東方憑霊譚   作:ナマコ・ナマコ・ナマコ

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死にたくはない

鏡見が霊夢に抱えられ数分、二人は博麗神社に着いていた。

霊夢は半分気を失った鏡見を石畳の上へと投げ捨てるように落とし、その衝撃で鏡見を起こした。

 

「い..いったぁ...霊夢さん..もう少し優しく出来ないんですか...」

 

「煩いわねぇ..気を失ってる方が悪いでしょ、空を飛ぶ事ぐらい慣れなさい」

 

鏡見は若干機嫌の悪そうな霊夢を見上げ、理不尽な反論に恐怖を覚えていた。

だが、霊夢はそんな鏡見にお構い無しと質問を投げかけ始める。

 

「今から質問するけど、嘘はつかないようにね、首がトぶわよ。まず、あんたは昨日の夜何してたの?」

 

ガラッと雰囲気の変わった霊夢に、鏡見も真剣に答える。

 

「昨日の夜は..先程の山に牧を取りに行って...落とし穴に落ちてました..。で..でも!その穴には死体が一杯で...もう必死に...身体も重くて...」

 

上手く言葉にする事が出来ず、断片的になってしまったが、少なからず霊夢には伝わっていたようだ。

 

「...もういいわよ。大体理解したわ...で、その穴から逃げたついでにそいつ等を...霊共を連れて帰っちゃった訳ね」

 

「あ...霊って言っても..守護霊みたいになってるんですよね!なら安心で..」

 

安心です。そう言葉にしようとしたが、霊夢にその言葉を遮られる。

 

「安心..ねぇ、はたしてそれはどうだか..」

 

「え...それは一体..どういう..」

 

「...まぁ、当事者だし知っとくべきね。今から言うことは少し難しいけど、よく聞いとくのよ」

 

鏡見は自分に起きている事は何一つ分かっていないとはいえ、全て霊夢に説明させるのは気が引けたが、だからといって知らないままではいられなかった。また、霊夢も同じ気持ちのようだ。

 

「まず、人には何かしら憑く事がある。これは悪霊だったり守護霊だったり、でも一体から数体なら大したことないのよ。守護霊に至っては益を持ってくるものだし...。でも、数十体となると話は違うわ。ねぇあんた、例え話だけど...水槽に金魚を何百匹もいれたら..どうなると思う?」

 

「ええと..水槽にもよるけど、水が溢れたり...金魚自体が飛び出したりする..?」

 

「そう、そうなるのよ。これは人でも同じ事、何十体も体に宿すといずれかは溢れ出すし..なんなら水槽自体が壊れるの...意味は分かるわね?」

 

鏡見は完全に分かっていると言わんばかりに首を縦に振る。だが、少し疑問があった。

 

「あの...一応分かったんですけど、その...体に宿す事のできる限界ってどのくらいなんですか?水槽の例え話もそうですけど、元が大きい程、沢山入る訳ですよね」

 

「まぁ..そこが少し面倒なのよね。人によって限界は違うのよ...一体で限界な奴もいれば、神を降ろすことが出来る規格外も...しかも調べ方はほぼ無いわ。あるとすれば、時間経過でボロが出ないかね。人によっては即死するけど」

 

「そく..!?じゃ..じゃあ!祓うことって..!」

 

鏡見がそう言うと、霊夢は少し悩んだ素振りを見せ、こう答える。

 

「ほぼ無理ね」

 

霊夢にそう突き放され、鏡見は少し大きめの絶望に見舞われる。死の恐怖はこれで二回目だが、今は冷や汗が止まらない。

 

「ど..どうして...霊を祓う事が出来るのが霊夢さんぐらいしか..」

 

「その霊夢さんでも厳しいのよ。悪霊だったり雑多だったりするなら簡単なのだけど、あんたのは守護霊よ?自分達と主人を害するものは全て敵、また繋がりも強い。厄介なもんよね、自分を守ってるのに殺されもするって」

 

そう聞いた鏡見は自然と脱力してしまっていた。目の前で自身の余命を宣言された事に近しいからだ。だが、霊夢は鏡見を思ってか言葉を付け足す。

 

「別に、死ぬのが確定した訳じゃないわよ?あんたの器の大きさは分からないんだから。それに、死にそうだったとしても、そうくよくよしてて良いわけ?」

 

「...はぁ...確かに、その通りでした。死にたくは無いし、なるべく長生きしたいですけど、くよくよするのはお門違いってやつだし..なんか...もうどうでも良くなってきました」

 

鏡見は一周まわって吹っ切れてしまった。死ぬなら死ぬでやりたい事をやってから死にたい。そう思ってしまったのだ。

至極当たり前の事ではあるが、鏡見は死を目前にしてその事を忘れてしまっていた。

自身の頬を軽く叩き、気を強く持つ。

 

「..霊夢さん。本当に有難うございます。色々と...本当に」

 

「感謝される筋合いは無いわよ。根本的な原因をどうにか出来てないんだから」

 

霊夢は悔しそうにそう呟く。だが、妖怪退治と異変の対応について彼女と肩を並べられる者はそう多くない。ここで色々聞くのは無粋だろうと鏡見は立ち去ろうと立ち上がった。が、霊夢から少し待てと止められたため、その場で待つことにした。

暫くして、神社の中から何かを持って霊夢は戻ってきた。

 

「一応、あんたは御守りとして持っておきなさい。気休め程度だけれどね」

 

そう言って何かが描かれた札を渡してくる。

鏡見は黙ってそれを受け取ると、霊夢は満足したよな笑みを浮かべる。

 

「これは私の霊力を少しだけ込めたものよ。守護霊達に効くかどうかは分からないけど..もしかすれば依代として使えるんじゃないかなってね。もし札に変化が起きたら教えて頂戴、力になるわ。それじゃ、気をつけて帰りなさいね」

 

そう言って霊夢は階段下まで見送ってくれた。

鏡見は少し不安な事に変わりは無かったが、また同じ日常を送れることを願って、人里に歩を進めるのであった。

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