全肯定しただけなのに   作:蓮太郎

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68.君の愛がある限り、私は無敵です

 

 会場は私がフィールドに出たことで静かになった。

 

 先ほどまでウェロを倒した時の熱狂ぶりはどこへいったのやら。

 

 無理もありません、私の効果を今から説明しなければいけないのですから。

 

 散っていったウェロの粒子が私に集まっていく、私の黒いパワードスーツへと溶け込み力となっていく。

 

 これが『英雄ハイランド・マン』()として、私があまり使いたくもなかった能力。

 

 英雄は誰かが傷つかない限り、犠牲にならない限り現れない。

 

 これまで幾度となく世界を救ったといえ、全てを救いきれた訳でもない。

 

 犠牲があって英雄がある、どうしても断ち切れなかった因果です。

 

「ユウキ君、君が攻撃する前に、先に『英雄ハイランド・マン』()の効果を教えておきましょう」

 

 彼ら、『レジェンド・ザ・ヒーローズ』の前に立ち塞がるように、私は続けます。

 

「このカードの召喚時、直前に戦闘で破壊されたモンスターを特殊装備としてこのカードの下に置く。このカードは特殊装備として装備されているモンスターの攻撃力と打点を得る」

 

 指を一本立てて最初の効果を述べました。

 

 手袋のようなスーツを着ているため機械的な音がなりますが、中はしっかりと生身ですよ。

 

「今の私は『悪神ウェロボラウス』を装備している状態、そしてその攻撃力と打点は…………」

 

「どっちも、無限…………!」

 

「その通りです」

 

 人間サイズでも溢れる力は無限大。一応、私自身も攻撃力10001あるのですが、些細なことです。

 

「ちなみにですが、『英雄ハイランド・マン』()は自分の墓地にカードが存在しない、もしくは墓地のカード名が全て異なる場合、効果は無効にならず自身の効果でのみ攻撃力が変動するので君が何らかの手段で『英雄ハイランド・マン』()の攻撃力を0にすることはできません」

 

「そんなっ!?」

 

 ちなみに打点は0にすることは出来ますが、都合が悪いので黙っておきます。

 

 ここでユウキ君が気づけるかどうかですが、そもそも打点を下げる効果を持つカード自体が滅多にないので対策のしようもないです。

 

 何と悪い大人なんでしょう、でも勝つ為には必要なことです。

 

「このカードはモンスター効果および詠唱によるコストとして利用することは出来ない。つまり『英雄ハイランド・マン』()のコントロール奪取も不可能で、『英雄ハイランド・マン』()をコストにすることも不可能」

 

 この効果、無かったら割と詰んでいる盤面があるんですよね。

 

 特に神様系のモンスターとバトルする際に互いに生贄を捧げなければ動けないみたいな効果があって、敢えて『英雄ハイランド・マン』()単騎になったら膠着状態に陥り相手がデッキ切れ起こして勝ちました。

 

 普通に構築が悪かったのはともかく、私が即死しないための方便でもありますが。

 

「そして、『英雄ハイランド・マン』()がフィールドから離れる代わりに攻撃力を-10000することで留まる。これが私の基礎効果の一つです」

 

「…………え、待ってくれ、今のおっさんの攻撃力は」

 

「ウェロを装備しているので無限ですね」

 

「無敵じゃねえか!?」

 

 『英雄ハイランド・マン』()の基礎の攻撃力は10001、つまり最低でも一度は倒れても立ち上がれることを意味しています。

 

 自身の効果以外で攻撃力は下がらないのですが、如何せん一度だけでは心もとない。

 

 なので、特殊装備による攻撃力上昇で攻撃力を上げる必要があったんですよね。

 

 しかも特殊装備は戦闘破壊でしか装備できない『英雄ハイランド・マン』()の召喚に合わせないといけない条件付きなので使える場面もかなり限られているんですよね。

 

 今までは攻撃力10万である代わりに戦闘では絶対に負ける『はったりサンドバっくん』というカードを利用していましたが、ウェロがいる事で無限のパワー、つまり攻撃力をいくら下げられようとフィールドから離れなくなりました。

 

 まあ、この条件を達成するにはウェロが倒されることを前提としてるので余程なことがない限り有り得ません。

 

 このような、本気の津久葉ユウキという主人公を相手取る場合のような。

 

「さて、ここからがメインです」

 

「もうお腹いっぱいだけど…………」

 

『英雄ハイランド・マン』()がフィールドに存在する限り自分はゲームに負けない」

 

「……………………?」

 

「安心してください。『英雄ハイランド・マン』()がフィールドから離れた時、自分はゲームに敗北する。つまり『英雄ハイランド・マン』()が倒れたら私は負けるのですよ」

 

「?????????」

 

 普通なら勝ち筋と思えるデメリット、しかしそれは大いなる間違い。

 

 先ほど述べた『はったりサンドバっくん』を装備した状態では12回除去されたら私は敗北しますが、ウェロを装備している限り『英雄ハイランド・マン』()は離れることはない。

 

 過去には簡単に10回も除去を放ってくるモンスターは居ましたからね、そういうバトルではずっとヒヤヒヤしっぱなしでした。

 

 ですが、今は違う。

 

 脳が理解を拒んで思考停止しているユウキ君ですが、いや、よく見ると彼のモンスター達も宇宙を背景に固まっています。

 

 ははは、コスモシリーズでもないというのに宇宙を映し出せるとは、素晴らしい。

 

「え、じゃ、じゃあ?おっさん、つまり、えっと、ま、負けない?」

 

「そういう事になりますね」

 

「ライフが0になっても?」

 

「0になった状態でバトルは続行されます。なお、ライフを削った分だけコストが増えるので本来使える最大コストプラス1を使用できます」

 

「デッキが無くなっても?」

 

「はい、カードが引けなくとも私は負けません。それに、墓地をリセットするカードはいくつかあるので無限に耐久もできます」

 

 ここまで来ればお分かりでしょう。

 

 本当なら『レジェンド・ザ・ヒーローズ』の登場という、新種のカードの出現という奇跡が起こった時点で敗北してあげたい気持ちはありました。

 

 しかし、それはそれ、これはこれ。

 

 私は示さなければならない。

 

 『英雄ハイランド・マン』()が存在している事を。

 

「さあ、ユウキ君。バトルを続けましょう。新たなるカードを作り上げた記念日です、私の出来る限りの手を尽くしてあげましょう」

 

 『レジェンド・ザ・ヒーローズ』がいる限り私の攻撃は通らないでしょう。

 

 ですが、除去のしようもありますし、何ならデッキ切れ戦法や特殊勝利もあります。

 

 仮面の下でにっこりと笑いますが、対照的にユウキ君、それに関するもの達は顔を青ざめさせているような気がします。

 

「ずっ…………ずっ…………」

 

「「「「「「「「「「「「

ずっるぅ!?

」」」」」」」」」」」」

 

「ははは、カードを創造できなかった私はできる限りの手を尽くしただけですよ」

 

 会場で一つとなった声に、『英雄ハイランド・マン』()は軽く反論した。

 

 では、私がどうユウキ君を調理したかご想像にお任せしましょう。

 





『英雄ハイランド・マン』の唯一の弱点、それは新たにカードを創造出来ないこと。
(存在しない)原作主人公勢やライバル、ラスボス等の神話級のモンスターのようにその場で都合よくいいカードを創れないのが欠点です。
なので全てに対応できるハイランダー戦術を運命力でぶん回しするのが最適なんですよね、できるかんなもん。

できるから英雄なんです。

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