全肯定しただけなのに   作:蓮太郎

70 / 70
70.終わり始まり

『終わったねー』『終わりだー』『いい最終回だった』『ねー』『終わりよければすべてよしー』『でも僕たちは河川敷のまま』『秘密基地をちょっと改造したよー』『びんぼーのままだー!』『美味しいご飯食べたーい!』『なんでカード売れないのー!』

 

 とある河川敷、橋の下にて小さくて黄色いのが10匹ほど戯れていた。

 

 この子たちの名はオタマ、普通に害獣である。

 

 全国バトルカップが終了して少し経つが、妙に極貧生活を送るオタマ達であるがこれには理由がある。

 

 カードを売るという行為は、普通子供だけではやっていけないことなのだ。

 

 蛙という成体であっても見た目は子供、さらに言えば身分証明書すらない謎生物に売買の権利はない。

 

 なので、参加賞と本選進出の特典カードを持て余しているオタマ達であった。

 

『おなかすいたー!』『現代社会めー!』『どうしてこうなったー!』『僕たちの努力がー!』『あーん!あーん!』『生きるのって大変ー!』『精霊はいいよね、僕たちと違って何も食べなくて生きていけるんだから』『そもそも何で僕たちカード扱いなの?』『わかんなーい』『あーん!あーん!』

 

 カードを段ボールの上に飾りながら、それを眺めることしかできない歯がゆさに涙する。

 

 蛙なので人権はないのが引っかかっているのだろう。

 

 それに入手したカードは普通に使うことは出来るのだが、オタマ達が扱うデッキにはあまり使う価値がないともいえる。

 

 故に、飾りとして置いておくにとどまったのだ。

 

 もし彼が居たなら多少の融通は聞かせることが出来ただろう。

 

 しれっと行方をくらませ頼らなかったオタマ達が悪いので残当である。

 

『おい、聞こえてるからな』『分かってるからな』『カメラどこー?』『悪口か?』『殺す?』『殺しちゃう?』『でも本体どこにもいないもん』『ずるーい!』『外道がよぉ』『お前が僕たちを見ているのを僕たちは知っているぞ』

 

 …………あの、普通に語り掛けてくるのやめてくれません?

 

 幸いなことにキョロキョロとあたりを見渡しているため場所までは捕捉できていないようだ。

 

 伊達に神殺しを名乗っていない。上位存在の視線を感じ取り、思いのままに行動する謎生物には本当に参る。

 

『だって僕たち自由だもん』『自由で何が悪い』『臆せずして何が悪い』『われ思う故にわれありだもん』『敵は殺すだけだもん』『それがたまたま神であって』『おねーちゃんが生きるために必要だもん』『なりゆきー』『必要に応じてはお前も殺す』『あまり舐めるなよ』

 

 物凄い強気に脅しにかかって来たなおい。だが、この言葉にかなりの重みを感じるのは分かってくれるだろう。

 

 単調な能力とはいえど全国バトルカップ本戦に出場する頭脳は持ち合わせてあるのだ。

 

 あからさまにこちらを探そうとぴょんぴょん跳ね回っているオタマ達であるが、語り部の姿は流石に捕らえられえないようだ。

 

 無理もない、これ全部エスパー的なカメラによって視聴しているので届くことは無い。

 

『あ、多分これだ』『ここら辺に視界があるよ』『触れる?』『触っちゃえ』『おらおらー』『普通に触れられるじゃん』『何がエスパーだよ』『ぺたぺたー』『鼻先でつんつんしちゃえ』『つんつーん』

 

 あ、こら!なんで触れられるんだ!?ちょ、汚すな!指紋が付く!

 

 うわぁ、視点がべちゃべちゃになった…………

 

 しかもこれ毒液だろ、しつこく擦っても取れないんだが?何でこんなに粘り気があるのを選んだの???

 

 いや、聞くまでもない。完全に嫌がらせだ。

 

 毒と言うものは即死するものはない。じわじわと身体の機能を停止させるように侵食すし時間をかけて仕留めるものが毒なのだ。

 

 身体が解け落ちる、腐る等の毒も広義的に見たら毒ではある…………もはや溶解液だろうというツッコミは無しにしておいて。

 

 視界が完全に曇ってしまったが、多少の状況判断は出来るだろう。それにあいつら地の文を読んでくるから意思疎通は問題ない。

 

『開き直っちゃった』『しょーもな』『所詮は脚本家気取りだよ』『犠牲ばかり美化して恥ずかしくないの?』『ハッピーエンドが一番だよ』『道中で無駄に苦しむ必要が無いのが一番!』『そんな話がずっと通ったらよかったのにね』『聞いてるのか「ハイランド・ドラゴン」』『お前のシナリオでおじさんの相棒が消えたぞ』『キツイ妄想はよそでやってくれない?』

 

 曇った視点からでもわかるほど、真っ直ぐこちらを覗き込んでくるオタマ達。

 

 つぶらな瞳が恐怖を掻き立てる、純粋に真っ黒な目がこちらを突き刺してくる。

 

『どこが恐怖だー!』『僕たちを舐めてるのかー』『こんなにつぶらなおめめなのにー』『僕たちは可愛いんだぞー!』『これには温厚な僕たちもおこ』『ぷんぷん丸だよ』『そんなんだから嫌われるんだよ』『ハイランドの中でも引きこもりのくせに』『生物不信がよぉ』『このおめめが信じられないのー?』

 

 ものすごい勢いでディスられてるが気にしない。

 

 多少の誹謗中傷が飛んでくる程度で折れるようならGM(ゲームマスター)を務められないのだ。

 

『ゴミの間違いじゃないの?』『性格悪いもん』『おじさんを見習え』『愛なんて一切ないくせに』『僕たちでも家族は大好きだもん』『パパすきー』『ママすきー』『おにーちゃんもすきー』『おねーちゃんもすきー』『お前は嫌い』

 

 まっすぐな目で嫌ってくるな。

 

 

『『『『『『『『『『

お前も嫌い

』』』』』』』』』』

 

 

 こらこらこら、あっち側の人達に暴言を吐いてはいけません。

 

 これだから最近の若者は困る。『ハイランド・マン』も最近来たばかりだし自由勝手すぎる。

 

 億年単位で動くハイランド族の中で50年も満たない年齢で暴れ回るのだから、しばらくしたら落ち着くだろう。

 

『そのしばらくっていつだよ』『お前を基準にするなら』『おじさんは人間だもん』『お前よりマシ』『多分他の奴らよりお前が悪質なだけ』『ハッピーエンドで何が悪い』『陰鬱はやだー!』『お前もそう思うよな?』『そうだと言え』『お腹すいたー!』

 

 私はそうは思わない(鋼の意志)。

 

 このような小さい生物がこうして絡んでくるように、物語はまだまだ続く。

 

 彼が現場に戻ってきた故に新たな物語も発生するのだ。

 

 彼に恨みを抱く者が襲撃してきたり、拗れに拗れた恋愛のあれこれが降りかかってきたり。

 

 彼の英雄の道はこれからも続くだろう。

 

『なんかいい話風にしてるけど』『苦労が終わらないって事だよね』『終わらせないのー?』『まあ主人公だもんね』『パパみたーい』『でもパパ殺人鬼なんだよね』『正義でもないもんね、僕たち』『たまたま殺せるのが悪い奴ってだけ』『あのナイアとかいうのも逃しちゃった』『まだ帰れないよー!』

 

 元の世界に帰れない事にわんわんと泣く小さい生物、いや何で本当にこの世界に迷い込んだ?

 

 様々な疑問を残しつつ、新たな波乱が起きるまでは平穏に過ごせるのであった。

 




こいつらのせいで中々筆が進まなかった。キャラは大好きなんですけどね。

Q、オタマ達は神殺し2代目暗殺担当なのに何でこの世界に来たんですか?

A、オタマ達は性格がカスなので親の脛かじってニート決め込もうとしたところを母親に追い出され、適当な世界に飛ばされたから。

オタマ達は働きたくない、けれどカードゲームはゲームであり遊びでもあるので割と適応していたりする。ただ、他のプレイヤーと比べたら遊びの比率が強いため本気過ぎる相手とのバトルでは勝率はイマイチになりがち。普通に暗殺した方が強い。

なお、オタマが第60話で『混沌の使者ナイア・ト・ホティ』を潰していなかったら全国バトルカップ中に一波乱があったため主人公に続く第二のMVPだったりする。

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