「なんだかあっという間に準決勝も終わったな」
「ええ、いざ始まれば意外と時間が過ぎるのは早く感じます」
「すげえ、15分で終わらせた奴が言うセリフだ」
気づけば準決勝、山もなく谷もなく彼はあっさりと勝ち進んだ。
何なら『悪神ウェロボラウス』が登場するまでもなく8枚のカードで行われるループを駆使してアルティメット超高火力&防御貫通というほぼ回避不能な組み合わせでぶん殴ったのだ。
榊ジンペイを下して彼は控室に戻ったのだ。
なお、敗北した榊ジンペイは女性関係を彼に暴露されて現在行方不明、捜索に4人の女性がいるとかなんとか。
次は決勝、既に敗北して彼を待ち構えていたミスターコンバットこと統也カズトが訪問していた。
「まあ、実力は既にはっきりしているからな。あのアホが勝てる見込みはなかったともいえる」
「それはどうでしょうか?私も全てを知る訳ではありません、思わぬことによって敗北する可能性がある以上、けっして手を抜ける相手ではありませんでした」
「まあ、あんたほどの奴が言うならあいつも満足するだろうな」
「浮気性でしたが」
「ふん!だらしない奴は何処まで行ってもだらしないんだぞ!分かっているのか!」
「ええ、ええ。もちろんですとも」
優雅に座っている膝の上で褐色幼女がパタパタと腕を振りながら説教のようなものをしているが、彼の方が様々な事情が上であるため全く効いていない。
怪しくとも神を倒し、神を救い、神と共に歩む者である彼にはあまり関係ないのであろうか。
ぴたりと横に『虚無』の巫女であった少女がくっついているが、それは浮気ではないのかと疑問に思った統也カズト。
「これは別だぞ。まあ、我だって色々あったし?そもそも我は悪の神よ、子が増える程度なら一応は、一応は!容認するからな!」
「今、俺の心を読んだ?」
「顔に出ていたぞ」
表面上に出るようなことはあっさりと読んでくる『悪神ウェロボラウス』、唆し、誑かす悪性故に誰かの心を読むことは長けている。
ただし、自分が翻弄されることは滅多にないようだった。
「よーーーうチビ!ついに試合に出る事すらなくなったなぁ!?パパに忘れられてるわけじゃないだろうけど、ずっとくっついている姿だけはばっちり知っていますからな!いちゃつくことにかまけて試合に出れないとは情けないですねぇ!」
「うわ、出た」
「はぁー?我が出るまでもない相手に何をしろというのだ?我、見境なしに出るとでも思うたか?残念ながら先ほどのやつは貴様レベルだったからなぁ?」
「あぁん?…………いや、確かに榊ジンペイの実力は確かなもの。私ですらパパの足元に及ばないのに奴が神やドラゴンを使ってない以上はチビの出番もない」
「おお、考えることを覚えたか?今更?」
「いちいち余計な一言を入れないと死ぬ病気?」
突然乱入してきた常世ヤオロズの登場に統也カズトは腫物を見るような目で見ていたが、喧嘩は最初だけで割と冷静な会話を…………
いや、それほど冷静じゃないな。
彼女が来た理由は、やはり決勝に進む彼の応援であった。
「私は信じていましたよ。絶対に決勝戦に出るって」
「ほう?優勝するとは思っていないのか?」
「チビ、勝負は時の運ですよ?考えてたほうがいい、お前だって生涯で一度も負けると思ってなかったでしょう?」
「う、それはだなぁ…………」
無限の力、誰にも干渉されない能力、それを持ち合わせてなお『悪神ウェロボラウス』は敗北している。
当時、『虚無』関係によって彼が所持していたカードの大半を失っていたが最低限のパーツを揃えて彼女に挑んでいる。
よって、戦闘で『悪神ウェロボラウス』を倒せずとも時間をかけて合計10打点を叩き込み倒してしまっているのだ。
間違いなく油断と慢心があった。当時の部下はともかく無敵と思っていた自分が敗北するなど思いもしなかったのだ。
「ええ、ええ。私も決して無敵という訳ではありません。何らかの拍子で負けることだってあるかもしれません」
「こいつ謙遜に見えて自慢してきたぞ」
「パパは今のところ無敗だから…………」
「おや、そう聞こえてしまいましたか?」
「何であんたはいつも挑戦者の側に立つんだよ、こっちこいよ。頂点側だろアンタ」
「…………………………………………そんな扱いなんだ」
大人組から批判されても飄々としている余裕を見せているのが彼たる所以だろう。
このような神経が縄どころかビルを支えるほどの鉄筋を集めて束ねたような神経をしていなければこの空間の主になれないだろう。
統也カズトも下手すれば空気に飲み込まれそうな所をグッと我慢しながら決勝で誰と対戦するか予想する。
「確か、今他の所の準決勝は津久葉と法東堂だったな。どっちが勝つと思う?」
「そうですね、順当にいけばオウマさんでしょう。ただ、今のユウキ君は非常に熱が乗っています」
「そうだろうな、なんたって俺の相棒を貸したんだからな」
得意げそうにうなずく統也カズト。
彼の切り札は『超直情一線トッパ・ドラゴン』、ドラゴン界隈の中でも二番手となる最強格に名を連ねるドラゴンである。
なお、一番手は龍咲リョウの『キング・ザ・ドラゴン(新弾のたびに新しい名称が入る)』である。
もう名称が多すぎて説明が面倒であるが、純粋な『キング・ザ・ドラゴン(新弾のたびに新しい名称が入る)』は存在せず、常に衣替えに苦しんでいるんだとかなんとか。
種類が多すぎて服がめちゃくちゃ増えてしまい、衣替えにも非常にこだわりを持ってしまったことにより娘である『ボンバードラゴン』にも強要してしまった面もあったりする。
『ボンバードラゴン』が人間界で基本ほぼ裸だったり変なTシャツを着ているのはその反動である。
それはさておき、今の津久葉ユウキは非常に脂がのっていると言わざるを得ない。
今の彼の切り札は『ボンバードラゴン』だけではない。
姉である神楽坂キボウを始め、ここに居る統也カズト、天下原ジョウタロウの切り札を渡されているのだ。
後に龍咲リョウ、陽花里ヤマトの切り札も渡されることによって彼は完全体となる。
今はまだそのことを知らない彼であるが、そのような未知を見たいがために突き進んでいる節はある。
何故なら彼は、元8番隊主席は常勝不敗の存在だからだ。
「ええ、ええ。とても楽しみにしています。君の切り札だけでなく、他の方々からも託されているでしょう。それらによって引き起こされる化学反応がどのようになるのか、楽しみで仕方ありません」
「まあ、こういう奴だからな」
「………………………………(バトル馬鹿でちょっと引いてる)」
「それでこそプレイヤーだ!」
統也カズトはとても嬉しそうに頷いた。
彼もまた最強を自負したいプレイヤーであるが、何らかの理由で敗北するというのは無い訳ではない。
だが、だからこそ見て見たいものもある。
この男がどこまで突き進んでいくのか。
実は既に見ているかもしれないが、それも全て忘れているしまっているため仕方ない事。
だが、どの事態でも確固たる最強を見たいという気持ちはだれでも持ちうるのだ。
「今の津久葉君はとても強い!何せ、この俺が負けたくらいだ!」
「つまり、こいつが負けると言いたいのか?ふーん?ふーーーーーーーーん?」
「あ、いや、そんなつもりで言った訳じゃないんだが?」
激励のつもりが『悪神ウェロボラウス』の逆鱗を撫でた気がするのだが、瞳孔を蛇のように細めて睨みつけている幼女の頭を丁寧に優しく撫でる彼が言う。
「ウェロ、君の愛があるかぎり私は無敵ですよ」
「それもそうだな!我がついてるからガキ一人に負けるわけないもん!」
「……………………チョロい」
「お前、自我を取り戻してから遠慮がなくなってきたか?」
「事実、チョロいですよチビ」
「よし表出ろ。ボコボコにしてやる!」
おだてられて有頂天になる『悪神ウェロボラウス』に鋭い一言を添える巫女だった少女。
もう空気に慣れてきているようで何よりと彼は心の底から思った。
数日前まで感情が非常に薄れていたが、若干煽りのような言葉を吐けるようになってきているのは心が回復してきている証拠である。
いや、煽りの方に向かっているのはよくなってきているのだろうか?
若干将来が心配になりつつあるが、狩りの矛先が常世ヤオロズに向いたので助かってはいる。
「2人とも、ほどほどにしておいてくださいね」
「全身の関節を倍にしてやるだけだ、心配するな」
「チビの身長をのばしてやりますから。あ、文字通り物理的に引っ張るので」
「身長マウントか?我の身長は無限に操作できるからな!」
「これ、本当に放置していいのか?」
一応ではあるが、ラスボス的立ち位置だったはずの二人の喧嘩を止めた方が良いのだろうか?
そう思った統也カズトは彼に聞くが、微笑んだまま頷いていた。
ギャーギャーと騒ぐ2人であったが、これもまたいつもの風景。
このような日常を守って生きたい。
それだけが彼の願いであった。
準々決勝、まるまるカットでございます。
なお、榊ジンペイは現地妻のような人がそこそこ出来ていたので追い詰められてたりする。
捕まったらどうなるか、無計画なハーレムには気をつけよう!
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