!』『貰いたーい!』『働きたくなーい!』『お腹空いたー!』『くれー!』『無料だー!』『配布配布ー!』『無料石だー!』『力はいくらあっても問題ないもん』

 

「わお、正直」

 

 想像以上に食いつく小さい生物に若干驚くそぶりを見せながらも内心でほくそ笑み人差し指を1本たてる。

 

「さあさあ、私の指に触れてごらんなさいな?素晴らしい力が矮小で極小な君に与えられる」

 

 貼り付けたような笑みで、細い目は笑っているようで笑っておらず、甘い言葉で誘惑して焚き付ける。

 

 その後に起こる混沌が楽しみで仕方ない、そう思わずにいられないほどに久しぶりに心躍っている。

 

 これも全て、彼が居るせいか?

 

 人間でありながら自分より、他の神々のような格が高い相手すら誑かし、倒してしまうほどの逸材。

 

 近くで眺めているだけでも割と混沌としているのに、自分が介入したらもっと面白くなる。

 

 だからこそ身近な者に囁き、堕とし、動かすことが至高であると。

 

 内夜宝子の指にオタマの一匹が代表して前へ出る。

 

 ペタペタと近づき、誘惑の人差し指を黒い瞳でじっと見つめる。

 

 そして…………

 

『毒タッチ』

 

「えっ」

 

 ぺたり、と右前足を挙げて明らかに攻撃技のような言葉を吐きながら触った。

 

「ちょっと待って毒タッチって何待っていたタタタタなんか指先が痛い!?」

 

 力を与えるかどうか一瞬迷ったのが運の尽き、あっという間に触れた指先に痛みが生じてジュクジュクと嫌な液が漏れ出るような感覚が内夜宝子を襲う。

 

 痛みとかゆみ、明らかにヤバいものを付けられたと気づいた彼女はとっさの判断で腕を切り離す(・・・・)

 

 トカゲのしっぽのようにどさりと落ちた腕はみるみるうちに黒く変色し、そして痙攣も止まり死んだという事を予感するように静止する。

 

「……………………やりましたな?」

 

『ありゃ』『気づかれた』『気づいちゃった』『対応はやーい』『ちぇ、仕留められなかったねー』『僕悪くないもーん』『腐っても神だねー』『腐っちゃってるね』『うーん、改良の余地あり』『今度はしっかりやろう』

 

「殺意を微塵も隠さなくなってきましたな?」

 

 最初からだまし討ちしてくるつもりだったオタマ達に張り付いた笑みが少しひきつる。

 

 内夜宝子、『混沌の使者ナイア・ト・ホティ』はとある神話の一柱である。

 

 攻撃力も30000とモンスターの中でも群を抜いたパワーを誇っており、そう簡単に倒されるようなものではない。

 

 ましてや、このような小さな毒蛙ごときの毒にやられるはずもない。

 

 その筈だった。

 

「なるほど…………?なるほど、なるほど」

 

 ぐちゅりと人の耳に入れたくないような音で失った腕を再生させた『混沌の使者ナイア・ト・ホティ』は一切視線を逸らしてこない毒蛙を『見る』。

 

「なるほど、なるほど、なるほど…………なるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほどなるほど」

 

『うわ』『壊れちゃった』『叩けば治るかな?』『うるさ』『声がへーん』『気持ち悪いーい』『あれで怖がると思ってるんだよ』『何種類の声使ってるのかな?』『声優を何人使うのかな?』『まあ、言えることはあれだよね』

 

 

『『『『『『『『『『

ようやく気付いたか

』』』』』』』』』』

 

 

 ぞわり、と『混沌の使者ナイア・ト・ホティ』の予感が当たった。

 

「そうですか。そうですよね、そうだろうなぁ!お前も外の世界から来た異物でしたか!」

 

『そうだよ』『僕たちもお前と似たような立場』『ただ遊び、ただ居る』『この世界を楽しんでるんだよ』『カードゲームの世界だもんね』『たまたまここだっただけだけどね』『外からアニメで見てたもん』『あるもんだね、知ってる世界があるの』『これも転生ってやつー?』『転移の方が正しいんだよね』

 

 ケタケタと嗤う『混沌の使者ナイア・ト・ホティ』に対し、明らかに異常であることを知っていながら一切変わらぬ声色のテレパシーを送ってくるオタマ。

 

 互いに共通している感情は、互いが異物であるという自覚を持つということ。

 

「ああ、なるほど、ええ、そうでしょうね!いつから(ワタクシ)が外の世界から来たとお気づきになっていたんです?」

 

『えー?』『いつからだと思うー?』『だって法則が違うもん』『みんなの名前だよー』『下の名前がカタカナなのにー』『お前だけ漢字だ』『声だけだと分からないもんね』『みんなは気づいてたかな?』『ねえ、見てるんでしょ』『そうでしょ、「ハイランド・ドラゴン」

 

 吸い込まれるほど黒い目は、ここではないどこかを見つめていた。

 

 誰の事を指しているのかは不明ではあるが、少なくとも『混沌の使者ナイア・ト・ホティ』に語り掛けているわけではなさそうだ。

 

『見て見て』『話を逸らそうとしているよ』『こざかしいね』『お前もずっとこんな感じだったの?』『お腹すいたー!』『視聴料とるぞー!』『ぺ、逃げ腰が』『やーい、あいつの名前も言えなくなったざーこ』『メスガキってもう古くない?』『それ以上はいけない』

 

 あくまで自分勝手に、思うままに話し続ける小さな生物。これは非常に傲慢ではないだろうか?

 

「おやおやおやおや、おっと彼の口癖が出てしまいました。奴の名前も出せるんですね」

 

『『『『『『『『『『

どやぁ

』』』』』』』』』』

 

「わざとらしいドヤ顔、私じゃなかったら潰してるね」

 

『『『『『『『『『『

すぐ毒状態にするもーん

』』』』』』』』』』

 

 なんという無敵の人状態か、この小さな生物は一切の恐れを抱いていないようだ。

 

 神と蛙というアンバランスな組み合わせでありながら殺意と興味が混沌と渦巻く一室で一体何が起こるというのだろうか。

 

「殺し合いですね」

 

『『『『『『『『『『

殺すよー!

』』』』』』』』』』

 

 めっちゃ殺意が満ちていた。

 

 本当に初めていいのかと疑うくらいパチパチと火花が散り、本戦が既に始まっているというのに誰もあずかり知らぬところで大決戦が行われようとしていた。

 

「となれば、本当の名前を名乗った方が良いのでは?お前、実際のところただの蛙ではないでしょう?だって、この俺の腕を腐らせるくらいなんだからなぁ!」

 

『えー?』『確かに?』『今の名前って』『「ハイランド・ドラゴン」が勝手につけただけだもんね名乗っちゃう?』『話しちゃう?』『えっとねー、えっとねー』『いいと思うよー』『それじゃあね』『僕たちはねー』『誰かって言うとねー』

 

 少しだけ悩んだそぶりを見せたオタマは、ぽんと煙を上げて人間態へ変身する。

 

「僕たちはね」「殺人鬼の子」「蛙の子」「精霊の兄と姉が居て」「戦争の姉が居て」「次元を股にかけ」「狙った獲物を殺し」「生きるために戦い」「そして」「神を殺す」

 

 

「「「「「「「「「「

神殺旅団・二代目暗殺担当オタマ

」」」」」」」」」」

 

 

 それは、それはとても丁寧に優雅な礼だった。野生とは思えぬそれは高等な教育を受けた賜物、河川敷でのんびりひっそりと暮らしていたなど誰が思えるのだろうか。

 

 そんな少年少女を嘲笑うかのように、細い目が更に細く、そして口角がつり上がり美人画台無しになりそうでならない塩梅の顔をとる『混沌の使者ナイア・ト・ホティ』は笑う。

 

「いいね、いいねいいねいいね!そうこなくちゃぁ!だって、私と真正面から相対する奴は滅多に居なかった!ああ、カードゲームなんてどうでもいい!奴のルールを無視して戦うのが一番いい!ルルブにもそう書いてある

 

 それは本当にやめてください、数々のKPが泣いているんですよ。

 

だったらぁ、バッドエンドばかりのシナリオ書くのやめなよ

 

「「「「「「「「「「

そーだそーだ!

」」」」」」」」」」

 

 好き放題しやがって…………

 

 こほん、本戦の裏ではこのような戦いが繰り広げられ、誰にも語られずに始まるのであった。

 

「あ、また勝手に終わらそうとしてる!うおあ!?不意打ちやめーや!」

 

「「「「「「「「「「

歴史は後で書き換えられるもーん!

」」」」」」」」」」

 

「このお!毒娘がぁ!」

 

「「「僕、男の子だもん!」」」

 

「少数派が何言ってやがりますか!死ね!」

 

 …………決着がつくのは少々先になるかもしれない。

 





~改めて紹介~

神殺旅団・二代目暗殺担当オタマ
10匹の仲良し毒蛙の正体は神すら殺す毒を生成できる恐ろしき生物。
数々のメタ発言は外の世界からやって来たからであり、この世界がホビーアニメ系であることを認識している。よって、この世界を管理している上位存在のことも認知している。
何故カードになっているのかというと、この世界を管理する上位存在がオタマ達の侵入を阻止しようとしたが止められなかったため妥協案でカード化を押し付けた。
なお、一度もカードにはなってない模様。
パパは殺人鬼(人間)、ママは毒蛙でありよく分らんハーフであるためキメラ認定されて黒のカードになった。
初代暗殺担当はママであり、毒性では互角だが隠密性ならオタマが有利であり、隠し玉の性能はママの方が圧倒的に上であるため優越は特に無かったりする。
別に水子とかのキメラではない、人間と蛙のハーフである。なんだよ人間と蛙のハーフって。

「ハイランド・ドラゴン」
一体何の上位存在なんだ…………
どこかの胡散臭い裏ボスと関係がありそうだ。


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