「では、私のターン」
彼は自分の引いたカードを見つめ、そして天に居る『悪神ウェロボラウス』を見つめる。
『悪神ウェロボラウス』もまた彼を見つめており、じっくりと絡み彼の行動を見守っている。
ユウキの心臓は爆発するかと思うくらい拍動していた。
彼なら1枚から逆転するカードを引くかもしれない。矛となり盾となるモンスター達を対処されるかもしれない。
口の中が渇き、じわりと汗が流れる。
静かに、激しく緊張する中で彼は宣言した。
「ターンエンド」
彼は、あっさり宣言した。
「…………何もしないのか?」
「ええ、
思わぬ言葉にユウキは唖然としたが、これもある意味では奇跡と言えよう。
もし、あの引いたカードが妨害系のカードなら、今すぐ使って打点が無限大の『悪神ウェロボラウス』に殴らせたら一発KOだ。
ハンデスされても非常に厄介な状況になり、膠着に陥る可能性だってある。
残されたチャンスをここで使わなければならない。
彼が何も動かなくとも残された猶予は少ない。今のうちに決め切るべきだ。
ここで引く、何としてでも逆転となるカードを引く。
たとえ、それが存在しないカードだとしても?
関係ない、奇跡は起こすから存在する。今、最強である彼を倒すためだけに自分は居る!
デッキからカードを引くために添えた指の下、触れるカードが光る。
父よ、母よ、友よ、戦友よ、この指に集う力が新たな道を切り開く!
「いくぞ、俺のっ、ターン!!!」
今、ユウキは数多の可能性を秘めている。そして、更なる飛躍を遂げるために叫ぶ。
「ドロォォォォォォォッ!」
光り輝くカードを勢いよく引き、そして引いたカードを一瞥して―――
「俺は手札から『キング・ザ・ドラゴン~龍頂点王装束~』を召喚!」
『ふはははは!ようやく我の出番だ!さあ、娘よ共に征こう!』
前のターンに手札に加えていた『キング・ザ・ドラゴン~龍頂点王装束~』を召喚する。
彼もまた特別な能力により出たターンにあらゆるモンスターへ攻撃でき、攻撃時にデッキからドラゴンを呼び出せるのだ。
しかし、彼の場に居るのは攻撃力
それでも出したのは理由があった。
「これで俺の場に6体のコスト5以上のモンスターが揃った!俺はこのカードを使う!」
掲げるように手札から見せつけたのは一枚の詠唱カード。
『タカガ一枚デ何ヲシヨウトイウノダァ?』
『悪神ウェロボラウス』の嘲るような声と視線が向けられたが意に介することなくユウキは続ける。
「いくぜ、『絆タッグ』を詠唱!」
「『絆タッグ』?どのような効果でしょうか」
この時、彼を知る者は誰もが驚愕しただろう。
圧倒的カード知識を持ち、知らないカードは無いのではないかと言われている彼からカードについての質問が飛ぶ。
それだけでも圧倒的価値があるのにそのカードを使うユウキがそのカードを使うことが出来たのか。
それについては誰も分かることは無いだろう。
「このカードは自分の場にコスト5以上のモンスターが6体いたらコストを払わずに発動できる!」
『数々の勇士と共に並び!』
『俺たちのロードは止まんねえ!』
『人に光ある限り』
『この世は祝福されて』
『新たな未知が切り開かれる!』
『皆ノ力ヲ合ワセテ』
「いくぜ、絆タッグ!」
ぱぁん、と歴代主人公たちのエースがハイタッチする。その瞬間、この会場全てに力溢れる光に包まれた。
「絆タッグ、友情を築いたモンスター達が協力し合い、新たな力として一枚のカードになる!」
『ナニィ?ダガ、ソノヨウナかーどハ存在シナ…………』
「ああ、俺のデッキには存在しない。だから、新たな場所から作り出す!」
カードたちが束となり、何もない空間から一枚のカードが舞い降りる。
「絆タッグは新たな場所から一枚のカードとなって、モンスター達を素材としてタッグとなる!」
『超直情一線トッパ・ドラゴン』、『キング・ザ・ドラゴン~龍頂点王装束~』、『陽冥海皇リヴァイア・サン』、『希望戦士ライトレイ・ヴァルキュリア』、『八大天使 ホイミエル』、『ボンバードラゴン』が全て重なっていき、一つの束となりて一つのカードに集う。
「タッグ召喚!『レジェンド・ザ・ヒーローズ』!」
見た目は変わっていない、合体するでもなく、重なり合う訳でもなく、新たなモンスターになる訳でもない。
だが彼らは6体で一つのモンスターとなり、溢れ出るオーラで最強をその身で表している。
「タッグ召喚…………今までにない召喚方法。白でもなく、黒でもない。無理に融合するでもなく、一つのモンスターとして扱われながら独立した意思を持つ…………」
新たな召喚法の確立、それだけでも非常に衝撃的な事件であるが彼にとって一番重要な事実が『レジェンド・ザ・ヒーローズ』というカードに存在した。
「色を混ぜたら黒になる、今までがそうだった…………しかし、君は『多色』という概念を手に入れた…………素晴らしい…………なんと、なんと素晴らしい…………」
そう、数多の色でなされている『レジェンド・ザ・ヒーローズ』は黒のカードではなかった。
その事実に彼は全身を震わせて感動し、今まで誰も成し遂げられなかった偉業を全身で讃えていた。
黒のカード、キメラとなり異形となった存在を指しているが、多くは力を得るためにそういった生態として産まれたモンスターである。
その中には人間とモンスターが融合され、二度と分かつことが出来なくなった悲劇もある。
「こんな形で力の融和を見られるとは…………長く生きるものですね」
『イヤ、マダ42歳ダロウ!?』
「十分初老ですよ」
『人間ノ時間感覚ハ分カラヌ…………』
『悪神ウェロボラウス』も困惑するほどのうろたえっぷり(当社比)だが、悪神も彼等が放つオーラを無視することは出来なかった。
「まず第一の効果!このモンスターはバトルに必ず勝つ!これは相手に影響する効果じゃない、ウェロちゃん、いや、『悪神ウェロボラウス』!お前を倒せる力だ!」
『ナンダト!?』
いくら攻撃力が無限でも絶対勝利には敵わない。他にもバトルに必ず勝つ系の効果を持つモンスターは居るには居るが、たいていが高コストでありあまり使われないためメジャーではない。
「第二の効果!このモンスターは疲労した瞬間に回復する!何度でも、何度でも戦い続けられる!」
『……………………………………………………ハ?』
思わず唖然としてしまう『悪神ウェロボラウス』。
ユウキが言っている事を端的に言うと『無限に攻撃が出来る』ということである。
たとえ『悪神ウェロボラウス』が防御したところで、生き残ったところで『レジェンド・ザ・ヒーローズ』は彼に向けて攻撃をし続ける。
妨害札を使用し疲労させたところで回復し攻撃を仕掛けることが可能なのだ。
それもライフが完全になくなるまで、徹底的に殴り続けられるのだ。
「効果はまだ残っている!最後の効果は一ターンに一度だけ、このカードは場から離れることは無い!」
『馬鹿ナ、馬鹿ナ馬鹿ナ馬鹿ナ馬鹿ナ馬鹿ナ馬鹿ナ馬鹿ナ!フザケルナ!何ダ、ソノ効果ハァ!?』
もはや絶叫、蛇の集合体が叫べば会場も音で振動するが、この試合を見ている者達の殆どは確信した。
「このバトル、お前を倒して俺が勝つ!」
津久葉ユウキの勝利であると。
「みんな、力を貸してくれ!バトルだ!」
『『『『『『
おう!/ああ!/ええ!/いくよ/はい!/ウン!
』』』』』』
ヒーロー達が無限の蛇へと特攻する。
敗北する恐怖はない、勝利を確信して悪を撃ち滅ぼすために戦うのだ。
『グ、グウウウウウウウウウ!?』
どうすればいい、このままスルーして彼を殴らせても何か解決するわけでもない。
『悪神ウェロボラウス』は勝手に、一度限りの盾になるかどうか迷った。
幾千、幾万もの目が彼に向けられる。
…………彼もまた『悪神ウェロボラウス』を見つめていた。
「ウェロ」
彼は言った。
「こんな私を、それでも愛してくれますか?」
そこに笑顔はなかった。
彼の言葉は敗北することを覚悟した言葉か?誰もがそう思った、彼の真実を知る者以外は。
『ク、ククク、ハハハハハ!愚問!愚問!』
彼の言葉に『悪神ウェロボラウス』は高笑いする。
そんなもの、聞くまでもないというのに。誰が悪の神を救ったのだ、最後まで責任をとれと言わんばかりに。
「…………『悪神ウェロボラウス』で防御」
『カカッテコイ、ひーろー共ガァ!』
6体のヒーローと悪の神がぶつかり合う。
体積では圧倒的に悪の神が優勢であったが、絆の力で無限に等しい力を得たヒーローは徐々に力を増していく。
無限とも思えるエネルギーが『悪神ウェロボラウス』の身体を、蛇たちを一匹残らず蹂躙していく。
『グウウウウウウ、アア、ア、ギィヤアアアアアアアアアアアア!?』
そして、戦闘が終了する間際に『悪神ウェロボラウス』の断末魔が響いた。
今日のカードはコレ!『絆タッグ』!
指定されたモンスター達を一つの束にして、その上に特殊なデッキに置かれているモンスターを呼び出す詠唱だ!
今までこんなカードは存在していなかったけど、ユウキが奇跡の力、いわば主人公特権で新たな概念を生み出して勝利に繋げる力を得たんだ!
『レジェンド・ザ・ヒーローズ』は召喚条件が割と厳しいから普通にプレイしたら出しにくいけど、これほどの上振れを見せた主人公が使う特権カードともいえるぞ!ちなみにカードイメージは遊戯王の『Wake Up Your E・HERO【』を想像してくれたら助かるぞ!相手のライフが無くなるまで無限に殴ってやろう!
皆も『レジェンド・ザ・ヒーローズ』を召喚できるようにデッキを組んでみてね!(存在しないカードゲーム販促)
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