全肯定しただけなのに   作:蓮太郎

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64.始まりの決勝

 

『さあさあ、皆さんこの日を待ち望んでいたでしょう!そう、最強のプレイヤーを決める決勝戦!』

 

 全国バトルカップにてほぼ全ての実況を務めたMCがマイク越しに声を上げる。

 

 キーンと響いていないのは高い技術力のおかげである。

 

『波乱万丈、まさにこの大会にふさわしい言葉ですが、それでも戦い抜いた勇者たちが今、2人まで削られた!そしてぇ、今日、最強が決まるぅ!』

 

 派手に花火が打ちあがり、決勝の舞台への道も鮮やかに飾られている。

 

 そう、全国から集まったプレイヤーの中で最強の一人を決める大会の〆が盛り上がらないはずもない。

 

 なにせ、ここまで戦ってきた二人はそれぞれ特色が違う。

 

 少年でありながら歴戦のプレイヤーを打倒し快進撃をとげた津久葉ユウキ。

 

 歴代主人公、ラスボスとの激突は未熟ながら成長を見せて勝ち進んできた。

 

 実力は申し分なし、多くの事を経験してきたユウキは間違いなく全国バトルカップの頂点に立つ権利がある。

 

 だが、今回の相手はそれらの猛者たちとは毛色が違う。

 

 世界を何度も救った英雄。歴史から記録が消えようと強さが衰えるわけでもない。

 

 むしろカードプールが増え続けていく限り、無限に強くなっていく恐ろしくも頼もしい男。

 

 何故か『悪神ウェロボラウス』という知る人ぞ知る最悪の神を引き連れており、がっつりと懐かれているため度胸も英雄級を超えたものであろう。

 

 やや緊張してぎこちなく決勝の舞台へと立つユウキに対して彼は『悪神ウェロボラウス』を片手に抱えて悠々と歩いている。

 

 世界を救った英雄にとって、全世界から注目を集める程度はどうという事はないらしい。

 

「待っていました。君がここまで勝ち上がることを」

 

「…………おっさん」

 

 互いにテーブルの前まで到着し、静かにデッキを置く。

 

 立体映像、と言っているが彼らのレベルだと実体化するモンスターが戦うために広く設けられたフィールドを挟んでいるため非常に遠い位置にいるのだが、何故か会話が成立している。

 

 そういうものなのだ、それだけ離れていたら聞こえないとか言っちゃいけない。

 

「俺が決勝に来るって分かってたのか?」

 

「いいえ、もしかしたら負けるかもしれないと思いました。何せ、今回の大会は全員が実力者です。私にも万が一がありますので」

 

「おっさんが負ける姿が想像つかねえよ」

 

 にこやかに笑いながら語る彼に対し、ユウキは苦笑いで対応する。

 

「ではユウキ君、君がここで勝つ姿は想像できますか?」

 

 それは当たり前のことだった。

 

 誰もが負けるつもりで大舞台に立つのか?そうだというのであるなら金を積まれて前座を引き受けた者くらいだろう。

 

 ユウキはそのような人間とは違う。

 

 確かに怖気づいたり自信を失いかけたこともあった。

 

 それでも立ってここまで来ている。自分の意思で勝ちたいがためにここに立っている!

 

「当たり前だ!相手がおっさんだからって手加減するつもりはないからな!」

 

 びしっと勝利宣言しながら指を差し、自信に満ちた目で彼を見る。

 

「ええ、それでいい。それでいいのです。プレイヤーが場に立つために必要な条件は全て持っている君なら、私を倒せるかもしれません」

 

 しかし、と彼は続ける。

 

「私も負けるつもりはありません」

 

 丁寧に山札をシャッフルし、そして手札となるカードを引く。

 

「さあ、最高のバトルにしましょう」

 

「みんなの力、貸してくれ!」

 

「「バトル!」」

 

 現代最強を決めるバトルが、始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どっちが勝つと思う?」

 

「んなもん決まってる。ユウキに一万だ」

 

「じゃあ俺は元8番隊長に一万」

 

「僕も8番隊長に一万」

 

「私もパパに10万!」

 

「「「何だお前」」」

 

 試合が開始する直前、特設観客席にて賭けが行われていた。

 

 最も、その賭けは明らかに非合法であり、男3人内でやるはずが謎の乱入者が一気に賭け金を跳ね上げた。

 

 男3人というのはミスターコンバットこと統也カズト、龍咲リョウ、天下原ジョウタロウの3人である。

 

 そこに乱入したのが我らが常世ヤオロズ。パパ大好きっ子である。

 

「いや、何やってるんだよ現8番隊隊長?仕事中だろうが」

 

「部下に任せてますよ。よっぽどの事がない限り私に仕事は回ってきませんので」

 

「サボりじゃん」

 

「サボりではありません、休憩です。それにここから賭けをする声が聞こえたので」

 

「あ、捕まえに来た方?」

 

「それは皆の態度次第ですね」

 

 にこやかだが蛇ににらまれているような感覚がしてならない。特にジョウタロウはヤオロズに対して若干思うところがあるくらいだ。

 

 なにせ、消去された歴史を復元するために改変された物語ではジョウタロウが『精千融業(せいせんゆうごう)八百万ノかるま』を打倒したことになっている。

 

 事実、彼らの記憶ではそうなっているのだ。 

 

 本来倒したはずのラスボスが、理性を保って秩序の為に働いている。

 

 悲劇の中で倒さねばならなかった者が生きている。

 

 そう考えると自分では成せなかったことを彼は成し遂げているのだと大きな差を感じてしまう。

 

「全く、いい大人が非合法なところで賭け事など。金が絡むならお土産を奢るくらいにしておくとギリ引っかかりませんよ」

 

「管理局の人間からそう言われるのは初めてだな」

 

「ミスターコンバットは色々と型破りなことをすると聞いていますからね」

 

「待て、それは一体誰にだ?」

 

「黒歴史を握っている人ですよ、『未成年メイド喫茶バトル事件』主犯」

 

「おいおいおいおいおい、それ以上はしゃべるなよ!?」

 

 どうやら弱みを握っている人物が増えたようで3人は顔を青ざめる。

 

「パパには全部聞いていませんが?もし何かやらかしそうなら脅して押さえろと言われてますので」

 

 そんな気休めを言われたところで安心することは出来ない。

 

「それはそれとして、皆さんは本当にどっちが勝つと思いますか?私はもちろんパパが勝つと思っていますが」

 

 そんな気持ちもあえて無視してヤオロズが聞いてくる。

 

 それでも彼らの総評はあまり変わらない。

 

「…………ユウキ君に俺たちのエースを託したとはいえ、勝てるかどうかは7:3の割合だ」

 

「それはパパが勝つ方が7割ということで?」

 

「パパ…………?まあ相当な運が回ってこない限りは喰らいつくのが精一杯ってところか?」

 

「だけど、俺たちと同じように何か起こすのは感じられるんだよな。そういう勘?絶対にトップスピードでデカい事はするだろうよ」

 

 確信はないが、そういった感覚は薄っすらと感じ取っている。

 

 奇跡が起きるか起きないか、このような最強を決める場では実力が全てなのか?

 

 否、断じて否!

 

 このような思いが、願いが集う場だからこそ予測不可能なことが起きるのだ。

 

 それは正しく奇跡と言っていい何かが起きなかった試しがない。

 

「ま、見守ろうぜ。俺達の後輩があいつに勝てるかどうか」

 

「パパが勝ちますよ!」

 

「だから何だお前」

 

「気にしちゃいけないタイプのファザコンだったかぁ」

 

 戦った時の記憶は割と荒々しくて苦しんでいた印象だったのに、中身がとんでもないポンコツな気がしてきた。

 

 それでも結末としてはこちらの方が間違いなく良いのだろう。

 

 黒歴史を暴露されたことは許していないが、こういうところは心の中でひっそりと感謝した。

 

「ちなみにですけど、戦っていないお二方はユウキ少年が敗北した際に黒歴史をばらすと言っていました」

 

「ユウキ君!!!!!負けるな!!!!!」

 

「ぜっってぇにその男をぶちのめしてやれ!!!!!!!!」

 

 統也カズト、龍咲リョウの必死の応援が響いたという。

 





ジョウタロウは既に黒歴史をバラされているのでお前らもバラされろと心の中で思っていたり。

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