高い所というのは、人によって好みが分れる場所です。
高所恐怖症という単語が存在するように一つの事しか思わない人も居れば、登山のように高い所に上ることで達成感を得る人もいる。
私が何故、このような話をしているのか?
『この大会、多くの波乱がありました!なんかもう、言葉にするのがもったいないくらい大変なことが起きてきました!ですが!我々は1つだけ言えることがあります!』
司会が興奮したようにマイクで叫びました。声が元々大きいのは変わりませんが、そこからさらに大声を出すので会場どころか外にまで響き渡っている事でしょう。
それでも彼の心情は理解できます。
何故なら年に一度、この国でたった一人の最強を決める大会が終わったのですから。
『我々は、この英雄を知らなかった!いや、知っていたかもしれないが遠い過去と忘れていたのかもしれません!全国バトルカップ、優勝者はぁぁぁ…………!』
溜めて、溜めて、溜めて、そして彼は言い放ちました。
『「英雄ハイランド・マン」!!!!!!!!!!!!』
声が大きすぎてスピーカーからの音が割れまくってしまい耳が痛くなりそうです。
実際に私が抱っこしてるウェロも耳障りの様で顔をゆがめています。
「ちっ、これだから声だけ大きい人間は嫌いなのだ」
「彼はそういう職業でもありますからね」
司会の彼もなんだかんだと長い活躍をしています。私が子供の頃から実況司会をやっていたのを覚えています。
いやあ、しかし私がここに立つとは思っていませんでした。
今まで参加してもトラブルが起きるたびに駆け回り途中棄権していましたからね。
ちょうど良い機会でもあったのでこの場に立たせて頂いたことに感謝です。
ちなみに、この会話は彼が私の名前を読み上げた瞬間に観客達がわあぁと空気が震えるほど歓声を上げている中で行われています。
そんな中でも声が通る司会は凄いと思います。
確かに命がかかったバトルでは互いのモンスターを召喚するために今回の会場のような広いフィールドで戦うんですが、通信機とか無しに声が届くんですよね。
あの原理、いまだに解明できていないの怖くありませんか?
「まさかあんな負け方で…………うおぉ…………」
「デッキをほぼすべて手札にライフを犠牲に最大コストプラスワンみたいな事態は例外だと思います」
「そこから無限ループまで簡単にこぎつけられましたからね」
「次は…………ウェロちゃんを倒さず勝つ!」
「ユウキ、まだ懲りてないのですか?」
「いや、見た目がほら、アレだしあれだから呼び捨てはアレかと思って」
隣の一段下がった場所に立つのはユウキ君と『ボンバードラゴン』です。
なんだかんだと全力を尽くして倒したので準優勝となってしまいましたがウェロを倒せるとは思いもしませんでした。
惜しくも私に敗北してしまいましたが、今後も更なる飛躍に期待です。
「おい、なんだかあのガキに期待しているようだが我の事を忘れてないだろうな?」
「もちろんです。君が居たからこそ私はこの場に居る、そうでしょう?」
「そうだ!愛が成した偉業だな!」
ふんす、と得意げに鼻息を鳴らすウェロ。実際にウェロが居たからこそ『レジェンド・ザ・ヒーローズ』の攻撃をしのぐことが出来たわけです。
得意げにドヤ顔をするウェロを抱きかかえながら、周囲にアピールするよう手を振ってみます。優勝者と言えばこうして手を振り笑顔も振りまくのが仕事の様な物でしょう。
「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!パ゛パ゛ぁ゛!」
「うわ」
ギャン泣きしながら私の応援うちわをバタバタ振り回して喜んでいるモモの姿が見えました。
表舞台から姿を消して、目立つ活躍をしたのは今回が初めてでしょうか。
なんだかんだとあの子との付き合いは長く、そして私を慕ってくれていたため私の活躍が嬉しいんでしょう。
モモだけでなく、8番隊の面々が『虚無』により私の記録を失っていながらおぼろげに覚えていたことについて今のうちに触れておきましょうか。
ええ、確かに私の活躍及び記録は世界を救う代償として『虚無』へ捧げて消えました。しかし、それは私の人間としての記録です。
『英雄ハイランド・マン』はモンスター、そして私が存在できる根幹であるわけです。そこさえ残っていれば私は戦い続けることが出来るのですよ。
ただ、あの時は人間として世界を救った記録では足りなかったため『英雄ハイランド・マン』の存在を持ってして最後のピースとなり世界を再構築するつもりでした。
ご存じの通り『八大天使 ザオリエル』が私の身代わりになったことで私はこうして生きている訳です。
よって、人間としての私は忘れられて『英雄ハイランド・マン』という正体不明の存在が世界の記録を書き換えてなおノイズとして残ってしまったという訳です。
いやはや、これで変な事件が起きずに済んだ上に管理局で黒のカードを扱う皆が不当な扱いをされずに済んで良かったです。
『優勝者の英雄さん!優勝したことについて一言お願いします!』
他の面々についても何か回想をしようかと思いましたが、1人だけで終わってしまいました。
もう少し話せたらよかったのですが、先ほどからウェロが私の首筋をつねるのでやめておきましょう。このままだと肉が千切れそうです。
「僭越ながら、私は多くの出会いと別れに支えられながらこの場に立っています」
最初に出会った精霊は…………とうの昔に別れてしまいました。
その後にも精霊たちと出会っては別れ、神々の戦いに介入したり不死の介錯をしたりと多くの冒険を繰り広げてきました。
ほとんどが世界の危機に直面する事態だったのが不思議ですが、触れてはいけない領域です。
何故なら、全て『英雄譚』となってしまうのですから。
「この場にいる方々も、先ほどの私を見て、私が何者か理解したでしょう」
会場で私を映すカメラを見渡しながら、片手でウェロを抱いたまま開いたほうの腕を広げながら回転する。
「私は帰ってきました、そしてここに居る。このために、そしてこの先の為に私は居る」
今まである程度収まっていたことが奇跡としか言いようがないですが、私が表舞台に立っていない間に活動して見逃していた『教団』のような悪の組織は存在しています。
もちろん単独犯の方も居ますが、私が何もしていない時期に比べて働いている時のトラブル発生率は異常でした。
だから、ここで釘を刺しておきましょう。
「私が居る限り、悪事は必ず実現しない。私達が居る限り、決して私達は負けません」
ここに居るウェロだけではありません、8番隊のみんな、管理局のみんな、そして友人であるプレイヤーの方々、そして正しき道を歩む精霊たち。
たかがカードゲーム、しかし運命のように戦いを惹きつけ数多の伝説を作り出してきた。
この世界に生まれ、そして生きていくために多くの事件に関わり勝ち抜いて来た。
「ですが、いずれ私を超える方も現れるでしょう。新たなカード、新たな戦略、これからのことを思うと心躍ります」
『英雄』としての
「さあ、皆さんの手にあるカードにも数多の可能性があります。皆のバトルがこの場で、多くの場で見られることを期待しています」
ウェロが私の顔に頬擦りしてきましたよ、可愛いですね。
昔は行動一つ一つ見ていないと危なかしかった彼女ですが、人に触れ、人を知り、そして愛に飢えていただけです。
いえ、全てのカードに宿る精霊達も同じでしょう。
「赤も、青も、緑も、黄も、紫も、白も、黒も、灰色も、互いに思いを託し良きパートナーとなれる。この私たちのように」
私が使ったデッキは全ての属性を交えていました。これからも同じハイランダーデッキを使っていくことでしょう。
色にこだわるのは必要ですが、偏るのもいけない。それを全国バトルカップを通して伝えられたでしょうか?
少なくとも、私は『悪神ウェロボラウス』を愛し、彼女もまた私を愛してくれている。
近いうちに黒のカードについての講義でもしましょう。
「さあ、皆さんも楽しく『ライジング・イリュージョン』を楽しみましょう」
世界の危機は何処にでも転がっていようと、私は私のするべき事をやるだけですから。
では、私の視点はこれくらいにしておきましょう。
これ以上私の一人称で語ると内心でヒヤヒヤしてる場面が出てしまいますからね。
神と共にいるということはそういう事なので…………
『ハイランド・ドラゴン』、見ていますよね?
今は一度、視点をそちらに返しましょう。鬱シナリオばかり作っているのが難点ですが、語りは私よりも上手ですからね。
そして見ている方々、どうか、どうかこれからも続いたり続かなかったりする物語をどうかよろしくお願いします。
皆さんも、ルールを守って楽しくバトル、です。
上位龍『ワァ……ァ……』←作ったシナリオで好き勝手された上に乗っ取られたドラゴン
やったね英雄、抑止力になるよ!(悪神を従え虚無の神を倒した上に虚無使いより虚無を扱えて管理局という権力者との太いコネ持ちの黒のカード)
これいつ英雄を引退できるんですか???
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