「なななな、なんじゃこりゃああああああ!」
「うるさいですよ、メスユウキ」
「誰がメスユウキだ!母さん、母さーん!」
津久葉ユウキは目が覚めてから洗面所へと向かい、顔を洗ってからトイレに行くというルーチンがある。
寝起き故に洗顔する際に違和感を感じていなかったが、何かがおかしいと思いつつトイレに入ってパンツを脱いだ瞬間に気づいた。
アレがナイ。
「俺、女になっちゃった!?」
「あらあら、新しいパンツを買わないといけないわねぇ」
「そうじゃないだろ!?男がいきなり女になるってことないじゃん!?」
だんだんとパジャマ短パンのまま足踏みをして外に出ようとする。
「ダメだ、パジャマのまま出られねえ!」
どうやら最低限の恥じらいはあったようだ。
バタバタといつもの服を探していたら、テレビからの緊急ニュースが耳に入る。
『緊急速報です、世界中の男性が女性に変わるという異常事態が発生しています。かくいう私も女になってしまって大混乱です…………』
『なんで綺麗になってるんですか、おかしいじゃないですか』
『なんで私は被害にあっているというのに、同僚から嫉妬されなきゃいけないんですか?』
どうやら女になったのは自分だけではないらしい。
スマホの端末からもポンポンと友人たちからのメッセージが届いており、同様の被害を受けているらしい。
一体誰が何のために、どうしてこのような事態が起こったのか全てが不明なのだ。
少々やりづらい事はあるが、まずは原因から探らなければならない。
近場に何か手掛かりがあればいいのだが、ノーヒントは流石にキツい。
「あ、ユウキ。私の服が似合うかもしれません」
「変なTシャツはいらない」
「(無表情で多大なるショックを受けている顔)」
善意で渡そうとしたものを拒否され多大なるショックを受ける『ボンバードラゴン』であったが、普通に身長差がある上に巨乳故に伸びきったTシャツは少年から少女になったユウキにとって大きすぎた。
いつもの服を着てデッキを持ち、家から飛び出した。
仲間と合流して状況を再度確認、そして事態の解決に立ち迎えるなら戦う。
妙な異変であるが、立ち上がらない訳にもいかないのだ。
「おや、ユウキくん。今日も元気ですね」
「おっさん、後でな!」
走って集合場所に行く際に彼とすれ違うのだが、今は急ぎなのでスルーする。
彼が居るという事は『悪神ウェロボラウス』も一緒なのだが断腸の思いで通り過ぎることにしたのだ。
一言だけ断りを入れて通り過ぎ…………
あれ、今普通に男じゃなかったか?
「あ、どうも優勝の人」
「おやおや、『ボンバードラゴン』さん。何も変わりありませんか?」
「私は変わりないです。ですがウェロが非常に拗ねてしまっていて」
「ぐるるるる、当たり前だろ…………何故メスばかりになるのだ…………!」
ユウキを追いかけていた『ボンバードラゴン』も通り、何の異変もない彼に躊躇なく話しかけた。
彼の背中には角付き褐色幼女モードの『悪神ウェロボラウス』が張り付いており、女ばかりになった世界から彼に変な虫が付かないか見張っている。
そのため、彼のコートに尋常ならざる握力で捕まっているため皺が出来てしまっているが、また新しく買えばいいと彼の中では思っている。
相当金を持っていなければ出てこない思考だが、金は様々な方法で工面しているので持っているのだ。
「あっれぇ!?おっさん!?なんの変わりもないの!?」
一度通り過ぎたユウキだったが、ギャグのように後ろ走りで彼の元に戻ってくる。
先ほどから通りすがった近所の人や家の中から聞こえてきた声から女性しか居なくなっていたのだが、今現在ユウキが知る中で唯一の男性が彼のみになっている。
「困りましたね。今、私のように影響を受けていない人を探しているのですが、どうも他に居なさそうなんです」
「ユウキもち〇ち〇が無くなりましたからね。ほれほれ」
「ち〇ち〇言うな!俺の股を触るな!」
セクハラを仕掛ける『ボンバードラゴン』の手を払いながら恥ずかしいのか顔を赤くして抗議する。
普通は女になったら困惑するが、ユウキは立ち向かうことを即座に選んで行動をしている。
とてもえらい行動に彼も思わずにっこり。
「まあ、おっさんは絶対にこの件に関わってないよな」
「私が主犯ならウェロの手によって行方不明になっているので」
「こんなことしたら一生監禁するぞ」
「怖いですね、ユウキは悪い大人になってはいけませんよ」
「ある意味でなっちゃいけない類の大人だろ」
ユウキも女遊びをしたいという年頃ではないにしろ、人として大変なことになっているであろう彼はあまり見習ってはいけないのではと薄々気づいている。
バトルの腕前はともかく、その周囲の関係は色々とややこしくなっているので健全な付き合いをしようと心に決めているのであった。
そんな決意はさておき、事態の把握である。
「私も管理局から連絡が入りまして。事態の解決に協力してほしいということで歩き回っているんです」
「歩き回ってるって…………そんなんで解決すんのか?」
「それで解決してきたので」
どこかを見ながら彼は己の経験を語る。こっちみんな。
ともかく、これだけの異変が起きていながら何の異変もない彼が狙われないという道理もない。
むしろ男ということで襲われかねないのだから、己を囮にした迎撃なのだ。
「見つけたぞ…………!」
いった傍から声がかかった。
彼と彼女らが声の主の方へ顔を向けると、そこに立っているのは金髪の美女。
10人中10人が美女だと答えるであろう美貌、APPで言うなら20と人間でないとうっすら感じるほどの美しさを感じるプロポーション。
髪の揺れも乳の揺れも、その着こなしているベールの様な服の揺れすら美しく感じてしまう。
「アレを貴様が持っているなら、生物女体化の奇跡の影響を受けないものなぁ…………!」
だが、その顔は美しくも怒りに染まっていた。
そして言動からして今回の黒幕らしい。
「ふふふ、どうやら『虚無』の力で存在を消していたらしいがな、この儂から逃げられると思ったか?」
高級そうなハイヒールを鳴らしながら彼に近づきデッキを取り出し始める。
「許さん、許さんぞ、儂から奪ったアレを返してもらうぞ」
「おいなんだおい、知り合いか?知り合いなのか?ん?…………ん?」
ギチギチとコートがちぎれそうな力で握る『悪神ウェロボラウス』だったが、その怒気はすぐ鳴りを潜めた。
「おおお、おっさん…………?」
いつもの微笑みが消えていたからだ。
どんな状況でも、なんなら『虚月海神ファレクサマーレ』と相対した際にも微笑んでいた彼が真顔になっている。
全国バトルカップでも『悪神ウェロボラウス』を犠牲にして己が降り立たねばならない場面でも一度真顔になったが、今回は訳が違う。
まさかの事態に困惑する『悪神ウェロボラウス』とユウキであるが、目の前の金髪美女は構わず進む。
一体何の因縁があるのか、己の知らない過去の出来事による関係者であることに『悪神ウェロボラウス』の苛立ちはあるものの、それよりも彼の真顔になる理由が気になった。
「さあ、行くぞ…………!」
そうして金髪美女はデッキに手を触れて。
「儂のち◯ち◯を返せえええええぶべらああああああ!?!?」
バトルが始まる前に『悪神ウェロボラウス』を背中に貼り付けたまま金髪美女の顔面に拳を叩きつけていた。
そして『悪神ウェロボラウス』とユウキ、そして『ボンバードラゴン』は悟った。
あ、事態の理由がしょうもないやつだ、と。
バトルが始まる前に暴力で制圧された謎の金髪美女の正体とは?
そして主人公に容赦なく暴力を振るわれ、過去にち◯ち◯を奪われた下半神…………じゃなくて金髪美女なら正体とは?
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